問題:
筆界特定の定義及び申請に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 不動産登記法第123条第1号にいう「筆界」とは、表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいい、この場合の「これに隣接する他の土地」には、表題登記がない土地も含まれる。
イ. 同条第2号にいう「筆界特定」とは、一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、筆界の現地における位置を特定することをいい、その位置を特定することができないときは、当該筆界特定の申請は却下しなければならない。
ウ. 同条第4号にいう「関係土地」とは、対象土地について所有権登記名義人等以外の者であって、筆界特定の手続に重大な利害関係を有するものをいう。
エ. 地方公共団体は、その区域内の対象土地の所有権登記名義人等の全員の同意を得たときは、筆界特定登記官に対し、当該対象土地の筆界(不動産登記法第14条第1項の地図に表示されないものに限る。)について、筆界特定の申請をすることができる。
オ. 筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起されたときは、裁判所は、当該訴訟において訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができ、当該訴えの提起後に当該筆界について筆界特定がされたときも、同様である。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・エの3つである。
解説:
筆界特定制度は、不動産登記法第六章(123条から150条まで)に規定されている。同章は、第一節・総則(123条から130条まで)、第二節・筆界特定の手続(131条から141条まで)、第三節・筆界特定(142条から145条まで)、第四節・雑則(146条から150条まで)から成る。同章冒頭の123条は、この章で用いられる用語の意義を定める定義規定であり、131条は筆界特定の申請の要件を、147条は筆界特定と民事訴訟(筆界確定訴訟)との関係を定める規定である。申請の却下事由(132条)とは別の角度から、定義・申請主体・訴訟との連携という3つの局面を確認しておきたい。
アは正しい。不動産登記法123条1号は「筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう」と定めている。括弧書きにより、隣接する他の土地には表題登記がない土地も含まれることが明示されている。
イは誤りである。同条2号は「筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう」と定めている。筆界の現地における位置を特定することができない場合には、その位置の範囲を特定することも「筆界特定」に含まれるのであって、この場合に申請を却下しなければならないとする点は、条文にない要件を付け加えるものであり誤りである。
ウは誤りである。同条4号は「関係土地 対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって、筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するものをいう」と定めている。関係土地は土地についての定義であって、対象土地の所有権登記名義人等以外の者(人)についての定義ではない。「重大な利害関係を有するもの」という人を指す記述にすり替えている点が誤りである。なお、人を指す概念としては、対象土地の所有権登記名義人等であって筆界特定の申請人以外のもの及び関係土地の所有権登記名義人等を「関係人」とする定義が、筆界特定の申請の公告及び通知について定める133条1項に置かれている。
エは誤りである。131条2項は「地方公共団体は、その区域内の対象土地の所有権登記名義人等のうちいずれかの者の同意を得たときは、筆界特定登記官に対し、当該対象土地の筆界(第十四条第一項の地図に表示されないものに限る。)について、筆界特定の申請をすることができる」と定めている。同意を得るべき対象は「いずれかの者」で足り、所有権登記名義人等の全員の同意までは要件とされていない。なお、同条1項により、土地の所有権登記名義人等自身も筆界特定の申請をすることができ、同条4項により申請人は手数料を納付しなければならない。
オは正しい。147条前段は「筆界特定がされた場合において、当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起されたときは、裁判所は、当該訴えに係る訴訟において、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができる」と定め、同条後段は「民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起された後、当該訴えに係る筆界について筆界特定がされたときも、同様とする」と定めている。147条は項に分かれておらず、一つの条文の前段・後段として規定されている点にも注意したい。筆界特定と筆界確定訴訟の先後関係を問わず、裁判所が筆界特定手続記録の送付を嘱託できる点が押さえどころである。
以上より、誤っているものはイ・ウ・エの3つである。123条の定義規定は、「筆界」「筆界特定」「対象土地」「関係土地」「所有権登記名義人等」の5つの号から成り、いずれも土地を指す概念と人を指す概念とを取り違えないことが肝要である。
問題:
土地家屋調査士の業務範囲に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 調査士が他人の依頼を受けて業として行うことができる事務には、不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量のほか、当該登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理が含まれる。
イ. 筆界特定の手続についての代理は、調査士の業務として土地家屋調査士法第3条第1項に規定されているが、ここにいう筆界特定の手続には、筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続は含まれない。
ウ. 前各号に掲げる事務についての相談は、土地家屋調査士法第3条第1項に規定する調査士の業務には含まれていない。
エ. 民間紛争解決手続代理関係業務を行うことができる調査士は、法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程を修了し、その申請に基づき法務大臣が当該業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であって、かつ、調査士会の会員であることを要する。
オ. 土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続についての代理は、当該事件について弁護士が同一の依頼者から受任しているかどうかにかかわらず、行うことができる。
答え:
誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。
解説:
土地家屋調査士法3条は、調査士が業として行うことができる事務(業務範囲)を定める中核規定である。1項は8つの号に分けて事務の内容を列挙し、2項は、そのうち7号・8号に規定する民間紛争解決手続代理関係業務を行うための追加的な要件を定めている。号ごとの対象事務の広狭と、2項の追加要件の内容を正確に区別することが本条の急所である。
アは正しい。同条1項1号は「不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量」を、2号は「不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理」を、それぞれ調査士の業務として掲げている。
イは誤りである。同項4号は「筆界特定の手続(不動産登記法第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。次号において同じ。)についての代理」と定めている。括弧書きにより、筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続も「筆界特定の手続」に含まれることが明示されている。「含まれない」とする点が誤りである。
ウは誤りである。同項6号は「前各号に掲げる事務についての相談」を掲げており、1号から5号までの事務についての相談は、調査士の業務に含まれる。「含まれていない」とする点が誤りである。
エは正しい。同条2項は、民間紛争解決手続代理関係業務(1項7号・8号に規定する業務)を行うことができる調査士の要件として、1号に「民間紛争解決手続代理関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であつて法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること」、2号に「前号に規定する者の申請に基づき法務大臣が民間紛争解決手続代理関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること」、3号に「調査士会…の会員であること」を掲げている。研修の修了、法務大臣の認定、調査士会の会員という3つの要件をいずれも満たす必要がある。
オは誤りである。同条2項後段は「この場合において、同項第七号に規定する業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、行うことができる」と定めている。土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続についての代理(1項7号)は、弁護士が同一の依頼者から当該事件を受任していることが要件とされており、「弁護士が受任しているかどうかにかかわらず」行うことができるとする点が誤りである。なお、これに対する相談(1項8号)には、この弁護士受任の限定は付されていない。
以上より、誤っているものはイ・ウ・オの3つである。2項後段が限定の対象を「同項第七号に規定する業務」と明示していることから、弁護士が同一の依頼者から当該事件を受任していることという追加の限定は7号の代理業務にのみ課され、8号(7号事務についての相談)には及ばない点、また2項の3要件はいずれも欠くことができない点を、条文の文言のとおりに押さえておきたい。
問題:
水流に関する相隣関係の規定についての次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
イ. 水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、低地の所有者の承諾を得なければ、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができない。
ウ. 他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。
エ. 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。
オ. 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときであっても、両岸の土地の水路及び幅員を自由に変更することができる。
答え:
誤っているものは、イ・オの2つである。
解説:
水に関する相隣関係の規定のうち、214条から219条までは、自然水流に対する妨害の禁止(214条)、水流の障害の除去(215条)、水流に関する工作物の修繕等(216条)、費用の負担についての慣習(217条)、雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止(218条)、水流の変更(219条)を定めている。このうち217条は「前二条の場合において」と定めており、215条の工事の費用と216条の工作物の修繕等の費用の双方について、別段の慣習を優先させる規定である点に注意したい。低地への通水や通水用工作物の使用、堰の設置及び使用を定める220条から222条までとは異なる場面を規律するものであり、いずれも水をめぐる土地相互の利害調整という共通の視点で組み立てられている。
アは正しい。民法214条は「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない」と定めている。自然の水流を人為的にせき止めることを禁ずる、最も基本的な規律である。
イは誤りである。民法215条は「水流が天災その他避けることのできない事変により低地において閉塞したときは、高地の所有者は、自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができる」と定めている。高地の所有者が自ら行うことができる工事であって、低地の所有者の承諾を得ることは要件とされていない。「承諾を得なければ…することができない」とする点が誤りである。なお、この工事に要する費用の負担について別段の慣習があるときは、その慣習に従う(217条)。
ウは正しい。民法216条は「他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる」と定めている。215条が高地の所有者自身による工事を認めるのに対し、216条は他の土地の所有者に工作物の修繕等をさせるという構成である点に違いがある。
エは正しい。民法218条は「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない」と定めている。
オは誤りである。民法219条1項は「溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない」と定めており、対岸が他人の所有に属する場合には水路又は幅員の変更が禁じられる。同条2項は「両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない」と定めている。水路及び幅員を変更することができるのは、両岸の土地がいずれも水流地の所有者に属する場合であり、その場合であっても、水流が隣地と交わる地点においては自然の水路に戻さなければならず(同項ただし書)、無制約に変更できるわけではない。「対岸の土地が他人の所有に属するときであっても…自由に変更することができる」とする点は、1項と2項の適用場面を混同するものであり誤りである。なお、219条1項・2項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う(同条3項)。
以上より、誤っているものはイ・オの2つである。215条・216条は、その両方を「前二条」として受け費用の負担について慣習を優先させる217条と、219条1項・2項は、その両方を「前二項」として受け異なる慣習を優先させる同条3項と、それぞれセットで理解しておく必要がある。
問題:
基本測量の実施に伴う土地の立入り等に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施するために必要があるときは、国有、公有又は私有の土地に立ち入ることができるが、宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ろうとするときは、あらかじめその占有者に通知しなければならず、この通知はいかなる場合であっても省略することができない。
イ. アの規定により土地に立ち入る者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを呈示しなければならない。
ウ. 国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施するためにやむを得ない必要があるときは、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得て、障害となる植物又はかき、さく等を伐除することができるが、山林原野又はこれに類する土地で、あらかじめ承諾を得ることが困難であり、かつ植物等の現状を著しく損傷しないときは、承諾を得ないで伐除することができ、この場合には遅滞なくその旨を所有者又は占有者に通知しなければならない。
エ. 国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施する場合において、仮設標識を設置するために必要があるときは、占有者の承諾を得なければ、土地、樹木又は工作物を一時使用することができない。
オ. 政府は、基本測量を実施するために必要があるときは、土地、建物、樹木若しくは工作物を収用し、又は使用することができ、この収用又は使用に関しては土地収用法が適用されるほか、障害物の伐除又は土地等の一時使用により損失を受けた者があるときは、政府は、その者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・エの2つである。
解説:
測量法15条から20条までは、基本測量の実施に伴い、測量に従事する者が他人の土地に立ち入り、障害物を伐除し、又は土地等を一時使用する場合の手続と、これらによって生じた損失の補償を定めている。15条から18条までは「国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者」を主体とするのに対し、19条・20条は「政府」を主体としており、主体の違いにも注意したい。
アは誤りである。測量法15条1項は「国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施するために必要があるときは、国有、公有又は私有の土地に立ち入ることができる」と定め、同条2項は「前項の規定により宅地又はかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめその占有者に通知しなければならない。但し、占有者に対してあらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない」と定めている。あらかじめの通知が困難であるときは通知を要しないというただし書が置かれており、「いかなる場合であっても省略することができない」とする点が誤りである。
イは正しい。同条3項は「第一項に規定する者が、同項の規定により土地に立ち入る場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない」と定めている。なお、同条4項により、この証明書の様式は国土交通省令で定める。
ウは正しい。測量法16条は「国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施するためにやむを得ない必要があるときは、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得て、障害となる植物又はかき、さく等を伐除することができる」と定めている。これに対し、17条は「国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、山林原野又はこれに類する土地で基本測量を実施する場合において、あらかじめ所有者又は占有者の承諾を得ることが困難であり、且つ、植物又はかき、さく等の現状を著しく損傷しないときは、前条の規定にかかわらず、承諾を得ないで、これらを伐除することができる。この場合においては、遅滞なく、その旨を所有者又は占有者に通知しなければならない」と定めている。16条の原則(承諾を得て伐除)に対し、17条は山林原野等における例外(承諾を得ないで伐除、事後の通知)を定める関係にある。
エは誤りである。測量法18条は「国土地理院の長又はその命を受けた者若しくは委任を受けた者は、基本測量を実施する場合において、仮設標識を設置するために必要があるときは、あらかじめ占有者に通知して、土地、樹木、又は工作物を一時使用することができる。但し、占有者に対しあらかじめ通知することが困難であるときは、通知することを要しないものとする」と定めている。土地等の一時使用に要件とされているのは占有者への「通知」であって、「承諾」ではない。「占有者の承諾を得なければ…使用することができない」とする点が誤りである。
オは正しい。測量法19条1項は「政府は、基本測量を実施するために、必要があるときは、土地、建物、樹木若しくは工作物を収用し、又は使用することができる」と定め、同条2項は「前項の規定による収用又は使用に関しては、土地収用法…を適用する」と定めている。また、20条1項は「第十六条から第十八条までの規定による植物、垣若しくはさく等の伐除又は土地、樹木若しくは工作物の一時使用により、損失を受けた者がある場合においては、政府は、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない」と定めており、同条2項により、補償金額に不服がある者は、金額の通知を受けた日から一月以内に、土地収用法所定の収用委員会の裁決を求めることができる。
以上より、誤っているものはア・エの2つである。15条2項のただし書(通知困難な場合の例外)と18条本文の「通知」(承諾ではない)という、いずれも要件を緩和する方向の文言を落とさずに押さえておきたい。
問題:
建物の合併の登記の制限に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物は、他の建物との合併の登記をすることができない。
イ. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物であっても、その双方が同一の登記所の管轄に属する限り、合併の登記をすることができる。
ウ. 表題部所有者又は所有権の登記名義人が同一人であっても、その持分が相互に異なる建物の合併の登記をすることはできない。
エ. 所有権の登記がない建物と所有権の登記がある建物との合併の登記は、所有権の登記がある建物の側の登記名義人が、合併後の建物の登記名義人となることに同意すれば、することができる。
オ. 所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物は、当該権利に関する登記が、合併後の建物の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものである場合を除き、他の建物との合併の登記をすることができない。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
建物の合併の登記の制限は、不動産登記法56条に規定されている。土地の合筆の登記の制限を定める41条と対をなす規定であり、各号の禁止事由を正確に列挙できるようにしておきたい。
アは正しい。同条1号は「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の合併の登記」を、することができない合併の登記として掲げている。共用部分である旨の登記がある建物は、既に表題部所有者の登記又は権利に関する登記が職権で抹消された特殊な状態にあり、通常の建物とは異なる扱いを受ける。
イは誤りである。同条2号は「表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物の合併の登記」をすることができないものとして掲げており、同一の登記所の管轄に属するかどうかによってこの禁止が左右される旨の定めは置かれていない。「同一の登記所の管轄に属する限り、合併の登記をすることができる」とする点が誤りである。
ウは正しい。同条3号は「表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に持分を異にする建物の合併の登記」をすることができないものとして掲げている。所有者の顔ぶれが同じであっても、持分の割合が異なれば、合併後の一個の建物について単一の持分割合を公示することができないためであると説明される。
エは誤りである。同条4号は「所有権の登記がない建物と所有権の登記がある建物との建物の合併の登記」をすることができないものとして掲げており、所有権の登記がある建物の側の登記名義人の同意によってこの禁止が解除される旨の定めは置かれていない。「同意すれば、することができる」とする点が誤りである。
オは正しい。同条5号は「所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物(権利に関する登記であって、合併後の建物の登記記録に登記することができるものとして法務省令で定めるものがある建物を除く。)の建物の合併の登記」をすることができないものとして掲げている。括弧書きにより、法務省令で定める一定の権利に関する登記がある場合には、この禁止の対象から除かれる。
以上より、誤っているものはイ・エの2つである。56条各号は、いずれも「〜相互に異なる(又は持分を異にする)」「〜がない・ある」という対比の形で禁止事由を定めており、管轄や当事者の同意によってこれらの禁止が緩和される旨の定めが置かれていないことを、条文の文言に即して確認しておきたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(筆界特定制度) | 筆界・筆界特定・関係土地の定義、地方公共団体による申請の要件(いずれかの者の同意)、筆界確定訴訟における筆界特定手続記録の送付嘱託 | 不動産登記法123条1号・2号・4号、131条1項・2項・4項、147条前段・後段 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法(業務範囲) | 調査士の業務範囲(不動産の表示に関する登記の調査測量・申請代理、筆界特定の手続についての代理とその範囲、事務についての相談)、民間紛争解決手続代理関係業務を行うための3要件、弁護士との共同受任要件 | 土地家屋調査士法3条1項1号・2号・4号・6号・7号・8号、3条2項前段・後段、2項1号〜3号 |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 自然水流の妨害禁止、水流の障害の除去(承諾不要)、水流に関する工作物の修繕等をさせる権利、雨水を隣地に注ぐ工作物の設置禁止、水流の変更(対岸他人所有の場合の禁止と両岸自己所有の場合の許容) | 民法214条、215条、216条、217条、218条、219条1項〜3項 |
| 第4問 | 測量法(基本測量) | 土地の立入りと占有者への通知(困難な場合の例外)、身分証明書の携帯・呈示、障害物の伐除の原則(承諾を得て)と山林原野等の例外(承諾不要・事後通知)、土地等の一時使用(通知で足り承諾は不要)、収用又は使用と損失補償 | 測量法15条1項〜4項、16条、17条、18条、19条1項・2項、20条1項・2項 |
| 第5問 | 不動産登記法(表示に関する登記) | 建物の合併の登記の制限(共用部分である旨の登記がある建物、表題部所有者等が相互に異なる建物、持分を異にする建物、所有権登記の有無が異なる建物、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物とその例外) | 不動産登記法56条1号〜5号 |