「者」「物」「もの」の使い分け──同じ読みでも指す対象が変わる法律用語【民法の条文で解説】

この記事の要点 「者」は法律上の人を指す。個人(自然人)だけでなく、会社などの法人も含む 「物」は形のある物=有体物を指す。民法85条に定義が置かれている ひらがなの「もの」は、者・物のどちらにも当てはまらないものを指すときや、いったん挙げた対象にさらに絞り込みを重ねるときに使われる 法律の条文には、「者(もの)」「物(もの)」「もの」という、読みだけ聞くと区別できない3つの言葉が出てきます。結論から言うと、この3つは、法令をつくるときの書き分けのきまりに従って使い分けられています。漢字の「者」は人、漢字の「物」は形のある物、ひらがなの「もの」はそのどちらにも当てはまらないものを指すときや、いったん挙げた対象を絞り込んで受け直すとき──この使い分けを知っておくと、条文を読むときに「いま何の話をしているのか」を取り違えにくくなります。 ...

2026年8月31日 · ひぐらしさとし

「無効」と「取り消すことができる」の違い──条文の書き分けと、期間制限があるかどうか【民法の条文で解説】

この記事の要点 「無効」ははじめから効力がない状態。取り消しの意思表示をするまでもない 「取り消すことができる」は、取り消すまでは一応有効。取り消して初めて、はじめから無効だった扱いになる(民法121条) 取消しには「誰が取り消せるか」と「いつまで取り消せるか」の制限がある(民法120条・126条) 契約や遺言をめぐる話し合いの場では、「あの契約は無効だ」「あれは取り消せるはずだ」という言葉が飛び交います。日常の会話ではどちらも「なかったことにする」くらいの意味で使われますが、法律の条文では、はっきり区別して書き分けられています。結論から言うと、はじめから効力がないのか、それとも取り消すまでは有効なのかが出発点の違いです。 ...

2026年8月19日 · ひぐらしさとし

「準用する」とは──条文でよく見る「準用」の意味と読み替えのしかた【相続の条文で解説】

この記事の要点 「準用する」は、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめて働かせる立法技術。同じ文章を何度も書かずに済ませるための工夫です 「適用する」は本来の対象にそのまま働かせること、「準用する」は別の対象に必要な読み替えをしたうえで働かせること 準用されるのは、条文で名指しされた条・項の範囲だけ。「〜とあるのは〜と読み替えるものとする」という一文があれば、その置き換えをしてから読みます 法律の条文を読んでいると、「〇〇の規定は、△△について準用する」という言い回しに何度も出会います。結論から言うと、準用とは、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめることです。同じ内容の条文をもう一度書き写す代わりに、「あちらの条文を借りてきます」と宣言する立法上の工夫だと考えると分かりやすくなります。 ...

2026年8月7日 · ひぐらしさとし

「時」「とき」「場合」の使い分け──漢字とひらがなで意味が変わる条文の読み方【相続の条文で解説】

この記事の要点 法令では、漢字の「時」はその出来事が起きた時点(タイミング)を、ひらがなの「とき」は「もし〜なら」という仮定の条件を表すように書き分けられている 「場合」も仮定の条件を表す言葉で、条件が二重になるときは、**大きい条件に「場合」、小さい条件に「とき」**を使うのが一般的な書き方とされる ただしこれは法令を作るときの用語法の慣行であり、使い分けそのものを定めた法令があるわけではない 条文を読んでいると、漢字の「時」とひらがなの「とき」の両方が出てきます。同じ文の中に両方が並んでいることさえあります。これは誤記でも気まぐれでもなく、法令では意味によって書き分けられています。結論から言うと、漢字の「時」は時点、ひらがなの「とき」は条件です。本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月3日 · ひぐらしさとし

「その他」と「その他の」の違い──「の」一文字で条文の読み方が変わる【相続の条文で解説】

この記事の要点 法令では「A、B その他の C」と「A、B その他 C」は書き分けられており、「の」が付くと、前に並んだ言葉は後ろの言葉の例示(代表例)になる 「の」が付かない場合は、前に並んだ言葉と後ろの言葉が対等な列挙で、後ろの言葉は「それ以外のもの」を受け止める役割になる ただしこれは法令を作るときの一般的な用語法であり、最終的な意味はその条文ごとの解釈で決まる 条文を読んでいると、「〇〇その他の□□」という言い回しと、「〇〇その他□□」という言い回しの両方が出てきます。日常の文章なら気に留めない「の」一文字ですが、法令ではこの2つは使い分けられています。本記事は執筆時点(2026年7月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違い──法令の時間表現を条文例で読み分ける

この記事の要点 一般には「直ちに」がもっとも急ぎ、「速やかに」「遅滞なく」の順にゆるやかになると説明される ただしこれは一般的な用語法であり、実際の意味はその条文の解釈で決まる 「三年以内」のように数字で区切る期限の定めとは、性質の異なる書き方である 法律の条文は、いつまでにやるべきかを「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」という言葉で示すことがあります。日常では似た意味ですが、法令では書き分けられており、急ぎの度合いが異なるとされています。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

「以上・以下」と「超える・未満」の違い──境界の数字を含むか含まないかで読み分ける【会社法の条文で解説】

この記事の要点 「以上」「以下」は、境界となる数字(基準の数)そのものを含む 「超える」「未満(=満たない)」は、基準の数を含まない 「過半数」は「半数を超える」という意味で、ちょうど半分では足りない 法律の条文には、「〜以上」「〜以下」「〜を超える」「〜未満」といった数の区切りがよく登場します。日常会話ではどれもあいまいに使いがちですが、条文では基準となる数そのものを含むか含まないかがきっちり決まっています。結論から言うと、「以上」「以下」は基準の数を含み、「超える」「未満」は含みません。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」の違い──条文の接続詞は階層で読み分ける

この記事の要点 「又は」と「若しくは」はどちらも「〜か〜か」の選択。大きいくくりが「又は」、その内側の小さいくくりが「若しくは」 「及び」と「並びに」はどちらも「〜と〜」の並列。小さいくくりが「及び」、大きいくくりが「並びに」 選択は「又は」が基本形、並列は「及び」が基本形。組み合わせの向きが逆なので注意 法律の条文では、「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」がはっきり使い分けられています。日常の文章ではどれも同じように使いますが、条文では言葉のかかり方の階層(大きいくくりか、小さいくくりか)を示す記号として働きます。結論から言うと、選択(〜か〜か)では大きいくくりが「又は」・小さいくくりが「若しくは」、並列(〜と〜)では小さいくくりが「及び」・大きいくくりが「並びに」です。 ...

2026年7月18日 · ひぐらしさとし

「善意」と「悪意」は良い悪いではない──法律用語としての意味をやさしく解説

この記事の要点 法律でいう「善意」「悪意」は、良い心・悪い心のことではない 「善意」=ある事情を知らないこと、「悪意」=ある事情を知っていること 不動産や取引のトラブルでは、この「知っていたか・知らなかったか」で結論が変わる場面がある 法律の条文や司法書士・弁護士の説明に、「善意の第三者」「悪意の占有者」といった言葉が出てくることがあります。日常の感覚では、善意は「親切な気持ち」、悪意は「悪だくみ」を思い浮かべますが、法律の世界での意味はまったく違います。結論から言うと、善意=ある事情を知らないこと、悪意=ある事情を知っていることを指します。良い・悪いという道徳の話ではなく、「知っていたかどうか」という事実の問題です。 ...

2026年7月14日 · ひぐらしさとし

「みなす」と「推定する」の違い──反証で覆るかどうかで読み分ける【相続の条文で解説】

この記事の要点 「みなす」は反対の証拠があっても覆らない(法律が事実として確定させる言葉) 「推定する」は反対の証拠があれば覆る(一応そう扱うだけの言葉) 相続の条文にも両方が登場し、どちらの言葉かで結論の覆しやすさが変わる 法律の条文を読んでいると、「〜とみなす」「〜と推定する」という言い回しに出会います。日常ではどちらも「そう考える」くらいの意味で使いますが、法律の世界でははっきり区別されています。結論から言うと、反対の証拠(反証)を出して覆せるかどうかが分かれ目です。 ...

2026年7月10日 · ひぐらしさとし