この記事の要点
- 法令では「A、B その他の C」と「A、B その他 C」は書き分けられており、「の」が付くと、前に並んだ言葉は後ろの言葉の例示(代表例)になる
- 「の」が付かない場合は、前に並んだ言葉と後ろの言葉が対等な列挙で、後ろの言葉は「それ以外のもの」を受け止める役割になる
- ただしこれは法令を作るときの一般的な用語法であり、最終的な意味はその条文ごとの解釈で決まる
条文を読んでいると、「〇〇その他の□□」という言い回しと、「〇〇その他□□」という言い回しの両方が出てきます。日常の文章なら気に留めない「の」一文字ですが、法令ではこの2つは使い分けられています。本記事は執筆時点(2026年7月)の制度に基づく一般的な解説です。
使い分けの原則──例示か、対等な列挙か
法令を作るときの用語の使い分けとして、一般に次のように説明されます。
- 「A、B その他の C」……A・Bは、Cという大きなくくりの中の例示。対象の範囲を決めているのは後ろのCで、A・Bはその代表例として挙げられている
- 「A、B その他 C」……A・BとCは対等な列挙。A・Bをまず具体的に挙げたうえで、後ろのCが「それ以外のもの」を受け止める
つまり「の」が付いていれば「前の言葉は例にすぎない」、付いていなければ「前の言葉も独立した項目として並んでいる」という読み方になります。
ただし、この使い分けの厳密さは法令によって差があり、実際にどこまでが対象かは、その条文の趣旨や解釈で判断されます。絶対のルールとして機械的に当てはめられるものではない点には注意してください。
同じ条文の中に両方が出てくる例──民法1050条
わかりやすいのが、相続人以外の親族が介護などの貢献に応じた金銭を請求できる特別寄与料を定めた民法1050条です。1つの条文の中に、「その他の」と「その他」の両方が登場します。
1項は、「無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと」による貢献を対象としています。「の」が付いた形なので、文言の構造としては、療養看護(介護や看病)は「労務の提供」という大きなくくりの代表例として挙げられている書き方です。
一方、3項は、家庭裁判所が特別寄与料の額を定めるときに「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情」を考慮すると定めています。こちらは「の」が付かない形で、寄与の時期・方法・程度と相続財産の額をまず具体的に掲げ、それ以外の事情を「その他一切の事情」という言葉で受け止める書き方になっています。
不動産登記の条文にもある──区分建物の定義
不動産登記の分野では、マンションの一室のような区分建物の定義に「の」が付かない形が使われています。不動産登記法2条22号は、区分建物の要件の一部を「住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるもの」と定めています。住居・店舗・事務所・倉庫という具体的な用途をまず並べたうえで、それ以外の建物としての用途を「その他」以下で受け止める書き方になっています。
もっとも、並んでいる住居や店舗も、見方を変えれば「建物としての用途」の一つではあります。「の」が付いていないから前の言葉は例示ではない、と機械的に決めつけられるわけではありません。「の」の有無は条文の骨組みをつかむ手がかりであって、それだけで意味が確定するものではない、と押さえておくのが安全です。
このように、条文で「その他」という言葉を見かけたら、まず「の」が付いているかどうかを確かめると、前に並んだ言葉が「例示」なのか「対等な列挙」なのかの見当がつき、条文の骨組みがつかみやすくなります。
まとめ
法令用語の「A、B その他の C」は前の言葉が後ろの言葉の例示、「A、B その他 C」は前後が対等な列挙で後ろの言葉が「それ以外」を受け止める書き方、と一般に使い分けられています。もっとも、これは法令を作るときの用語法の原則であり、具体的な条文の意味はその条文ごとの解釈によります。条文の読み方や制度の内容で迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年7月)。
- 民法 第1050条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 不動産登記法 第2条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
※ 次の資料は一次情報ではなく、法令用語の使い分けを説明した解説資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。
- 法務省大臣官房司法法制部「法令翻訳の手引き」(令和6年3月改訂版)2.3「その他」と「その他の」の区別: https://www.moj.go.jp/content/001414689.pdf