この記事の要点

  • 民事調停は、裁判官と調停委員による「調停委員会」が間に入り、話し合いで紛争の解決を図る簡易裁判所の手続き
  • 合意が成立して調書に記載されると、判決と同じように強制執行の根拠になる効力を持つ
  • 合意ができなくても「調停に代わる決定」という仕組みがあり、異議が出なければ確定するが、異議が出ると効力を失う

これまでの記事では、金銭トラブルの解決手段として支払督促・少額訴訟を単独で取り上げてきました。今回は、話し合いによる解決を図る「民事調停」そのものの仕組みに絞って整理します。

これは執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でこの手続きが向いているかどうかの判断はここでは扱いません。

話し合いによる解決を目指す手続き

民事調停法1条は、この法律の目的を「民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ること」と定めています。判決のように白黒をつけるのではなく、当事者双方が譲り合いながら、実情に合った解決を目指す点が特徴です。同じ簡易裁判所を使う手続きでも、少額訴訟支払督促が最終的に判決や強制執行を見据えた手続きであるのに対し、民事調停は当事者の合意を土台とする点で性質が異なります。

申立ては、民事に関して紛争が生じたときに当事者ができます(民事調停法2条)。管轄は、原則として相手方の住所・居所・営業所等の所在地を管轄する簡易裁判所で、当事者が合意すればほかの簡易裁判所や地方裁判所を管轄として選ぶこともできます(同法3条)。

調停委員会が間に入る

調停は原則として、裁判官(または民事調停官)と2人以上の民事調停委員で構成される「調停委員会」で行われ、当事者双方から個別に事情を聴きながら合意点を探ります(民事調停法5条1項本文、6条)。裁判所が相当と認めるときは裁判官だけで調停を行うこともできますが、当事者から申立てがあれば調停委員会で行わなければならないとされています(同法5条1項ただし書・2項)。手続きの期日には事件の関係人が呼び出されますが、正当な理由なく呼出しに応じない場合、5万円以下の過料に処せられる規定もあります(民事調停法34条)。話し合いとはいえ、出頭には一定の強制力が伴う仕組みになっている点は押さえておく必要があります。

調停が成立した場合の効力

当事者間で合意がまとまり、その内容が調書に記載されると、調停が成立したことになります。この調書の記載は「裁判上の和解と同一の効力」を持ちます(民事調停法16条)。つまり、相手が合意内容を守らない場合には、この調書を根拠に強制執行の申立てをすることが可能になります。話し合いで決めた内容であっても、強制執行の場面では判決と同じように使える点が民事調停の特徴です。

合意ができない場合の道筋

当事者間で合意が成立する見込みがない場合、または成立した合意が相当でないと認める場合に、裁判所が後述の「調停に代わる決定」をしないときは、調停委員会は事件を「不成立」として終了させることができます(民事調停法14条)。また、事件の性質上調停に適さない場合や、当事者が不当な目的でみだりに申立てをしたと認められる場合には、そもそも「調停をしない」措置がとられることもあります(同法13条)。

合意の見込みがなくても、事案によっては裁判所が職権で「調停に代わる決定」を出すことがあります(民事調停法17条)。この決定では金銭の支払いなど財産上の給付を命じることができ、いわゆる「17条決定」と呼ばれるものです。当事者は、この決定の告知を受けた日から2週間以内であれば異議を申し立てることができ、適法な異議が出ると決定は効力を失います。逆に、この2週間以内に異議が出なければ、決定は「裁判上の和解と同一の効力」を持つものとして確定します(同法18条)。

不成立後に訴訟へ移るときの期限

調停が成立しなかった場合、そのまま終了することも、あらためて訴訟を起こすことも選べます。ここで注意したいのが期限です。調停不成立等の通知を受けた日から2週間以内に、調停で求めていたのと同じ請求について訴えを提起すると、調停の申立てをした時点で訴えの提起があったものとみなされます(民事調停法19条)。貸したお金や未払い代金の消滅時効との関係でも、調停の申立てが時効の完成を止める効果を持つ場面があるため、不成立後に訴訟へ切り替えるつもりがあるなら、この2週間という期限を必ず意識しておく必要があります。

140万円との関係

少額訴訟が60万円以下、支払督促は金額の上限がない代わりに相手が争えば通常訴訟に移る仕組みでしたが、民事調停自体には請求金額の上限はありません。ただし、認定司法書士が代理人として関与できる範囲は、訴額140万円の数え方で整理したとおり、簡易裁判所における手続で「調停を求める事項の価額」が140万円を超えないものに限られます(司法書士法3条1項6号ニ、裁判所法33条1項1号)。民事調停そのものに金額の制限がないことと、司法書士が代理できる範囲には上限があることは、分けて理解しておく必要があります。

まとめ

民事調停は、調停委員会を介した話し合いによって紛争の解決を目指す手続きで、合意が成立すれば裁判上の和解と同じ効力を持ちます。合意ができない場合も「調停に代わる決定」という道筋があり、異議申立ての期限や、不成立後に訴訟へ移る際の2週間という期限には注意が必要です。ご自身のトラブルにどの手続きが向いているかは事情によって異なりますので、お近くの司法書士(請求額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月・いずれも一次情報です)。

  • 民事調停法 第1条(この法律の目的)・第2条(調停事件)・第3条(管轄)・第5条(調停機関)・第6条(調停委員会の組織)・第7条(調停主任等の指定)・第13条(調停をしない場合)・第14条(調停の不成立)・第16条(調停の成立・効力)・第17条(調停に代わる決定)・第18条(異議の申立て)・第19条(調停不成立等の場合の訴の提起)・第23条の3(民事調停官の権限等)・第34条(不出頭に対する制裁)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000222
  • 司法書士法 第3条第1項第6号ニ(簡裁訴訟代理等関係業務のうち民事調停・調停を求める事項の価額)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
  • 裁判所法 第33条第1項第1号(簡易裁判所の裁判権・140万円)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059

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