この記事の要点

  • 2016年に施行された成年後見制度利用促進法をきっかけに、市区町村が中心となって「中核機関」の整備と「地域連携ネットワーク」の構築を進めています
  • 中核機関は、制度の相談対応や後見人候補者の調整、就任後の後見人への支援などを担う地域の窓口です
  • 地域連携ネットワークは、家庭裁判所や専門職団体、福祉関係機関などが連携し、申立て前から就任後まで継続的に本人を支える体制です
  • 2026年6月には成年後見制度そのものを見直す民法改正が成立しましたが、施行日は公布から2年6月以内に政令で定める日とされており、2026年9月時点ではまだ施行されていません

結論から言うと、「中核機関」と「地域連携ネットワーク」は、個々の後見の申立てそのものを扱う機関ではなく、成年後見制度を「使いたい人が使える制度」にするために、国が市区町村に整備を促している地域の支援体制です。申立て前の相談から、後見人になった後のフォローまでを地域全体で支える仕組みと考えると分かりやすいです。

利用促進法が目指したもの

成年後見制度は2000年に始まりましたが、利用件数が伸び悩んでいることや、後見人の担い手不足、財産管理に偏りがちで本人の生活や意思を支える視点(身上保護)が後回しになりやすいといった課題が指摘されてきました。こうした課題に対応するため、成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号)が2016年に施行されました。

同法は、国や地方公共団体に対し、ノーマライゼーション(障害や病気の有無にかかわらず、誰もが地域で普通に暮らせる社会を目指す考え方)や本人の自己決定権の尊重、身上保護の重視といった基本理念を踏まえて、制度の利用促進に関する施策を進めるよう求めています。これを受けて国が策定した成年後見制度利用促進基本計画では、市区町村が地域の実情に応じて中核機関を整備し、地域連携ネットワークを構築することが打ち出されました。

現在動いているのは、2022年3月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画(令和4年3月25日閣議決定)です。同計画は対象期間を「令和4年度から令和8年度までの5年間」と定めており、2026年度がその最終年度にあたります。国(厚生労働省)の成年後見制度利用促進専門家会議では2026年7月から次期計画に向けた検討が始まっており、中核機関や地域連携ネットワークの位置づけについても、その議論のなかで見直される可能性があります。

中核機関の役割

中核機関は、市区町村が直接運営する場合もあれば、社会福祉協議会などに委託して運営される場合もある組織で、主に次のような役割を持つとされています。

  • 本人や家族からの制度利用に関する相談対応、広報・啓発
  • 後見開始の申立て支援や、後見人候補者(親族後見人・市民後見人など)の調整
  • 就任後の後見人に対する相談対応、市民後見人の育成・活動支援

どこまでの機能を持つかは市区町村ごとの体制によって差があり、すべての役割を単独の窓口が担っているとは限りません。市民後見人など後見人の担い手の違いについては、成年後見人には誰がなれる?──親族後見人・専門職後見人・市民後見人のちがい もあわせてご覧ください。お住まいの市区町村で中核機関がどこに設置されているかは、高齢者福祉担当課や地域包括支援センターなどに確認するとよいでしょう。

地域連携ネットワークとは

地域連携ネットワークは、家庭裁判所、弁護士会・司法書士会・社会福祉士会などの専門職団体、社会福祉協議会、医療・福祉関係機関、市区町村などが連携し、成年後見制度の利用促進に取り組む地域の体制です。中核機関は、このネットワークの中心的な役割(コーディネーターや事務局的な機能)を担うことが想定されています。

本人にとって身近な相談窓口から専門職への橋渡し、後見人になった後の見守りまでを地域全体でつなぐことで、後見制度の利用を「一度申し立てたら終わり」ではなく、継続的に支えられる仕組みにしていくことが目指されています。

2026年6月に成立した民法改正との関係

2026年6月17日、成年後見制度そのものを見直す「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。後見・保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人にとって必要な範囲で制度を利用できるようにすることなどが内容とされています。

ただし、成年後見制度に関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、この記事の執筆時点(2026年9月)ではまだ施行されていません。したがって、いま利用できるのは従来どおりの後見・保佐・補助の3類型です。

中核機関や地域連携ネットワークは、この民法改正によって廃止されるものではなく、利用促進法に基づく地域の支援体制として引き続き整備が進められています。もっとも、制度の中身が変われば地域で支える役割の内容にも影響が及びますので、今後の政令(施行日)や次期基本計画の動きは、あわせて見ておくとよいでしょう。

まとめ

「中核機関」と「地域連携ネットワーク」は、成年後見制度利用促進法に基づき、市区町村が中心となって整備を進めている地域の支援体制です。制度の入口となる相談から、後見人になった後の支援までを地域でつなぐ役割を担っています。2026年6月には制度そのものを見直す民法改正も成立しましたが、施行はこれからです。ご自身やご家族の成年後見制度の利用を考えている場合は、まずお住まいの市区町村の窓口や、お近くの司法書士会、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどにご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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