登記簿の「信託目録」の読み方──家族信託された不動産を売る・相続するときに見る欄

この記事の要点 信託目録とは、信託された不動産について、委託者・受託者・受益者や、信託の目的・管理方法・終了の事由などを記録した登記簿の一部です 登記事項証明書は、請求のときに信託目録の証明を求めないと、信託目録の記載が省かれます(手数料は窓口・郵送の書面請求で1通600円) 受託者から不動産を買う・担保に取るときは、受託者の処分の権限にかかわる定め(信託財産の管理方法・その他の信託の条項)を見ます 受益者や委託者が亡くなったときは、信託の終了の事由・受益者の定め・残余財産を受け取る人の定めを順に見ます 読み方に迷うときや、目録の記録が今の状況と合わないときは、お近くの司法書士に確認しましょう 信託目録とは、家族信託などで信託財産になった不動産について、「誰が、誰のために、どんな目的で、どう管理し、いつ終わるのか」を記録した、登記簿の一部です。甲区(所有者の欄)を見ると名義人は受託者になっていて、その名義が信託によるものであることは甲区の記録から分かりますが、信託の中身は、信託目録を見て初めて分かります。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

登記の「更正登記」とは──名前の字・住所・持分を間違えて登記してしまったときの直し方

この記事の要点 更正登記(こうせいとうき)とは、登記した時点ですでにあった誤りや書き漏らしを直す登記です。登記した後に事実が変わったときの「変更登記」とは区別されます。 名前の字や住所の誤りは、登記名義人(登記簿に所有者などとして載っている人)が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。誤りがあったことを示す住民票の写しなどの公的な書類を添付します。 持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人が共同で申請するのが原則です(同法60条)。その不動産に抵当権を持つ銀行など「登記上の利害関係を有する第三者」がいるときは、その承諾が必要になります(同法66条、不動産登記令 別表25項。詳しくは後半の【さらに深掘り】で補足します)。 名前・住所の更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。持分など権利の内容の更正は、税額を申請前に確認してください。 土地の面積(地積)や建物の床面積など「表示の登記」の誤りを直すのは、土地家屋調査士の業務です。 登記簿を見たら、名前の漢字が違っていた、住所の番地が間違っていた、夫婦の持分が契約と違う割合で載っていた──このように、登記した時点から内容に誤りがあったときに使うのが「更正登記」です。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

土地を先に買って家を建てる──土地の決済・つなぎ融資・建物完成後の登記の流れ(表題登記は調査士へ)

この記事の要点 土地を買ってから家を建てる場合、登記は時期が2つに分かれます。土地の決済のときの「所有権移転登記」と、建物が完成したあとの「表題登記→所有権保存登記→抵当権設定登記」です。 建物の表題登記は、建物の所有権を取得した日から1か月以内に申請する義務があります(不動産登記法47条1項)。この登記の申請代理は土地家屋調査士の業務で、司法書士は扱えません。 土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は原則2%ですが、2029年(令和11年)3月31日までは1.5%に軽減されています(租税特別措置法72条1項)。 つなぎ融資は、住宅ローンが実行されるまでの支払いに備える借入れです。金利・手数料・審査などの商品の内容は金融機関に確認してください。 土地の決済の前に、建物完成までの段取り(融資の実行時期と登記の順番)を金融機関・司法書士・土地家屋調査士と共有しておくと安心です。 土地を探して購入し、そこに注文住宅を建てる──いわゆる「土地から家づくり」では、土地を買う日と家が完成する日のあいだに時間があきます。そのため登記も1回では終わらず、時期を分けて行うことになります。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

不動産登記の全体マップ──場面別(買う・借りる・返し終わる・相続する・手放す)

この記事の要点 不動産の登記は、種類の名前から探すより「いまどんな場面か」から探すと迷いにくくなります。この記事では、買う・借りる・返し終わる・相続する・贈与や財産分与・手放す・住所や氏名が変わった、の場面別に並べています 建物の新築・取壊し、土地の地目変更・分筆など、土地や建物の形や使い方を記録する「表示に関する登記」は土地家屋調査士の業務です。名義や抵当権を記録する「権利に関する登記」は司法書士の分野です(どちらも、所有者本人が自分で申請することもできます) 申請の期限があるのは主に、相続登記(原則3年以内)、住所・氏名の変更登記(2年以内)、新築・取壊しなどの表示に関する登記(1か月以内)です 自分の場面を下の一覧で見つけたら、リンク先の詳しい記事へ進んでください 不動産の登記にはいくつもの種類がありますが、ふだんの暮らしで出てくる場面はある程度決まっています。この記事は、不動産登記に関する解説記事をまとめて案内する場面別の目次です。制度のしくみはそれぞれの記事にゆずり、ここでは「どの場面で、どの登記が出てきて、どの記事を読めばよいか」だけを並べます。本記事は、執筆時点(2026年09月)の法令に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月29日 · ひぐらしさとし

自分でできる登記・専門家に頼んだほうがいい登記──難易度マップ

この記事の要点 登記は、制度上は本人が自分で申請できます。難しさを分けるのは主に「書類が定型か」「相手方や関係者が多いか」「税金・測量・争いが絡むか」の3点です 自分でも取り組みやすい目安は、住宅ローン完済後の抵当権抹消、住所・氏名の変更登記、相続人申告登記など。専門家向きの目安は、売買の決済、住宅ローンの設定、財産分与、休眠担保権の抹消、家族信託など 建物の滅失・表題登記・分筆・地積更正などの「表示に関する登記」は土地家屋調査士の業務です。人に頼むときの依頼先は土地家屋調査士になります ここでの難易度はあくまで一般的な目安で、同じ種類の登記でも個別の事情で大きく変わります。まずは下の一覧で自分の登記の位置を確かめ、詳しい記事へ進んでください 「この登記、自分でできるだろうか」と迷ったときに、どの登記が比較的取り組みやすく、どの登記に専門知識や段取りが必要になりやすいのかを一覧にしたのがこの記事です。制度の説明はそれぞれの詳しい記事に任せ、ここでは「どの記事を読めばよいか」の目次に徹します。 ...

2026年9月28日 · ひぐらしさとし

表題登記・表題部の変更は土地家屋調査士へ──権利の登記との分担マップ

この記事の要点 建物を新築した・増築した・取り壊した、土地の地目が変わった・土地を分けたなど、土地や建物の「物理的な状態」が変わる場面の登記(表示に関する登記)は、土地家屋調査士が申請代理を担う分野です 新築・増築・取壊し・地目変更などには、1か月以内に申請する義務があります(新築は所有権を取得した日から:不動産登記法47条1項。増築・取壊し・地目変更は変更や滅失があった日から:同法51条1項・57条・37条1項)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます(同法164条1項) 名義を記録する「権利の登記」(所有権保存・所有権移転・抵当権設定など)は司法書士の分野。新築や分筆のあとに権利の登記が続く場面では、両方の資格者が連携して進めることが多くあります 表示に関する登記も、所有者本人が自分で申請することはできます 下の一覧表で自分の場面を探し、詳しくはそれぞれの記事へ進んでください 家を建てた、古い家を壊した、畑を駐車場にした──こうした場面で「登記が必要らしいけれど、誰に頼めばいいのか」と迷ったときは、まず土地家屋調査士、名義の話が絡むところは司法書士と覚えておくと整理しやすくなります。 ...

2026年9月23日 · ひぐらしさとし

相続したマンションを売る・貸す・手放す──戸建てと違う判断ポイント

この記事の要点 マンション(区分所有建物)は、土地の権利(敷地権)と建物を切り離して売ったり分けたりすることができない 「貸す」場合も、管理規約による用途制限や管理組合への届出が絡み、戸建ての賃貸より制約が多い 名義を持っている限り、使っていなくても管理費・修繕積立金の負担は続く 売却の具体的な流れや、相続放棄・国庫帰属といった「手放す」ための制度そのものは、それぞれ別の記事で解説している 親から相続したマンションを「売るか、貸すか、それとも手放すか」を考えるとき、一戸建ての実家を相続した場合と同じ感覚で判断すると、思わぬところでつまずくことがあります。理由は単純で、マンションの一室(区分所有建物)は、一戸建てとは登記の仕組みそのものが違うためです。 ...

2026年9月17日 · ひぐらしさとし

分筆・合筆とは──土地を分ける・まとめる登記のきほん

この記事の要点 分筆=1筆の土地を登記簿上、複数の土地に分ける登記。合筆=複数の土地を登記簿上、1筆にまとめる登記 合筆には条件があり、地目や所有者が違う土地、抵当権などが付いている土地は原則として合筆できない(不動産登記法41条) 分筆をするには測量が前提になり、登記の申請にあわせて地積測量図を提出する必要がある 分筆・合筆の登記手続きを代理して行うのは、実務上、土地家屋調査士。司法書士はこの手続きの代理を行わない 分筆・合筆は土地家屋調査士へ、名義変更など権利部の登記やその他の不動産登記のご相談はお近くの司法書士へ 「1筆の土地を2つに分けて、子どもたちにそれぞれ相続させたい」「隣り合う2筆の土地をまとめて1つの敷地として使いたい」――相続や土地活用の場面で、こうした希望を実現するために登場するのが「分筆(ぶんぴつ)」と「合筆(ごうひつ)」という登記です。どちらも名前は似ていますが、やることは正反対です。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

登記簿の面積と実測が違う──「縄伸び・縄縮み」と地積更正登記

この記事の要点 登記簿に記載された土地の面積(地積)と、実際に測った面積(実測)が食い違うことは珍しくない 主な原因は明治時代の地租改正までさかのぼる測量誤差で、こうした食い違いは「縄伸び・縄縮み」と呼ばれる 登記簿の地積を実測に合わせて直す手続きが「地積更正登記」で、土地家屋調査士が担当する分野 地積測量図が法務局に備え付けられているかどうかで、売買時の実務対応が変わる 地積更正登記の相談先は土地家屋調査士。登記や名義に関わるその他の相談は、お近くの司法書士へ 登記簿(登記事項証明書)に書かれている土地の面積と、実際にメジャーや測量機器で測った面積が一致しない――このようなケースは、決して珍しいものではありません。原因の多くは、今から100年以上前の測量にさかのぼります。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

土地家屋調査士と司法書士──同じ『登記』でも表題部と権利部で分かれる

この記事の要点 不動産の登記記録は「表題部」と「権利部(甲区・乙区)」に分かれており、担当する専門家も制度上分かれている 表題部(土地の所在・地積、建物の種類・構造・床面積など)に関する登記は土地家屋調査士が担当する 権利部(所有権・抵当権などの権利関係)に関する登記は司法書士が担当する 土地の境界(筆界)に関する調査・測量も土地家屋調査士の職務の範囲に含まれる 手続きの中身によって窓口が異なるため、登記簿のどの欄に関する話かを確認すると迷いにくい 「登記」とひとくくりに言っても、実際に手続きを担当する専門家は、内容によって分かれています。この記事では、土地家屋調査士と司法書士がそれぞれどの部分を担っているのか、制度上の分担を整理します。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし