未払いの給料を取り戻すには|賃金請求で少額訴訟・支払督促を使うときの基礎知識
会社を辞めたのに最後の給料が振り込まれない、残業代の一部が支払われていない――こうした「賃金(ちんぎん・給料や残業代のこと)」の未払いも、貸したお金や敷金と同じく「金銭を請求する権利」の一つであり、少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きの対象になり得ます。この記事では、賃金請求という場面に的をしぼって、どの手続きが向いているかの考え方を整理します。 ...
会社を辞めたのに最後の給料が振り込まれない、残業代の一部が支払われていない――こうした「賃金(ちんぎん・給料や残業代のこと)」の未払いも、貸したお金や敷金と同じく「金銭を請求する権利」の一つであり、少額訴訟や支払督促といった簡易裁判所の手続きの対象になり得ます。この記事では、賃金請求という場面に的をしぼって、どの手続きが向いているかの考え方を整理します。 ...
この記事の要点 消滅時効は、期間が過ぎれば自動的にお金の支払い義務が消える制度ではありません。民法145条により、当事者が「援用」しなければ、裁判所は時効を理由とする裁判ができません 権利を「承認」すると、時効はその時から新たに進行し直します(民法152条1項)。援用と承認は正反対の方向に働くため、どちらに当たる行動かを知っておくことが大切です 個別の請求にどう対応するかの判断は、この記事では扱いません。手続きの仕組みの一般解説です 古い借金や未払い代金の請求が届いたとき、「時効だからもう関係ない」と考えて放置してよいかというと、そうではありません。結論から言うと、消滅時効は期間が過ぎただけでは効力が生じず、時効の利益を受ける側が「援用(えんよう)」という主張をして初めて意味を持ちます。 ...
この記事の要点 少額訴訟で勝っても、裁判所が自動的に相手からお金を取り立ててくれるわけではありません。回収するには、あらためて強制執行を申し立てる必要があります 少額訴訟の判決や和解の調書をもとに預金・給料などの「金銭債権」を差し押さえる場合には、簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる「少額訴訟債権執行」という手続きが用意されています(民事執行法167条の2) 対象は金銭債権に限られます。不動産や動産を差し押さえる手続きは地方裁判所・執行官の担当となり、司法書士が代理できる範囲からは外れます 以下は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...
この記事の要点 当事者どうしで話し合いがつき「分割で返す」等の約束はできていても、口約束や私文書のままでは相手が守らない場合の備えが弱い 簡易裁判所の「即決和解(訴え提起前の和解)」を使うと、合意内容を裁判所の調書に残すことができる 和解調書は確定判決と同じ効力を持ち、これを通じて強制執行の基礎となる文書(債務名義)になるため、相手が約束を守らなかったときに改めて訴訟を起こす必要がない 本文 貸したお金や未払いの代金について、相手との間で「分割で返す」「いつまでに支払う」という合意(示談)自体はできている――というケースは少なくありません。ただし、その合意を口約束や当事者間の合意書だけにとどめている場合、相手が約束を守らなかったときにどうするかという不安が残ります。 ...
この記事の要点 訴状には「当事者及び法定代理人」「請求の趣旨及び原因」を記載しなければならず(民事訴訟法134条2項)、答弁書はこれに対する被告の言い分を記載する準備書面です(同161条) 答弁書を提出しておけば、期日に出頭しなくても、裁判所はその内容を陳述したものとみなして手続きを進めることができるとされています(同158条)。簡易裁判所の訴訟手続では、この扱いが続行の期日にも準用されます(同277条) 答弁書も出さず、期日にも出頭しないと、原告の主張事実を争わなかったものとみなされ(自白の擬制、同159条1項・3項)、原告の請求どおりの判決につながりやすくなります これまでの記事では、お金を貸した側・請求する側の視点で手続きを整理してきました。今回は逆に、簡易裁判所から訴状が届いた側(被告)が最初にすべきことに絞って、答弁書の位置づけを整理します。 ...
この記事の要点 「どこの裁判所に出すか」は土地管轄の問題で、「いくらまでが簡易裁判所の担当か」という事物管轄とは別の物差しです 訴えの原則は、被告(訴えられる側)の住所などで決まる普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(民事訴訟法4条) 財産権上の訴えは義務履行地に、不動産に関する訴えは不動産の所在地にも起こせます(同5条1号・12号)。管轄を誤って出しても、原則は却下ではなく管轄裁判所への移送です(同16条1項) 訴えを起こすとき、書類をどこに出すかは、2つの物差しの組み合わせで決まります。1つは「どの種類の裁判所か」(事物管轄)、もう1つは「全国のどの地の裁判所か」(土地管轄)です。この記事で扱うのは後者の土地管轄です。 ...
この記事の要点 裁判所に納めるお金は、もともと「申立ての手数料」と「郵便料金にあてるための費用(予納郵便切手)」の2本立てだった ただし令和8年(2026年)5月21日施行の改正により、民事訴訟の訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、郵便費用が申立手数料に一本化され、郵便切手の予納は不要になった。手数料の納付方法も、これらについては原則として現金納付に変わっている 民事調停や家庭裁判所の手続などはこの改正の対象外で、従来どおり手数料は収入印紙、郵便料は予納が必要。予納する郵便切手の額や組合せは裁判所ごとに異なるため、必ず申立先の裁判所の案内で確認する必要がある 手数料の額は民事訴訟費用等に関する法律の別表で、請求する金額(訴額)に応じて決まる。収入印紙は納付の方法であって、契約書に貼る印紙税とは別の話 裁判所を使う手続きでは、申立ての際に一定のお金を納めることになっています。「印紙はいくら貼るのか」「切手も要るのか」は、実際に申立書を書き始めてから戸惑いやすいところです。ここでは、その基本的な仕組みを整理します。 ...
この記事の要点 民事調停は、裁判官と調停委員による「調停委員会」が間に入り、話し合いで紛争の解決を図る簡易裁判所の手続き 合意が成立して調書に記載されると、判決と同じように強制執行の根拠になる効力を持つ 合意ができなくても「調停に代わる決定」という仕組みがあり、異議が出なければ確定するが、異議が出ると効力を失う これまでの記事では、金銭トラブルの解決手段として支払督促・少額訴訟を単独で取り上げてきました。今回は、話し合いによる解決を図る「民事調停」そのものの仕組みに絞って整理します。 ...
この記事の要点 「140万円」という数字は司法書士法の条文には書かれておらず、裁判所法33条1項1号の額を司法書士法が引用しているという関係にある 基準になる価額の呼び名は手続きごとに違い、訴訟なら「訴訟の目的の価額」、支払督促なら「請求の目的の価額」、民事調停なら「調停を求める事項の価額」と条文上書き分けられている 附帯請求は算入せず、一つの訴えで複数の請求をするときは合算するのが原則。遅延損害金は一般に附帯請求として扱われているが、価額をいくらと見るかは最終的に裁判所が判断する 司法書士に簡易裁判所の手続きを頼めるかどうかの目安として「140万円以下」という数字を見かけますが、これは「相手に請求する金額」そのものではなく、法律上の決まった算定方法で出す価額のことです。この記事では、その価額が何を指すのか、条文の枠組みだけを一般向けに整理します。 ...
この記事の要点 少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に限って利用できる、簡易裁判所の特別な訴訟手続き 原則として1回の期日で審理が終わり、その日のうちに判決が言い渡される仕組み 反訴ができない・同じ簡易裁判所で年10回までしか使えないといった制約があり、相手の対応次第で通常訴訟に移ることもある 以前の記事で、敷金トラブルの解決手段として「少額訴訟・支払督促・民事調停」を比較しましたが、今回は少額訴訟そのものの仕組みに絞って整理します。少額訴訟(しょうがくそしょう)は、貸したお金や未払いの代金など、比較的少額の金銭を請求する場面で使われることが多い手続きです。 ...