この記事の要点

  • 登記されている建物を取り壊したときは、取り壊した日(滅失した日)から1か月以内に建物滅失登記を申請する義務がある
  • 期限内に申請しないと過料の対象になり得る
  • 未登記の建物には建物滅失登記そのものが不要で、自治体への届出だけで足りる場合がある

本文

相続した実家が古くなり、住む人もいないまま取り壊しを決めるケースは珍しくありません。ここで見落とされやすいのが、建物を取り壊したあとの「建物滅失登記」という手続きです。取り壊し工事そのものは業者が進めてくれますが、その後の登記手続きは所有者側で対応する必要があり、しかも期限が定められています。

登記されている建物を取り壊した場合、その建物の表題部所有者または所有権の登記名義人は、取り壊した日(建物が滅失した日)から1か月以内に、法務局へ建物滅失登記を申請しなければならないとされています(不動産登記法57条)。この期限は、新築した建物について所有権を取得した日から1か月以内に表題登記を申請する義務(同法47条1項)と対になる規定です。所有権保存登記で解説しているとおり、建物は「建てるとき」だけでなく「なくすとき」にも登記上の手続きが必要になる、という点をあわせて押さえておくとわかりやすくなります。

この1か月という期限は、努力目標ではなく法律上の義務です。申請すべき義務がある人が正当な理由がないのに申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処すると定められています(同法164条1項。過料は刑罰ではなく、行政上の秩序罰です)。実務では、期限を過ぎたことだけを取り上げて厳密に問われる場面はそれほど多くないともいわれますが、条文上の義務であることに変わりはありません。むしろ実際に困りやすいのは、取り壊し後に登記簿上だけ建物が存在し続ける状態を長く放置すると、後日その土地を売却したり、相続登記を進めたりする際に、存在しない建物の登記が障害になって手続きが止まってしまうことがあります。

建物滅失登記の申請には、解体工事を行った業者が発行する「建物滅失証明書」(工事業者の印鑑証明書とあわせて必要になるのが通常です)や、申請人の本人確認書類などが必要です。手続きは土地家屋調査士の業務ですが、制度上は所有者本人が申請することもできます。なお、相続した実家がそもそも登記されていない「未登記建物」だった場合は、法務局の登記簿上に建物が存在しないため、建物滅失登記自体が不要になります。この場合は、市区町村へ「家屋滅失届(家屋取壊し届)」を出して、固定資産税の課税対象から外してもらう扱いになります。ただし届出の名称・様式や取扱いは市区町村によって異なるため、取り壊しを決めたら、あらかじめ所在地の市区町村の資産税担当に確認しておくと確実です。未登記建物を相続したときに動く順番では、登記の有無をどう見分けるかを扱っていますので、解体を検討する前に一度確認しておくと段取りが立てやすくなります。

もう一点、取り壊しのタイミングで意識しておきたいのが、土地の固定資産税への影響です。建物を取り壊すと、土地にかかっていた住宅用地の特例が外れ、その後の年度から土地の固定資産税・都市計画税の負担が増えることがあります。固定資産税は毎年1月1日時点の状況をもとに課税されるため、取り壊した時期によって、負担が増えるのがどの年度になるかは変わります。空き家を取り壊すと土地の固定資産税が上がるのはなぜ?で仕組みを整理していますので、解体前に一度目を通しておくと、取り壊し後の負担感で戸惑うことを避けられます。

執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の物件について申請義務の有無や必要書類を判断する際は、登記簿の記載内容を確認する必要があります。

まとめ

登記されている建物を取り壊したときは、滅失した日から1か月以内に建物滅失登記を申請する義務があります。未登記建物であれば登記は不要で自治体への届出だけで済みますが、登記の有無を誤って判断すると余計な手間や登記上の不整合につながります。相続した実家の解体を検討する際は、取り壊し前に登記簿の状態を確認し、段取りに不安があればお近くの司法書士・土地家屋調査士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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