この記事の要点

  • フリマアプリやネットオークションでの代金未払いも、金額次第で少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きを使える場合がある
  • ただしこれらの手続きは相手方の氏名・住所を申立書に記載する必要があり、ハンドルネームだけでは手続きを始められない
  • 取引メッセージや振込明細などの証拠を早めに保存しておくことが、後の手続きを進めるうえで重要になる
  • 2026年5月21日からは少額訴訟もオンラインで申し立てられるようになり、支払督促も従来の督促手続オンラインシステムに加えてmintsが使えるようになったが、相手の氏名・住所を記載する必要がある点は書面と変わらない

フリマアプリやネットオークションで個人間取引をした際に、商品を発送したのに代金が振り込まれない、あるいは代金を払ったのに商品が届かないといったトラブルは珍しくありません。請求額が140万円以下であれば、手続きの相談や書類作成について司法書士が関われる範囲に入ることもありますが、その前提として押さえておきたいのが「相手を裁判上どう特定するか」という実務上の壁です。この記事では、少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きを使うために必要な準備を整理します。

これは執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でどう進めるべきかという交渉方針の判断はここでは扱いません。

相手の氏名・住所がわからないと手続きが始められない

少額訴訟や支払督促は、相手方(被告・債務者)の氏名・住所を申立書に記載し、その住所に書類を送達することで手続きが進みます。フリマアプリやネットオークションでは、取引相手はハンドルネームやアカウント名でしか表示されないことが多く、本名や住所を知らないまま取引が完結してしまうケースも少なくありません。運営会社に登録情報の開示を求めても、個人情報保護の観点から任意には応じてもらえないことが一般的で、氏名・住所が分からないままでは申立書そのものを作成できないという状態に陥りがちです。

手続きを検討する前に残しておきたい証拠

そこで重要になるのが、取引の過程で氏名・住所につながる情報や、やり取りの記録をできるだけ早い段階で保存しておくことです。取引メッセージのやり取り、発送伝票の控え、振込明細、プラットフォームの取引画面のスクリーンショットなどは、後に相手を特定したり、少額訴訟や支払督促を申し立てたりする際の証拠として重要な役割を果たします。氏名・住所の一部でも判明している場合は、内容証明郵便で直接連絡を試み、支払いや連絡を促すことも選択肢の一つです。

手続き選びは金額と相手の状況次第

相手の氏名・住所が判明し、請求額が60万円以下であれば少額訴訟が使え、金額にかかわらず支払督促や通常の訴訟も選択肢になります。ただし少額訴訟には利用回数の制限(同じ簡易裁判所に1人年間10回まで)があり、支払督促は相手が督促異議を出すと通常訴訟に移行するなど、それぞれ特徴が異なります。どの手続きが向いているかは、請求額や相手の対応が予想できるかによっても変わってきます。

2026年5月から申立てのしかたが変わりました

民事訴訟手続のデジタル化により、2026年5月21日から、少額訴訟も支払督促も、「民事裁判書類電子提出システム(mints)」を使ったオンラインでの申立て(電子申立て)ができるようになりました。少額訴訟はこの日から初めてオンラインでの訴えの提起が可能になったものです。支払督促は従来からある督促手続オンラインシステムに加えて、mintsも利用できるようになりました。弁護士等の訴訟代理人には電子申立てが義務付けられていますが、ご本人が申し立てる場合はこれまでどおり書面でも可能です。

もっとも、オンラインで申し立てる場合でも、相手方の氏名・住所を特定して記載しなければならない点は書面と変わりません。デジタル化によって手続きの入口が便利になっても、「相手が誰か分からない」という壁がなくなるわけではない、という点はご注意ください。

まとめ

フリマアプリやネットオークションでの代金未払いトラブルでも、少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きを使える場合があります。ただしこれらの手続きは相手方の氏名・住所の特定が前提となるため、取引記録や振込明細などの証拠を早めに残しておくことが大切です。手続きの選び方や進め方に迷ったら、お近くの司法書士(140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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