この記事の要点
- 固定資産税には「免税点」があり、土地30万円未満・家屋20万円未満・償却資産150万円未満なら原則として課税されない
- 免税点は一筆・一棟ごとではなく、同じ市区町村内でその人が持つ土地全体(または家屋全体)の合計額で判定される(共有名義の持分の取扱いは別途確認が必要)
- 令和9年度(2027年度)分から家屋の免税点は30万円、償却資産は180万円に引き上げられる(土地の30万円は据え置き)
- 「納税通知書が来ない=相続登記もしなくていい」ではない点に注意
固定資産税の納税通知書が届かない土地がある、というご相談を受けることがあります。山林や評価額の低い小さな土地などで起こりやすい現象で、その理由のひとつが、地方税法が定める「免税点」という仕組みです。ただし、通知が届かない理由は免税点だけとは限らず、公共の用に供する道路のようにそもそも非課税とされている場合など、別の理由によることもあります。
地方税法351条は、同一人が同じ市区町村内に持つ固定資産の課税標準額が、土地は30万円未満、家屋は20万円未満、償却資産は150万円未満の場合、固定資産税を課することができないと定めています。評価額が低い資産にまで課税事務のコストをかけない、という趣旨の規定です。
ここで見落としやすいのが、この判定が「一筆ごと」「一棟ごと」ではなく、同じ市区町村の中でその人が持つ土地全体(家屋なら家屋全体)を合計した額で行われる、という点です。相続で複数の小さな土地をまとめて取得した場合、それぞれは免税点未満でも、合計すると免税点(土地なら30万円)に達して新たに課税対象になることがあります。逆に、これまで課税されていた土地を手放して合計額が下がれば、翌年から課税されなくなることもあります。
また、共有名義の不動産の持分については、単独で所有する不動産と合算して判定するのか、共有者の単位で別枠として判定するのかで、取扱いが分かれる場合があります。共有の持分をお持ちの場合、免税点の判定がどうなるかは市区町村の課税窓口にご確認ください。
なお、地方税法351条には「財政上その他特別の必要がある場合」に市区町村の条例で免税点未満でも課税できるという例外規定も置かれています。実際の取扱いは自治体ごとに異なる可能性があるため、個別の課税の有無は該当する市区町村への確認が確実です。
もう一点、この免税点の金額は令和8年度(2026年度)の税制改正で見直されています。家屋は20万円から30万円へ、償却資産は150万円から180万円へ引き上げられ、土地は30万円のまま据え置きです。改正を含む「地方税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第2号)は令和8年3月31日に公布されており、この引き上げが適用されるのは令和9年度(2027年度)分の固定資産税からです。したがって、令和8年度分までは家屋20万円・償却資産150万円で判定されます。家屋の合計額が20万円以上30万円未満で今は課税されている方は、令和9年度分から課税されなくなる可能性があります。
司法書士の立場から特に注意していただきたいのは、免税点未満で納税通知書が届かないからといって、相続登記の申請義務が免除されるわけではない、という点です。固定資産税の課税と相続登記の義務は別の制度であり、通知が来ない土地ほど「登記が漏れている」ことにも気づきにくいため、かえって注意が必要です。
※本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。
まとめ
固定資産税には免税点という仕組みがあり、評価額の低い土地・家屋は課税されないことがあります。ただしこれは同じ市区町村内での合計額で判定されるため、相続で複数の不動産をまとめて取得する場合は注意が必要です。個別の課税の有無や税額の計算については市区町村や税理士にご確認いただき、相続登記の要否についてはお近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月)。
- 地方税法 第351条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 地方税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第2号・令和8年3月31日公布)による改正後の地方税法 第351条(e-Gov法令検索・令和9年4月1日施行の版): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226/20270401_508AC0000000051
- 総務省自治税務局「令和8年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について」(令和8年1月21日事務連絡)別紙第一・1(3)②: https://www.soumu.go.jp/main_content/001053325.pdf