マンションを買ったとき、あるいは相続したマンションの登記簿(登記事項証明書)を取り寄せたとき、「一戸建てのときと様子がぜんぜん違う」と戸惑う方は少なくありません。

一戸建てなら、土地の登記簿と建物の登記簿をそれぞれ取れば、たいていの権利関係はつかめます。ところがマンションは、ひとつの建物にたくさんの住戸が入っていて、その下の土地はみんなで共有しています。そのため登記簿の作りも、一戸建てとは別の仕組みになっているのです。

この記事では、マンションが登記の世界で「区分建物(くぶんたてもの)」と呼ばれること、そして登記簿に出てくる「敷地権(しきちけん)」という言葉の意味を、できるだけやさしく整理してみます。読み方のコツがわかると、ご自宅やご実家のマンションの登記簿も、ぐっと見通しがよくなります。

マンションは登記の世界で「区分建物」と呼ばれる

ひとつの建物の中が、壁や床で区切られて、それぞれ独立した住戸(お部屋)として使われている——分譲マンションがまさにそうです。このような建物を、登記の世界では「区分建物」といいます。

そして、各住戸の「自分だけが使える部分」、つまり買った人が単独で所有しているお部屋のことを「専有部分(せんゆうぶぶん)」と呼びます。「3階の○号室」というあの一室が専有部分です。

一方で、エントランス、廊下、エレベーター、外壁といった、住民みんなで使う部分は「共用部分(きょうようぶぶん)」と呼ばれ、所有者全員で共有します。

マンションの登記簿が一戸建てと違って見えるのは、この「一棟の大きな建物の中に、たくさんの専有部分が入っている」という構造を、そのまま登記簿に写し取っているからです。

登記簿は「一棟全体」と「お部屋」の二段構え

区分建物の登記記録(表題部)は、おおまかに二段構えになっています。

  • 一棟の建物の表示 … マンション一棟全体について、所在・建物の名称・構造・各階の床面積などが書かれます。
  • 専有部分の建物の表示 … 自分が所有するお部屋について、家屋番号・建物の番号(○号室にあたるもの)・種類(居宅など)・床面積などが書かれます。

つまり「このマンション全体はこういう建物です」という説明と、「その中のあなたのお部屋はこれです」という説明が、セットで記録されているわけです。一戸建ての建物登記簿が一段なのに対して、区分建物は二段になっている——ここが最初の大きな違いです。

なお、この表題部に関する登記(マンションを新築したときの表題登記、床面積の表示、各階平面図や建物図面の作成など、建物が「物理的にどんなものか」を記録する部分)は、土地家屋調査士という専門家が扱う分野です。この記事では「表題部に何が書いてあるかを読む」ところと、その後の権利関係の読み方にしぼってお話しします。

「敷地権」とは──お部屋と土地が一体になっている印

ここからが、マンションの登記簿でいちばん独特な部分です。

マンションが建っている土地は、一戸建てのように「この土地はまるごと私のもの」というわけにはいきません。ひとつの土地の上に何十戸もの住戸が乗っているので、土地は住民みんなで共有し、各住戸の所有者はその土地を使う権利(**敷地利用権〔しきちりようけん〕**といいます)を持つ、という形になります。

そして、多くのマンションでは、この「お部屋(専有部分)」と「土地を使う権利(敷地利用権)」が、切り離せないように一体化されています。この一体化された土地の権利が、登記簿に「敷地権」として表示されているのです。

敷地権付きのマンションでは、表題部に次のような形で土地の情報が出てきます。

  • 敷地権の目的たる土地の表示 … マンションが建っている土地の所在・地番・地目・地積
  • 敷地権の表示 … 敷地権の「種類」(所有権・地上権・賃借権など)と、「割合」(その住戸が土地全体のうちどれだけの権利を持つか)

「敷地権の割合 ○○○○○分の○○○」といった分数が書かれているのを見たことがあるかもしれません。これは、マンション全体の土地の権利のうち、その住戸が持っている取り分を表しています。

「部屋だけ」「土地だけ」を別々に売れない仕組み

敷地権の大事なポイントは、専有部分(お部屋)と敷地権(土地の権利)を切り離して、別々に処分できないということです。お部屋だけを売って土地の権利は手元に残す、といったことは原則としてできません。逆に、土地の権利だけを誰かに譲ることもできません。これを「分離処分(ぶんりしょぶん)の禁止」といいます(建物の区分所有等に関する法律22条1項)。

この仕組みがあるおかげで、マンションの権利関係はぐっとシンプルになります。お部屋を売買すれば土地を使う権利も自動的についてくる、相続でお部屋を引き継げば土地の権利も一緒に引き継ぐ——というように、つねに「お部屋と土地はワンセット」で動くからです。

登記の手続きの面でも効果があります。敷地権付きの区分建物では、専有部分(建物)について所有権の移転や担保(抵当権など)の登記をすると、その効力は土地の敷地権にも自動的に及びます(不動産登記法73条1項)。そのため、建物の登記をしただけで土地の権利も一緒に動くことになり、土地について別々に登記をし直す必要が原則としてありません。マンションの登記簿を見るとき、建物の記録を見れば土地の権利関係もあわせて読み取れるのは、このためです。

「敷地権がないマンション」もある

ここまで「敷地権付き」を前提に説明してきましたが、すべてのマンションに敷地権があるわけではありません。

敷地権の制度は昭和58年の法改正で整えられ、昭和59年(1984年)から運用が始まりました。それより前に建てられた古いマンションや、土地の権利関係が特殊な物件などでは、お部屋(建物)と土地の権利がまだ一体化されておらず、敷地権が登記されていないことがあります。

このようなマンションでは、建物の登記簿とは別に、土地の登記簿(共有持分の登記)も確認しないと権利関係の全体像がつかめません。「うちのマンションは敷地権付きなのか、そうでないのか」は、表題部に「敷地権の表示」の欄があるかどうかで見分けられます。相続や売買の前提として権利関係を正確につかみたいときは、この点の確認がとても大切になります。

まとめ──マンションの登記簿は「お部屋と土地はワンセット」で読む

区分建物(マンション)の登記簿のポイントを整理すると、次のようになります。

ポイント 内容
区分建物 ひとつの建物の中に独立した住戸(専有部分)が複数ある建物
二段構えの表題部 「一棟の建物全体」+「専有部分(お部屋)」がセットで記録される
敷地権 お部屋と一体化された「土地を使う権利」。種類と割合が表示される
分離処分の禁止 お部屋だけ・土地だけを別々に売ったりできない
敷地権がない物件 古いマンション等では、土地の登記簿も別に確認が必要

マンションの登記簿は、一見すると一戸建てより複雑に見えますが、「お部屋と土地はワンセットで動く」という大原則さえつかんでおけば、読み方の見通しは立てやすくなります。

相続したマンションの名義を変えるとき、マンションを売買・贈与するとき、住宅ローンを完済して担保(抵当権)を抹消するとき——いずれの場面でも、まずは敷地権の有無を含めて登記簿を正しく読むことが出発点になります。実際の名義変更や抹消などの手続きには専門的な判断と書類が必要になりますので、具体的に手続きを進める際は、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】敷地権付き区分建物をめぐる登記実務の着眼点

ご注意 以下は執筆時点(2026年6月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。

本文では「お部屋と土地はワンセット」という大原則を整理しました。ここでは、相続や売買でマンションの登記簿を扱うときに、もう一歩踏み込んで押さえておきたい着眼点を挙げます。

1. まず「敷地権の表示」欄があるかを確かめる

区分建物の登記簿を読むときの出発点は、表題部に「敷地権の表示」の欄があるかどうかの確認です。この欄があれば、その住戸は敷地権付き(お部屋と土地の権利が一体化されている)と読み取れます。欄があるかどうかで、その後に必要な調査の範囲が変わってきます。

敷地権付きであれば、原則として建物の登記記録を見れば土地の権利関係もあわせてつかめます。一方、欄がなければ、建物の登記簿とは別に、敷地となっている土地の登記簿(共有持分の登記)まで取り寄せて確認する必要があります。古いマンションの相続や売買で土地の登記簿の取得を見落とすと、権利関係の全体像を取り違えるもとになります。

なお、この表題部の記録(一棟の建物・専有部分の表示、敷地権の目的たる土地や敷地権の表示、各種図面など、建物が物理的にどういうものかを記録する部分)の登記そのものは、土地家屋調査士が扱う分野です。ここでは「すでに登記されている内容をどう読むか」という観点で整理しています。

2. 建物の登記をすると土地の権利も一緒に動く

敷地権付きの区分建物では、専有部分(建物)について所有権の移転や抵当権の設定などの登記をすると、その効力は敷地権(土地の権利)にも及びます(不動産登記法73条1項)。

これは手続きの面で大きな意味を持ちます。たとえば相続でマンションの名義を変えるとき、敷地権付きであれば、建物の専有部分について相続による所有権移転の登記をすれば、土地の敷地権についても効力が及ぶため、土地だけを別に登記し直す必要が原則としてありません。売買や贈与、住宅ローン完済後の抵当権抹消なども、考え方は同じです。「建物の登記がそのまま土地の権利にも届く」という構造を知っておくと、必要な手続きの見通しが立てやすくなります。

3. 「敷地権の割合」が何を意味するか

表題部に出てくる「敷地権の割合 ○○○○○分の○○○」という分数は、そのお部屋がマンション全体の土地の権利のうちどれだけの取り分を持っているかを表します。

この割合は、原則として各専有部分の床面積の割合をもとに定められますが、マンションの規約で別段の定めをすることもできます(建物の区分所有等に関する法律の定めによります)。相続で持分を分けるときや、売買・担保の前提として権利の大きさを把握するときに確認しておきたい数字です。

4. 敷地権がない(分離処分ができる)マンションもある

本文でも触れたとおり、すべてのマンションに敷地権があるわけではありません。敷地権の制度が整う前に建てられた古い物件のほか、規約で「お部屋と土地の権利を分離して処分できる」と定めているケースなどでは、敷地権が登記されていないことがあります。

このようなマンションでは、建物(専有部分)の登記と、土地(敷地)の共有持分の登記が別々に動きます。相続登記や売買の際には、建物と土地のそれぞれについて登記の要否を確認しなければならず、片方だけを登記して土地(または建物)の名義変更を忘れる、といった抜け落ちが起こりやすい類型です。敷地権の有無は、この見落としを防ぐうえでも最初に確認すべきポイントといえます。

5. マンションの敷地が複数の土地にまたがることもある

マンションの敷地は、いつもひとつの地番の土地とは限りません。複数の土地(数筆の土地)をまとめて敷地としている場合や、規約で敷地として定めた土地(規約敷地)が含まれる場合があります。表題部の「敷地権の目的たる土地の表示」に複数の土地が並んでいることもあり、その場合は敷地権もそれぞれの土地について生じます。

権利関係を正確につかみたいときは、敷地として表示されている土地がいくつあるか、それぞれにどの種類(所有権・地上権・賃借権など)の敷地権が設定されているかまで目を通すのが安全です。

6. 登録免許税や税負担の考え方も一戸建てとは異なる

敷地権付きのマンションの登記では、課税の対象となる価格の出し方が一戸建てと異なる部分があります。建物(専有部分)の価格に加えて、土地については敷地全体の価格のうち敷地権の割合に対応する分を考える、という形になるためです。

具体的な税額の計算や、適用できる軽減措置の有無は、評価額・床面積要件・取得の経緯など個別の事情によって変わります。登録免許税以外の税(不動産取得税、固定資産税、相続税・贈与税など)もかかわってきますので、税額にかかわる具体的なことは税理士や市区町村の担当窓口にご確認ください。

7. 「読む」段階と「手続きする」段階は分けて考える

マンションの登記簿は、敷地権の有無と「お部屋と土地はワンセット」という原則さえつかめば、読むこと自体はそれほど難しくありません。ただ、いざ相続による名義変更・売買・抵当権抹消などの手続きに進む段階では、敷地権付きかどうかで申請の組み立てや必要書類が変わり、敷地権がない物件では建物と土地の両方を取りこぼさない段取りが必要になります。

登記簿を「読む」ところはご自身でも見通しを立てられますが、実際に「手続きする」段階では、登記記録の読み取りと必要書類の判断をあわせて、お近くの司法書士にご相談ください。