問題: 即時取得(民法192条)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 即時取得が成立するためには、取得者が平穏・公然・善意・無過失で動産の占有を始めたことが必要であるところ、このうち無過失については、取得者の側でこれを立証しなければならない。

イ. Aが占有する動産をBに譲渡したが、その引渡しの方法が占有改定にとどまる場合には、Bについて即時取得は成立しない。

ウ. 指図による占有移転の方法によって動産の占有を取得した者については、即時取得は成立しない。

エ. 即時取得した動産が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

オ. 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

答え: 誤っているものは、ア・ウの2つである。

解説: ア(誤り)。即時取得の要件は平穏・公然・善意・無過失であるが、占有者は民法186条1項により平穏・公然・善意で占有するものと推定され、無過失についても、占有者が占有物について行使する権利は適法に有するものと推定する民法188条を根拠に推定されるとするのが判例である(最判昭和41年6月9日民集20巻5号1011頁)。したがって、取得者の側で無過失を立証する必要はない。

イ(正しい)。占有改定(民法183条)による占有の取得では、外観上の占有状態に変更がないため、即時取得は成立しない(最判昭和35年2月11日民集14巻2号168頁)。

ウ(誤り)。指図による占有移転(民法184条)による占有取得については、即時取得が成立する(最判昭和57年9月7日民集36巻8号1527頁)。占有改定の場合と区別して押さえておきたい。

エ(正しい)。民法193条。盗品・遺失物については、盗難・遺失の時から2年間の回復請求が認められる。

オ(正しい)。民法194条。競売・公の市場・同種の物を扱う商人から善意で買い受けた場合は、代価の弁償が回復の要件となる。


問題: 仮登記に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 仮登記は、登記の申請に必要な手続上の条件が具備しないとき(いわゆる1号仮登記)のほか、権利変動はまだ生じていないがその請求権を保全しようとするとき(いわゆる2号仮登記)にもすることができる。

イ. 仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるときであっても、仮登記権利者が単独で申請することはできず、常に仮登記権利者と仮登記義務者が共同してしなければならない。

ウ. 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

エ. 仮登記に基づいて本登記をした場合における当該本登記の順位は、当該本登記をした時の順位による。

オ. 所有権以外の権利に関する仮登記に基づく本登記を申請する場合には、登記上の利害関係を有する第三者の承諾を要しない。

答え: 正しいものは、ア・ウ・オの3つである。

解説: ア(正しい)。不動産登記法105条1号・2号。手続上の条件が具備しない場合と、将来の請求権を保全する場合の2つの類型がある。

イ(誤り)。仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき、又は仮登記を命ずる処分があるときは、仮登記権利者が単独で申請することができる(不動産登記法107条1項)。

ウ(正しい)。不動産登記法109条1項。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その承諾があるときに限り申請できる。

エ(誤り)。仮登記に基づく本登記の順位は、仮登記の順位による(不動産登記法106条)。本登記をした時の順位によるのではない点が重要である。

オ(正しい)。承諾を要するのは「所有権に関する」仮登記に基づく本登記の場合である(不動産登記法109条1項)。所有権以外の権利に関する仮登記に基づく本登記には、登記上の利害関係を有する第三者の承諾は要しない。


問題: 取締役の競業取引及び利益相反取引の規制(会社法)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

イ. 取締役会設置会社において競業取引又は利益相反取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

ウ. 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をする場合のほか、株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引(間接取引)をしようとする場合にも、株主総会等の承認を要する。

エ. 取締役が承認を受けずに競業取引をした場合には、当該取引によって取締役又は第三者が得た利益の額は、株式会社に生じた損害の額と推定される。

オ. 自己のために株式会社と直接取引をした取締役の任務懈怠責任は、その任務を怠ったことが当該取締役の責めに帰することができない事由によるものであることを証明すれば、免れることができる。

答え: 誤っているものは、オの1つである。

解説: ア(正しい)。会社法356条1項1号・365条1項。競業取引の事前承認である。

イ(正しい)。会社法365条2項。取締役会設置会社では、取引後、遅滞なく取締役会への報告を要する。

ウ(正しい)。会社法356条1項2号・3号。取締役による直接取引のほか、会社が取締役の債務を保証するなどの間接取引も規制の対象となる。

エ(正しい)。会社法423条2項。競業取引の規制に違反した場合の損害額の推定規定である。

オ(誤り)。自己のために株式会社と直接取引をした取締役の責任(423条1項の責任)は、任務を怠ったことが当該取締役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない(会社法428条1項)。すなわち無過失責任であり、さらに同条2項により、責任の一部免除等(425条から427条まで)の規定も適用されない。


問題: 裁判上の自白に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 裁判上の自白が成立した事実については、証明することを要しない。

イ. 裁判上の自白が成立した場合、当事者はこれに拘束され、自白した当事者が自白を任意に撤回することは、原則として許されない。

ウ. 自白の撤回は、相手方の同意がある場合、自白が刑事上罰すべき他人の行為によってなされた場合のほか、自白した事実が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものである場合に許される。

エ. 所有権の存否など、権利又は法律関係についての自白(権利自白)も、事実についての自白と同様に、裁判所を拘束する。

オ. 擬制自白が成立するためには、当事者が口頭弁論期日に出頭したうえで、相手方の主張する事実を争わない旨を陳述することが必要である。

答え: 誤っているものは、エ・オの2つである。

解説: ア(正しい)。民事訴訟法179条。自白された事実は不要証事実となる。

イ(正しい)。裁判上の自白には当事者拘束力が認められ、自由な撤回は原則として制限される。

ウ(正しい)。撤回が認められるのは、相手方の同意がある場合、刑事上罰すべき他人の行為による場合のほか、反真実かつ錯誤による場合とされる(判例)。反真実であることが証明されれば、錯誤に基づくものと事実上推定される。

エ(誤り)。弁論主義のもとで自白の拘束力(裁判所拘束力・当事者拘束力)が及ぶのは主要事実についてであり、権利又は法律関係についての自白(権利自白)には、事実の自白と同様の裁判所拘束力は及ばないとするのが一般的である。

オ(誤り)。擬制自白は、当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合に成立する(民事訴訟法159条1項本文)。出頭して争わない旨を陳述することは要件ではなく、当事者が期日に出頭しない場合にも準用される(同条3項。ただし、公示送達による呼出しを受けた者を除く)。


問題: 弁済供託の供託物の払渡しに関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 供託物の還付を請求することができるのは、供託によって給付を受けるべき者(被供託者)である。

イ. 弁済供託の供託者は、被供託者が供託を受諾し、又は供託を有効と宣告した判決が確定するまでは、供託物を取り戻すことができる。

ウ. 供託者が供託物を取り戻したときは、供託をしなかったものとみなされる。

エ. 弁済供託における供託物取戻請求権の消滅時効は、供託の時から進行し、供託の時から10年の経過によって完成する。

オ. 供託物の払渡しを請求するには、供託規則所定の供託物払渡請求書に、必要な書面を添付して行うことを要する。

答え: 誤っているものは、エの1つである。

解説: ア(正しい)。還付請求権を有するのは、供託により給付を受けるべき債権者(被供託者)である。

イ(正しい)。民法496条1項。被供託者の受諾、又は供託を有効と宣告した判決の確定までは、供託者は供託物を取り戻すことができる。

ウ(正しい)。民法496条1項後段。取戻しがされると供託は遡って効力を失い、供託をしなかったものとみなされる。

エ(誤り)。弁済供託の供託物取戻請求権の消滅時効の起算点は「供託の時」ではなく、供託の基礎となった債務について紛争の解決等により供託者が供託による免責の利益を受ける必要が消滅した時から進行するとするのが判例である(最大判昭和45年7月15日民集24巻7号771頁)。供託の時から時効が進行するわけではない。

オ(正しい)。供託物の払渡請求は、供託規則所定の払渡請求書に必要書面を添付して行う。


出題分野

科目 主な論点
第1問 民法 即時取得(無過失の推定/占有改定・指図による占有移転/盗品・遺失物の回復)
第2問 不動産登記法 仮登記(1号・2号仮登記/単独申請/本登記の順位/利害関係人の承諾)
第3問 会社法 取締役の競業避止義務・利益相反取引(承認・報告・間接取引・直接取引の無過失責任)
第4問 民事訴訟法 裁判上の自白(不要証効・撤回の制限/権利自白/擬制自白)
第5問 供託法 供託物の払渡し(還付・取戻し/取戻請求権の消滅時効の起算点)