成年後見が終わったら本人の財産はどうなる?──後見人がする「管理の計算」と財産の引渡し(民法870条)

この記事の要点 成年後見人の任務が終わったときは、成年後見人(またはその相続人)が、2か月以内に「管理の計算」をしなければなりません。期間は家庭裁判所が延ばすことができます(民法870条) 管理していた財産を引き継ぐ相手は、終わり方によって変わります。本人が亡くなったときは相続人、後見開始の審判が取り消されたときは本人、辞任・解任で交代するときは後任の成年後見人です 後見監督人がいるときはその立会いが必要で、返す金額には利息が付き、後見に関して生じた債権には時効があります。保佐人・補助人にも同じ規定が準用されています 成年後見は、いつまでも続くとは限りません。そして、成年後見人の任務が終わったときに「預かっていた通帳をそのまま渡せば終わり」というわけではなく、民法は、任務の終わりに「管理の計算」という締めくくりの作業を求めています。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月27日 · ひぐらしさとし

裁判の費用が払えないとき|「訴訟救助」で手数料の支払いを猶予してもらう仕組みと、法テラスの立替えとの違い

この記事の要点 裁判所に納める費用が払えないときは、裁判所に「訴訟上の救助(訴訟救助)」を申し立てる方法がある。認められると、裁判費用などの支払いが猶予される(民事訴訟法82条・83条) 猶予は免除ではない。資力の要件を欠くことがわかれば救助が取り消されて支払いを命じられることがあり、猶予された費用を、負担することとされた相手方から直接取り立てる仕組みもある(同法84条・85条) 法テラスの民事法律扶助は、弁護士・司法書士に支払う報酬などを法テラスが立て替える別の制度。判断するところも、対象となる費用も異なる 「訴えを起こしたいけれど、裁判所に納める費用が用意できない」。そんなときのために、民事訴訟法には、裁判所が費用の支払いを待ってくれる「訴訟上の救助」という制度があります。ただし、結論から言えば、これは払わなくてよくなる制度ではなく、支払いを猶予してもらう制度です。 ...

2026年10月27日 · ひぐらしさとし

「善良な管理者の注意」と「自己の財産におけるのと同一の注意」の違い──相続の条文で読む注意義務の重さ

この記事の要点 民法で、人に注意を求める基準としてよく出てくる言い回しが2つある。「善良な管理者の注意」が重い基準、「自己の財産におけるのと同一の注意」が軽い基準 相続の条文では、相続人が遺産を管理するとき(918条)や相続放棄のあとに財産を保存するとき(940条)に軽い基準が、遺言執行者(1012条3項→644条)には重い基準が使われている 軽い基準には「自己の財産に対するのと同一」「固有財産におけるのと同一」など言い回しの揺れがあるが、どれも「自分(自分の財産)と同一の注意」という同じ形の言葉になっている 民法を読んでいると、「善良な管理者の注意をもって」「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」という決まり文句に出会います。どちらも「きちんと気をつけて扱いなさい」という意味に見えますが、法律の世界では求められる注意の重さが違う2つの基準です。結論から言うと、前者が重い基準、後者が軽い基準です。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

相続登記の遺産分割協議書や遺言書は法務局で見られる?──相続人による「登記簿の附属書類」の閲覧

この記事の要点 相続登記のときに法務局へ出された遺産分割協議書や遺言書は「登記簿の附属書類」として保存されており、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、争いが起きていなくても閲覧を請求できる扱いです(令和5年3月28日民二第537号通達)。 閲覧の請求では、その相続の当事者であることを示す戸籍関係の書類と、本人確認書類を見せます。手数料は1事件に関する書類につき500円です(登記手数料令5条1項)。 申請書と添付書類の保存期間は、受付の日から30年間です(不動産登記規則28条)。ウェブ会議での閲覧が認められる場合もあります。 「祖父が亡くなったとき、どんな遺産分割協議書で父の名義になったのか確かめたい」。こうしたときに使えるのが、法務局に保存されている登記の申請書や添付書類(登記簿の附属書類)の閲覧です。結論から言うと、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、その相続に関する附属書類の閲覧を請求できる扱いになっています。ただし、見られる範囲には限りがあり、手続きにも決まりがあります。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

相続の相談先で別の専門家を紹介されたら──そのまま頼む前に確認しておきたいこと

この記事の要点 別の専門家を紹介されても、紹介を受けるかどうか、誰に頼むかは相談者が決めてよい 頼む前に、なぜその専門家が必要なのか、紹介先が担当する範囲、費用の見積もりを確かめておくと、あとの行き違いを防ぎやすい 紹介料の有無も尋ねてかまわない。司法書士は、依頼者の紹介について対価を受け取ることも支払うことも、倫理上の決まりで禁じられている 相続の相談に行ったら、「この部分は税理士に」「ここから先は弁護士に」「土地の測量は土地家屋調査士に」と、別の専門家を紹介されることがあります。紹介してもらえるのはありがたい一方で、「断ったら悪いのでは」「言われるまま頼んでいいのか」と迷う方もいるかもしれません。結論から言うと、紹介を受けるかどうかは相談者が決めてよいことです。そのうえで、頼む前にいくつか確かめておくと、あとで「思っていたのと違った」となりにくくなります。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

亡くなった人の住民税は誰が払う?──1月1日時点の課税の仕組みと、相続人が納める流れ

この記事の要点 個人の住民税(市町村民税・道府県民税)は、毎年1月1日(賦課期日)に住所がある人に、前年の所得をもとに課税される(地方税法294条1項1号・2項、318条、39条、313条1項) 1月1日に生きていた人がその年の途中で亡くなっても、その年度分の住民税はなくならず、相続人が納める義務を引き継ぐ(同法9条1項)。相続人が複数いれば相続分に応じて分けて負担する(同条2項) 1月1日より前に亡くなった人は、その年の1月1日に住所がないため、その年度分の住民税は課されない仕組みになっている 結論から言うと、亡くなった方の住民税を払うのは相続人です。ただし、どの年度の分を払うことになるかは「1月1日に生きていたかどうか」で決まります。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

限定承認をしたあとの期限──5日以内の官報公告と「2か月以上」の請求期間、清算の順番

この記事の要点 限定承認をした人は、限定承認をした後5日以内に、亡くなった方の債権者などに向けて官報で公告しなければならず、請求を申し出てもらう期間は2か月を下ることができません(民法927条1項・4項) 相続人が複数いる場合は、家庭裁判所が相続人の中から選ぶ「相続財産の清算人」が手続きを進め、この期限は「選任があった後10日以内」に読み替えられます(民法936条) 申出期間が終わるまでは支払いを拒むことができ、終わったあとは債権者に債権額の割合に応じて支払い、遺言でもらう人(受遺者)への支払いはその後です(民法928条・929条・931条) 限定承認は「申述して終わり」ではない 結論からいうと、限定承認は家庭裁判所に申述したところがゴールではなく、その先に数日単位の短い期限で始まる清算手続きが控えています。限定承認の仕組みや、相続人全員で3か月以内に申述するという要件そのものは限定承認の解説記事で整理していますので、ここでは「その後に来る期限」に絞ります。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

準正とは?──戸籍での書かれ方と、相続人の確定で意味を持つ場面

この記事の要点 準正(じゅんせい)は、父に認知された子が、父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する仕組みです(民法789条)。認知の後に父母が婚姻する場合と、婚姻中の父母が認知する場合があります コンピュータ化された戸籍の法定の記載例では、「準正」という見出しではなく、子の身分事項欄に「父母との続柄」の訂正として記録され、訂正前の続柄も【従前の記録】として残ります 現在の法定相続分は嫡出子かどうかで差がないため、準正の有無が相続分に関わるのは、主に平成25年9月4日以前に開始した相続を今あらためて整理する場面です 準正とは──「認知」と「父母の婚姻」がそろったときの効果 結論から言うと、準正とは、婚姻関係にない父母から生まれた子が、父の認知と父母の婚姻がそろうことで、嫡出子(婚姻関係にある父母の子)の身分を取得することをいいます。民法789条は次のように定めています。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

成年後見の「鑑定」とは?──必要になる場合・省略される場合と費用の目安

この記事の要点 後見開始・保佐開始の審判では、家庭裁判所が本人の精神の状況について鑑定をするのが原則。ただし「明らかにその必要がないと認めるとき」は鑑定をしないで審判できる(家事事件手続法第119条第1項・第133条) 補助開始の審判では、条文上は医師その他適当な者の意見を聴くこととされ、裁判所の手引では原則として鑑定によらない扱いと説明されている。ただし必要に応じて鑑定が行われることがある 鑑定の費用は、当事者があらかじめ裁判所に納め、裁判所が金額を決めて鑑定人に支払う仕組み。最高裁判所の統計(令和7年)では、鑑定が行われた事件のうち、鑑定費用が10万円以下のものが約85.8%だった 成年後見の申立てでいう「鑑定」とは、家庭裁判所が専門家(鑑定人)を指定して、本人の精神の状況について判断してもらう手続です。後見と保佐では、法律上は鑑定をするのが原則とされていますが、明らかに必要がないと家庭裁判所が認めるときは省略されます。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

少額訴訟の判決に納得できないとき|控訴はできず「異議」──期限2週間と異議後の審理の流れ

この記事の要点 少額訴訟の判決には控訴できず、不服があるときは判決をした簡易裁判所に「異議」を申し立てる。期限は電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間(民事訴訟法377条・378条1項) 適法な異議があると、訴訟は口頭弁論の終結前の状態に戻り、通常の手続で審理と裁判がやり直される。ただし反訴ができないことなど、一部のルールは引き続き適用される(同法379条) 異議の後に出た判決にも控訴はできず、上級の裁判所に判断を求める道としては、憲法違反を理由とする場合に限って最高裁判所に上告する道が残されているだけ(同法380条) 少額訴訟の判決に納得できない場合、地方裁判所に控訴することはできません(民事訴訟法377条)。用意されているのは、判決をした同じ簡易裁判所に「異議(いぎ)」を申し立てて、通常の手続で審理し直してもらう方法です。通常の判決に対する控訴の仕組みは簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へで整理しましたので、ここでは異議の申立てから、その後の審理と判決までに絞ってご説明します。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし