この記事の要点
- 成年後見人は自分の判断だけでは辞められません。辞任には「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要です(民法844条)
- 解任できるかどうかを判断するのは家庭裁判所です。不正な行為など「後見の任務に適しない事由」があるときに、請求または職権で解任されます(民法846条)
- 辞任・解任があっても成年後見そのものは終わりません。後任の成年後見人は家庭裁判所が選任します
結論からお伝えします。成年後見人は、途中で辞めることも、家庭裁判所の判断で交代となることもありますが、いずれも「本人(成年被後見人)を保護する仕組みを途切れさせない」形でしか進みません。辞めるのも代わるのも、家庭裁判所の関与のもとで行われます。
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。なお、成年後見制度を見直す法律(民法等の一部を改正する法律・令和8年法律第45号)が令和8年6月24日に公布されていますが、成年後見制度の見直しにかかる部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、執筆時点では未施行です。そのため、現在当てはまるのは本記事で説明する現行制度です。
辞任は「正当な事由」+家庭裁判所の許可(民法844条)
民法844条は、後見人は「正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる」と定めています。条文が家庭裁判所の許可を要件としている以上、いったん成年後見人に就任したら、「忙しくなったから」と自分の判断だけで辞めることはできません。
正当な事由の例としては、遠方への転居や健康上の理由などが挙げられることが一般的ですが、個々のケースで正当な事由に当たるかどうかを判断するのは家庭裁判所です。
また、辞任によって後任者が必要になったときは、辞任した後見人自身が、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません(民法845条)。「辞めたら終わり」ではなく、空白をつくらないところまでが辞任する側の務めとされています。
解任は家庭裁判所が判断する(民法846条)
民法846条は、後見人に「不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるとき」に、家庭裁判所が後見監督人・被後見人・その親族・検察官の請求により、または職権で解任できると定めています。
注意していただきたいのは、解任するかどうかを決めるのは家庭裁判所だという点です。「親族が後見人のやり方に不満がある」というだけで解任が認められる仕組みではなく、条文の定める事由があるかどうかを家庭裁判所が個別に判断します。解任の請求権者に含まれている後見監督人については、後見監督人とは?成年後見人を見守る仕組みと選ばれるケースで解説しています。
辞任・解任のあとはどうなる?──後任は家庭裁判所が選ぶ
辞任や解任で成年後見人が欠けても、後見開始の審判の効力がなくなるわけではありません。成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所が、本人・親族その他の利害関係人の請求により、または職権で、後任の成年後見人を選任します(民法843条2項)。辞任の場合は、これに加えて、先ほどみたとおり辞任した後見人自身にも後任者の選任を請求する義務があります(民法845条)。誰を選ぶかは、本人の心身の状態や財産の状況、候補者と本人の利害関係など一切の事情を考慮して家庭裁判所が決めます(同条4項)。
なお、この記事は成年後見人を中心に説明しましたが、保佐人・補助人についても辞任・解任の規定は準用されています(準用条文:民法876条の2第2項・876条の7第2項)。申立てからの全体の流れは成年後見開始の申立てはどう進む?をご覧ください。
まとめ
成年後見人の辞任には正当な事由と家庭裁判所の許可が必要で、解任も家庭裁判所が条文の定める事由の有無を判断して決めます。いずれの場合も、後任の選任まで含めて家庭裁判所の関与のもとで進み、本人を保護する仕組みが途切れないようになっています。
辞任の許可や解任、後任選任の申立てを裁判所で代理できるのは弁護士です。司法書士は、これらの申立てに必要な裁判所提出書類の作成という形で関わることができます。成年後見人の交代を検討する事情があるときは、家庭裁判所の後見係、お近くの司法書士会や公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートなどの相談窓口にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第843条〜第846条・第876条の2・第876条の7(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html