問題:
土地家屋調査士法人に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 調査士は、土地家屋調査士法第五章の定めるところにより、調査士の業務を行うことを目的とする法人である土地家屋調査士法人(以下「調査士法人」という。)を設立することができ、調査士法人の社員は、調査士でなければならない。
イ. 調査士法人が同法第四十三条第一項の規定により業務の全部の停止の処分を受けた場合において、その処分を受けた日以前三十日内にその社員であった者は、当該業務の全部の停止の期間を経過すれば、他の調査士法人の社員となることができる。
ウ. 調査士法人が行う民間紛争解決手続代理関係業務は、その社員のうちに同法第三条第二項に規定する調査士がある場合には行うことができ、当該調査士法人が調査士会の会員であることまでは要件とされていない。
エ. 調査士法人の財産をもってその債務を完済することができないときは、各社員は、その出資の価額を限度として、その弁済の責任を負う。
オ. 調査士法人は、その主たる事務所にのみ、当該事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員である社員を常駐させれば足り、従たる事務所については、この限りでない。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
調査士法人に関する規定は土地家屋調査士法第五章(26条から41条まで)にまとめて置かれている。設立(26条)、名称(27条)、社員の資格(28条)、業務の範囲(29条)という基本構造の後に、登記・設立の手続・定款の変更(30条から34条まで)が続き、業務の執行・法人の代表・社員の責任(35条から35条の4まで)、社員の常駐(36条)、業務の制限(36条の2・36条の3)という順序で組み立てられている。個人の調査士に関する規定(1条から25条まで)が業務の性質を中心に組み立てられているのに対し、法人に関する規定は、設立から解散に至る組織法としての構成を持つ点に特徴がある。
アは正しい。同法26条は「調査士は、この章の定めるところにより、土地家屋調査士法人(調査士の業務を行うことを目的として、調査士が設立した法人をいう。以下「調査士法人」という。)を設立することができる」と定める。そのうえで、同法28条1項は「調査士法人の社員は、調査士でなければならない」と定めており、法人の構成員が調査士に限られることを明文で確認している。
イは正しい。同法28条2項2号は、調査士法人が43条1項の規定により解散又は業務の全部の停止の処分を受けた場合において、「その処分を受けた日以前三十日内にその社員であつた者でその処分を受けた日から三年(業務の全部の停止の処分を受けた場合にあつては、当該業務の全部の停止の期間)を経過しないもの」を、社員となることができない者として掲げる。解散の場合は処分の日から3年、業務の全部の停止の場合はその停止期間という形で、欠格の期間が場合分けされている。業務の全部の停止の処分を受けた場合には、当該停止期間を経過すれば、この号による欠格には当たらなくなり、他の欠格事由に該当しない限り、他の調査士法人の社員となることができる。
ウは誤りである。会員であることが要件から外れているわけではない。同法29条2項は「民間紛争解決手続代理関係業務は、社員のうちに第三条第二項に規定する調査士がある調査士法人(調査士会の会員であるものに限る。)に限り、行うことができる」と定めており、括弧書で、当該調査士法人自体が調査士会の会員であることを明文で要求している。認定を受けた調査士が社員にいることに加えて、法人自体の会員資格という二重の要件が置かれている点が、この条文の急所である。
エは誤りである。有限責任ではなく、無限の連帯責任である。同法35条の3は「調査士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯して、その弁済の責任を負う」と定めており、出資額を限度とする有限責任は定められていない。「その出資の価額を限度として」とする点が誤りである。
オは誤りである。同法36条は「調査士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会の会員である社員を常駐させなければならない」と定める。「その事務所に」という文言には主たる事務所か従たる事務所かによる限定が付されておらず、事務所を設ける以上、それぞれの事務所ごとに、当該事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立された調査士会に所属する社員を常駐させる必要がある。「主たる事務所にのみ……従たる事務所については、この限りでない」とする点が誤りである。
以上より、誤っているものはウ・エ・オの3つである。29条2項の「調査士会の会員であるものに限る」という括弧書、35条の3の「連帯して」という文言、36条の「その事務所に」という限定のない書き方は、いずれも一読しただけでは読み飛ばしやすい箇所であり、条文の文言に即して正確に押さえておきたい。
問題:
継続的給付を受けるための設備の設置権等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
イ. 他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地の所有者に通知すれば足り、当該他の土地を現に使用している者に対して通知することまでは要しない。
ウ. 他の土地に設備を設置する者がその土地の損害に対して支払う償金は、一年ごとに支払うことができるが、他人が所有する設備を使用する者がその使用を開始するために生じた損害に対して支払う償金についても、同様に一年ごとに支払うことができる。
エ. 他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
オ. 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができるが、この場合においても、その土地の損害に対して償金を支払わなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
継続的給付を受けるための設備の設置権等は、令和3年法律第24号による民法改正で新設され、令和5年4月1日から施行されている213条の2及び213条の3に規定されている。電気・ガス・水道水等のライフラインを他の土地を経由して引き込む必要がある場合の規律であり、209条(隣地使用権)・210条から213条まで(囲繞地通行権)と並んで、相隣関係の規定を構成する。
アは正しい。213条の2第1項は「土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付……を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる」と定める。他の土地への設備の設置と、他人が所有する既存の設備の使用という、二つの権利が並べて定められている。
イは誤りである。通知の相手方が土地の所有者に限られない。同条3項は「第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない」と定めており、他の土地等の所有者と、当該他の土地を現に使用している者の双方が通知の相手方とされている。「当該他の土地を現に使用している者に対して通知することまでは要しない」とする点が誤りである。
ウは誤りである。一年ごとの分割払いが明文で認められているのは、設備を設置する場合の土地の損害についてのみである。同条5項は「第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害……に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる」と定める。これに対して、他人が所有する設備を使用する者について定める同条6項は「第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない」と定めるにとどまり、一年ごとの分割払いを認める規定は置かれていない。「同様に一年ごとに支払うことができる」とする点が誤りである。
エは正しい。同条7項は「第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない」と定める。設備を無償で使用できるわけではなく、受益の割合に応じた費用分担義務が明文で課されている。
オは誤りである。分割の場合は無償とされている。213条の3第1項は「分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない」と定める。213条の2第5項が定める土地の損害に対する償金支払義務は、分割によって生じた場合には適用が除外されており、この構造は、分割による囲繞地通行権について213条1項後段が「この場合においては、償金を支払うことを要しない」と定める規律と対をなす。「この場合においても……償金を支払わなければならない」とする点が誤りである。なお、213条の3第2項は、この規律を土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用している。
以上より、誤っているものはイ・ウ・オの3つである。213条の2は、設備設置権(1項前段)と設備使用権(1項後段)を一つの項にまとめつつ、場所及び方法の選定基準(2項)、通知(3項)、他の土地の使用(4項。209条1項ただし書及び2項から4項までを準用)、償金(5項・6項)、費用負担(7項)という順序で書き分けており、209条・210条以下の規律と対比しながら読むと理解しやすい。
問題:
共有物の分割及び持分の放棄等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
イ. 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
ウ. 裁判所が共有物の分割を命ずることができる方法は、共有物の現物を分割する方法に限られ、共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法によることはできない。
エ. 共有物の現物を分割する方法又は共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部若しくは一部を取得させる方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときであっても、裁判所は、その競売を命ずることはできない。
オ. 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
共有者の持分の帰属は民法255条に、共有物の分割は同法258条に規定されている。地目認定や地積測量図の作成が数人の共有名義の土地に及ぶ場面は少なくなく、持分の帰属や裁判による分割の枠組みは、表示登記の前提として押さえておく必要がある。
アは正しい。民法255条は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定める。持分の放棄及び相続人不存在という異なる原因が、いずれも他の共有者への帰属という同じ効果に結び付けられている。もっとも、相続人がない場合については、家庭裁判所が特別縁故者に対して清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができるとする同法958条の2が置かれており、この分与の手続との先後関係が問題となる。この点について判例は、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は特別縁故者に対する財産分与の対象となり、その分与がされないときに255条により他の共有者に帰属するとしている(最判平成元年11月24日民集43巻10号1220頁)。本肢は255条の文言をそのまま述べたものであり、正しい。
イは正しい。民法258条1項は「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる」と定める。協議による分割が原則であり、それが調わない場合又はそもそも協議自体をすることができない場合に、裁判所への請求という道が開かれる。
ウは誤りである。裁判所が命ずることができる分割の方法は現物分割に限られない。同条2項は「裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる」と定め、1号に「共有物の現物を分割する方法」を、2号に「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」を掲げている。2号のうち、他の共有者の持分の全部を取得させる場合が、いわゆる全面的価格賠償による分割に対応するものと位置付けられる。「現物を分割する方法に限られ……方法によることはできない」とする点が誤りである。
エは誤りである。競売を命ずることができないわけではない。同条3項は「前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる」と定める。現物分割・賠償分割のいずれの方法によっても分割することができない場合、又は分割によって価格が著しく減少するおそれがある場合の受け皿として、競売による分割(換価分割)が用意されている。「裁判所は、その競売を命ずることはできない」とする点が誤りである。
オは正しい。同条4項は「裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる」と定める。分割の裁判そのものに加えて、その実現に必要な給付を付随的に命ずることができる旨が明文化されている。
以上より、誤っているものはウ・エの2つである。258条2項1号・2号が定める現物分割・賠償分割という二つの方法によることができない場合の受け皿として3項の競売が置かれ、分割の裁判の実効性を確保するために4項の付随的給付命令が置かれるという段階構造を、条文の順序どおりに押さえておきたい。
問題:
筆界特定の申請の却下に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 対象土地の所在地が当該申請を受けた法務局又は地方法務局の管轄に属しないときは、筆界特定登記官は、当該申請を却下しなければならない。
イ. 対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定しているときは、申請を却下しなければならないが、その訴えを不適法として却下した判決が確定しているときは、この却下事由には当たらない。
ウ. 対象土地の筆界について、既に筆界特定登記官による筆界特定がされているときは、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合であっても、当該申請を却下しなければならない。
エ. 手数料を納付しないとき、及び第百四十六条第五項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないときは、いずれも申請の却下事由となる。
オ. 筆界特定の申請の却下は、登記官の処分とみなされ、これに不服がある者は、当該処分をした登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に対して審査請求をすることができる。
答え:
誤っているものは、ウの1つである。
解説:
筆界特定の申請の却下事由は不動産登記法132条1項に列挙されている。1号から5号までが申請そのものの適法性に関わる事由(管轄、申請権限、申請内容の記載事項、申請の方式、申請の目的)であり、6号・7号が対象土地の筆界について既に判断が示されている場合の事由、8号・9号が手数料及び予納に関する事由という構成になっている。
アは正しい。同法132条1項1号は「対象土地の所在地が当該申請を受けた法務局又は地方法務局の管轄に属しないとき」を却下事由として掲げる。筆界特定の事務は対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどるものとされており(同法124条1項)、この管轄を欠く申請は却下の対象となる。
イは正しい。同項6号は「対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき」を却下事由として掲げる。括弧書により、訴えを不適法として却下した判決(本案の判断に至っていないもの)は、この却下事由から除かれている。筆界の帰属について実体判断が既に示されている場合に重ねて筆界特定をすることを避ける趣旨によるものと解され、本案判断を経ていない却下判決は、この趣旨に当たらない。
ウは誤りである。同項7号は「対象土地の筆界について、既に筆界特定登記官による筆界特定がされているとき。ただし、対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除く」と定めており、ただし書によって、特段の必要が認められる場合には却下事由から除かれる。「特段の必要があると認められる場合であっても、当該申請を却下しなければならない」とする点は、このただし書を落としており誤りである。
エは正しい。同項8号は「手数料を納付しないとき」を、9号は「第百四十六条第五項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないとき」を、それぞれ却下事由として掲げている。手数料そのものの不納付(8号)と、鑑定その他の費用に充てるための予納命令に応じないこと(9号)とが、別の号として並べられている。
オは正しい。同条2項は「前項の規定による筆界特定の申請の却下は、登記官の処分とみなす」と定めている。これにより、筆界特定の申請の却下は、登記官の処分に不服がある者が当該登記官を監督する法務局又は地方法務局の長に審査請求をすることができるとする同法156条1項の対象に含まれることになる。
以上より、誤っているものはウの1つである。6号・7号はいずれも既に筆界についての判断が示されている場合の却下事由であるが、6号の括弧書(訴え却下の除外)と7号のただし書(特段の必要がある場合の除外)という、除外の位置付け方の違いを正確に押さえておきたい。
問題:
基本測量の永久標識及び一時標識に関する通知等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 国土地理院の長は、基本測量において永久標識又は一時標識を設置したときは、遅滞なく、その種類及び所在地その他国土交通省令で定める事項を関係都道府県知事に通知するとともに、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
イ. 都道府県知事は、アの通知を受けたときは、遅滞なく、その旨を関係市町村長に通知しなければならないが、市町村長は、基本測量の永久標識又は一時標識について滅失、破損その他異状があることを発見したときは、都道府県知事を経由することなく、遅滞なく、その旨を国土地理院の長に通知しなければならない。
ウ. 何人も、国土地理院の長の承諾を得ないで、基本測量の測量標を移転し、汚損し、その他その効用を害する行為をしてはならないが、この禁止は永久標識についてのみ及び、一時標識には及ばない。
エ. 国土地理院の長は、基本測量の永久標識又は一時標識を移転し、撤去し、又は廃棄したときは、遅滞なく、その種類及び旧所在地その他国土交通省令で定める事項を関係都道府県知事に通知すれば足り、当該標識の敷地の所有者又は占有者への通知までは要しない。
オ. 基本測量の永久標識又は一時標識の汚損その他その効用を害するおそれがある行為を当該標識の敷地又はその付近でしようとする者は、理由を記載した書面をもって、国土地理院の長に移転を請求することができる。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
基本測量の永久標識及び一時標識をめぐる通知・保全・移転の規律は測量法21条から24条までにまとめて置かれている。設置の通知(21条)、測量標の保全(22条)、移転等の通知(23条)、関係者からの移転の請求(24条)という順序で構成されており、国土地理院の長を起点とする通知の流れと、標識を保全するための禁止・請求の仕組みとが対になっている。
アは正しい。同法21条1項は「国土地理院の長は、基本測量において永久標識又は一時標識を設置したときは、遅滞なく、その種類及び所在地その他国土交通省令で定める事項を関係都道府県知事に通知するとともに、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない」と定めている。
イは正しい。同条2項は「都道府県知事は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その旨を関係市町村長……に通知しなければならない」と定め、同条3項は「市町村長は、基本測量の永久標識又は一時標識について、滅失、破損その他異状があることを発見したときは、遅滞なく、その旨を国土地理院の長に通知しなければならない」と定めている。設置の通知は国土地理院の長から都道府県知事、都道府県知事から市町村長へと段階的に流れる一方、異状の発見に係る通知は、3項の文言上、市町村長から直接国土地理院の長に対してされるものとされており、都道府県知事を経由する旨の定めは置かれていない。
ウは誤りである。同法22条は「何人も、国土地理院の長の承諾を得ないで、基本測量の測量標を移転し、汚損し、その他その効用を害する行為をしてはならない」と定めている。「測量標」には永久標識と一時標識の双方が含まれ、条文上、永久標識と一時標識とで禁止の及ぶ範囲を書き分ける文言は置かれていない。「この禁止は永久標識についてのみ及び、一時標識には及ばない」とする点が誤りである。
エは誤りである。通知の相手方は都道府県知事に限られない。同法23条1項は「国土地理院の長は、基本測量の永久標識又は一時標識を移転し、撤去し、又は廃棄したときは、遅滞なく、その種類及び旧所在地その他国土交通省令で定める事項を関係都道府県知事及びその敷地の所有者又は占有者に通知するとともに、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない」と定めており、関係都道府県知事と当該標識の敷地の所有者又は占有者の双方が通知の相手方とされている。「関係都道府県知事に通知すれば足り……所有者又は占有者への通知までは要しない」とする点が誤りである。
オは正しい。同法24条1項は「基本測量の永久標識又は一時標識の汚損その他その効用を害するおそれがある行為を当該永久標識若しくは一時標識の敷地又はその付近でしようとする者は、理由を記載した書面をもつて、国土地理院の長に当該永久標識又は一時標識の移転を請求することができる」と定めている。標識の存置がかえって土地の利用の妨げになる場合の調整規定として、標識の保全(22条)と対をなす仕組みである。
以上より、誤っているものはウ・エの2つである。21条から24条までは、国土地理院の長を起点又は終点とする通知の連鎖(21条・23条)と、測量標そのものの保全に関わる禁止・請求(22条・24条)という二つの軸で組み立てられており、それぞれの条文が「誰から誰に対して」通知を求めているかを正確に区別しておく必要がある。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 土地家屋調査士法(調査士法人) | 調査士法人の設立及び社員の資格、業務の全部の停止処分を受けた場合の欠格期間、民間紛争解決手続代理関係業務における調査士会の会員資格の要件、社員の連帯責任、社員の常駐義務が各事務所に及ぶこと | 土地家屋調査士法26条、28条1項・2項2号、29条1項・2項、35条の3、36条 |
| 第2問 | 民法(相隣関係) | 継続的給付を受けるための設備の設置権及び設備使用権、通知の相手方(所有者及び現に使用している者)、償金の一年ごとの分割払いが設備設置の場合に限られること、設備使用に伴う費用負担、分割による設備設置権における償金支払義務の適用除外 | 民法213条の2第1項・3項・5項〜7項、213条の3第1項・2項(令和3年法律第24号、令和5年4月1日施行) |
| 第3問 | 民法(共有) | 持分の放棄及び共有者の死亡による他の共有者への帰属、共有物の分割請求、裁判による分割の方法(現物分割・賠償分割)、分割の方法によることができない場合等の競売、分割の裁判における付随的給付命令 | 民法255条、258条1項〜4項 |
| 第4問 | 不動産登記法(筆界特定制度) | 筆界特定の申請の却下事由(管轄、確定判決の存在とその除外、既にされた筆界特定とその除外、手数料及び予納)、却下が登記官の処分とみなされることと審査請求 | 不動産登記法132条1項1号・6号・7号・8号・9号、2項、124条1項、156条1項 |
| 第5問 | 測量法(基本測量) | 永久標識及び一時標識の設置の通知及び公表、都道府県知事から市町村長への通知と異状発見時の市町村長から国土地理院の長への直接の通知、測量標の保全(永久標識・一時標識の別を問わないこと)、移転等の通知の相手方、関係者からの移転の請求 | 測量法21条1項〜3項、22条、23条1項、24条1項 |