この記事の要点

  • 相続の手続きは「亡くなった直後/相続人を確かめる/財産を調べる/分け方を決める/名義を変える/税金/もめたとき/生前対策」の8つの段階に分けると、いま自分がどこにいるかが見えやすくなる
  • 期限のある手続きがあるので、最初に確かめたいのは「相続放棄をするかどうか(原則3か月)」と「相続登記(原則3年)」の2つ
  • 下の段階別の目次から、いまの自分に当てはまる段階の記事を読んでください
  • 税額の計算は税理士、相続人どうしで争いになっているときは弁護士が相談先です

相続の手続きで「何から始めればいいのか」と迷ったときは、まず自分がいまどの段階にいるかを決め、その段階の記事から読むのが近道です。この記事は、相続に関する解説記事をまとめて案内する総目次です。制度のしくみは個別の記事にゆずり、ここでは「どの段階で、どの記事を読めばよいか」だけを並べます。本記事は、執筆時点(2026年09月)の法令に基づく一般的な解説です。

目的によっては、次の記事から入るほうが早い場合もあります。

知りたいこと 入口になる記事
亡くなった日から何日目に何をするか(時系列) 死亡後の手続きスケジュール全体像
期限のある手続きのうち、どれを先に確かめるか 相続が始まったら何から?期限のある手続きの優先順位の整理
自分の家族構成だと誰が相続人になるか 家族構成別・相続の目次
相続にかかわる税金の種類と相談先 相続と税金の入口まとめ
自分が元気なうちに準備しておきたいこと 生前対策は何から始める?──全体マップ

段階別の目次

1. 亡くなった直後にすること

役所への届出や葬儀の費用など、最初の数日から数週間で向き合う手続きです。この時期に遺品を処分してしまうと、あとで相続放棄ができなくなることがある点にも注意が必要です。

2. 相続人を確かめる

誰が相続人になるかは民法で決まっており、最終的には亡くなった方の戸籍で確定します。家族構成ごとの相続人の顔ぶれは、家族構成別・相続の目次で一覧にしています。

3. 財産と借金を調べ、相続するかどうかを決める

プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も相続の対象です。借金のほうが多そうなときは、相続放棄を検討する期限(原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。民法915条1項)に注意してください。

4. 分け方を決める

遺言がない場合、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で、誰が何を受け取るかを決めます。

5. 名義を変える(相続登記など)

不動産を相続した場合は、名義を相続人に変える登記(相続登記)が必要です。相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項)。

不動産以外の財産の手続きは、預金なら段階3の銀行口座の解約、株式・投資信託なら上場株式・投資信託の相続手続き、自動車なら自動車の相続手続きをご覧ください。

6. 税金

相続にかかわる税金には、相続税のほかに、亡くなった方の所得税(準確定申告)や、登記にかかる登録免許税などがあります。具体的な税額の計算や申告の相談は、税理士へ。登記にかかる登録免許税は、登記の手続きの一部として司法書士が案内できる範囲です。

7. もめたとき

相続人どうしで意見が対立し、争いになっている場合は、相手方との交渉や代理を担うのは弁護士です。争いの見通しは個別の事情で大きく変わるため、早めに弁護士に相談してください。

8. 生前対策(自分の相続に備える)

自分が元気なうちにできる備えは、目的別に生前対策は何から始める?──全体マップで整理しています。代表的な入口は次の2本です。

まとめ

相続の手続きは、8つの段階に分けて「いまどこにいるか」を決めると、次に読むべきことが見えてきます。期限のある手続き、とくに相続放棄(原則3か月)と相続登記(原則3年)は、早めに確かめておきたいところです。税額の計算は税理士、争いになっているときは弁護士が相談先ですが、登記や書類の準備で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 相続の手続きには、全体でどのくらいの費用がかかりますか?

財産の種類や数、相続人の人数、どこまで自分で進めるかによって大きく変わるため、一律の金額は示せません。大まかには、戸籍などの取得にかかる実費、登記にかかる登録免許税などの税金、専門家に頼む場合の報酬に分かれます。費用の考え方は司法書士に相談する前に準備しておきたいもので整理しています。相続税がかかるかどうかや税額は、税理士にご確認ください。

Q. 期限はありますか?放っておくとどうなりますか?

相続放棄は原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項)で、この期間内に相続放棄も限定承認もしなければ、借金も含めて相続する単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。相続登記は相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内(不動産登記法76条の2第1項)です。正当な理由なく相続登記の申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項)。期限の優先順位は相続が始まったら何から?にまとめています。

Q. 自分でできますか?どこに相談すればいいですか?

戸籍の収集や預金の手続きなど、自分で進められる部分も多くあります。相続登記も本人が申請できますが、必要な書類が多く、不備があると法務局から修正を求められることがあります。相談先の目安は、登記や裁判所に出す書類は司法書士、税金は税理士、相続人どうしの争いは弁護士です。どこから手をつけるか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】相続手続きで「順番」が結果を左右する分岐点

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

8つの段階は、おおむね上から順に進みます。ただ、いくつかの場面では「どちらを先にするか」で、あとから取り返せない結果になることがあります。ここでは、その分岐点を条文の組み立てから整理します。

分岐点1:財産の調査は「判断の前」、処分は「判断の後」

民法は、相続人が承認・放棄をする前に相続財産の調査をすることができると定めています(民法915条2項)。熟慮期間(同条1項)は、調査をしたうえで判断するための期間として組み立てられているといえます。

一方で、判断の前に相続財産の全部または一部を「処分」すると、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号本文)。例外として条文が明示しているのは、保存行為と、民法602条に定める期間を超えない賃貸だけです(同号ただし書)。具体的な行為が「処分」に当たるかどうかは個別事情によって判断が分かれうるため、放棄の可能性が残っているうちは、財産に手を付ける行為は判断が固まるまで控えるのが基本です。

また、熟慮期間内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。3か月で判断材料がそろわない見込みのときは、利害関係人などの請求により家庭裁判所で期間を伸長できる制度があります(民法915条1項ただし書)。期間が過ぎてしまえば同号の問題になるため、伸長の要否は早い段階で検討しておく必要があります。

放棄をした後も安心はできません。放棄の後であっても、相続財産を隠したり、ひそかに消費したりすると、単純承認をしたものとみなされることがあります(民法921条3号)。

分岐点2:承認・放棄は「やり直せない」ことを前提に順番を組む

相続の承認と放棄は、熟慮期間内であっても撤回することができません(民法919条1項)。総則・親族編の規定による取消しの余地は残されていますが(同条2項)、取消しには期間の制限があり(同条3項)、限定承認や放棄を取り消すには家庭裁判所への申述も必要です(同条4項)。「とりあえず放棄して、あとで考え直す」という進め方は想定されていないということです。

さらに、放棄をした人は、その相続については初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。その結果、ほかの相続人の顔ぶれや相続分が変わることがあり、段階2(相続人を確かめる)に立ち戻って確認し直す必要が生じます。財産の調査(段階3)と相続人の確認(段階2)が行き来するのも、このためです。

分岐点3:預貯金の仮払いは「遺産の一部を分けた」扱いになる

遺産分割の前でも、各相続人は、預貯金債権のうち一定の額(相続開始時の債権額の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額で、金融機関ごとに法務省令で定める額が上限)を単独で払い戻すことができます(民法909条の2前段)。

見落とされやすいのは、同条後段です。払戻しを受けた預貯金債権については、その相続人が遺産の一部の分割によって取得したものとみなされます(民法909条の2後段)。つまり、仮払いは「分割とは無関係の立替え」ではなく、あとの遺産分割協議では、その相続人がすでに一部を取得した前提で話し合うことになります。

この規定と、分岐点1で見た法定単純承認(民法921条1号)との関係は、条文上は明示されておらず、仮払い制度を使うことが「処分」に当たるかどうかを条文だけから決めることはできません。放棄の可能性が残っている段階で仮払い制度を使うかどうかは、慎重に判断する必要があります。

分岐点4:遺言の有無は、分割協議より先に確かめる

遺産分割協議は「いつでも」できるのが原則ですが、条文は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合などを除くとしています(民法907条1項)。被相続人は、遺言で遺産の分割の方法を定めたり、その決定を第三者に委託したりできるほか、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて分割を禁じることもできます(民法908条1項)。

つまり、遺言があるかどうかで、協議の対象や、そもそも協議ができるかどうかという前提そのものが変わりえます。協議を終えたあとに遺言が見つかった場合にその協議がどう扱われるかは、遺言の内容や相続人の意思など個別事情によって判断が分かれる問題です。こうした事態を避けるためにも、遺言の有無の確認は分割協議より先に置くのが基本です。

なお、公正証書による遺言と、法務局の遺言書保管制度で保管されている遺言書を除き、遺言書は家庭裁判所での検認が必要です(民法1004条1項・2項、法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いがなければ開封できません(民法1004条3項)。

分岐点5:相続登記の義務は「分割の前か後か」で履行の方法が変わる

相続登記の申請義務の期限(3年)は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」から数えます(不動産登記法76条の2第1項前段)。相続人に対する遺贈で所有権を取得した場合も同じです(同項後段)。

遺産分割がすぐにまとまらない場合の選択肢として、相続人申告登記(相続人である旨の申出)があります。期間内にこの申出をした人は、申請義務を履行したものとみなされます(不動産登記法76条の3第1項・2項)。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 申出があると、登記官が職権でその旨などを所有権の登記に付記する仕組みで(同条3項)、所有権の移転の登記そのものではありません
  • 義務を履行したものとみなされる範囲からは、申出の前にされた遺産分割による取得が除かれています(同条2項かっこ書)。分割を先に済ませた場合は、申出ではなく登記の申請で義務を果たすことになります
  • 申出をした人が、その後の遺産分割で所有権を取得したときは、分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければなりません(同条4項)。ただし、分割の前に法定相続分どおりの相続登記がされていた場合は、この規定ではなく次の段落の規定によります

法定相続分のとおりに相続登記をした後で、遺産分割によって法定相続分を超えて取得した人も、分割の日から3年以内に登記を申請する義務を負います(不動産登記法76条の2第2項)。

このように、分割が期限内にまとまる見込みであれば分割後に一度で相続登記をする、まとまらない見込みであれば相続人申告登記などでいったん義務を果たし、分割後にあらためて3年の期限を管理する、という順番の選び方になります。

分岐点のまとめ

分岐点 先に済ませること 主な根拠
放棄を検討中の財産の扱い 財産の調査(処分は判断の後) 民法915条2項、921条1号
熟慮期間に判断が間に合わない 家庭裁判所への期間伸長の請求 民法915条1項ただし書、921条2号
放棄した後の相続人の範囲 相続人の顔ぶれ・相続分の確認し直し 民法919条1項、939条
預貯金の仮払い 放棄の可能性の見極め/分割協議での扱いの確認 民法909条の2、921条1号
遺産分割協議 遺言の有無の確認(必要に応じて検認) 民法907条1項、908条1項、1004条
相続登記 分割がまとまる見込みの確認(申告登記か登記申請か) 不動産登記法76条の2、76条の3

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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