この記事の要点
- 2009年1月1日以降の取引を最後に、10年以上「異動」のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあります
- 移管後も、取引のあった金融機関の窓口で払戻しを請求でき、相続人も請求できます(お金を受け取れなくなるわけではありません)
- ただし窓口での手続きに時間と書類が余計にかかるため、相続では早めに口座を洗い出し、解約まで進めておくのが段取りの基本です
亡くなった方の預金口座を長く放置していても、預金が没収されてしまうわけではありません。ただし、10年以上取引のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあり、払い戻すために窓口での手続きが必要になるなど、手間と時間が余計にかかるようになります。相続手続きの段取りとしては、口座を早めに洗い出して解約まで済ませておくことが大切です。
なお、この記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
休眠預金の「10年ルール」とは
「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金等活用法)が2018年1月1日に全面施行され、2009年1月1日以降にあった入出金等の取引から10年以上、その後の「異動」がない預金等は「休眠預金等」として預金保険機構に移管され、民間の公益活動に活用される仕組みになりました。普通預金・定期預金・定期積金などが対象です(外貨預金・財形貯蓄などは対象外です)。
ここでいう「異動」とは、預金者が今後もその預金を利用する意思を示したと認められる取引などのことです。入出金はどの金融機関でも異動に当たりますが、通帳の記帳や残高照会は、金融機関が認可を受けている場合に限って異動扱いになるなど、扱いが金融機関ごとに異なります。また、利子が付くだけでは原則として異動に当たりません。ご自身の預金がどの取引で異動になるかは、各金融機関にご確認ください。
移管の前には、残高1万円以上の預金について、金融機関から届出住所へ通知が郵送されます(金融機関によっては、郵送に代えて電子メールで通知されることもあります)。この通知を受け取れば、その後10年間は休眠預金になりません。一方、残高1万円未満の預金には通知がなく、住所変更を届け出ていない場合なども通知が届かないまま移管されることがあります。
移管されても受け取る権利は残る──ただし手間が増える
休眠預金として移管された後も、休眠預金等活用法7条に基づき、取引のあった金融機関で引き続き払戻しを請求できます。元本に利子相当額を加えた額が支払われ、金融庁の説明では、引き出しに期限はなく、いつでも引き出せるとされています。預金者が亡くなっている場合も、金融機関所定の手続きを経て、相続人が払い戻すことができます。
なお、制度のしくみとしては、金融機関から預金保険機構へ移管金が納付された日に、元の預金債権はいったん消滅します(休眠預金等活用法7条1項)。そのうえで、元の預金者(や、その相続人)は、元本に利子相当額を加えた額の支払い(「休眠預金等代替金」といいます)を請求できる立場になります(同条2項)。受け取れる金額が目減りするわけではありませんが、「預金がそのまま眠っている」のとは少し違うしくみだ、と押さえておいてください。
ただし、次のような手間の違いがあります。
- ATMではなく、金融機関の窓口での手続きが必要になることが想定されています
- 長い間取引のない預金の払戻しは、通常の場合と比べて時間がかかることが想定されています
- 必要な書類(通帳・本人確認書類など)や、現金での受け取りになるか元の口座を引き続き使えるかは、金融機関ごとに異なります
つまり「もらえなくなる」のではなく、「受け取るまでの段取りが一段重くなる」のが休眠預金化の実際の影響です。
相続の場面では「気づかないうちに10年」が起きやすい
亡くなった方の口座は、当然ながら入出金が止まります。つまり相続手続きをしないまま置いておくと、10年のカウントが静かに進んでいきます。通知も亡くなった方の届出住所宛てですから、相続人の手元に届かないまま移管されることも考えられます。
10年は長いようで、「四十九日が終わったら」「落ち着いたら」と後回しにしているうちに過ぎてしまうものです。段取りとしては、次の順で進めるのがおすすめです。
- 通帳・キャッシュカード・金融機関からの郵便物などを手がかりに、口座を漏れなく洗い出す(探し方は相続財産の手がかりの見つけ方で解説しています)
- 各金融機関に連絡して残高証明や相続手続きの案内を取り寄せる
- 遺産分割の内容が決まったら、解約・払戻しの手続きを進める(銀行口座の解約手続きの記事も参考にしてください)
すでに休眠預金になっているかどうかを含め、個別の預金の扱いは、取引のあった金融機関に問い合わせるのが確実です。
まとめ
- 2009年1月1日以降の取引を最後に10年以上異動のない預金は、休眠預金として預金保険機構に移管されることがあります
- 移管後も取引金融機関の窓口で払戻しを請求でき、相続人も請求できますが、手続きに時間と書類が余計にかかります
- 亡くなった方の口座は入出金が止まるため、放置すると休眠預金化しやすくなります。早めの口座の棚卸しと解約が、相続の段取りの基本です
個別の預金が休眠預金になっているかや必要書類は、取引のあった金融機関の窓口にご確認ください。相続手続き全体の進め方や段取りに迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(休眠預金等活用法・平成28年法律第101号)2条・4条・7条(e-Gov法令検索)
- 金融庁「休眠預金等活用法Q&A(預貯金者の方などへ)」(2017年12月・2019年2月更新、PDF)
- 預金保険機構「長い間お取引のない預金(休眠預金)」(公式サイト)