裁判の途中で示談がまとまったら|訴訟上の和解(裁判上の和解)の効力の基礎

この記事の要点 訴訟が続いている途中でも、裁判所は当事者に和解を試みることができ、双方が合意すれば「訴訟上の和解」(裁判上の和解)が成立する 成立した和解は裁判所書記官が作成する電子調書に記録され、その記録は確定判決と同一の効力を持ち、相手が守らなければ強制執行に進める根拠(債務名義)になる 訴えを起こす前に合意内容を固めておく「即決和解」とは、成立する場面(訴訟の途中か、訴え提起前か)が異なる別の制度 訴訟を起こしても、判決まで争い抜く事件ばかりではありません。審理が進む途中で当事者双方の言い分が歩み寄り、話し合いで決着がつくことも少なくありません。このように、訴訟が裁判所に係属している間に当事者双方の合意によって手続きを終わらせる仕組みが「訴訟上の和解」(裁判上の和解)です。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし

訴訟で勝つ前に相手の財産を凍結する|仮差押え(民事保全)の手続きと担保の仕組み

この記事の要点 仮差押えは、訴訟や支払督促の決着がつく前に、相手の財産を勝手に処分できない状態にしておく民事保全法上の手続き 申立てには「被保全権利」と「保全の必要性」の疎明に加えて、原則として担保(保証金)の提供が必要になる 仮差押えだけでは債権は確定しないため、別途、本案となる訴訟や支払督促を起こす必要がある 貸したお金を返してもらうために訴訟や支払督促の手続きを起こしても、判決が確定するまでには一定の時間がかかります。その間に相手が不動産を売ってしまったり、預金口座からお金を引き出してしまったりすると、せっかく勝訴しても現実には回収できない、ということが起こり得ます。こうした事態を防ぐために使われるのが「仮差押え」(かりさしおさえ)という手続きです。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし

判決や支払督促で勝っても払ってもらえないとき|財産開示手続と第三者からの情報取得手続の基礎

この記事の要点 判決や支払督促などで「勝っても」、裁判所が自動的に相手の財産を探して回収してくれるわけではありません 相手の財産が分からないときのために、裁判所を通じて財産を調べる「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」という制度があります(民事執行法196条以下) どちらも窓口は地方裁判所です。このうち財産開示手続では、債務者が正当な理由なく出頭を拒んだり嘘の陳述をしたりすると刑事罰の対象になります 執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

未払いの給料を取り戻すには|賃金請求で少額訴訟・支払督促を使うときの基礎知識

会社を辞めたのに最後の給料が振り込まれない、残業代の一部が支払われていない――こうした「賃金(ちんぎん・給料や残業代のこと)」の未払いも、貸したお金や敷金と同じく「金銭を請求する権利」の一つであり、少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きの対象になり得ます。この記事では、賃金請求という場面に的をしぼって、どの手続きが向いているかの考え方を整理します。 ...

2026年9月1日 · ひぐらしさとし

古い借金や未払い代金の請求が届いたら|『時効の援用』とは──時効は自動では成立しない

この記事の要点 消滅時効は、期間が過ぎれば自動的にお金の支払い義務が消える制度ではありません。民法145条により、当事者が「援用」しなければ、裁判所は時効を理由とする裁判ができません 権利を「承認」すると、時効はその時から新たに進行し直します(民法152条1項)。援用と承認は正反対の方向に働くため、どちらに当たる行動かを知っておくことが大切です 個別の請求にどう対応するかの判断は、この記事では扱いません。手続きの仕組みの一般解説です 古い借金や未払い代金の請求が届いたとき、「時効だからもう関係ない」と考えて放置してよいかというと、そうではありません。結論から言うと、消滅時効は期間が過ぎただけでは効力が生じず、時効の利益を受ける側が「援用(えんよう)」という主張をして初めて意味を持ちます。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

少額訴訟で勝ったあと、お金を回収するには|少額訴訟債権執行の基礎

この記事の要点 少額訴訟で勝っても、裁判所が自動的に相手からお金を取り立ててくれるわけではありません。回収するには、あらためて強制執行を申し立てる必要があります 少額訴訟の判決や和解の調書をもとに預金・給料などの「金銭債権」を差し押さえる場合には、簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる「少額訴訟債権執行」という手続きが用意されています(民事執行法167条の2) 対象は金銭債権に限られます。不動産や動産を差し押さえる手続きは地方裁判所・執行官の担当となり、司法書士が代理できる範囲からは外れます 以下は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

示談はできているのに不安が残るとき|即決和解(訴え提起前の和解)の基礎知識

この記事の要点 当事者どうしで話し合いがつき「分割で返す」等の約束はできていても、口約束や私文書のままでは相手が守らない場合の備えが弱い 簡易裁判所の「即決和解(訴え提起前の和解)」を使うと、合意内容を裁判所の調書に残すことができる 和解調書は確定判決と同じ効力を持ち、これを通じて強制執行の基礎となる文書(債務名義)になるため、相手が約束を守らなかったときに改めて訴訟を起こす必要がない 本文 貸したお金や未払いの代金について、相手との間で「分割で返す」「いつまでに支払う」という合意(示談)自体はできている――というケースは少なくありません。ただし、その合意を口約束や当事者間の合意書だけにとどめている場合、相手が約束を守らなかったときにどうするかという不安が残ります。 ...

2026年8月20日 · ひぐらしさとし

訴状が届いたら|答弁書を出さないとどうなるか──陳述の擬制と自白の擬制の仕組み

この記事の要点 訴状には「当事者及び法定代理人」「請求の趣旨及び原因」を記載しなければならず(民事訴訟法134条2項)、答弁書はこれに対する被告の言い分を記載する準備書面です(同161条) 答弁書を提出しておけば、期日に出頭しなくても、裁判所はその内容を陳述したものとみなして手続きを進めることができるとされています(同158条)。簡易裁判所の訴訟手続では、この扱いが続行の期日にも準用されます(同277条) 答弁書も出さず、期日にも出頭しないと、原告の主張事実を争わなかったものとみなされ(自白の擬制、同159条1項・3項)、原告の請求どおりの判決につながりやすくなります これまでの記事では、お金を貸した側・請求する側の視点で手続きを整理してきました。今回は逆に、簡易裁判所から訴状が届いた側(被告)が最初にすべきことに絞って、答弁書の位置づけを整理します。 ...

2026年8月16日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所はどこに申し立てる?|被告の住所地・義務履行地で決まる土地管轄の基本

この記事の要点 「どこの裁判所に出すか」は土地管轄の問題で、「いくらまでが簡易裁判所の担当か」という事物管轄とは別の物差しです 訴えの原則は、被告(訴えられる側)の住所などで決まる普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(民事訴訟法4条) 財産権上の訴えは義務履行地に、不動産に関する訴えは不動産の所在地にも起こせます(同5条1号・12号)。管轄を誤って出しても、原則は却下ではなく管轄裁判所への移送です(同16条1項) 訴えを起こすとき、書類をどこに出すかは、2つの物差しの組み合わせで決まります。1つは「どの種類の裁判所か」(事物管轄)、もう1つは「全国のどの地の裁判所か」(土地管轄)です。この記事で扱うのは後者の土地管轄です。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

裁判所に納める費用はいくら|訴え提起手数料と予納郵便切手の基礎──令和8年5月21日の改正で変わった点

この記事の要点 裁判所に納めるお金は、もともと「申立ての手数料」と「郵便料金にあてるための費用(予納郵便切手)」の2本立てだった ただし令和8年(2026年)5月21日施行の改正により、民事訴訟の訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、郵便費用が申立手数料に一本化され、郵便切手の予納は不要になった。手数料の納付方法も、これらについては原則として現金納付に変わっている 民事調停や家庭裁判所の手続などはこの改正の対象外で、従来どおり手数料は収入印紙、郵便料は予納が必要。予納する郵便切手の額や組合せは裁判所ごとに異なるため、必ず申立先の裁判所の案内で確認する必要がある 手数料の額は民事訴訟費用等に関する法律の別表で、請求する金額(訴額)に応じて決まる。収入印紙は納付の方法であって、契約書に貼る印紙税とは別の話 裁判所を使う手続きでは、申立ての際に一定のお金を納めることになっています。「印紙はいくら貼るのか」「切手も要るのか」は、実際に申立書を書き始めてから戸惑いやすいところです。ここでは、その基本的な仕組みを整理します。 ...

2026年8月8日 · ひぐらしさとし