この記事の要点

  • 意思決定支援(いしけっていしえん)とは、後見人が本人に代わって一方的に決めるのではなく、本人が自分の意思で決められるよう支えるという考え方
  • 2020年に最高裁判所・厚生労働省等でつくる意思決定支援ワーキング・グループが「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を公表し、後見事務の実務上の指針とされている
  • 財産管理や身上保護の場面でも、まず本人の意向を丁寧に聴くことが後見事務の出発点になる

「後見人がついたら、もう自分の希望は聞いてもらえないのでは」——成年後見の利用を検討する中で、こうした不安の声を耳にすることがあります。しかし、後見人の役割は本人に代わって一方的に物事を決めることではなく、できる限り本人の意思を確認し、それを尊重しながら支援することが基本とされています。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

意思決定支援とは「代わりに決める」ことではない

成年後見制度は、判断能力が十分でない方の財産管理や契約事務を後見人等が代理・支援する仕組みです。もっとも、後見人に代理権が与えられているからといって、本人の意向を確認せずに後見人だけの判断で物事を進めてよいわけではありません。意思決定支援とは、本人が自分自身で決めることを、周囲の関わり方によってできる限り支えるという考え方です。本人の判断能力に応じて、説明の仕方を工夫したり、時間をかけて意向を確認したりすることで、「本人には決められない」と早々に判断しない姿勢が重視されています。後見人が本人に代わって決める「代行決定」は、意思決定支援を尽くしてもなお本人の意思や意向を確認することが難しい場合に限って行う、補充的なものと位置づけられています。この「まず意思決定支援を尽くす」という順序は、次に述べるガイドラインが示す基本的な考え方にもとづくものです。

ガイドラインが実務の指針に

この考え方の広がりを受けて、2020年(令和2年)10月30日、最高裁判所・厚生労働省と専門職団体(日本弁護士連合会・成年後見センター・リーガルサポート・日本社会福祉士会)でつくる意思決定支援ワーキング・グループが「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を公表しました。後見人等が日常の事務の中で本人の意思をどのように確認し、尊重していくかについての考え方を整理したもので、家庭裁判所の実務や後見人の事務にも一定の影響を与えています。ガイドラインの詳しい項目立てや文言については、最高裁判所・厚生労働省が公表している資料を直接ご確認いただくのが確実です。

財産管理・身上保護の場面での活かし方

意思決定支援の考え方は、財産管理や身上保護(本人の生活・医療・介護に関する見守りや手続き)の具体的な場面にも及びます。たとえば施設への入所や大きな買い物を検討する際、後見人がいきなり結論を決めるのではなく、本人にわかりやすい言葉で選択肢を説明し、本人の反応や意向を丁寧に汲み取ったうえで、必要な範囲で代理権を行使することが望ましいとされています。法定後見の3類型「後見・保佐・補助」の違いでも触れているとおり、後見人等に与えられる権限の範囲は本人の判断能力の程度によって異なりますが、いずれの類型でも本人の意思をできる限り尊重する姿勢は共通の土台となります。また、後見人にできることには法律上の限界もあり、成年後見人が「できないこと」とはもあわせてご覧いただくと、意思決定支援と代理権の範囲の関係がイメージしやすくなります。

制度改正の動きにご注意ください

成年後見制度をめぐっては、大きな改正が予定されています。令和8年(2026年)6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。法務省の説明によれば、この改正は成年後見制度について「後見及び保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化」する内容とされており、本人の意思をできる限り尊重するという意思決定支援の理念が、制度の枠組み自体にも反映されていく方向性がうかがえます。もっとも、成年後見制度の見直しに関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、具体的な時期は今後定められます(2026年9月の確認時点では未確定)。施行までは本記事で説明した現行制度を前提とした運用が続きますが、実際に手続きを検討される際は、その時点の最新の制度をご確認ください。

まとめ

意思決定支援とは、後見人が本人に代わって一方的に決めるのではなく、本人が自分の意思で決められるよう周囲が支えるという考え方です。2020年に公表されたガイドラインが実務の指針となっており、財産管理や身上保護の具体的な場面でも、まず本人の意向を丁寧に聴くことが後見事務の出発点とされています。制度の利用や後見人の実務の詳細について具体的に知りたい場合は、お近くの司法書士や、お住まいの地域の家庭裁判所、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート等にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月)。

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