この記事の要点
- 支払督促は、簡易裁判所の書記官が書面審査だけで支払いを命じる手続きで、原則として裁判所に出向く必要がない
- 相手が一定期間内に督促異議を出さなければ仮執行宣言が付され、確定を待たずに強制執行に進める
- 相手が督促異議を出すと通常訴訟に移行するため、争いになりそうな相手には時間がかかることもある
貸したお金や取引先の未払い代金を回収したいとき、いきなり訴訟を起こすのはハードルが高いと感じる方も多いはずです。支払督促(しはらいとくそく)は、そうした場面で使われることが多い手続きの一つで、双方が裁判所に出向いて主張し合う必要がなく、書類のやり取りだけで進む点が特徴です。この記事では、支払督促がどのような流れで進むのかを整理します。
これは執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案で見通しが立つかどうかは事情によって異なりますので、その点の判断はここでは扱いません。
支払督促は書類審査だけで進む
支払督促は、お金を貸した側(債権者)が、相手方(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に申し立てる手続きです。訴訟のように証拠を出し合って審理するのではなく、申立書の記載内容を書記官が形式的に審査し、問題がなければ相手方に支払督促を送るという仕組みになっています。相手の言い分を聞かずに発せられる点が、通常の訴訟と大きく違うところです。
申立てから仮執行宣言・強制執行、確定までの流れ
大まかな流れは次のとおりです。
- 申立て――債権者が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書を提出します。
- 発付・送達――書記官の審査を経て支払督促が発せられ、相手方に送達されます。
- 督促異議の有無――送達を受けた相手方が、一定期間内に「督促異議」を申し立てなければ、次の段階に進めます。異議が出されると、手続きは通常訴訟へと切り替わります。
- 仮執行宣言の申立て・強制執行――異議がなければ、債権者は仮執行宣言を申し立てられます。仮執行宣言が付されると、確定を待たずに、この時点で強制執行(相手の財産の差押えなど)の申立てが可能になります。
- 確定――仮執行宣言付きの支払督促に対しても相手方から異議が出なければ、支払督促は確定判決と同一の効力を持ちます。
このように、相手方が最後まで異議を出さなければ、比較的短期間かつ低い費用で強制執行まで進められるのが支払督促の利点です。一方で、相手方が督促異議を出すと通常訴訟の手続きに移るため、支払う意思がなく争ってくる相手には、かえって時間がかかることもあります。手続き選びは、相手の対応が予想できるかどうかも踏まえて検討する必要があります。
なお、認定を受けた司法書士が代理できるのは、請求額が140万円以下の場合に限られます(140万円を超える請求は弁護士が扱う範囲です)。
まとめ
支払督促は、簡易裁判所の書記官による書面審査だけで進み、相手方が異議を出さなければ強制執行まで到達できる手続きです。ただし相手方が督促異議を出すと通常訴訟に移行するため、事案によっては少額訴訟や通常訴訟のほうが向いていることもあります。どの手続きが合うかはご事情によって異なりますので、お近くの司法書士(140万円を超える場合は弁護士)へご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。
- 民事訴訟法 第382条(支払督促の要件)・第383条第1項(支払督促の申立て)・第386条(支払督促の発付等)・第391条第1項(仮執行の宣言)・第395条(督促異議の申立てによる訴訟への移行)・第396条(支払督促の効力)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109
- 裁判所法 第33条第1項第1号(簡易裁判所の裁判権・140万円)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000059
- 司法書士法 第3条第1項第6号ロ・第2項(簡裁訴訟代理等関係業務・支払督促手続の代理)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000197