この記事の要点

  • 裁判所に納めるお金は、もともと「申立ての手数料」と「郵便料金にあてるための費用(予納郵便切手)」の2本立てだった
  • ただし令和8年(2026年)5月21日施行の改正により、民事訴訟の訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、郵便費用が申立手数料に一本化され、郵便切手の予納は不要になった。手数料の納付方法も、これらについては原則として現金納付に変わっている
  • 民事調停や家庭裁判所の手続などはこの改正の対象外で、従来どおり手数料は収入印紙、郵便料は予納が必要。予納する郵便切手の額や組合せは裁判所ごとに異なるため、必ず申立先の裁判所の案内で確認する必要がある
  • 手数料の額は民事訴訟費用等に関する法律の別表で、請求する金額(訴額)に応じて決まる。収入印紙は納付の方法であって、契約書に貼る印紙税とは別の話

裁判所を使う手続きでは、申立ての際に一定のお金を納めることになっています。「印紙はいくら貼るのか」「切手も要るのか」は、実際に申立書を書き始めてから戸惑いやすいところです。ここでは、その基本的な仕組みを整理します。

これは執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。特定の事案について、どの手続きを選ぶべきか、費用を回収できるかといった見通しはここでは扱いません。

裁判所に納めるお金は、もともと2本立て

ひとつは、申立てそのものにかかる手数料です。訴えの提起、支払督促の申立て、民事調停の申立てなど、申立ての種類ごとに額が定められています(民事訴訟費用等に関する法律3条1項、別表第一)。ただし、このうち民事訴訟の訴えの提起や支払督促の申立てなどについては、後述の改正により、別表第一ではなく別表第二によることとされました(同条2項)。

もうひとつは、裁判所が訴状などを相手方に送るための郵便料金にあてるための費用です。この費用は当事者が納めるものとされており(同法11条1項1号)、裁判所は、金銭に代えて郵便切手などで予納させることができるとされています(同法13条)。これが実務でいう「予納郵券(よのうゆうけん)」「予納郵便切手」です。

ただし、この2本立ての形は、令和8年(2026年)5月21日の改正により、手続によって変わりました。まずそこから整理します。

令和8年5月21日から、民事訴訟では郵便費用が手数料に一本化された

同日、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)による改正民事訴訟法と、これと同時に施行された改正後の民事訴訟費用等に関する法律(以下、裁判所の呼び方にならって「改正費用法」といいます)が施行され、民事訴訟手続のデジタル化が始まりました。裁判所のホームページは、費用の面での変更点を次のように説明しています。

これまでは申立手数料とは別に、送達のための郵便費用をあらかじめ納付する必要がありましたが、改正費用法の下では、申立手数料に一本化されたため、郵便費用を納付する必要はなくなります。

——裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」(確認日:2026年08月07日)

条文の仕組みはこうなっています。改正費用法3条2項は、電子情報処理組織を使用する方法(オンライン)で行うことができるものとされている申立てのうち、別表第二に掲げるものを「特定申立て」と定めました。民事訴訟の訴えの提起や支払督促の申立ては、この特定申立てにあたります。そして同法11条1項ただし書は、特定申立てに係る手続においては、13条の料金(郵便料金)にあてるための費用を納めることを要しない、と定めています。予納郵便切手が不要になるのは、この条文によるものです。

ここで押さえておきたいのは、「特定申立て」は申立ての種類を指す言葉であって、実際にオンラインで申し立てた場合だけを指すわけではないという点です。書面(紙)で訴えを提起した場合も、その申立ては特定申立てにあたり、郵便費用の予納は不要になります。この読み方の手がかりは条文自体にあります。3条2項が、実際に電子的な方法で行った申立てではなく「電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとされている申立て」という書き方をしていること、後述する別表第二の一の項が書面で申し立てる場合の額を本則として定め、オンラインの場合をかっこ書きで別に定めていること、そして同法8条1項ただし書が、特定申立てを「書面をもつてすることができる場合」があることを前提に置いていることです。書面での申立て自体は、これまでどおり可能です(裁判所の案内によれば、弁護士などの訴訟代理人等はオンラインでの提出が義務づけられていますが、代理人を立てない方は紙の書面でも提出できます)。もっとも、この仕組みは令和8年5月21日に施行されたばかりです。実際の取扱いは、申立先の裁判所の案内でご確認ください。

他方で、郵便費用の予納が不要になるのは、別表第二に掲げられた特定申立てに係る手続に限られます。民事調停の申立てや家庭裁判所の手続などは別表第一のままで、後述のとおり、従来どおり郵便料(郵便切手)の予納が必要です。

手数料は「訴額」で決まる

訴えの提起の手数料は、請求する金額、すなわち訴訟の目的の価額(訴額)に応じて決まります。手数料額の算出の基礎とされる訴額は、民事訴訟法8条1項および9条の規定により算定するとされています(民事訴訟費用等に関する法律4条1項)。民事訴訟法8条1項は、その価額を「訴えで主張する利益」によって算定すると定めています。

なお、財産権上の請求でない請求に係る訴えや、財産権上の請求であっても訴額の算定が極めて困難なものについては、訴額は160万円とみなされます(民事訴訟費用等に関する法律4条2項)。訴額が140万円を超えるかどうかは、簡易裁判所の管轄や司法書士が代理できる範囲に関わる別の論点で、その数え方は認定司法書士に頼める「140万円以下」とは何の金額?で扱っています。

裁判所が公表している「手数料額早見表」(確認日:2026年08月07日)によると、令和8年5月21日以後に提起された民事訴訟(および行政訴訟)の訴えの提起の手数料は次のようになっています。

訴額 書面で申し立てる場合 電子申立ての場合
10万円まで 3,500円 2,400円
60万円まで 8,500円 7,400円
100万円まで 12,500円 11,400円
140万円まで 14,500円 13,400円

この額の中身は、改正費用法の別表第二の一の項を見るとわかります。同項は、手数料をの合算額と定めています。イは訴額に応じた額で、訴額100万円までの部分はその価額10万円までごとに1,000円です。ロは**2,500円(オンラインで申し立てる場合は1,400円)**という定額分です。訴額10万円の請求なら、1,000円+2,500円=3,500円、オンラインなら1,000円+1,400円=2,400円となります。このロが、従来は別に予納していた郵便費用にあたる部分です。

被告が2名以上の場合は、被告の数から1を減じた数に2,000円を乗じて得た額を加算します(同項ロのただし書。早見表の注記も同じ内容です)。送る相手が増えれば郵便費用も増えることに対応した加算と考えられます。

なお、早見表では人事訴訟(離婚訴訟など)は別の欄になっており、こちらはこの定額分の上乗せがない額です。人事訴訟や家庭裁判所の手続は、今回の改正の対象に含まれていないためです。

また、令和8年5月21日より前に訴えが提起された事件は、従前の取扱いのままです(早見表はこれを「旧法適用事件」と呼んでいます)。裁判所のホームページにも、訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、令和8年5月21日に施行された改正民事訴訟法が適用される事件かどうかによって手数料額が異なる、と明記されています。

**手数料の額や取扱いは法改正によって変わります。**上記はあくまで確認日時点で公表されていた額であり、実際に申し立てるときは、必ず申立先の裁判所の最新の案内で確認してください。

収入印紙は「納め方」であって、印紙税ではない

手数料の納め方は、申立ての種類によって分かれます。

民事訴訟費用等に関する法律8条2項は、次に述べる同条1項の手数料以外の手数料について、申立書に収入印紙を貼って納めることを原則としています。民事調停の申立てなど、別表第一による申立てはこちらです。

これに対し、同条1項は、特定申立て(前述のとおり、民事訴訟の訴えの提起などがこれにあたります)の手数料は、最高裁判所規則で定めるところにより現金をもって納めなければならない、と定めています。申立てを書面ですることができる場合であって、やむを得ない事由があるときに限り、申立書に収入印紙を貼って納めることができる、という例外が置かれています(同項ただし書)。裁判所のホームページも、訴えの提起等のために必要な申立手数料について、これまでは収入印紙を訴状などに貼付して納付する必要があったが、改正費用法の下では原則としてペイジーを利用して現金で納付することになる、と説明しています(確認日:2026年08月07日)。

つまり、令和8年5月21日以後に提起する民事訴訟については、「訴状に収入印紙を貼る」という従来のイメージがそのままではあてはまりません。実際にどう納めるかは、申立先の裁判所の案内で確認してください。

ここで混同されやすいのが、契約書などに貼る印紙税です。印紙税は印紙税法にもとづく税金であり、裁判所に納める手数料とはまったく別の制度です。裁判所の手数料の場合、収入印紙はあくまで「手数料の納付方法」にすぎず、税金を納めているわけではありません。不動産の売買契約書などにかかる印紙税については、不動産売買と印紙税の基礎で別に扱っています。同じ「印紙」でも根拠となる法律も性質も異なる、という点を押さえておくと整理しやすくなります。

予納郵便切手が今も必要な手続では、裁判所ごとに内容が違う

前述のとおり、民事訴訟の訴えの提起や支払督促の申立てでは、郵便費用の予納は不要になりました。しかし、民事調停の申立て、家庭裁判所の手続、民事執行・民事保全の申立てなど、これに含まれない手続では、引き続き郵便料(郵便切手)の予納が必要です。裁判所のホームページの民事調停の案内にも、郵便料は裁判所ごとに異なること、郵便料は保管金として納付することができ、郵便切手により納付することも可能であることが記載されています(確認日:2026年08月07日)。

こうした手続では、予納する郵便切手は、「合計いくら分」だけでなく、「何円切手を何枚」という組合せまで裁判所ごとに定められているのが通常です。全国一律の決まりがあるわけではなく、同じ簡易裁判所の手続きでも庁によって指定内容が異なります。手続きの種類や当事者の人数によっても変わります。

したがって、切手の内訳は「一般的にはこの組合せ」と決め打ちできるものではありません。**必ず申立先の裁判所の公式案内で確認してください。**多くの裁判所が、ホームページや窓口で手続きごとの一覧を用意しています。

なお、使われずに残った予納分の取扱いについても各裁判所の案内に従うことになります。また、令和8年5月21日より前に提起された民事訴訟については、従前どおり予納した郵便切手が使われます。

「訴訟費用は敗訴者負担」の読み方

民事訴訟法61条は「訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする」と定めています。ただし、この一文だけを読んで「勝てばかかった費用は戻ってくる」と理解するのは正確ではありません。次の2点に注意が必要です。

**第一に、ここでいう訴訟費用に、自分で依頼した代理人への報酬は原則として含まれません。**訴訟費用の範囲は民事訴訟費用等に関する法律2条が各号に掲げるものに限っており、代理人について挙げられているのは旅費・日当・宿泊料です(同条5号)。弁護士報酬が含まれるのは、裁判所が選任を命じた場合に当事者が選任した弁護士や、裁判所が選任した弁護士に支払った報酬など、限られた場合です(同条10号)。

**第二に、誰がどれだけ負担するかは、裁判所が事件ごとに定めます。**一部敗訴の場合の各当事者の負担は裁判所の裁量で定められ、事情により一方に全部を負担させることもできるとされています(民事訴訟法64条)。全部勝訴でなければ全額が相手方の負担になるとは限りません。さらに、負担の額そのものは判決で自動的に確定するわけではなく、負担の裁判が執行力を生じた後に、申立てによって第一審裁判所の裁判所書記官が定める仕組みになっています(同法71条1項)。この申立ては、訴訟費用の負担の裁判が確定した日から10年以内にしなければなりません(同条2項)。

つまり「敗訴者負担」は、納めた費用が当然に全額戻ってくることを意味する制度ではない、ということです。

まとめ

裁判所に納めるお金は、もともと訴額に応じて決まる申立ての手数料と、送達のための郵便料金にあてる費用の2本立てでした。ただし令和8年5月21日施行の改正により、民事訴訟の訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、郵便費用が申立手数料に一本化されて予納郵便切手が不要になり、納付方法も原則として現金(ペイジー)によることとされました。他方、民事調停や家庭裁判所の手続などはこの改正の対象外で、従来どおり手数料は収入印紙、郵便料は予納が必要であり、切手の額や組合せは裁判所ごとに異なります。収入印紙は納付方法であって印紙税とは別の制度です。額も取扱いも法改正で変わるため、申立先の裁判所の最新の案内で確認することが欠かせません。また「訴訟費用は敗訴者負担」といっても、代理人報酬は原則として含まれず、負担割合も裁判所が事件ごとに定めます。具体的な手続きの選び方や費用の見積もりについては、お近くの司法書士(請求額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。

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