この記事の要点

  • 登記は、制度上は本人が自分で申請できます。難しさを分けるのは主に「書類が定型か」「相手方や関係者が多いか」「税金・測量・争いが絡むか」の3点です
  • 自分でも取り組みやすい目安は、住宅ローン完済後の抵当権抹消、住所・氏名の変更登記、相続人申告登記など。専門家向きの目安は、売買の決済、住宅ローンの設定、財産分与、休眠担保権の抹消、家族信託など
  • 建物の滅失・表題登記・分筆・地積更正などの「表示に関する登記」は土地家屋調査士の業務です。人に頼むときの依頼先は土地家屋調査士になります
  • ここでの難易度はあくまで一般的な目安で、同じ種類の登記でも個別の事情で大きく変わります。まずは下の一覧で自分の登記の位置を確かめ、詳しい記事へ進んでください

「この登記、自分でできるだろうか」と迷ったときに、どの登記が比較的取り組みやすく、どの登記に専門知識や段取りが必要になりやすいのかを一覧にしたのがこの記事です。制度の説明はそれぞれの詳しい記事に任せ、ここでは「どの記事を読めばよいか」の目次に徹します。

自分で進めると決めた場合に頼りになるのが、法務局の「登記手続案内」(予約制)です。何を教えてもらえて何は対象外なのかは、法務局の「登記手続案内」の使い方で先に確認しておくと、この先の判断がしやすくなります。

難易度を分ける3つのポイント

同じ「登記」でも、取り組みやすさを左右するのは主に次の3点です。

  • 書類が定型的か:銀行から書類一式が届く抵当権抹消や、住民票で足りる住所変更のように、そろえる書類と書き方がほぼ決まっている登記は取り組みやすい傾向があります
  • 相手方や関係者が多いか:売買・贈与・財産分与のように相手方と一緒に申請する登記(共同申請)や、相続人が多い相続は、全員の書類と意思をそろえる段取りが必要になります
  • 税金・測量・争いが絡むか:贈与税などの税金の検討、建物図面や地積測量図の作成、当事者間の対立があると、登記の書類づくりとは別の専門知識が必要になります

登記の申請書の出し方(窓口・郵送・オンライン)はどの登記でも共通なので、登記申請は窓口・郵送・オンラインのどれで出す?もあわせてご覧ください。

また、2026年10月5日以降に申請する所有権の保存・移転の登記(相続・贈与・売買など)では、新しく名義人になる個人がその登記の申請人になる場合、申請書に「国籍等」を書き、原則としてそれを証する書類も添付することになります(改正後の不動産登記規則158条の39)。日本国籍の方は本籍地が記載された住民票の写しなどがこれに当たり、相続登記では相続人であることを示す戸籍の証明書で足りると法務局は案内しています。自分で申請するときは、法務局が公開している10月5日以降の申請用の記載例で確認してください。詳しくは登記の「住所証明情報」とは?をご覧ください。

難易度マップ(一覧)

表の「目安」は一般論です。個別の事情によって、取り組みやすい登記が難しくなることも、その逆もあります。

登記の種類 目安 主な理由 人に頼むときの相談先
住宅ローン完済後の抵当権抹消 自分でも取り組みやすい 銀行から書類一式が届き、書き方がほぼ定型 司法書士
住所・氏名の変更登記 自分でも取り組みやすい 住民票・戸籍などで足り、相手方がいない 司法書士
相続人申告登記 自分でも取り組みやすい 相続人の一人が単独で申し出られ、戸籍も簡略 司法書士
相続登記(相続人が少なく争いがない場合) 条件次第で自分でも 戸籍の収集と遺産分割協議書の作成に手間がかかる 司法書士
相続人への遺贈の登記 難しめ 遺言の読み方や添付書類の判断が必要 司法書士
贈与による名義変更 難しめ 登記の前に贈与税などの税金の検討が欠かせない 司法書士(贈与税などは税理士)
新築建物の所有権保存登記 難しめ 住宅ローンを使う場合は専門家による登記が求められるのが通常で、前提となる表題登記との段取りも必要 司法書士
売買による名義変更 専門家向き 代金の支払いと同じ日に確実に登記を通す段取りが必要 司法書士
住宅ローンの抵当権設定 専門家向き 金融機関が専門家への依頼を前提にしている 司法書士
財産分与による名義変更 専門家向き 元配偶者との共同申請、税金、残ったローンの調整が絡む 司法書士(譲渡所得などの税金は税理士)
休眠担保権(古い抵当権)の抹消 専門家向き どの抹消ルートが使えるかの判断が専門的 司法書士
家族信託の登記 専門家向き 信託の内容を登記に正確に反映させる必要がある 司法書士
建物滅失登記(表示に関する登記) 条件次第で自分でも 測量や図面が不要で、法務局が記載例を公開している 土地家屋調査士
表題登記・増築の変更登記・分筆・地積更正など(表示に関する登記) 専門家向き 測量や図面の作成、境界の確認が前提になる 土地家屋調査士

以下、目安ごとに理由と、詳しく読むための記事を並べます。

自分でも取り組みやすい目安の登記

住宅ローン完済後の抵当権抹消

完済後に銀行から届く書類一式がそろっていて、借りたときから住所・氏名が変わっておらず、借入先の銀行も合併などをしていなければ、比較的取り組みやすい登記とされています。反対に、住所が変わっている、銀行が合併している、書類をなくしている、相続が起きているといった事情があると難しさが上がります。

住所・氏名の変更登記

引っ越しや結婚で登記簿の住所・氏名が変わったときの登記です。相手方がおらず、住民票や戸籍で変更の経過が示せれば、自分で申請できる場合が多い登記です。住所の移り変わりが多くて住民票でつながらない場合や、不動産が複数ある場合は書類集めに時間がかかります。

なお、2026年4月からは、法務局に「検索用情報」を申し出ておけば、その後の住所・氏名の変更を登記官が住基ネットで把握し、本人の了解を得たうえで職権で変更登記をする仕組み(スマート変更登記)も始まっています。すでに名義人になっている方の申出には、登録免許税などの費用はかかりません(海外に住んでいる方は職権による変更登記の対象外です)。

相続人申告登記

相続登記の期限に間に合わないときに、相続人の一人が「自分が相続人です」と申し出る手続きです。単独で申し出られ、添付する戸籍も自分が相続人であるとわかる範囲で足りるため、取り組みやすい部類に入ります。ただし名義を移す登記ではない「応急策」なので、最終的には本来の相続登記が必要になります。

条件次第で自分でも・難しめの目安の登記

相続登記

相続人が少なく、不動産が自宅だけで、相続人どうしの話し合いがまとまっている場合は、自分で進めることもできます。一方で、古い戸籍までさかのぼる、相続人が多い、相続の途中で次の相続が起きている(数次相続)、相続人に未成年者・認知症の方・行方のわからない方がいるといった事情があると、難しさが一気に上がります。

相続人への遺贈の登記

遺言で「遺贈する」とされた相続人は、2023年4月から一人で登記を申請できるようになりました。ただ、遺言が「遺贈」なのか「相続させる」なのかの読み分けや、添付書類の範囲など判断が必要な点が多く、難しめの登記です。遺言の有効性や遺留分をめぐって争いがある場合は弁護士の分野になります。

贈与による名義変更

登記の申請そのものは自分でも行えますが、贈与税や不動産取得税など税金の影響が大きいのが特徴です。登記の前に税金の見通しを立てておくことが欠かせないため、難しめに分類しています。税額の計算や特例の判断は税理士の分野です。

新築建物の所有権保存登記

新築した建物の「誰のものか」を最初に記録する登記です。制度上は本人も申請できますが、住宅ローンを使う場合は、金融機関が専門家による登記を求めるのが通常です。その前提となる表題登記は土地家屋調査士の業務なので、下の「表示に関する登記」もあわせてご覧ください。

専門家に頼むことが多い目安の登記

売買による名義変更

売買では、代金の支払い・鍵の引渡し・売主のローンの抹消・買主への名義変更・買主のローンの設定を同じ日に進めるのが一般的です。「お金は払ったのに名義が移らない」といった事態を防ぐため、決済の場で書類と本人を確かめて、その日のうちに申請する段取りが組まれます。

住宅ローンの抵当権設定

制度上は本人も申請できますが、住宅ローンの実行と引き換えに、金融機関は抵当権の設定登記が確実にされることを求めるため、専門家への依頼が実務上の前提になっています。自分で行いたい場合は、事前に金融機関に確認が必要です。

財産分与による名義変更

離婚に伴う名義変更は、元配偶者と一緒に申請する共同申請で、譲渡所得などの税金や、ローンが残っている場合の金融機関との調整も絡みます。税金の具体的な判断は税理士の分野です。

休眠担保権(古い抵当権)の抹消

明治・大正期などの古い抵当権が残っている場合、通常の抹消手続きが使えないことがあり、供託・裁判所の手続き・解散会社向けのルートのどれが使えるかの判断が専門的です。完済の有無をめぐって相手方と争いになる場合は弁護士の分野です。

家族信託の登記

信託の内容(誰が託し、誰が管理し、誰が利益を受けるか)を信託目録として登記簿に正確に反映させる必要があり、記載の不備が後の解釈の争いにつながりやすい分野です。

表示に関する登記は土地家屋調査士の業務

土地や建物の「どこに・どんなものがあるか」を記録する登記(表示に関する登記)は、名義や抵当権を扱う登記とは担当する資格者が分かれています。表示に関する登記を人に頼むときの依頼先は土地家屋調査士です。名義変更などの権利の登記は司法書士、という分担になります。

建物滅失登記(条件次第で自分でも)

建物を取り壊したときの滅失登記は、測量や図面の作成を伴わず、法務局が申請書の様式と記載例を公開しているため、表示に関する登記のなかでは自分でも取り組みやすい部類です。ただし、登記記録の建物と取り壊した建物が同じか判断しにくい場合や、附属建物・複数棟の一部だけを取り壊した場合、相続が何代も続いている場合は、土地家屋調査士に相談したほうが早いとされています。

表題登記・増築・分筆・地積更正・地目変更(専門家向き)

新築の表題登記や増築の変更登記には建物図面・各階平面図が、分筆には測量と地積測量図が必要になり、地積更正も現地の測量と境界の確認が前提になります。いずれも制度上は所有者本人も申請できますが、実務上は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。農地を転用して地目を変える場合は、転用の許可申請・届出(行政書士の分野)と地目変更登記(土地家屋調査士の分野)の順番にも注意が必要です。

まとめ

登記は制度上、本人が自分で申請できます。書類が定型的で、相手方がいない(住所変更・相続人申告登記)か、相手方の書類が先方で用意される(住宅ローン完済後の抵当権抹消)登記は取り組みやすい目安、相続登記や建物滅失登記は条件次第、売買の決済・住宅ローンの設定・財産分与・休眠担保権・家族信託や、測量を伴う表示に関する登記は専門家に頼むことが多い目安です。ただし、これはあくまで一般的な目安で、同じ種類の登記でも住所のつながり・相続人の数・書類の有無などで難しさは大きく変わります。

自分で進めるときは法務局の登記手続案内を活用し、判断に迷うときはお近くの司法書士(表示に関する登記は土地家屋調査士)にご相談ください。

よくある質問

Q. 自分で登記をすると、費用はどのくらいかかりますか?

自分で申請する場合にかかるのは、主に法務局に納める登録免許税と、登記事項証明書や戸籍などの取得費用です。登録免許税は登記の種類で決まり、たとえば抵当権の抹消や住所変更は不動産1個につき1,000円、相続登記は評価額の0.4%です(ただし、価額100万円以下の土地の相続登記などには、2027年3月31日までの免税措置があります)。建物滅失登記や相続人申告登記には登録免許税はかかりません。専門家に頼む場合は、これに報酬が加わります。

Q. 登記に期限はありますか?放っておくとどうなりますか?

相続登記は相続で取得したことを知った日から3年以内、住所・氏名の変更登記は変更から2年以内、建物の新築・取壊し・増築や地目変更の登記は1か月以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。制度が始まる前(相続登記は2024年4月1日、住所・氏名の変更登記は2026年4月1日)に起きた相続や変更も対象で、その場合の期限は、相続登記が2027年3月31日(相続で取得したことを知ったのが2024年4月1日以降なら、その日から3年以内)、住所・氏名の変更登記が2028年3月31日です。住宅ローン完済後の抵当権抹消には申請の期限はありませんが、放置すると銀行の合併や書類の紛失で手続きが難しくなることがあります。

Q. 自分でできるかどうか、どこに相談すればいいですか?

自分で進めると決めた場合は、法務局の登記手続案内で手続きの流れや申請書の様式を案内してもらえます(書類の作成や個別の判断はしてもらえません)。自分のケースが取り組みやすい側か迷うときは、名義や抵当権などの登記はお近くの司法書士に、建物の滅失・表題登記・分筆などの表示に関する登記は土地家屋調査士にご相談ください。

【さらに深掘り】登記審査の仕組みから見た「難易度」を分ける要因

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

本文の「難易度を分ける3つのポイント」を不動産登記法の仕組みに引き直すと、難しさの多くは「誰が申請人になるか」「本人であることをどの情報で確かめるか」「審査で求められる情報がそろうか」の3つに整理できます(税金や当事者間の争いは、登記の審査の外にある問題なのでここでは扱いません)。ここでの整理は、名義や抵当権などの権利に関する登記を対象にしています。表示に関する登記(土地家屋調査士の業務)は、最後の「表示に関する登記の審査との違い」で見るとおり審査の組み立てが異なります。

単独申請か共同申請か

権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同して申請するのが原則です(不動産登記法60条)。売買・贈与・財産分与による名義変更や、抵当権の設定・抹消はこの共同申請にあたります。

これに対し、法律が単独での申請を認めている登記があります。

  • 相続または法人の合併による権利の移転の登記(同法63条2項)
  • 相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記(同法63条3項)
  • 登記名義人の氏名・名称・住所の変更の登記または更正の登記(同法64条1項)

本文の一覧で「取り組みやすい」「条件次第」に並ぶ登記の多くは、この単独申請の側にあります。ただし、単独申請であることだけで取り組みやすくなるわけではありません。相続人への遺贈の登記は単独申請ですが、遺言の読み取りや添付書類の判断が必要なため、本文では難しめに分類しています。また、相続人申告登記は登記の申請ではなく、相続人からの申出を受けて登記官が職権で所有権の登記に付記する仕組みです(同法76条の3第1項・3項)。共同申請では、相手方である登記義務者の書類・意思・本人確認がそろって初めて申請できるため、段取りの負担が構造的に大きくなります。住宅ローン完済後の抵当権抹消は共同申請ですが、登記義務者である金融機関の側で必要書類が用意されるのが通常のため、実質的な負担が小さくなっています。

登記識別情報――本人確認の仕組み

登記識別情報は、申請人自らが登記名義人となる登記が完了したときに登記所から通知される情報です(同法21条)。共同申請の場合などには、申請人は登記義務者の登記識別情報を申請情報と併せて提供しなければなりません(同法22条本文)。旧不動産登記法の規定により還付または交付された登記済証(いわゆる権利証)を提出して申請がされたときは、登記識別情報が提供されたものとみなして22条本文が適用されます(同法附則7条)。

提供が必要になるのは、共同申請の場合と、政令で列挙された登記(合筆の登記、抵当権の順位変更の登記など。不動産登記令8条1項)の申請です。相続による移転の登記、相続人に対する遺贈の単独申請、住所・氏名の変更登記はこの列挙に含まれておらず、登記識別情報の提供は求められていません。相手方の登記識別情報をそろえる必要がないことも、これらの登記で段取りの負担が小さくなる理由の一つです。

登記識別情報を提供できないとき

登記識別情報を提供できないことに正当な理由がある場合は、提供せずに申請できます(同法22条ただし書)。その場合、次のいずれかの手当てが必要になります。

  • 事前通知:登記官が登記義務者に申請があった旨を通知し、申請の内容が真実であればその旨を申し出るよう求めます。期間内は、申出がない限り登記をすることができません(同法23条1項)。期間は通知の発送日から2週間(登記義務者が外国に住所を有する場合は4週間)です(不動産登記規則70条8項)。登記義務者が自然人の場合、通知は本人限定受取郵便またはこれに準ずる方法で送られます(同条1項1号)。期間内に申出がないと、却下の事由になります(不動産登記法25条10号)
  • 前の住所への通知:所有権に関する登記で、登記義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、登記記録上の前の住所にあてても通知がされます(同法23条2項)
  • 資格者代理人による本人確認情報:登記の申請の代理を業とすることができる代理人が、申請人が登記義務者であることを確認するための情報を提供し、登記官がその内容を相当と認めるときは、事前通知は行われません(同法23条4項1号)。この本人確認情報には、申請人と面談した日時・場所・状況や、提示を受けた本人確認書類の内容などを明らかにする必要があります(不動産登記規則72条1項)
  • 公証人の認証:申請情報(代理人による申請では代理権限を証する情報)を記載した書面等に、公証人から本人確認に必要な認証がされ、登記官がその内容を相当と認めるときも、事前通知は行われません(不動産登記法23条4項2号)

事前通知の方法では、通知の発送から申出までの期間は登記ができないため、代金の支払いと同じ日に名義変更の見通しを立てたい売買の決済とは相性がよくありません。権利証や登記識別情報の所在は、売買や贈与の準備の早い段階で確かめておきたい事項です。

補正と却下

登記官は、管轄違い(同法25条1号)、登記義務者の氏名・住所が登記記録と合致しないとき(同条7号)、申請情報の内容が登記原因証明情報の内容と合致しないとき(同条8号)、提供すべき添付情報が提供されないとき(同条9号)、登録免許税を納付しないとき(同条12号)などに、理由を付した決定で申請を却下しなければなりません(同条柱書)。

ただし、不備が補正できるもので、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは、却下されません(同条ただし書)。補正の期間が定められたときは、その期間内は補正すべき事項の不備を理由に却下することはできません(不動産登記規則60条1項)。補正は、書面申請であれば提出した書面を補正するか補正に係る書面を提出し、電子申請であれば電子情報処理組織を使用して行います(同条2項)。

自分で申請する場合に目を向けておきたいのが7号です。売買や贈与で、登記義務者となる売主・贈与者の住所が登記記録と異なっていると、この事由にあたります。そのため、前提として住所の変更の登記が必要になるのが一般的です。本文で「住所のつながり」が難しさを左右するとしているのは、この点とも関係しています。

登記原因証明情報

権利に関する登記を申請するときは、法令に別段の定めがある場合を除き、登記原因を証する情報(登記原因証明情報)を提供しなければなりません(不動産登記法61条)。その内容と申請情報が食い違うと、前述の却下事由(同法25条8号)にあたります。

どのような情報がこれにあたるかは登記の種類で異なります。

  • 相続による移転の登記:相続を証する市町村長・登記官その他の公務員が職務上作成した情報(戸籍謄本など)と、その他の登記原因を証する情報(不動産登記令別表22項)。遺産分割による場合の遺産分割協議書などが後者にあたります
  • 住所・氏名の変更登記:変更があったことを証する公務員が職務上作成した情報(不動産登記令別表23項)。住民票の写しや戸籍の証明書で足りることが多いのはこのためです
  • 売買・贈与など:実務上は、契約の当事者や目的の不動産、所有権が移転した事実と時期などを記載した書面が作成されることが多く、どの事実をどこまで書けば登記原因を示したことになるかの判断が求められます

公務員が作成した証明書で足りる登記と、当事者が内容を組み立てる必要のある登記とでは、書類づくりの難しさに差が出やすくなります。

添付書面の原本還付

書面で申請した場合、申請人は添付書面の原本の還付を請求できます(不動産登記規則55条1項本文)。還付を求めるときは、原本と相違ない旨を記載した謄本を提出します(同条2項)。還付は登記官の調査完了後で(同条3項)、申出により送付の方法によることもできます(同条6項)。

ただし、一定の印鑑に関する証明書と、その申請のためにのみ作成された委任状その他の書面は還付の対象外です(同条1項ただし書)。また、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面は還付されません(同条5項)。戸籍謄本など、ほかの手続きでも使う書類を添付するときは、還付の請求をするかどうかを申請前に決めておくと手戻りが減ります。

表示に関する登記の審査との違い

表示に関する登記では、登記官は必要があると認めるときに不動産の表示に関する事項を調査でき、不動産の検査や関係者への質問もできます(不動産登記法29条)。申請に係る不動産の表示がこの調査の結果と合致しないことは、却下の事由とされています(同法25条11号)。登記官の調査によって、申請の内容が現地の状況と合っているかまで確かめられることがある点で、書面の整合性が中心になる権利に関する登記とは難しさの性質が異なります。本文のとおり、表示に関する登記を人に頼むときの依頼先は土地家屋調査士です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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