この記事の要点
- 建物が建っている土地は「住宅用地の特例」によって固定資産税の課税標準(税率をかける前の土台になる金額)が下げられている。建物を取り壊すとこの特例から外れるため、土地の固定資産税が上がることがある
- 軽減の割合は、200平方メートル以下の部分が価格の6分の1、それを超える部分が3分の1(地方税法349条の3の2第1項・第2項)。都市計画税にも同様の特例があるが割合は3分の1・3分の2で異なる(同法702条の3)
- 「更地にすると6倍になる」という言い方は正確とはいえない。負担調整措置があり、評価額も取扱いも土地ごと・市町村ごとに違うため、実際の金額はその不動産のある市町村の窓口で確かめる必要がある
結論から書きます。建物を取り壊すと土地の固定資産税が上がることがあるのは、「住宅用地の特例」という税負担を軽くする仕組みが、その土地が住宅の敷地として使われていることを前提にしているからです。建物がなくなれば前提が失われ、原則として特例の適用から外れます。
なお、この記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
住宅用地の特例とは
固定資産税は、おおまかにいえば「課税標準 × 税率」で計算されます。課税標準とは、税率をかける前の土台になる金額のことです。
地方税法349条の3の2は、専ら人の居住の用に供する家屋や、その一部を人の居住の用に供する一定の家屋の敷地として使われている土地を「住宅用地」と呼び、その課税標準を次のように定めています。
- 200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)= 価格の6分の1(同条2項)
- 200平方メートルを超える部分 = 価格の3分の1(同条1項)
一戸建てでもアパートでも、居住用の家屋の敷地であれば対象になります。住居が複数ある建物では、200平方メートルに住居の数をかけた面積までが小規模住宅用地として扱われます(同条2項2号)。
大事なのは、土地の評価額そのものが下がるわけではないという点です。評価額は変わらないまま、税額を計算する土台だけが引き下げられているという構造になっています。
建物がなくなると、前提が失われる
条文は「敷地の用に供されている土地」と書いています。住宅を取り壊して更地にすれば、その土地はもう住宅の敷地ではありませんから、原則として住宅用地には当たりません。
判定の基準になる日は決まっていて、固定資産税の賦課期日はその年の1月1日です(地方税法359条)。つまり、1月1日の時点でどういう状態だったかによって、その年度の扱いが決まります。年末に取り壊すか年明けに取り壊すかで年度の扱いが変わりうるということですが、建て替え中の土地の取扱いなど市町村ごとに定めている運用もあるため、時期を気にされる場合は事前に窓口へ確認してください。
「6倍になる」と単純に書けない理由
課税標準の軽減が6分の1だからといって、特例が外れた瞬間に税額がそのまま6倍になる、とは限りません。理由は主に3つあります。
1つめは、負担調整措置があること。 宅地の固定資産税には、評価額が上がっても税負担が一度に跳ね上がらないよう、段階的に調整する仕組みが地方税法の附則に置かれています(固定資産税は同法附則18条、都市計画税は同法附則25条)。この附則の規定は令和6年度から令和8年度までの各年度分を対象とするもので、その後の年度分の扱いはその時々の税制改正によります。調整のしかたや割合も年度の税制改正で見直されるため、特例が外れた年に理論上の満額がそのまま課されるとは限りません。
2つめは、都市計画税が別枠であること。 市街化区域内などで固定資産税とあわせて課される都市計画税にも住宅用地の特例がありますが、軽減の割合は200平方メートル以下の部分が3分の1、それを超える部分が3分の2で、固定資産税とは違います(地方税法702条の3)。そもそも都市計画税を課すかどうかも市町村の判断によります。
3つめは、土地ごと・市町村ごとに事情が違うこと。 評価額も、これまでの負担の水準も土地によって異なります。条例で独自の減免を設けている市町村もあります。「更地にすると6倍」という一般論を自分の土地にそのまま当てはめるのは、この点で危険です。
空き家を放置した場合にも、特例が外れることがある
建物さえ残っていれば特例が続く、というわけでもありません。地方税法349条の3の2第1項のかっこ書きは、次の土地を住宅用地から除いています。
- 空家等対策の推進に関する特別措置法22条2項の勧告を受けた「特定空家等」(同法2条2項)の敷地
- 同法13条2項の勧告を受けた「管理不全空家等」(同法13条1項)の敷地
「特定空家等」は、そのまま放置すれば倒壊などのおそれがある、著しく衛生上有害となるおそれがあるなど、放置することが不適切と認められる状態の空き家です。「管理不全空家等」は、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態のもので、令和5年の空家法改正で新たに設けられた区分です。
条文上、どちらも市町村長からの指導(特定空家等については助言・指導)の段階ではなく、その次の「勧告」を受けた場合に住宅用地から除かれる書き方になっています。
ただし、これは「このかっこ書きで除かれる要件がそう書かれている」という以上のことを意味しません。勧告を受けていなければ特例が続く、と裏返して読めるわけではない、という点にはご注意ください。そもそもその土地が住宅用地(人の居住の用に供する家屋の敷地)に当たるかどうかという判断は、これとは別にあります。実際にどう扱われているかは市町村の認定によりますので、ご自身の土地の扱いは窓口でお確かめください。
なお、取り壊すかどうかは、税負担だけでなく建物の傷み具合、管理の手間、売却や活用の予定、近隣への影響など多くの事情が関わる判断です。この記事はその判断の是非には立ち入りません。
相続で空き家を引き継いだときは
空き家の問題は、相続をきっかけに表に出てくることが少なくありません。名義が亡くなった方のままだと売却も取り壊し後の手続きも進めにくくなりますし、建物が登記されていないことに相続の場面で初めて気づくこともあります(未登記建物を相続したときの動き方)。まずは登記の状態を確かめるところからになります。
まとめ
建物を取り壊すと土地の固定資産税が上がることがあるのは、住宅の敷地であることを前提とした住宅用地の特例(課税標準を6分の1・3分の1にするもの)から外れるためです。ただし上がり幅は負担調整措置や都市計画税の扱い、土地ごとの評価額によって変わり、「6倍」と一律にいえるものではありません。
具体的な税額や、ご自身の土地に特例が適用されているかどうかは、その不動産のある市町村の資産税担当窓口へお尋ねください。税務上の判断が必要な場面は税理士へご相談ください。相続にともなう名義変更などの登記については、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 地方税法 第349条の3の2・第359条・第367条・第702条・第702条の3・附則第18条・附則第25条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条・第13条・第22条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html