この記事の要点

  • 「準用する」は、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめて働かせる立法技術。同じ文章を何度も書かずに済ませるための工夫です
  • 「適用する」は本来の対象にそのまま働かせること、「準用する」は別の対象に必要な読み替えをしたうえで働かせること
  • 準用されるのは、条文で名指しされた条・項の範囲だけ。「〜とあるのは〜と読み替えるものとする」という一文があれば、その置き換えをしてから読みます

法律の条文を読んでいると、「〇〇の規定は、△△について準用する」という言い回しに何度も出会います。結論から言うと、準用とは、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめることです。同じ内容の条文をもう一度書き写す代わりに、「あちらの条文を借りてきます」と宣言する立法上の工夫だと考えると分かりやすくなります。

「適用する」との違い

似た言葉に「適用する」があります。両者の違いは、次のように整理できます。

  • 適用する=その規定が、本来の対象にそのまま働く
  • 準用する=その規定を、本来の対象とは別の事柄に、必要な読み替えをしたうえで働かせる

つまり適用は「そのまま」、準用は「あてはめ直し」です。準用の条文が読みにくいと感じるのは、借りてきた条文を開いて言葉を置き換える作業が、読み手にゆだねられているためです。

条文の言葉づかいには、ほかにも「みなす」と「推定する」「時」「とき」「場合」のように、日常語とは違う約束事がいくつもあります。

例1:準用されるのは「名指しされた範囲」だけ(民法889条2項)

相続の条文で見てみます。民法第887条第2項は、代襲相続(だいしゅうそうぞく)について、次のように定めています。

被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。(民法第887条第2項)

そして民法第889条第2項は、こう定めています。

第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。(民法第889条第2項)

「前項第二号」とは、同条第1項第2号の「被相続人の兄弟姉妹」のことです。つまり、第887条第2項を、兄弟姉妹の場合にあてはめて読むということです。この条文には「〜とあるのは〜と読み替えるものとする」という具体的な指示までは置かれていませんので、あてはめ先に合わせて「子」を「兄弟姉妹」と読むことになります。そう読むと、兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合には、その子である甥・姪が代襲して相続人になる、という結論が導かれます(甥・姪が相続人になったときの手続きもあわせてご覧ください)。

ここで押さえておきたいのは、準用されているのは第887条「第2項」だけだという点です。第887条には第3項もあり、そこでは代襲者がさらに亡くなっていた場合など(再代襲)が定められていますが、第889条第2項はこの第3項を挙げていません。準用の範囲は、条文が名指しした条・項によって決まります。「似た話だから全部が借りられている」わけではない、というのが読み方の勘所です。

そのため、兄弟姉妹の側では、代襲して相続人になるのは甥・姪までで、その先の世代には受け継がれない、と説明されます。これは「条文に書かれていないことの反対を推し量ってよい」という話ではなく、準用される範囲そのものが、条文の名指しによって定まっていることの帰結です。

実は、この部分には立法の経緯があります。かつての第889条第2項は「第八百八十七条第二項及び第三項の規定は」と定めており、兄弟姉妹の場合にも再代襲の規定が準用されていました。それが昭和55年の民法改正(昭和55年法律第51号)で「及び第三項」の文言が削られ、兄弟姉妹が相続人となる場合の代襲相続人は、兄弟姉妹の子(被相続人から見て甥・姪)までに制限された、という経過をたどっています。この改正は昭和56年(1981年)1月1日から施行され、施行前に開始した相続には改正前の規定が適用されます(同法附則2項)。条文が何を挙げ、何を挙げていないかの背後には、このような改正の歴史が隠れていることがあります。

なお、第887条第2項にはただし書(「被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない」)が付いています。甥・姪は被相続人の直系卑属ではありませんから、このただし書を文字どおりあてはめると、先ほどの結論とかみ合いません。そのため、このただし書を兄弟姉妹の場合にどう位置づけるのか(読み替えて読むのか、そもそもあてはめないのか)が問題になりますが、条文自体には、その点についての指示が置かれていません。準用にあたって、あてはめ先の性質に合わせてどこまで読み替えるのかは、条文の文言だけからは決まらず、解釈にゆだねられている部分です。明文で決まっている範囲と、解釈で補う範囲は、分けて読む必要があります。

例2:読み替え規定を実際に組み立ててみる(民法936条3項)

条文が親切な場合には、読み替えの指示そのものが書かれています。民法第936条第3項がその例です。

第九百二十六条から前条までの規定は、第一項の相続財産の清算人について準用する。この場合において、第九百二十七条第一項中「限定承認をした後五日以内」とあるのは、「その相続財産の清算人の選任があった後十日以内」と読み替えるものとする。(民法第936条第3項)

借りてこられる側の民法第927条第1項の前段は、次のとおりです。

限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。(民法第927条第1項前段)

指示どおりに置き換えると、読み替え後の文はこうなります。

限定承認者は、その相続財産の清算人の選任があった後十日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。(読み替えて組み立てた文)

「AとあるのはBと読み替えるものとする」は、AをBに機械的に置き換えるだけです。置き換えた文を一度書き出してみると、準用の条文はぐっと読みやすくなります。あわせて、読み替えが指示されているのは名指しされた語句だけである点にも注意してください。ここでは期間の部分だけが置き換えられ、それ以外は元の条文のまま読みます。

準用の条文を読むときの3ステップ

  1. どの条文が準用されているかを確認する(条・項・号まで拾う)
  2. 何について準用されているかを確認する(あてはめ先を特定する)
  3. 読み替え規定があれば置き換えてから読む。なければ、あてはめ先に合わせて主語や用語を読み替えて読む

なお、この記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。

まとめ

「準用する」は、性質の似た別の事柄に、ほかの条文を借りてきてあてはめる立法技術です。「適用」がそのまま働くのに対し、「準用」は読み替えたうえで働きます。準用の範囲は条文が名指しした条・項に限られ、「〜とあるのは〜と読み替えるものとする」という指示があれば、その置き換えをしてから読むのが基本です。一方で、どこまで読み替えるかが条文に書かれていない場面もあり、そこは解釈にゆだねられます。条文の読み方が実際の手続きにどう影響するかは事情によって変わりますので、ご自身のケースで判断に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。

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