この記事の要点

  • 不動産の登記記録は「表題部」と「権利部(甲区・乙区)」に分かれており、担当する専門家も制度上分かれている
  • 表題部(土地の所在・地積、建物の種類・構造・床面積など)に関する登記は土地家屋調査士が担当する
  • 権利部(所有権・抵当権などの権利関係)に関する登記は司法書士が担当する
  • 土地の境界(筆界)に関する調査・測量も土地家屋調査士の職務の範囲に含まれる
  • 手続きの中身によって窓口が異なるため、登記簿のどの欄に関する話かを確認すると迷いにくい

「登記」とひとくくりに言っても、実際に手続きを担当する専門家は、内容によって分かれています。この記事では、土地家屋調査士と司法書士がそれぞれどの部分を担っているのか、制度上の分担を整理します。

登記記録は「表題部」と「権利部」に分かれている

不動産(土地・建物)の登記記録は、大きく分けて次の2つの部分でできています。

  • 表題部 … その不動産が「どんなものか」(所在・地番・地目・地積、建物なら種類・構造・床面積など)
  • 権利部 … 「誰のものか」「どんな権利がついているか」(甲区=所有権に関する事項、乙区=抵当権など所有権以外の権利に関する事項)

登記事項証明書(登記簿)に表題部・甲区・乙区がどう並んでいるか、実際の読み方は別の記事登記簿(登記事項証明書)の見方で整理しています。

この「表題部」と「権利部」で、担当する専門家が制度上分かれています。

表題部に関する登記──土地家屋調査士の担当

表題部に関する登記(「表示に関する登記」と呼ばれます)は、土地家屋調査士が担当します。土地家屋調査士法第3条では、他人の依頼を受けて不動産の表示に関する登記につき必要な土地・家屋に関する調査・測量を行うこと、および登記の申請手続きについて代理することなどが、土地家屋調査士の業務として定められています。

たとえば次のような場面が表題部に関する手続きにあたります。

  • 建物を新築したときの「表題登記」(建物の所在・種類・構造・床面積を新たに登記する手続き)
  • 土地を分けたり合わせたりしたときの「分筆・合筆登記」
  • 建物を取り壊したときの「滅失登記」

これらは、実際に現地を調査・測量したうえで登記の内容を確定させる必要があるため、土地家屋調査士が担当します。

権利部に関する登記──司法書士の担当

権利部に関する登記(「権利に関する登記」と呼ばれます)は、司法書士が担当します。司法書士法第3条では、登記または供託に関する手続きについて代理することなどが、司法書士の業務として定められています。

たとえば次のような場面が権利部に関する手続きにあたります。

  • 相続によって不動産の名義を変更する「相続登記」
  • 売買や贈与による所有権の移転登記
  • 住宅ローンを組んだときの抵当権設定登記、完済したときの抹消登記
  • 引っ越しや結婚などで登記簿上の住所・氏名が変わったときの「住所・氏名変更登記」

これらは、当事者間の権利関係を登記に反映させる手続きであるため、司法書士が担当します。なお、住所・氏名変更登記については、2026年(令和8年)4月1日から申請が義務化されており、変更があった日から2年以内に申請しなければならないとされています(不動産登記法第76条の5)。施行日より前に住所等が変わっていて変更登記をしていない場合も対象とされ、2028年(令和10年)3月31日までに申請する必要があるとされています。

境界に関する調査・手続きは土地家屋調査士の領域

土地の境界(筆界)に関する調査・測量、地積測量図の作成といった手続きも、表題部に関する登記に付随する業務として、土地家屋調査士の職務の範囲に含まれます。相続や売却の場面で「隣地との境界がはっきりしない」という事情に直面することは珍しくありませんが、その調査・測量は土地家屋調査士が担う分野です(土地家屋調査士法第3条第1項第1号)。法務局の筆界特定の手続きについての代理も、土地家屋調査士の業務とされています(同項第4号)。

なお、「筆界(登記上の境界)」と「所有権界(実際に所有権が及ぶ範囲の境界)」は法律上別の概念であり、どちらの意味での境界かによって関わる手続きも変わってきます。この違いや、境界がはっきりしない土地を相続・売却する際の流れについては、別の記事境界がはっきりしない土地の相続・売却で詳しく整理していますので、そちらをご覧ください。

まとめ

不動産の登記は、「その不動産がどんなものか」を扱う表題部と、「誰のものか・どんな権利がついているか」を扱う権利部に分かれており、担当する専門家も制度上分かれています。表題部に関する登記(表題登記・分筆合筆登記・境界に関する調査測量など)は土地家屋調査士、権利部に関する登記(相続登記・売買や贈与による移転登記・抵当権の設定や抹消など)は司法書士が担当します。ご自身の手続きがどちらにあたるか迷ったときは、登記簿のどの欄に関わる話かを手がかりにするとわかりやすくなります。個別の手続きについては、表題部に関することは土地家屋調査士に、権利部に関することはお近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 表題登記の費用と、相続登記の費用はどちらに聞けばいい? 表題登記(建物の新築時など)は土地家屋調査士、相続登記や名義変更の登記は司法書士と、担当が分かれているため、費用の見積もりもそれぞれの専門家に確認する必要があります。一つの手続きの中で両方が関係する場合(建物を新築して相続登記もあわせて行う場合など)は、両方の専門家に確認することになります。

Q. 表題登記を放置するとどうなる?期限はある? 建物の新築など、表示に関する登記には申請の期限が定められている場合があります。放置すると、その後の権利関係の登記(売買や相続の際の名義変更など)に支障が生じることもあります。該当する可能性がある場合は、早めに土地家屋調査士や司法書士に相談することをおすすめします。

Q. 自分でどちらに相談すればいいかわからないときは? まず、お手元の登記事項証明書(登記簿)を見て、確認したい内容が表題部に関することか、権利部(甲区・乙区)に関することかを確認すると、相談先の見当がつきやすくなります。判断がつかない場合や、境界の調査と名義変更の両方が関わりそうな場合は、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】表題登記から権利部の登記までの実務上の流れ

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

新築建物を例にした手続きの順番

表題部と権利部は制度上別の登記ですが、実務では1つの不動産をめぐって連続して行われる場面が多くあります。代表例が建物の新築です。

  1. 建物表題登記(表題部)── 建物を新築すると、まず所在・種類・構造・床面積などを新規に登記簿へ載せる「建物表題登記」を行います。不動産登記法上、新築した建物の所有権を取得した者は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請する義務があるとされています(不動産登記法第47条第1項)。現地の調査・測量を踏まえて内容を確定させる手続きのため、土地家屋調査士が担当します。
  2. 所有権保存登記(権利部・甲区)── 表題登記によって不動産登記記録そのものが作られたあと、その不動産に初めて所有権の登記をするのが「所有権保存登記」です。不動産登記法上、表題部所有者やその相続人などが申請できる登記として位置づけられており(不動産登記法第74条第1項)、司法書士が担当します。住宅ローンを利用する場合は、この所有権保存登記とあわせて抵当権設定登記(乙区)も行われるのが一般的です。

このように、原則として、表題部の登記が先に行われて初めて、その不動産についての権利部の登記(所有権保存登記など)ができるという順序関係があります。表題部が整っていない不動産(未登記建物など)は、まず表題登記を済ませるのが原則です。ただし、確定判決によって所有権を有することが確認された場合や、収用によって所有権を取得した場合など、表題登記がないまま所有権保存登記を申請でき、その際は登記官が不動産の表示に関する事項(法務省令で定めるもの)をあわせて登記するとされている例外もあります(不動産登記法第74条第1項第2号・第3号、第75条)。

筆界特定制度と所有権界の違い(概要)

本文でも触れたとおり、土地の境界には「筆界」と「所有権界」という別の概念があります。

  • 筆界 … 登記簿上の土地(一筆の土地)の範囲を区画する線として、公法上定められている境界
  • 所有権界 … 当事者間の合意や取得の経緯によって実際に所有権が及んでいる範囲の境界(筆界と一致しないこともあります)

筆界について当事者間で認識が食い違い、話し合いによる確認が難しい場合に利用できる制度として「筆界特定制度」があります。法務局(筆界特定登記官)に筆界特定の申請を行うと、筆界特定登記官が、外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえたうえで、筆界の位置を特定する手続きです(不動産登記法第131条・第143条)。裁判(境界確定訴訟)とは別の、法務局での手続きであり、法務省は、裁判よりも迅速にトラブルを解決でき、費用負担も少なくてすむ点をこの制度の利点として挙げています。なお、筆界特定の結果に納得できないときは、後から裁判で争うこともできるとされています。

ただし、筆界特定制度はあくまで登記上の境界(筆界)を特定する手続きであり、所有権がどこまで及ぶか(所有権界)そのものを確定するものではない点に注意が必要です。所有権界について争いがある場合は、話し合いや民事訴訟など別の手段によることになります。筆界特定制度の利用場面や、境界がはっきりしない土地を相続・売却する際の具体的な流れについては、別記事境界がはっきりしない土地の相続・売却で詳しく整理していますので、そちらをご覧ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい