実家を取り壊したら1か月以内に「建物滅失登記」──相続した家を解体するときの期限

この記事の要点 登記されている建物を取り壊したときは、取り壊した日(滅失した日)から1か月以内に建物滅失登記を申請する義務がある 期限内に申請しないと過料の対象になり得る 未登記の建物には建物滅失登記そのものが不要で、自治体への届出だけで足りる場合がある 本文 相続した実家が古くなり、住む人もいないまま取り壊しを決めるケースは珍しくありません。ここで見落とされやすいのが、建物を取り壊したあとの「建物滅失登記」という手続きです。取り壊し工事そのものは業者が進めてくれますが、その後の登記手続きは所有者側で対応する必要があり、しかも期限が定められています。 ...

2026年9月2日 · ひぐらしさとし

遺言執行者が引き受けるかどうか分からないとき──『相当の期間』を定めて返事を求める催告のしくみ

この記事の要点 遺言書に遺言執行者として名前が書かれていても、その人が引き受けるかどうかは本人の自由で、断ることもできる 返事がないまま止まってしまうときは、相続人などが「相当の期間」を定めて確答を求める催告ができ、期間内に返事がなければ承諾したものとみなされる 承諾したあとは「直ちに」任務を始め、「遅滞なく」相続人へ遺言の内容を通知する義務がある 遺言書に「遺言執行者に指定する」と名前が書かれていても、それだけで手続きが自動的に始まるわけではありません。遺言執行者に指定された人が実際に**引き受ける(就任を承諾する)**かどうかは、本人の意思次第です。承諾する義務はなく、断ることもできます。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の預金を放置すると「休眠預金」に?──10年ルールと相続手続きの段取り

この記事の要点 2009年1月1日以降の取引を最後に、10年以上「異動」のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあります 移管後も、取引のあった金融機関の窓口で払戻しを請求でき、相続人も請求できます(お金を受け取れなくなるわけではありません) ただし窓口での手続きに時間と書類が余計にかかるため、相続では早めに口座を洗い出し、解約まで進めておくのが段取りの基本です 亡くなった方の預金口座を長く放置していても、預金が没収されてしまうわけではありません。ただし、10年以上取引のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあり、払い戻すために窓口での手続きが必要になるなど、手間と時間が余計にかかるようになります。相続手続きの段取りとしては、口座を早めに洗い出して解約まで済ませておくことが大切です。 ...

2026年8月21日 · ひぐらしさとし

相続回復請求権の期限――「知った時から5年」「相続開始から20年」で消える権利

この記事の要点 「相続回復請求権」は、本当は相続人でない人(表見相続人)が財産を持ち去っている状態を、真正な相続人が正すための権利 期限は侵害の事実を知った時から5年、知らなくても相続開始の時から20年で時効消滅する(民法884条) 遺留分侵害額請求の「1年・10年」とは別の期限であり、混同すると手遅れになりやすい 「知らないうちに時効」が起こりうる権利です 相続回復請求権とは、相続人でない人(表見相続人)に対して、真正な相続人が相続財産の返還を求める権利です(民法884条)。共同相続人の一人が本来の持分を超えて財産を握っている場面をこの権利の問題として扱うかどうかは、後述のとおり考え方が分かれています。たとえば、疎遠になっていた親族が独断で被相続人の財産を管理・処分していた、あるいは自分が相続人であることを知らされないまま長期間が過ぎていた、といった場面で問題になり得ます。 ...

2026年8月17日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の保管期間は5年──写しの再交付が無料でできる期限を確認する

この記事の要点 法定相続情報一覧図は、保管の申出をした日の翌年から起算して5年間、登記所(法務局)に保管される 保管期間内であれば、当初の申出書に申出人として名前を記載した人が、無料で写しの再交付を受けられる 5年を過ぎると再交付ができなくなるため、複数の手続きにまたがって使う予定がある案件ほど、期限を意識した管理が必要になる 法定相続情報一覧図は、戸籍の束を1枚にまとめて法務局の認証を受ける書類で、相続登記や預貯金の解約など複数の手続きに使い回せる点が便利です。ただしこの一覧図、登記所に「ずっと」保管されているわけではありません。保管期間には期限があります。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

準確定申告とは──誰が、どこの税務署へ出すのか(亡くなった方の所得税・詳細は税理士へ)

この記事の要点 準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)のその年の所得税について、相続人が代わりに行う確定申告のことです 申告する義務を負うのは相続人で、包括受遺者(遺言で遺産の全部または割合で財産を受け取る人)も同じ立場に立ちます 相続人が2人以上いるときは、付表を添えて全員が連署した1通を出すのが原則で、他の相続人の氏名を付記して各別に出すこともできます 提出先は「被相続人の死亡当時の納税地」を所轄する税務署です。相続人自身の住所地の税務署ではありません 相続放棄をした人は、民法939条により初めから相続人でなかったものとみなされるため、相続人としての申告義務を負いません 申告が必要かどうかの判断・税額の計算・申告書の作成は税理士の専門分野です。具体的な内容は税理士にご相談ください 結論から言うと、準確定申告で最初につまずきやすいのは「4か月」という期限そのものよりも、誰が申告する立場なのかとどこの税務署に出すのかという2点です。とくに提出先は、相続人が住んでいる場所の税務署ではなく、亡くなった方が亡くなった当時の納税地を所轄する税務署になります。ここを取り違えると、期限を意識していても手続きが空回りしてしまいます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

再転相続の熟慮期間はいつから?──相続放棄を決める前に相続人が亡くなったときの特別ルール

この記事の要点 相続放棄をするか承認するかを決める「3か月」の期間中に相続人本人が亡くなると、その選ぶ権利は亡くなった人の相続人へ引き継がれます(再転相続) 引き継いだ人の3か月は、最初の相続が起きたことを知った時からではなく、自分がその選ぶ権利を引き継いだ事実を知った時から数え直します(最高裁令和元年8月9日判決) 遺産分割が終わらないまま相続が重なる「数次相続」とは異なる、より限定された場面を指す言葉です 「再転相続」とは何か 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを決めなければなりません(民法915条1項、熟慮期間)。ところが、この3か月の途中で、相続人本人が承認も放棄もしないまま亡くなってしまうことがあります。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

相続放棄の「3か月」に間に合わないときは?──家庭裁判所への期間伸長の申立て

この記事の要点 相続放棄・限定承認を選ぶための3か月の熟慮期間は、家庭裁判所に申し立てれば伸ばせる場合があります(民法915条1項ただし書) 申立てができるのは利害関係人(相続人を含む)と検察官(民法915条1項ただし書)、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です(家事事件手続法201条1項) 「期間を伸ばす」ための申立ても、もとの3か月が満了する前に済ませておく必要があります 「3か月」は動かせない期限ではない 相続が始まると、相続人は単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に選ばなければならないとされています(民法915条1項本文)。この3か月は「熟慮期間」と呼ばれ、いつから数えるかという起算点の考え方はこちらの記事で整理しています。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

未支給年金・葬祭費・埋葬料の請求期限──亡くなった後に請求できるお金には時効がある

この記事の要点 亡くなった方について請求できる公的なお金のうち、未支給年金は条文上の時効が五年、葬祭費・埋葬料は二年です(国民年金法102条1項、厚生年金保険法92条1項、健康保険法193条1項、国民健康保険法110条1項、高齢者の医療の確保に関する法律160条1項)。 これらは遺産分割の結論を待って動くものではありません。請求しないまま期間が過ぎれば、その請求権は時効によって消滅すると条文に定められています。 給付ごとに根拠となる法律も窓口も違います。年金は年金事務所、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費は市区町村、健康保険の埋葬料は協会けんぽ・健康保険組合です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

遺留分侵害額請求の「1年」はいつから数える?──起算日と期限の数え方

この記事の要点 遺留分侵害額請求の期限は、「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」の両方を知った時から1年です(民法1048条前段) それを知らないままでも、相続開始の時から10年を経過すると同じく消滅します(民法1048条後段) 期間は初日を数に入れず、1年後の応当する日の前日に満了します(民法140条・143条2項) 期限を過ぎると、請求できなくなります 遺留分(いりゅうぶん=一定の相続人に保障された最低限の取り分)が侵害されているとき、その分に相当するお金の支払いを請求できる権利があります(民法1046条1項)。2019年7月1日以降に開始した相続からは、財産そのものを取り戻す「遺留分減殺請求」ではなく、金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」という形に改められました(制度の全体像はこちらの記事で整理しています)。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし