問題:

遺留分侵害額の請求に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア.兄弟姉妹を除く相続人は、遺留分として、遺留分を算定するための財産の価額に一定の割合を乗じた額を受ける。直系尊属のみが相続人である場合の遺留分の割合は、被相続人の財産の3分の1である。

イ.遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。この請求権の行使によって生ずるのは、目的物に対する物権的な権利ではなく、金銭の支払を求める債権である。

ウ.受遺者と受贈者とがあるときは、まず受贈者が遺留分侵害額を負担し、受贈者が複数あるときは、その目的の価額の割合に応じて負担する。

エ.遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。

オ.遺留分を算定するための財産の価額には、相続人に対する贈与は、原則として、相続開始前の1年間にされたものに限り、その価額を算入する。

答え:

誤っているものは、ウ・オの2個である。

解説:

遺留分制度は、令和元年(平成30年)改正により、従来の「遺留分減殺請求権」(物権的効果)から、金銭債権の発生する「遺留分侵害額請求権」へと改められた。直前期には、金銭債権化・負担の順序・期間制限・算定基礎財産が頻出論点である。

ア(正しい)。兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を有し、直系尊属のみが相続人である場合の遺留分の割合は被相続人の財産の3分の1、その他の場合は2分の1である(民法1042条1項)。

イ(正しい)。遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる(民法1046条1項)。令和元年改正により、遺留分侵害額請求権は金銭の支払を求める債権であって、目的物に対する物権的効力を有しない。

ウ(誤り)。受遺者と受贈者とがあるときは、まず受遺者が先に遺留分侵害額を負担する(民法1047条1項1号)。受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、その目的の価額の割合に応じて負担し(同項2号)、受贈者が複数あるとき(同項2号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する(同項3号)。まず受贈者が負担するとする点が誤りである。

エ(正しい)。遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする(民法1048条)。

オ(誤り)。遺留分を算定するための財産の価額に算入する贈与のうち、相続人に対する贈与は、原則として、相続開始前の10年間にされたもの(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与に限る。)の価額を算入する(民法1044条3項・1項)。相続人以外の者に対する贈与が原則として相続開始前の1年間にされたものに限られる(同条1項)のと混同させる点が誤りである。


問題:

登記識別情報に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア.登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。

イ.登記識別情報の通知を受けるべき者は、あらかじめ、登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をすることができる。

ウ.登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、登記識別情報が通知されなかった場合その他の登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。

エ.登記識別情報を提供することができないため登記官が事前通知をした場合において、登記義務者から当該登記の申請の内容が真実である旨の申出が登記官の定めた期間内にされたときは、登記官は、当該申請に係る登記をすることができる。

オ.登記識別情報の失効の申出があったときは、登記官は、当該登記識別情報を失効させるとともに、改めて新たな登記識別情報を通知しなければならない。

答え:

誤っているものは、オの1個である。

解説:

登記識別情報は、登記済証に代わる本人確認の仕組みであり、その通知・提供、提供できない場合の事前通知・本人確認情報、失効の申出が頻出である。

ア(正しい)。登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない(不動産登記法21条本文)。

イ(正しい)。登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をすることができ、この場合には登記識別情報は通知されない(不動産登記法21条ただし書、不動産登記規則64条1項)。

ウ(正しい)。登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合には、申請人は登記義務者の登記識別情報を提供しなければならないが、これを提供することができないことにつき正当な理由があるときは、この限りでない(不動産登記法22条)。

エ(正しい)。登記識別情報を提供することができないため登記官がした事前通知に対し、登記義務者から登記官の定めた期間内に申請の内容が真実である旨の申出があったときは、登記官は当該申請に係る登記をすることができる(不動産登記法23条1項)。

オ(誤り)。登記名義人は、登記識別情報の失効の申出をすることができ、登記官はこれに基づき当該登記識別情報を失効させる(不動産登記規則65条)。しかし、失効の申出によって新たな登記識別情報が通知されることはない。新たな登記識別情報を通知しなければならないとする点が誤りである。


問題:

株主総会資料の電子提供制度に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア.株式会社は、取締役が株主総会の招集の手続を行うときは、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができる。

イ.振替株式を発行する会社は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならない。

ウ.電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集の通知に際して、株主に対し、株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない。

エ.電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主は、当該株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができる。

オ.電子提供措置をとる旨の定款の定めは、登記事項ではない。

答え:

誤っているものは、オの1個である。

解説:

株主総会資料の電子提供制度は、令和元年改正で新設され、令和4年9月1日に施行された制度であり(会社法325条の2以下)、定款の定め・書面交付請求・振替株式会社の義務・登記事項が問われる。

ア(正しい)。株式会社は、取締役が株主総会の招集の手続を行うときは、株主総会参考書類等の内容である情報について、電子提供措置をとる旨を定款で定めることができる(会社法325条の2)。

イ(正しい)。振替株式を発行する会社は、電子提供措置をとる旨を定款で定めなければならない(社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項)。上場会社は振替株式の発行会社であるため、電子提供措置の採用が義務付けられている。

ウ(正しい)。電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集通知に際して株主に対し株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない(会社法325条の4第3項)。

エ(正しい)。電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主は、当該株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができる(会社法325条の5第1項。いわゆる書面交付請求)。

オ(誤り)。電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社は、その旨を登記しなければならず、電子提供措置をとる旨の定款の定めは登記事項である(会社法911条3項12号の2)。登記事項ではないとする点が誤りである。


問題:

判決によらない訴訟の終了に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア.訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

イ.訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

ウ.本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。

エ.請求の放棄又は認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

オ.訴訟上の和解を調書に記載したときであっても、その記載は確定判決と同一の効力を有しないから、当事者は当該和解の内容を争うために改めて同一の訴えを提起することができる。

答え:

誤っているものは、オの1個である。

解説:

判決によらない訴訟の終了には、訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解があり、その要件・効果(再訴禁止、確定判決と同一の効力)が頻出である。

ア(正しい)。訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる(民事訴訟法261条1項)。

イ(正しい)。訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない(民事訴訟法261条2項本文)。

ウ(正しい)。本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない(民事訴訟法262条2項。いわゆる再訴禁止)。

エ(正しい)。請求の放棄又は認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法267条)。

オ(誤り)。訴訟上の和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力を有する(民事訴訟法267条)。したがって訴訟上の和解には既判力等が認められ、改めて同一の訴えを提起することはできない。確定判決と同一の効力を有しないとする点が誤りである。


問題:

供託の種類に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア.弁済者は、債権者が弁済の受領を拒んだとき、債権者が弁済を受領することができないとき、又は弁済者が過失なく債権者を確知することができないときは、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。

イ.債務者が、債権者の受領拒絶を理由として弁済供託をするには、原則として、まず弁済の提供をし、債権者がその受領を拒んだことを要する。

ウ.債権者を確知することができないことを理由とする弁済供託は、債権者を確知することができないことについて弁済者に過失があるときは、することができない。

エ.営業保証供託や裁判上の保証供託のように、特定の相手方に生ずる損害を担保するためにされる供託は、担保(保証)供託に分類される。

オ.金銭債権について差押えが競合した場合に第三債務者がする供託や、滞納処分による差押えがされた場合の供託は、弁済供託に分類される。

答え:

誤っているものは、オの1個である。

解説:

供託は、その機能に応じて、弁済供託・担保(保証)供託・執行供託・没取供託・保管供託の5種に分類される。弁済供託の要件(受領拒否・受領不能・債権者不確知)の区別が要となる。

ア(正しい)。弁済者は、債権者が弁済の受領を拒んだとき(受領拒否)、債権者が弁済を受領することができないとき(受領不能)、又は弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき(債権者不確知)は、債権者のために弁済の目的物を供託することができる(民法494条1項・2項)。

イ(正しい)。受領拒絶を理由とする弁済供託をするには、原則として、まず弁済の提供(民法493条)をし、債権者がその受領を拒んだことを要する。弁済の提供をしても債権者が受領を拒むことが明らかな場合など、提供をしても受領しないことが明らかなときは、提供をせずに供託しうる場合がある(民法494条1項柱書参照、大判明治45年7月3日民録18輯684頁参照)(一次資料での確認を推奨)。

ウ(正しい)。債権者を確知することができないことを理由とする弁済供託は、債権者を確知することができないことについて弁済者に過失があるときは、することができない(民法494条2項)。

エ(正しい)。営業保証供託や裁判上の保証供託(仮差押え・仮処分の担保、訴訟費用の担保等)のように、特定の相手方に生ずる損害を担保するためにされる供託は、担保(保証)供託に分類される。

オ(誤り)。金銭債権について差押えが競合した場合に第三債務者がする供託(民事執行法156条2項の権利供託・義務供託)や、滞納処分による差押えがされた場合の供託は、執行供託に分類される。弁済供託に分類されるとする点が誤りである。


出題分野の振り分け

出題分野
第1問 民法(遺留分侵害額の請求)
第2問 不動産登記法(登記識別情報)
第3問 会社法・商業登記法(株主総会資料の電子提供制度)
第4問 民事訴訟法(判決によらない訴訟の終了)
第5問 供託法(供託の種類)