この記事の要点

  • 少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に限って利用できる、簡易裁判所の特別な訴訟手続き
  • 原則として1回の期日で審理が終わり、その日のうちに判決が言い渡される仕組み
  • 反訴ができない・同じ簡易裁判所で年10回までしか使えないといった制約があり、相手の対応次第で通常訴訟に移ることもある

以前の記事で、敷金トラブルの解決手段として「少額訴訟・支払督促・民事調停」を比較しましたが、今回は少額訴訟そのものの仕組みに絞って整理します。少額訴訟(しょうがくそしょう)は、貸したお金や未払いの代金など、比較的少額の金銭を請求する場面で使われることが多い手続きです。

これは執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案でこの手続きが向いているかどうかの判断はここでは扱いません。

60万円以下の金銭請求に限られる

少額訴訟が使えるのは、訴訟の目的の価額(請求する金額)が60万円以下の金銭の支払いを求める訴えに限られます。不動産の明渡しなど金銭以外を求める請求には使えません。また、少額訴訟を利用したい旨は、訴えを提起する際にあわせて申し出る必要があり、同じ簡易裁判所では同じ年に10回までしか利用できないという回数の上限も定められています。

原則1回の期日で審理が終わる

少額訴訟の大きな特徴は、特別な事情がない限り、最初の口頭弁論期日で審理を完了させる「一期日審理の原則」が取られていることです。当事者は、その期日の前かその日のうちに、主張や証拠をすべて出し切らなければなりません。通常の訴訟のように何度も期日を重ねることを前提としていない分、証拠関係が比較的単純な事案向けの手続きといえます。

また、少額訴訟では反訴(被告の側から原告に対して新たな請求を起こすこと)を提起することができません。争いが複雑になりそうな案件は、そもそも少額訴訟には向かない仕組みになっています。

相手の対応次第で通常訴訟に移ることがある

少額訴訟には、通常の訴訟手続きに切り替わる場面がいくつか用意されています。被告の側は、最初の期日で弁論をする前であれば、通常訴訟への移行を申し出ることができます(その期日が終了した後は申し出ることができません)。このほか、60万円以下の金銭請求という要件や回数の上限に反して少額訴訟が求められた場合や、裁判所が期間を定めて利用回数の届出を命じたのに届出がなかった場合、被告への呼出しを公示送達(相手の所在が分からないときにとられる送達の方法)によるほかない場合、裁判所が少額訴訟で審理するのを相当でないと判断した場合にも、裁判所の決定で通常訴訟に移行します。争ってくる相手に対しては、必ずしも1回で終わらない可能性がある点は押さえておく必要があります。

判決とその後の手続き

審理が終わると、原則として口頭弁論の終結後すぐに判決が言い渡されます。請求を認める判決には、裁判所が職権で仮執行宣言(判決確定前でも強制執行に進めるようにする宣言)を付けることになっています。

少額訴訟の判決に対しては控訴ができません。その代わり、判決をした簡易裁判所に対して、判決書等の送達を受けた日から2週間の不変期間(延長されない期間)内に「異議」を申し立てる仕組みが用意されています。異議が申し立てられると通常の手続きで審理がやり直されますが、その異議後の判決に対しても控訴はできません。

140万円の壁との関係

少額訴訟は60万円以下が対象ですから、認定を受けた司法書士が代理できる範囲(簡易裁判所での訴額140万円以下)には当然に収まります。ただし司法書士が代理人になれるのは、あくまでこの140万円という上限までの手続きに限られ、上訴(判決に不服を申し立てて上級の裁判所の判断を求めること)の提起や強制執行に関する事項は原則として代理できません。60万円を超える請求では少額訴訟自体が使えないため、通常訴訟や支払督促、民事調停など他の手続きとの比較が必要になります。

まとめ

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求について、原則1回の期日で決着をつけられる簡易な手続きです。ただし反訴ができない、年10回までしか使えない、相手の対応次第で通常訴訟に移ることがあるといった制約もあります。ご自身の請求に少額訴訟が向いているかどうかは事情によって異なりますので、お近くの司法書士(請求額が140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。

  • 民事訴訟法 第368条(少額訴訟の要件等)・第369条(反訴の禁止)・第370条(一期日審理の原則)・第373条(通常の手続への移行)・第374条(判決の言渡し)・第376条(仮執行の宣言)・第377条(控訴の禁止)・第378条(異議)・第379条(異議後の審理及び裁判)・第380条(異議後の判決に対する不服申立て)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
  • 民事訴訟規則 第223条(少額訴訟を求め得る回数=十回とする旨)(裁判所ホームページ 規則集PDF・令和8年5月21日現行版): https://www.courts.go.jp/assets/080521minnsokisoku.pdf
  • 司法書士法 第3条第1項第6号イ・同号ただし書・第2項(簡裁訴訟代理等関係業務。訴額が裁判所法33条1項1号の額を超えないものに限り、上訴の提起・強制執行に関する事項の代理制限を含む)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197
  • 裁判所法 第33条第1項第1号(簡易裁判所の裁判権・140万円)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059

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