この記事の要点
- 共有名義の不動産の固定資産税は、持分の割合にかかわらず共有者全員が全額について連帯して納める義務を負う(地方税法10条の2)
- 納税義務者は毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者(同法343条1項・2項、359条)。登記簿や課税台帳上の所有者が賦課期日より前に亡くなっているときは、相続登記が済んでいなくても、その日に不動産を現に所有している相続人が納税義務者とされる(同法343条2項後段)
- 実務上は共有者の中から「代表者」が定められ、その代表者あてに納税通知書がまとめて送られるが、代表者だけが法的な納税義務を負うわけではない
相続で不動産を兄弟姉妹などと共有名義にすると、「持分に応じて、それぞれ別々に納税通知書が届いて、自分の持分の分だけ払えばいい」と考えている方が少なくありません。しかし、固定資産税に関する限り、この理解は正確ではありません。
地方税法10条の2第1項は、「共有物…に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う」と定めています。これは、共有者の一人ひとりが、自分の持分割合ではなく税額の全額について納付義務を負うという意味です。たとえば持分9割・1割の共有者2人がいる場合でも、市区町村(東京23区は都)から見れば、どちらの共有者に対しても「全額を納めてください」と求めることができ、どちらか一方が全額を納付すれば、もう一方の納税義務もそこで消滅します。持分割合は、共有者どうしが内部で費用を分担し合う際の基準となるものであって、市区町村に対する関係では「連帯」、つまり全員がまとめて責任を負う立場にあります。
納税義務者そのものの決め方にも押さえておきたいルールがあります。固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で登記簿や課税台帳に所有者として登記・登録されている人に対して課税されます(地方税法343条1項・2項、359条)。相続登記を済ませて不動産が共有名義に変わっても、その年度の課税にすぐ反映されるわけではありません。登記された新しい名義が課税に反映されるのは、登記の後に最初に迎える1月1日を賦課期日とする年度からになります。
ただし、これは「相続登記が終わるまで相続人には課税されない」という意味ではありません。同法343条2項の後段は、所有者として登記または登録がされている個人が賦課期日前に死亡しているときは、その日に土地・家屋を現に所有している者を所有者とする、と定めています(ここでいう「登録」とは、登記のない土地・家屋について市区町村の補充課税台帳に所有者として登録されている場合を指します)。つまり、相続登記が済んでいない状態であっても、賦課期日の時点で不動産を現に所有している相続人が納税義務者として扱われます。「登記をしていないから固定資産税とは無関係」ということにはならない点に注意が必要です。
この賦課期日のしくみは、不動産の売買決済時に発生する固定資産税の日割り精算金が法律上の税金の分割ではない理由とも共通する土台です。
もう一つ知っておきたいのが、「代表者」への通知の仕組みです。多くの市区町村では、共有名義の不動産について納税通知書を共有者全員に別々に送るのではなく、共有者の中から代表者を一人選び、その代表者に払込用紙付きの納税通知書を送付する運用を取っています(他の共有者には、参考として金額等を知らせる通知書が別途送られることが一般的です)。相続によって新たに共有名義になった場合は、市区町村から相続人の中の代表者を届け出るよう案内されることが多く見られます。代表者の選び方(持分の多い人を優先する、地域内に住んでいる人を優先するなど)は自治体ごとに運用が異なり、具体的な選定の基準は各自治体の取扱いに委ねられているのが実情です。
ここで注意したいのは、代表者は納税通知を受け取る窓口であって、代表者だけが納税義務を負っているわけではないという点です。代表者以外の共有者も、地方税法10条の2にもとづき、全額について連帯して納税義務を負ったままです。「通知は代表者に届くから、自分は関係ない」という理解は誤りで、代表者が滞納すれば、他の共有者に納付を求められる可能性があります。
執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。共有者間での実際の費用分担の方法、代表者の変更手続き、滞納が生じた場合の対応など、個別の状況に応じた取り扱いは、お住まいの市区町村の税務担当窓口、または税理士にご確認ください。
まとめ
共有名義の不動産の固定資産税は、持分割合にかかわらず共有者全員が全額について連帯して納税義務を負います。納税義務者は毎年1月1日時点の所有者(登記名義人がその日より前に亡くなっている場合は、現に所有している相続人)であり、実務上「代表者」に通知がまとめて送られていても、他の共有者の納税義務がなくなるわけではありません。相続で不動産を共有名義にする予定がある方は、この仕組みを踏まえたうえで、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月)。
- 地方税法 第10条の2(連帯納税義務・e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 地方税法 第343条(固定資産税の納税義務者等・e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 地方税法 第359条(固定資産税の賦課期日・e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226