相続登記が終わったら次にやること──固定資産税の名義・火災保険・賃貸契約・売却の準備

この記事の要点 相続登記が終わると、登記所から市区町村へ通知が届き、固定資産税の課税台帳の名義は登記をもとに切り替わる仕組みになっている(地方税法382条) ただし固定資産税は毎年1月1日時点の状況で決まるため、新しい名義人あての納税通知書になるのは、登記後に迎える1月1日を基準とする年度から 火災保険は登記で自動的に切り替わらない。契約者・被保険者などの名義や引き落とし口座を、保険会社・代理店に連絡して確認する 人に貸している物件は、貸主の立場も相続で引き継がれる。借主・管理会社への連絡を忘れずに 売却を考えるなら、登記後に届いた書類の保管、共有者どうしの意思確認、仲介は不動産会社・税金は税理士への相談を早めに 相続登記が終わると、ひと区切りついた気持ちになります。ただ、不動産の名義が変わったことで、まわりの手続きにも見直しが必要なものが出てきます。結論からいうと、固定資産税の名義は登記をもとに市区町村の側で切り替わる仕組みですが、火災保険や賃貸借契約、売却の準備は、名義を引き継いだ方が自分で動く必要があります。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

遠方や海外に住む人が不動産を相続したら──固定資産税の『納税管理人』とは

この記事の要点 固定資産税を納める人が、その不動産のある市区町村に住所・居所・事務所・事業所をもたない場合、納税の手続きを代わりに処理する「納税管理人」を定めることが、地方税法355条1項で求められている 定め方は、条例で決められた地域内の人を選んで市区町村長に「申告」する方法と、地域外の人を選ぶことについて「申請」して承認を受ける方法の2通り。税金の徴収に支障がないと市区町村長の「認定」を受ければ、定めなくてよい(同条2項) 相続人の中から書類の受取人を決める「相続人代表者指定届」とは別の制度。国税(相続税など)の納税管理人も、固定資産税とは別の法律の別の制度 結論から言うと、相続で不動産を引き継いだ人が、その不動産のある市区町村の外に住んでいる場合には、固定資産税について「納税管理人」を定めるか、定めなくてよいという認定を受けるかを、その市区町村に確認しておく必要があります。海外に住んでいる場合だけの話ではない点に注意が必要です。 ...

2026年10月9日 · ひぐらしさとし

相続と税金の入口まとめ──税目別に見る、司法書士が答えられる範囲と税理士に聞くこと

この記事の要点 相続にかかわる税金は「相続税」だけではない。亡くなった方の所得税(準確定申告)、生前の贈与税、相続した不動産を持ち続ける・売る・名義を変えるときの税金など、場面ごとに別々の税目が関係してくる 期限がある申告の代表は、準確定申告(原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内)と相続税の申告(同じく10か月以内) 税金がかかるかどうか、申告が必要かどうか、税額がいくらになるかは、個別の事情によって変わるため税理士に確認する 相続の場面で司法書士が登記手続きの一環として税額を計算して案内できるのは、登記を受けるときにかかる「登録免許税」だけ 下の一覧表で自分の状況に近い行を探し、詳しくはそれぞれの記事へ進んでください 相続のあとに「どんな税金がかかるのか」を考えるときは、まず「どの場面の税金か」を一つ決めて、その税目の記事から読むのが近道です。相続の税金というと相続税が思い浮かびますが、実際には、亡くなった方のその年の所得、生前に受けた贈与、相続した不動産の保有・売却・名義変更など、場面ごとにかかわる税目が違います。 ...

2026年9月27日 · ひぐらしさとし

固定資産税の課税明細書の見方──登記や相続の準備で使う欄はどこ?

この記事の要点 課税明細書には、土地なら所在・地番・地目・地積・価格、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積・価格が書かれている 「価格(評価額)」と「課税標準額」は別の数字。登記でかかる登録免許税の計算のもとになるのは「価格」のほう 登記されていない建物が載っていることがあり、相続の準備で見落としに気づく手がかりになる 毎年春ごろに市町村から届く固定資産税の納税通知書には、一般に「課税明細書」という一覧が同封されています。結論から言えば、登記や相続の準備では、この明細書のうち「所在・地番/家屋番号」と「価格(評価額)」の欄が特に役立ちます。以下は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月23日 · ひぐらしさとし

増築したときの登記──床面積が変わったら表題部の変更登記

この記事の要点 増築で床面積・構造・種類が変わったら、変更があった日から1か月以内に建物の表題部の変更登記を申請する義務がある(不動産登記法51条1項) 申請には増築後の建物の形を反映した建物図面・各階平面図が必要で、測量・作図を伴うため依頼先は土地家屋調査士 正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になり得る(不動産登記法164条1項) 固定資産税の家屋調査とは別の手続き。税額の計算や軽減の適用は市区町村の資産税担当・税理士の領域 登記記録と実際の建物の状態が食い違ったまま放置すると、将来の売却や相続登記でつまずく原因になる 増築の工事が終わっても、それで一区切りとはいきません。増築によって床面積や構造、建物の種類が変わったときは、その変更を登記記録に反映させる建物の表題部の変更登記を、変更があった日から1か月以内に申請しなければなりません。この記事では、増築でどんなときに登記が必要になるか、申請に必要なもの、期限と過料、固定資産税との関係、依頼先の順に整理します。 ...

2026年9月19日 · ひぐらしさとし

固定資産税は毎年見直されるの?──3年に1度の『評価替え』と据置年度のしくみ

この記事の要点 固定資産税評価額は原則として3年に1度(基準年度)に見直され(評価替え)、残りの2年間(据置年度)は同じ価格が据え置かれる 据置年度中でも、地目の変換や家屋の増改築など特別の事情があれば例外的に価格が修正されるほか、土地には地価が下落した場合に対応する修正の仕組みもある 相続や売買で登記名義が変わっても評価額や税額がすぐには動かないことがあるのは、評価替えの周期と「賦課期日」という別のルールが関係している 「去年の固定資産税の納税通知書と、今年届いた通知書を見比べたら、評価額の欄がまったく同じ数字だった」というお話や、逆に「特に何もしていないのに評価額が上がっていた」というお話を伺うことがあります。実はどちらも、固定資産税評価額が3年に1度まとめて見直される、という制度の仕組みによるものです。なお、本記事は評価替え・据置年度の一般的なしくみをご説明するものであり、個々の土地・家屋について評価額がどう計算されるか、具体的な税額がいくらになるかといった試算は行いません。あらかじめご了承ください。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし

固定資産税の『免税点』とは──小さな土地でも税金がかからないことがある仕組み

この記事の要点 固定資産税には「免税点」があり、土地30万円未満・家屋20万円未満・償却資産150万円未満なら原則として課税されない 免税点は一筆・一棟ごとではなく、同じ市区町村内でその人が持つ土地全体(または家屋全体)の合計額で判定される(共有名義の持分の取扱いは別途確認が必要) 令和9年度(2027年度)分から家屋の免税点は30万円、償却資産は180万円に引き上げられる(土地の30万円は据え置き) 「納税通知書が来ない=相続登記もしなくていい」ではない点に注意 固定資産税の納税通知書が届かない土地がある、というご相談を受けることがあります。山林や評価額の低い小さな土地などで起こりやすい現象で、その理由のひとつが、地方税法が定める「免税点」という仕組みです。ただし、通知が届かない理由は免税点だけとは限らず、公共の用に供する道路のようにそもそも非課税とされている場合など、別の理由によることもあります。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし

都市計画税とは何か──固定資産税とセットで課税される理由

この記事の要点 都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用にあてるための市町村の「目的税」で、固定資産税とは別の税金(地方税法702条) 課税できる区域は都市計画区域の中に限られ、区域区分(線引き)がある都市計画区域では「市街化区域」内の土地・家屋、線引きがない都市計画区域では条例で定める区域が対象になる(地方税法702条1項)。税率は0.3%が上限(地方税法702条の4)。課税するかどうかや実際の税率は市町村ごとに異なる 固定資産税評価額を課税標準とする点や、毎年1月1日時点の所有者に課税される点は固定資産税と共通しているため、1枚の納税通知書にまとめて記載されることが多い 固定資産税の納税通知書を見ると、「固定資産税」の欄の隣に「都市計画税」という欄が並んでいて、合計額が請求されていることがあります。この2つは名前が並んでいるため同じ税金の一部だと思われがちですが、法律上は別の税金です。 ...

2026年8月18日 · ひぐらしさとし

相続で共有名義にした不動産の固定資産税、誰が払う?──連帯納税義務と『代表者』のしくみ

この記事の要点 共有名義の不動産の固定資産税は、持分の割合にかかわらず共有者全員が全額について連帯して納める義務を負う(地方税法10条の2) 納税義務者は毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者(同法343条1項・2項、359条)。登記簿や課税台帳上の所有者が賦課期日より前に亡くなっているときは、相続登記が済んでいなくても、その日に不動産を現に所有している相続人が納税義務者とされる(同法343条2項後段) 実務上は共有者の中から「代表者」が定められ、その代表者あてに納税通知書がまとめて送られるが、代表者だけが法的な納税義務を負うわけではない 相続で不動産を兄弟姉妹などと共有名義にすると、「持分に応じて、それぞれ別々に納税通知書が届いて、自分の持分の分だけ払えばいい」と考えている方が少なくありません。しかし、固定資産税に関する限り、この理解は正確ではありません。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

空き家を取り壊すと土地の固定資産税が上がるのはなぜ?──住宅用地の特例のしくみ

この記事の要点 建物が建っている土地は「住宅用地の特例」によって固定資産税の課税標準(税率をかける前の土台になる金額)が下げられている。建物を取り壊すとこの特例から外れるため、土地の固定資産税が上がることがある 軽減の割合は、200平方メートル以下の部分が価格の6分の1、それを超える部分が3分の1(地方税法349条の3の2第1項・第2項)。都市計画税にも同様の特例があるが割合は3分の1・3分の2で異なる(同法702条の3) 「更地にすると6倍になる」という言い方は正確とはいえない。負担調整措置があり、評価額も取扱いも土地ごと・市町村ごとに違うため、実際の金額はその不動産のある市町村の窓口で確かめる必要がある 結論から書きます。建物を取り壊すと土地の固定資産税が上がることがあるのは、「住宅用地の特例」という税負担を軽くする仕組みが、その土地が住宅の敷地として使われていることを前提にしているからです。建物がなくなれば前提が失われ、原則として特例の適用から外れます。 ...

2026年8月6日 · ひぐらしさとし