この記事の要点
- 農地を相続すると、法務局への相続登記とは別に、農業委員会への届出という手続きが控えている
- 届出の期限は「農地の権利を取得したことを知った日からおおむね10か月以内」が目安とされている
- 登記と届出は別々の制度なので、どちらか一方をやれば足りるわけではなく、両方の期限を並行して管理する必要がある
本文
結論から言うと、相続した不動産に農地(田・畑など)が含まれる場合、法務局での相続登記だけでなく、その農地がある市区町村の農業委員会への届出も必要になります。この二つは根拠となる法律も窓口も別の手続きです。
相続登記については、相続の開始および不動産の取得を知った日から3年以内に法務局へ申請する義務があることは、相続登記の義務化、放置すると過料10万円の落とし穴でも紹介しているとおりです。
これとは別に、農地法という法律では、相続や遺産分割、包括遺贈、時効取得などによって農地の権利を取得した人に対し、農業委員会への届出を義務づけています。届出の期限は、権利を取得したことを知った日からおおむね10か月以内とされているのが一般的な目安です。届け出なかったり、内容に偽りがあったりすると、10万円以下の過料の対象になり得るとされています。
ここで押さえておきたいのは、この二つの手続きに前後関係のルールはなく、片方を済ませれば他方が免除されるわけでもない、という点です。相続登記を先に済ませても農業委員会への届出は別に必要ですし、逆に届出だけ済ませても登記の申請義務がなくなるわけではありません。相続財産に農地が含まれるかどうかは、遺産分割の話し合いの早い段階で確認しておくと、あとで期限管理の抜けに気づいて慌てる事態を避けやすくなります。届出書の具体的な記載方法や、対象となる土地が届出の要る農地に当たるかどうかの判断は、農地の所在地の農業委員会に確認するのが確実です。
こうした複数の期限をあわせて考える際の全体像は、相続が始まったら何から?期限のある手続きの優先順位の整理も参考になります。
執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
農地を相続した場合、相続登記の申請義務(3年以内)とは別に、農業委員会への届出(目安としておおむね10か月以内)という手続きが必要になります。どちらも法律で定められた別々の期限であり、片方だけで済ませられるものではありません。相続財産に農地が含まれているかどうかや、届出の具体的な進め方について迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月)。
- 農地法(昭和27年法律第229号)第3条の3(農地又は採草放牧地についての権利取得の届出)・第69条(届出をせず又は虚偽の届出をした者は10万円以下の過料)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000229
- 不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2(相続による所有権の取得を知った日から3年以内の登記申請義務)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 農林水産省「農地法関係事務に係る処理基準について」(平成12年6月1日付け12構改B第404号農林水産事務次官依命通知、最終改正:令和7年3月31日)別紙1第5──第3条の3の「遅滞なく」とは権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内の期間とする旨 https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/nouchi_seido/attach/pdf/nouchi_sandan-227.pdf
- 農林水産省「農地を相続したときは(農地の相続等の届出のお願い)」(届出書の様式例・記載要領) https://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/pdf/souzoku_todoke.pdf