問題:
時効に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.所有権の取得時効は、占有の開始の時に善意であり、かつ、過失がなかったときは10年、それ以外のときは20年の占有の継続によって完成する。
イ.時効の援用権者である「当事者」には、債務者のほか、保証人、物上保証人及び第三取得者など、時効によって直接利益を受ける者が含まれる。
ウ.裁判上の請求があった場合において、確定判決によって権利が確定することなくその訴えが取り下げられたときは、その終了の時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予される。
エ.権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まり、この承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。
オ.天災その他避けることのできない事変のため時効の完成猶予に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・エ・オの5個である。
解説:
時効は平成29年改正(令和2年4月1日施行)により「中断・停止」が「更新・完成猶予」に再構成された。援用権者の範囲、完成猶予事由ごとの猶予期間を正確に押さえることが要点となる。
ア(正しい)。所有権の取得時効は、占有開始時に善意・無過失なら10年、そうでなければ20年で完成する(民法162条1項・2項)。善意無過失は占有開始時に判定され、途中で悪意になっても10年で足りる。
イ(正しい)。時効の援用権者たる「当事者」(民法145条)には、保証人・物上保証人・第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれる旨が、改正により条文上明記された。
ウ(正しい)。裁判上の請求がされたが、確定判決等によらずに訴えが取り下げられた場合等は、その終了の時から6か月を経過するまで完成が猶予される(民法147条1項柱書括弧書)。
エ(正しい)。権利の承認があると時効は更新され、その時から新たに進行を始める(民法152条1項)。承認をするには相手方の権利の処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない(同条2項)。
オ(正しい)。天災その他避けることのできない事変のため完成猶予に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3か月を経過するまで時効は完成しない(民法161条)。改正前の「2週間」が改正で「3か月」に伸長された点に注意する。
問題:
抵当権の順位変更及び抵当権の処分に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア.抵当権の順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
イ.抵当権の順位の変更の登記は、順位を変更する各抵当権者が共同して申請しなければならず、登記上の利害関係を有する者があるときはその承諾を証する情報の提供を要する。
ウ.抵当権の順位変更の登記をするときは、変更後の順位を各抵当権の登記に付記登記によって記録する。
エ.転抵当の登記は、原抵当権に付記登記によってされ、転抵当権者は、原抵当権の被担保債権の額及び転抵当権の被担保債権の額のうちいずれか少ない額の限度で優先弁済を受ける。
オ.抵当権の順位の譲渡又は放棄の登記は、その抵当権の登記に付記登記によってされる。
答え:
誤っているものは、ウの1個である。
解説:
抵当権の順位変更(民法374条)は同順位者・先後者全員の合意と登記が効力要件であり、処分(転抵当・順位の譲渡放棄、民法376条)の登記方法と区別して理解する。
ア(正しい)。抵当権の順位の変更は、その登記をしなければ効力を生じない(民法374条2項)。登記が効力要件である点が処分の対抗要件とは異なる。
イ(正しい)。順位変更の登記は順位を変更する各抵当権者の共同申請であり(不動産登記法89条1項)、利害関係人があるときはその承諾を証する情報を提供する(民法374条1項ただし書、不動産登記令別表)。
ウ(誤り)。順位変更の登記は、付記登記ではなく主登記によってされるとされる。順位の変更は当事者全員の権利に関わる新たな順位の設定であって、いずれか特定の抵当権に従属するものではないと整理されることによる。
エ(正しい)。転抵当の登記は原抵当権への付記登記によりされ(不動産登記法90条。同83条・88条参照)、転抵当権者は原抵当権と転抵当権の被担保債権額のいずれか少ない額の限度で優先弁済を受ける(民法376条1項)。
オ(正しい)。抵当権の順位の譲渡又は放棄は抵当権の処分であり、その抵当権の登記に付記登記によってされる(不動産登記法4条2項、民法376条1項)。
問題:
株式会社の役員(取締役・監査役)の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.取締役を選任した場合の変更の登記は、選任の効力が生じた日から2週間以内に、本店の所在地においてしなければならない。
イ.取締役の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
ウ.取締役が任期満了により退任した場合、当該取締役が退任した旨の登記の申請書には、任期満了を証する書面として定款を添付することを要する場合がある。
エ.取締役が死亡したことによる退任の登記の申請書には、死亡を証する書面として戸籍全部事項証明書又は医師の死亡診断書その他の死亡の事実を証する書面を添付する。
オ.監査役設置会社における監査役の就任による変更の登記の申請書には、本人確認証明書の添付を要しない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・エ・オの5個である。
解説:
役員変更の登記期間(会社法915条1項)と添付書面(就任承諾書・退任を証する書面・本人確認証明書)の要否を、選任・退任・死亡の各場面ごとに整理することが要点となる。
ア(正しい)。役員の変更等、登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければならない(会社法915条1項)。
イ(正しい)。取締役・監査役の就任による変更登記の申請書には、就任承諾を証する書面の添付を要する(商業登記法54条1項)。
ウ(正しい)。任期満了による退任を証する書面として、任期を定めた定款の添付を要する場合がある。退任日(定時株主総会終結時)を証するために定款及び株主総会議事録等が必要となる。
エ(正しい)。死亡による退任の登記には、死亡を証する書面(戸籍全部事項証明書、医師作成の死亡診断書、親族からの死亡届の記載のある書面等)を添付する。
オ(正しい)。本人確認証明書(商業登記規則61条7項)は、再任の場合及び就任承諾書に押印した印鑑につき市町村長作成の証明書を添付する場合等には添付を要しない。設問は監査役の「就任」とのみあり一律に要するとは限らないため、要しない場合がある旨の記述として正しい。
問題:
民事訴訟の管轄に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア.訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求は簡易裁判所の事物管轄に属し、これを超える請求は地方裁判所の事物管轄に属する。
イ.訴えは、原則として被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属し、人の普通裁判籍は住所により定まる。
ウ.管轄の合意は、第一審に限り、かつ、一定の法律関係に基づく訴えに関し、書面でしなければその効力を生じない。
エ.専属管轄の定めがある訴えについては、当事者は管轄の合意をすることができず、また応訴管轄も生じない。
オ.第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合であっても、当事者の申立てがあれば、訴訟の著しい遅滞を避けるためであっても、必ず他の管轄裁判所に移送しなければならない。
答え:
誤っているものは、オの1個である。
解説:
事物管轄は訴額140万円が地裁・簡裁の分岐点、土地管轄は被告の普通裁判籍が原則、合意管轄・専属管轄の効果を区別して理解する。
ア(正しい)。簡易裁判所は訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求について事物管轄を有し(裁判所法33条1項1号)、これを超えるものは地方裁判所の事物管轄に属する(裁判所法24条1号)。
イ(正しい)。訴えは被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属し(民事訴訟法4条1項)、人の普通裁判籍は住所により定まる(同条2項)。
ウ(正しい)。管轄の合意は第一審に限り、一定の法律関係に基づく訴えに関してすることができ、書面(電磁的記録を含む)によらなければ効力を生じない(民事訴訟法11条)。
エ(正しい)。専属管轄の定めがある場合、合意管轄(民事訴訟法11条)及び応訴管轄(同法12条)の規定は適用されない(同法13条1項)。
オ(誤り)。第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合でも、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があるときは、申立て又は職権で他の管轄裁判所に移送することが「できる」(民事訴訟法17条)。必ず移送しなければならないわけではない。
問題:
執行供託(民事執行法に基づく供託)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.金銭債権の一部のみが差し押さえられた場合、第三債務者は、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる(権利供託)。
イ.金銭債権の全部が差し押さえられた場合において、差押えの競合がないときは、第三債務者は供託をする義務を負わない。
ウ.同一の金銭債権について差押えが競合したときは、第三債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない(義務供託)。
エ.第三債務者が執行供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
オ.差押えと仮差押えとが競合した場合は、第三債務者に供託義務は生じず、権利供託のみが認められる。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・エの4個である。
解説:
執行供託は、差押えが「単発か競合か」「権利供託か義務供託か」の区別が要点。民事執行法156条の権利供託・義務供託・事情届の各規定を押さえる。
ア(正しい)。債権の一部が差し押さえられた場合、第三債務者は差押えに係る部分のみならず、その債権の全額に相当する金銭を債務履行地の供託所に供託することができる(民事執行法156条1項)。これは権利供託である。
イ(正しい)。全部差押えがあっても差押えが競合していない場合は、第三債務者は供託することができる(権利供託)にとどまり、供託義務は負わない(民事執行法156条1項)。
ウ(正しい)。差押えが競合したとき(差押え・仮差押えの執行が競合した場合等)は、第三債務者は債権全額に相当する金銭を供託しなければならない(民事執行法156条2項)。これは義務供託である。
エ(正しい)。執行供託をした第三債務者は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない(民事執行法156条4項、事情届)。
オ(誤り)。差押えと仮差押えが競合した場合も、債権全額について供託義務が生じる(民事執行法156条2項)。仮差押えとの競合であっても義務供託である点で誤り。
出題分野の振り分け
- 第1問:民法(時効=取得時効・消滅時効・援用権者・完成猶予と更新/平成29年改正・令和2年4月1日施行)
- 第2問:不動産登記法(抵当権の順位変更の登記及び抵当権の処分=転抵当・順位の譲渡放棄)
- 第3問:会社法・商業登記法(役員=取締役・監査役の変更の登記/選任・退任・登記期間・添付書面)
- 第4問:民事訴訟法(管轄=事物管轄・土地管轄・合意管轄・専属管轄・移送)
- 第5問:供託法(執行供託=第三債務者の権利供託と義務供託・差押えの競合・事情届)