この記事の要点
- 「又は」と「若しくは」はどちらも「〜か〜か」の選択。大きいくくりが「又は」、その内側の小さいくくりが「若しくは」
- 「及び」と「並びに」はどちらも「〜と〜」の並列。小さいくくりが「及び」、大きいくくりが「並びに」
- 選択は「又は」が基本形、並列は「及び」が基本形。組み合わせの向きが逆なので注意
法律の条文では、「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」がはっきり使い分けられています。日常の文章ではどれも同じように使いますが、条文では言葉のかかり方の階層(大きいくくりか、小さいくくりか)を示す記号として働きます。結論から言うと、選択(〜か〜か)では大きいくくりが「又は」・小さいくくりが「若しくは」、並列(〜と〜)では小さいくくりが「及び」・大きいくくりが「並びに」です。
「又は」と「若しくは」──選択の大小
単純にAかBかを選ぶだけなら、「A又はB」と書き、「若しくは」は出てきません。「若しくは」が登場するのは、選択に階層があるときです。
相続人になれない事由を定めた民法891条1号を見てみます。
故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
一見読みにくいのですが、階層で切ると整理できます。大きい選択は「被相続人」又は「相続について先順位・同順位にある者」のどちらか。そして後者の内側で、「先順位」若しくは「同順位」という小さい選択が入れ子になっています。大きい分かれ目に「又は」、内側の小さい分かれ目に「若しくは」が置かれているわけです。
「及び」と「並びに」──並列の大小
並べる場合は向きが逆になります。単純にAとBを並べるだけなら「A及びB」で、「並びに」は階層があるときだけ登場し、大きいくくりを受け持ちます。
たとえば不動産登記規則131条1号には、次のような並びが出てきます。
登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付が同一のもの
これは「登記の目的」「申請の受付の年月日及び受付番号」「登記原因及びその日付」という三つのグループを、大きいレベルで「並びに」がつないでいる構造です。小さいペアの内側は「及び」、グループどうしの接続は「並びに」と読み分けます。
なぜこの違いが大事か
接続詞の階層を読み違えると、要件が「誰に」「何に」かかるのかがずれて、条文の意味そのものが変わってしまいます。逆に言えば、この4つの言葉はかかり方を示す道しるべですので、ルールを知っていれば長い条文も切れ目を見つけて読めるようになります。
まとめ
選択は「又は」が基本形で、内側の小さい選択にだけ「若しくは」。並列は「及び」が基本形で、外側の大きいくくりにだけ「並びに」。この向きの違いさえ押さえれば、条文の長い一文もぐっと読みやすくなります。もっとも、実際の相続や登記の手続きでは条文の読み方だけで判断できない事情も多くありますので、迷ったときはお近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。
- 民法 第891条(相続人の欠格事由)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記規則 第131条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018