裁判の費用が払えないとき|「訴訟救助」で手数料の支払いを猶予してもらう仕組みと、法テラスの立替えとの違い

この記事の要点 裁判所に納める費用が払えないときは、裁判所に「訴訟上の救助(訴訟救助)」を申し立てる方法がある。認められると、裁判費用などの支払いが猶予される(民事訴訟法82条・83条) 猶予は免除ではない。資力の要件を欠くことがわかれば救助が取り消されて支払いを命じられることがあり、猶予された費用を、負担することとされた相手方から直接取り立てる仕組みもある(同法84条・85条) 法テラスの民事法律扶助は、弁護士・司法書士に支払う報酬などを法テラスが立て替える別の制度。判断するところも、対象となる費用も異なる 「訴えを起こしたいけれど、裁判所に納める費用が用意できない」。そんなときのために、民事訴訟法には、裁判所が費用の支払いを待ってくれる「訴訟上の救助」という制度があります。ただし、結論から言えば、これは払わなくてよくなる制度ではなく、支払いを猶予してもらう制度です。 ...

2026年10月27日 · ひぐらしさとし

少額訴訟の判決に納得できないとき|控訴はできず「異議」──期限2週間と異議後の審理の流れ

この記事の要点 少額訴訟の判決には控訴できず、不服があるときは判決をした簡易裁判所に「異議」を申し立てる。期限は電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間(民事訴訟法377条・378条1項) 適法な異議があると、訴訟は口頭弁論の終結前の状態に戻り、通常の手続で審理と裁判がやり直される。ただし反訴ができないことなど、一部のルールは引き続き適用される(同法379条) 異議の後に出た判決にも控訴はできず、上級の裁判所に判断を求める道としては、憲法違反を理由とする場合に限って最高裁判所に上告する道が残されているだけ(同法380条) 少額訴訟の判決に納得できない場合、地方裁判所に控訴することはできません(民事訴訟法377条)。用意されているのは、判決をした同じ簡易裁判所に「異議(いぎ)」を申し立てて、通常の手続で審理し直してもらう方法です。通常の判決に対する控訴の仕組みは簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へで整理しましたので、ここでは異議の申立てから、その後の審理と判決までに絞ってご説明します。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へ

この記事の要点 簡易裁判所の判決に対する控訴は、判決書(電子判決書)などの送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法285条) 控訴審を担当するのは地方裁判所だが、控訴状は判決をした簡易裁判所に提出する(裁判所法24条3号、民事訴訟法286条1項) 少額訴訟の判決には控訴できず、同じ簡易裁判所への異議(期限は同じく2週間)だけが用意されている(民事訴訟法377条・378条1項) 簡易裁判所で判決が出たものの、その内容に納得できない──そうした場合に、上の裁判所に改めて判断を求める手続きが「控訴(こうそ)」です。結論からいえば、控訴には2週間という短い期限があり、提出先も間違えやすいため、判決を受け取ったらまず期限を確認することが先決です。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の裁判に家族や会社の社員が代わりに出られる?|裁判官の許可による代理人(代理人許可)の基礎

この記事の要点 簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可を得れば、弁護士でない人(家族や会社の社員など)を代理人にできます(民事訴訟法54条1項ただし書) 許可を求めるには、申請書と、本人と代理人の関係がわかる書類を出します。許可はいつでも取り消されることがあります 和解や訴えの取下げなどを代理人に任せるには、委任状で特別に任せておく必要があります 結論から言うと、簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可があれば、弁護士でない家族や会社の社員に代わりに手続きをしてもらうことができます。民事訴訟(民事裁判)については、簡易裁判所だけに設けられた仕組みです。本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

訴えを取り下げるとどうなる?──相手の同意が必要になる場面と、もう一度訴えられなくなる場合

この記事の要点 訴えは、判決が確定するまでなら、全部でも一部でも取り下げることができる(民事訴訟法261条1項)。ただし、相手が請求の中身について準備書面を出したり口頭弁論をしたりした後は、相手の同意がなければ取下げの効力が生じない(同条2項) 取り下げた部分は「初めから裁判所にかかっていなかった」ものとみなされる。一方、本案について終局判決が出た後に取り下げた人は、同一の訴えを起こすことができなくなる(同法262条) 当事者が双方とも期日に出てこない状態が続くと、取下げをしていなくても取り下げたものとみなされることがある(同法263条) 訴え(裁判)を起こした側は、判決が出るまで手続きを続けなければならないわけではありません。民事訴訟法は、訴えは「判決が確定するまで」その全部または一部を取り下げることができると定めています(261条1項)。判決が言い渡された後でも、確定する前であれば取り下げることができる建てつけです。ただし、取下げにはいくつかのルールがあり、タイミングによっては相手の同意が必要になったり、あとで同じ訴えを起こせなくなったりします。 ...

2026年10月11日 · ひぐらしさとし

裁判所から『特別送達』が届いたら|本物かどうかの確かめ方と、受け取らなくても手続きが進む仕組み

この記事の要点 特別送達は、訴状や支払督促などの裁判所の書類を法律に定められた方法で届け、届けた事実を証明する郵便の特殊な取扱いです(郵便法44条・49条) 本物かどうか不安なときは、書面に書かれた電話番号がにせものでないかを電話帳などで確かめたうえで、裁判所に直接問い合わせるよう、裁判所自身が案内しています 受け取りを拒んだり、不在で受け取れなかったりしても、差置送達や書留郵便等に付する送達によって送達があったものとして扱われることがあります。届いたら、まず期日と期限を確かめることが大切です これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。届いた書類の請求に応じるべきかどうか、どう反論すべきかといった個別の判断はここでは扱いません。 ...

2026年10月7日 · ひぐらしさとし

公示送達とは|相手の居場所が分からないときに裁判を進める仕組みと要件・効力発生までの期間

この記事の要点 公示送達は、相手の住所・居所その他送達をすべき場所が分からないときなどに、申立てにより裁判所書記官が行う特別な送達の方法です(民事訴訟法110条1項) 令和8年5月21日以降に提起された訴えなどでは、裁判所の掲示場(または裁判所内の端末の画面)に加えて、インターネットで誰でも見られる状態に置く方法で行われ、原則としてその措置を始めた日から2週間を経過すると効力が生じます(同111条・112条) 申立てには住民票や現地の状況などの所在調査の結果を示すのが一般的です。また、少額訴訟では通常の手続きに移り、支払督促ではそもそも使えないという制約もあります これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でどの手続きを選ぶべきかの判断はここでは扱いません。 ...

2026年10月3日 · ひぐらしさとし

和解に代わる決定とは|簡易裁判所で分割払いや支払猶予を定める仕組み(民事訴訟法275条の2)

この記事の要点 和解に代わる決定は、簡易裁判所の金銭の支払を求める訴訟で、被告が原告の言い分を争わない場合に、裁判所が分割払いや支払時期の猶予を定めたうえで支払を命じる「決定」です(民事訴訟法275条の2) 当事者は決定の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができ、異議があれば決定は効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます 少額訴訟の判決で分割払いなどを定める仕組み(375条)とは、裁判の形式(決定か判決か)・期間の上限(5年か3年か)・不服申立ての方法が異なります 「和解に代わる決定」とは、当事者の話し合いで和解が成立していなくても、裁判所が分割払いなど和解に近い内容を「決定」という形で示し、当事者から異議が出なければ、和解が成立したのと同じ効力を持たせる仕組みです。民事訴訟法の「簡易裁判所の訴訟手続に関する特則」の章に置かれている規定です。 ...

2026年9月29日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の「司法委員」とは|民事裁判に市民が関わる仕組みと、和解の場面での役割

この記事の要点 司法委員は、簡易裁判所の民事訴訟で、裁判所が必要と認めるときに、和解を試みる場面での補助や、審理に立ち会って意見を述べる役割を担う(民事訴訟法279条1項) 司法委員は裁判官ではなく、述べる意見はあくまで参考意見。判断をするのは裁判官で、和解に応じるかどうかを決めるのは当事者 毎年あらかじめ地方裁判所が選任しておいた人の中から、事件ごとに裁判所が指定する仕組みで、法律の専門資格は求められていない 簡易裁判所の民事訴訟では、裁判官と当事者のほかに「司法委員」と呼ばれる人が手続きに加わることがあります。結論からいうと、司法委員は法律の専門家に限らず広く市民の中から選ばれ、和解の話し合いの補助や審理への立会いを通じて裁判官を助ける立場の人で、裁判官そのものではありません。この記事では、その仕組みを条文に沿って整理します。 ...

2026年9月25日 · ひぐらしさとし

「仮処分」とは|仮差押えとの違いと、占有移転禁止の仮処分の仕組み

この記事の要点 仮差押えは「金銭の支払を目的とする債権」を保全する手続きです(民事保全法20条1項)。これに対して仮処分は、物の引渡しや地位の確認など、お金の支払そのもの以外をめぐる場面で使われるのが典型です(同法1条・23条) 仮処分には「係争物に関する仮処分」(23条1項)と「仮の地位を定める仮処分」(23条2項)の2種類があり、要件が異なります 建物の明渡しなどの訴訟前によく使われる「占有移転禁止の仮処分」を執行しておくと、訴訟の途中で占有者が入れ替わっても、改めて訴えを起こし直さずに、執行文の付与を受けて明渡しの強制執行に進めます(同法62条) 執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月21日 · ひぐらしさとし