この記事の要点

  • 保佐開始の審判を受けた本人(被保佐人)は、日常の買い物などは自分でできますが、借金や不動産の売買など重要な行為をするときは保佐人の同意が必要です
  • 同意が必要な行為は民法13条1項に10種類が列挙されており、家庭裁判所の審判でこれ以外の行為にも範囲を広げることができます
  • 保佐人が正当な理由なく同意しないときは、家庭裁判所に「同意に代わる許可」を求める仕組みがあります

結論からお伝えします。保佐制度は、判断能力が「著しく不十分」な方(本人=被保佐人)について、日常生活に関する行為は本人の自由に任せつつ、財産や生活に重大な影響を与える一部の行為だけを保佐人のチェック(同意)にかける仕組みです。法定後見の3類型(後見・保佐・補助)の違いは法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で解説していますが、この記事では保佐に絞って、具体的にどの行為に同意が必要になるのかを見ていきます。なお、保佐人には、この記事で扱う同意権とは別に、家庭裁判所の審判によって特定の法律行為について本人に代わって行う代理権が与えられることもあります(民法876条の4第1項)。同意権と代理権は別の仕組みであり、本記事で取り上げるのは同意権に限られます。

※本記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。なお、成年後見制度を見直す法律(民法等の一部を改正する法律・令和8年法律第45号)が令和8年6月24日に公布されていますが、成年後見制度の見直しに関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、執筆時点では未施行です。そのため、現在当てはまるのは本記事で説明する現行の保佐制度です。

この改正は、法務省の公表資料によれば、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化する内容を含んでいます。e-Gov法令検索に掲載されている改正後(未施行)の条文によれば、施行後は本記事で説明する民法13条(保佐人の同意を要する行為)の規定はなくなり、家庭裁判所が「補助人の同意を要する旨の審判」で個別に定めた行為についてだけ補助人の同意が必要になる仕組みに変わります(改正後の民法9条)。同意の対象になりうる行為の候補も、現在の10種類をもとにしつつ、預金・貯金の預入れや払戻しの請求が新たに加わり、現在の「新築、改築、増築又は大修繕」の項目が「居住用建物の大修繕の工事請負契約その他の重要な役務提供契約の締結」に改められるなど、11種類に整理されます(改正後の民法9条2項)。施行されると「保佐」という類型自体が置き換わることになりますので、これから制度の利用を検討される場合は、施行日が政令で定められた段階で最新の情報をご確認ください。

民法13条1項が定める10種類の行為

民法13条1項は、被保佐人が次の行為をするには保佐人の同意を得なければならないと定めています。

  1. 元本の領収・利用(貸したお金の元本の返済を受け取る、手元の財産を貸し付けて運用するなど)
  2. 借財または保証をすること(お金を借りる、他人の借金の保証人になる)
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為(不動産の売買や、価値の大きい財産の売却・購入など)
  4. 訴訟行為をすること(自分から訴えを起こすなど。詳しくは次の節で触れます)
  5. 贈与、和解または仲裁合意をすること
  6. 相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること
  8. 新築、改築、増築または大修繕をすること
  9. 民法602条が定める期間(建物3年、土地5年など)を超える賃貸借をすること
  10. 1号から9号までの行為を、制限行為能力者の法定代理人としてすること(たとえば被保佐人自身が誰かの親権者や後見人でもある場合に、その立場で1号から9号の行為をするときも同意が必要という意味です)

いずれも、日々の買い物や公共料金の支払いのような日常生活に関する行為(民法9条ただし書)とは違い、本人の財産や生活に大きな影響を与えうる行為だという共通点があります。民法13条1項ただし書も、9条ただし書に規定する行為(日常生活に関する行為)は同意の対象から外れることを明記しています。

条文の言葉だけでは決まりきらない部分もあります

10種類の行為は条文に列挙されていますが、それぞれの言葉がどこまでを指すのかは、条文の文言だけでは決まりきらない部分があり、学説や実務の整理に幅があります。読者の方が実際につまずきやすい2つを挙げておきます。

1号の「元本」 については、利息や賃料といった果実を生み出すもとになる財産(貸したお金の元本、賃貸している不動産など)を指すと整理されています。預貯金も利息を生むため、その払戻しは1号に当たると説明されることが多い一方で、日々の生活費を引き出す程度の払戻しは日常生活に関する行為(9条ただし書)として同意が不要だとも整理されており、どこからが同意の対象になるのかの線引きは、条文からは明確に読み取れません。なお、冒頭で触れた令和8年の改正では、「預金又は貯金の預入又は払戻しの請求」が、補助人の同意の対象になりうる行為として明文で挙げられています(改正後の民法9条2項1号)。

4号の「訴訟行為」 については、条文だけを読むと訴訟に関わるすべての行為に同意が必要に見えますが、そうではありません。相手方から訴えられた被保佐人が応訴する(訴えられた裁判に応じる)場合には、保佐人の同意は不要とされています(民事訴訟法32条1項)。同意が得られないまま何も反論できずに敗訴してしまう事態を避けるための定めです。反対に、訴訟の中で訴えを取り下げたり、和解・請求の放棄や認諾をしたりするには、あらためて特別の授権が必要です(同条2項1号)。

家庭裁判所の審判で対象を広げることもできる

民法13条2項により、家庭裁判所は、本人・配偶者・四親等内の親族など(民法11条本文に規定する者)、保佐人または保佐監督人の請求により、1項の10種類以外の行為についても保佐人の同意を必要とする審判をすることができます。ただし、日常生活に関する行為(9条ただし書)は対象にできません。本人の財産状況や生活実態に応じて、同意が必要な範囲を個別に調整できる仕組みです。

もっとも、この審判で広げられる範囲は、一般に財産に関する行為に限られると整理されており、何でも対象にできるわけではありません。たとえば遺言については、民法962条が「第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない」と定めており、13条の同意の仕組みは働きません。被保佐人であっても、15歳に達していれば自分で遺言をすることができ(民法961条)、保佐人の同意は必要ありません。婚姻・離婚・養子縁組といった身分に関する行為も、本人自身の意思で決めるべきものとして、行為能力の制限の枠組みの外に置かれていると整理されています。

保佐人が同意してくれないときは──家庭裁判所への申立て

保佐人の同意が必要な行為であっても、保佐人が同意してくれなければ本人は身動きが取れません。そこで民法13条3項は、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないのに同意をしないときは、家庭裁判所が、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができると定めています。保佐人の同意権は、本人を保護するための仕組みであって、本人の行動を不当に妨げるためのものではないという考え方が背景にあります。

同意(またはこれに代わる家庭裁判所の許可)を得ずにした行為は、取り消すことができます(民法13条4項)。取り消すことができるのは、本人のほか、同意権を持つ保佐人などです(民法120条1項)。

まとめ

保佐人の同意が必要な行為は、民法13条1項に10種類が列挙されており、家庭裁判所の審判でさらに範囲を広げることもできます。保佐人が正当な理由なく同意しないときは、家庭裁判所に同意に代わる許可を求めることもできます。日常生活の行為は本人の自由に任せつつ、重要な財産行為だけを保佐人のチェックにかける、本人の意思を尊重しながら保護する制度設計です。

保佐開始の申立てや、同意権の範囲をどう設定するかは、本人の生活状況によって判断が分かれます。具体的な手続きをご検討の際は、家庭裁判所の後見係、お近くの司法書士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどの相談窓口にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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