この記事の要点

  • 「本人情報シート」を作成するのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や相談支援専門員など、本人を職務上の立場から支援している福祉関係者。「親族や本人が作成することは想定していません」と裁判所の手引に明記されている
  • 「診断書(成年後見制度用)」を作成するのは医師。本人情報シートは、その医師が診断するときの「補助資料」という位置づけ
  • 後見・保佐・補助のどの類型になるかを判断するのは家庭裁判所。後見・保佐では原則として鑑定が必要とされ、その要否を判断するのも家庭裁判所。補助は鑑定ではなく医師その他適当な者の意見を聴く仕組みで、いずれも書類を出す側が選べるものではない

成年後見の申立てを調べていくと、「診断書」と「本人情報シート」という2つの書類が出てきます。どちらも本人の状態を伝える書類なので混同されがちですが、書く人も、果たす役割も別の書類です。診断書は医師が書き、本人情報シートは本人を支えている福祉関係者が書きます。

誰が申し立てられるか、どこに申し立てるか、審判までがどう進むかという手続の流れは、成年後見開始の申立てはどう進む?──誰が申し立てられる?審判までの流れで扱いました。この記事では、そこで「申立てに添える書類」として登場した2つの書類に絞り、それぞれ誰が書くものなのかを整理します。

なお、この記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。

本人情報シートを書くのは、本人を支える福祉関係者

本人情報シートは、最高裁判所事務総局家庭局が用意している書式で、裁判所ウェブサイトの後見ポータルサイトからワード形式でダウンロードできます。

誰が書くものかについて、「本人情報シート作成の手引」ははっきり書いています。本人の身近なところで職務上の立場から支援している方が作成することが望ましいとされ、具体例として、社会福祉士や精神保健福祉士などのソーシャルワーカーとして本人の支援に関わっている方、介護支援専門員(ケアマネジャー)、相談支援専門員、病院・施設の相談員、市町村が設置する地域包括支援センターや社会福祉協議会等が運営する権利擁護支援センターの職員などが挙げられています。

そのうえで、「親族や本人が作成することは想定していません」と明記されています。家族が本人の様子を伝えたいときは、本人情報シートではなく申立書のほうに生活状況等を記載することになります。ここを取り違えて家族が本人情報シートに書き込んでしまわないよう、注意が必要です。

作成をお願いするときは、費用の扱いも先に確認しておくと安心です。手引では、ソーシャルワーカーが自らの業務の一環として作成する場合もあれば、当事者間の合意で定めた作成費用を依頼者が負担する場合もあるとして、作成者と依頼者の間で取扱いを確認するよう促しています。

なお、本人情報シートは申立てに必ず添えなければならない書類ではありません。手引には、提出が難しい場合はこれを添付せずに後見等開始の申立てを行うことは可能である一方、多くの事案では医師が診断する際の補助資料として提供されることが望ましい、という趣旨の注記があります。

診断書を書くのは医師──本人情報シートはその「補助資料」

診断書は「診断書(成年後見制度用)」という裁判所の書式で、医師が作成します。作成費用は通常の診断書と同様に当事者の負担です。作成する医師に資格上の限定はありませんが、本人の精神の状況について医学的見地から判断するものであることから、精神神経疾患に関連する診療科を標榜する医師、または主治医など本人の精神の状況に通じている医師によって作成されるものと考えられる、と手引は説明しています。

2つの書類の関係は、診断書の書式そのものに書かれています。書式の注記には、参考となる事項欄にある本人情報シートとは「本人の判断能力等に関する診断を行う際の補助資料として,本人の福祉関係者が作成するシート」であり、提供があった場合は診断への活用を検討してほしい、という趣旨が記されています。書式には、医師が本人情報シートの提供を受けたかどうかを記入する欄も設けられています。

つまり、順序としては「福祉関係者が本人の生活状況をまとめる → 医師がそれも参考にして診断書を書く → 申立人が両方を家庭裁判所に提出する」という流れになります。本人情報シートは、家庭裁判所が誰を成年後見人等に選任するかを検討する際の資料として活用することも考えられる、と手引では説明されています。

かかりつけ医がいない場合について、手引は、以前に診察を受けていなかった場合であっても、おおむね1か月程度の期間で2、3回程度の診察により作成することが可能か検討してほしいと医師に呼びかけています。時間に幅があることを見込んで早めに動くのが現実的です。

「後見・保佐・補助」のどれになるかを決めるのは家庭裁判所

よくある誤解として、「診断書に後見・保佐・補助のどれかを書いてもらう」というものがあります。しかし診断書の書式には、類型そのものを記載する欄はありません

書式の「判断能力についての意見」欄にあるのは、契約等の意味・内容を自ら理解し判断することができるか、支援を受けなければ難しい場合があるか、支援を受けなければできないか、支援を受けてもできないか、という4つの選択肢です。いずれも医師が医学的見地から選ぶものであり、法律上の類型を医師が決定する仕組みにはなっていません。

そして書式には、「家庭裁判所は,診断書を含む申立人からの提出書類等に基づき,本人の判断能力について判断します」という趣旨の注記が置かれています。判断能力の評価は医師の医学的判断、それを踏まえてどの類型で審判をするかは家庭裁判所の判断、という役割分担です。類型ごとの違いは法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?──判断能力の程度で決まる仕組みで扱っています。

この構造上、申立てをする側が「後見相当と書いてほしい」といった希望を医師に伝えても、診断書にはそれを記入する欄がありません。どの類型で審判をするかを判断するのは家庭裁判所です。診断書はあくまで医師が医学的見地から作成する書類ですので、本人の状態をありのまま伝えることが、結局は本人に合った支援につながります。

なお、この3つの類型のしくみ自体を見直す改正も決まっています。令和8年(2026年)6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)は、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化する(3つの類型を補助にまとめる)ことなどを内容とするものです。ただし、この見直しに係る部分が施行されるのは、公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、その政令はまだ出ていません。いま申立てを考える場合に当てはまるのは、この記事で見てきた現在の制度です。

鑑定を行うかどうかも家庭裁判所が判断する

書類がそろっても、それだけで手続が終わるとは限りません。家事事件手続法第119条第1項は、家庭裁判所は成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができないと定め、ただし書で「明らかにその必要がないと認めるとき」はこの限りでないとしています。保佐開始の審判についても、同法第133条によりこの規定が準用されます。

大切なのは、このただし書で「明らかにその必要がない」と認める主体が家庭裁判所であるという点です。鑑定を実施するかどうかは、申立人や医師が決めるものではありません。診断書は鑑定そのものではなく、鑑定の要否を家庭裁判所が検討するための資料でもある、というのが手引の説明です。診断書を出したから鑑定が行われない、と決まっているわけではありません。

なお補助開始の審判については、同法第138条が、家庭裁判所は被補助人となるべき者の精神の状況につき医師その他適当な者の意見を聴かなければ審判をすることができないと定めています。後見・保佐で原則とされている鑑定とは、条文の書き方が異なります。

まとめ

本人情報シートと診断書は、名前が並んで出てくるために一体の書類と思われがちですが、本人情報シートは本人を支える福祉関係者が、診断書は医師が作成する、別々の書類です。本人情報シートは診断書を書く医師にとっての補助資料であり、親族や本人が書くことは想定されていません。家族が伝えたい事情は申立書に記載します。

そして、判断能力をどう評価するかは医師の医学的判断、後見・保佐・補助のどの類型とするか、鑑定を実施するかどうかは家庭裁判所の判断です。書式や必要書類の細かい取扱いは家庭裁判所ごとの案内で異なることがあるため、実際に申立てを考えるときは、申立て先となる家庭裁判所の最新の案内を確認してください。

書類の準備や制度の使い方で迷ったときは、お住まいの地域の司法書士会や、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどの相談窓口にご相談ください。お近くの司法書士にたずねていただくのもよいと思います。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。

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