この記事の要点

  • 後見開始の申立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長など、法律で決まった人に限られる
  • 申立て先は本人の住所地の家庭裁判所で、法律上は原則として「鑑定」を経て審判が行われる(明らかにその必要がないと認められるときは省略される)
  • 審判が確定すると、家庭裁判所からの嘱託によって法務局の後見登記に記録される(本人や後見人が自分で登記申請するわけではない)

「親の物忘れが進んできたので後見人をつけたい」と思っても、思い立った人が誰でも家庭裁判所に申し立てられるわけではありません。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。

誰が申し立てできるか

後見開始の審判を家庭裁判所に求められるのは、民法第7条により、本人・配偶者・四親等内の親族・未成年後見人・未成年後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・検察官とされています。友人や離れた親族が「心配だから」という理由だけで申し立てることはできません。

身寄りが乏しい高齢者の場合は、老人福祉法第32条により、市町村長がその福祉を図るため特に必要があると認めるときに、市町村長自身が申立てを行うことができます。いわゆる「市長申立て」で、独居高齢者の支援などで実際に用いられる仕組みです。

このほか、本人があらかじめ任意後見契約を結び、その契約が登記されている場合には、任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人も後見開始の審判を申し立てることができます(任意後見契約に関する法律第10条第2項)。ただしこの場合、家庭裁判所が後見開始の審判をできるのは「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」に限られます(同条第1項)。申立てができる人は民法第7条だけで決まるわけではなく、ほかの法律にも根拠が置かれている点にご注意ください。

どこに申し立てるか

申立て先は、家事事件手続法第117条第1項により、後見開始の審判を受けるべき本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立人の住所地ではない点に注意が必要です。

原則として「鑑定」を経る

申立てにあたっては、本人の判断能力の程度を示す診断書などの資料が求められるのが一般的です。もっとも、診断書はあくまで申立てに必要な資料であり、それだけで審判が行われるわけではありません。家事事件手続法第119条第1項により、家庭裁判所は本人の精神の状況について「鑑定」をしなければ、後見開始の審判をすることができないのが原則です。ただし、同項ただし書は「明らかにその必要がないと認めるとき」は鑑定を要しないとしており、実際に鑑定を行うかどうかは、提出された診断書の内容や本人の状況をふまえて家庭裁判所が判断します。鑑定が行われる場合は別途費用がかかり、申立人の負担となるのが一般的です。最高裁判所の統計(令和7年1月~12月)では、鑑定が行われた事件のうち、鑑定費用が10万円以下だったものが約85.8%を占めています。保佐開始の審判についても同様の扱いがあり(家事事件手続法第133条による第119条の準用)、補助開始の審判では鑑定までは求められていません。ただし補助の場合も、家庭裁判所は本人の精神の状況について医師その他適当な者の意見を聴かなければ補助開始の審判をすることができないとされており(同法第138条)、医学的な確認が一切不要になるわけではありません。

審判が確定すると、登記は「嘱託」で行われる

家庭裁判所が後見人等を選び審判が確定すると、後見の登記が行われます。この開始時の登記は、家事事件手続法第116条第1号に基づき、家庭裁判所(裁判所書記官)から登記所への嘱託によって行われる仕組みで、本人や後見人が自分で法務局に登記を申請するわけではありません。就任後に住所が変わった場合の変更登記などは申請によりますが、開始そのものの登記は裁判所側の手続きで完結します。

法定後見の3類型(後見・保佐・補助)の違いについてはこちら、選任後に何を行うかについては成年後見人になったら何をする?もあわせてご覧ください。

制度改正の動きにご注意ください

成年後見制度をめぐっては、令和8年(2026年)6月17日成立・同月24日公布の「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)により、大きな見直しが予定されています。もっとも、この見直しに関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされ、本記事執筆時点では具体的な施行時期は確定していません。申立ての要件や手続きも将来変わる可能性がありますので、実際に手続きを進める際は、その時点の最新の制度をご確認ください。

まとめ

後見開始の申立ては、本人・配偶者・四親等内の親族や市区町村長など法律で定められた人に限られ、本人の住所地の家庭裁判所に対して行います。法律上は原則として鑑定を経て審判が行われることとされ(明らかにその必要がないと認められるときは省略されます)、確定後の登記は家庭裁判所からの嘱託によって行われます。実際にどのような書類が必要か、鑑定の要否や期間がどうなるかは個々の事情によって異なりますので、具体的な手続きについては、お近くの司法書士会や、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月・いずれも一次情報です)。

あわせて読みたい