問題:

配偶者居住権に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 配偶者居住権は、被相続人の配偶者が、相続開始の時に被相続人の財産に属した建物に居住していた場合において、遺産の分割によるほか、遺贈の目的とされたときにも取得することができる。

イ. 被相続人が相続開始の時において居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合であっても、配偶者は、配偶者居住権を取得することができる。

ウ. 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とするのが原則であるが、遺産の分割の協議もしくは遺言に別段の定めがあるとき、または家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。

エ. 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築もしくは増築をし、または第三者に居住建物の使用もしくは収益をさせることができない。

オ. 配偶者居住権は、譲渡することができないが、配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得れば、配偶者居住権自体を第三者に譲渡することができる。

答え:

正しいものは、ア・ウ・エの3個である。

解説:

配偶者居住権は、平成30年法律第72号(令和2年4月1日施行)で新設された制度であり、取得要件・存続期間・譲渡禁止の例外の有無が問われる。

ア(正しい)。民法1028条1項は、配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき(1号)、または配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき(2号)に、配偶者居住権を取得すると定める。遺贈による取得が認められる点が条文どおりであり、本記述は正しい。なお、死因贈与にも準用される(民法554条)。

イ(誤り)。民法1028条1項ただし書は「被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない」と定める。被相続人と配偶者の共有であれば配偶者は配偶者居住権を取得できるが、配偶者以外の第三者との共有の場合は取得できない。本記述は誤り。

ウ(正しい)。民法1030条は、配偶者居住権の存続期間は配偶者の終身の間とすると定めつつ(本文)、「ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる」とする(ただし書)。本記述は条文どおりであり正しい。

エ(正しい)。民法1032条3項は、配偶者は居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築もしくは増築をし、または第三者に居住建物の使用もしくは収益をさせることができないと定める。本記述は正しい。なお、配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって居住建物を使用および収益しなければならない(同条1項)。

オ(誤り)。民法1032条2項は「配偶者居住権は、譲渡することができない」と定める。これは強行規定であり、居住建物の所有者の承諾があっても、配偶者居住権そのものを第三者に譲渡することはできない。承諾があれば譲渡できるとする本記述は誤り。所有者の承諾を得て可能となるのは、第三者への居住建物の使用または収益(賃貸等。同条3項)であって、配偶者居住権自体の譲渡ではない。


問題:

登記の更正に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 更正の登記は、登記事項に錯誤または遺漏があった場合に、登記と実体関係との不一致を是正するためにする登記であるが、登記の当初から不一致が存在したのではなく、登記後に生じた後発的な事情に基づく不一致を是正するには、変更の登記による。

イ. 更正の登記は、更正の前後を通じて登記の同一性が認められる場合にすることができ、登記された権利の全部について同一性を欠くに至るような是正をすることはできない。

ウ. 登記官は、権利に関する登記に錯誤または遺漏があることを発見した場合において、それが登記官の過誤によるものであるときは、遅滞なく、その旨を登記をした者または登記名義人に通知しなければならないが、その更正の登記をするには、申請または嘱託によることを要し、登記官が職権ですることはできない。

エ. 所有権の登記名義人を単独所有から共有に更正する場合のように、更正により新たに登記名義人となる者が生ずるときであっても、その更正の登記は、現在の登記名義人が単独で申請することができる。

オ. 権利の更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、付記登記によってすることができる。

答え:

誤っているものは、ウ・エの2個である。

解説:

更正の登記は、変更登記との区別、登記の同一性、登記官の職権更正、申請構造、利害関係人の承諾が問われる。

ア(正しい)。更正の登記(不動産登記法2条16号)は、登記事項に錯誤または遺漏があった場合、すなわち登記の当初から実体関係と不一致がある場合に、これを是正する登記である。これに対し、登記後に生じた後発的事情による不一致は、変更の登記(同条15号)による。両者は不一致の発生時点によって区別される。本記述は正しい。

イ(正しい)。更正の登記は、更正の前後を通じて登記の同一性が認められることを要し、登記事項の一部の錯誤・遺漏を是正するものである。権利の全部が誤っていて同一性が認められない場合(たとえば登記の目的や登記原因が全く異なる場合)には、更正ではなく、いったん抹消したうえで改めて登記をすることになる。本記述は正しい。

ウ(誤り)。不動産登記法67条1項は、登記官は、権利に関する登記に錯誤または遺漏があることを発見したときは、遅滞なく、その旨を登記権利者および登記義務者に通知しなければならない旨を定める。そのうえで、同条2項は、その錯誤または遺漏が登記官の過誤によるものであるときは、登記官は、遅滞なく、当該登記官を監督する法務局または地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない(ただし、登記上の利害関係を有する第三者がある場合は、その承諾があるときに限る)と定める。すなわち登記官の過誤による場合には職権による更正が予定されており、「申請または嘱託によることを要し、職権ですることはできない」とする本記述は誤り。

エ(誤り)。所有権の登記名義人を単独所有から共有に更正する場合(たとえばA単独所有をAB共有とする場合)は、更正の前後で権利の主体に変動が生じ、新たに登記名義人となる者が加わるため、登記権利者と登記義務者を観念することができる。この場合の更正の登記は、新たに加わる者を含む共同申請によるべきものであり、現在の登記名義人が単独で申請することはできない。単独申請できるとする本記述は誤り。

オ(正しい)。不動産登記法66条は、権利の変更の登記または更正の登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるとき、または当該第三者がないときに限り、付記登記によってすることができると定める。利害関係人がいる場合には、その承諾があれば付記登記によることができ、承諾がないときは主登記によることになる。本記述は正しい。


問題:

株式会社の資本金の額の減少に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 資本金の額の減少をするには、原則として株主総会の特別決議によらなければならないが、定時株主総会において、減少する資本金の額が当該定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲で減少をする場合には、普通決議で足りる。

イ. 株式会社が資本金の額の減少をする場合には、債権者が異議を述べることができる旨等を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならないが、官報のほか定款の定めに従って日刊新聞紙への掲載または電子公告による公告をしたときは、各別の催告を省略することができる。

ウ. 資本金の額の減少は、原則として株主総会等で定めた効力発生日にその効力を生ずるが、債権者の異議の手続が当該効力発生日までに終了していないときは、その効力を生じない。

エ. 資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、債権者の異議の手続をしたことを証する書面を添付しなければならない。

オ. 資本金の額を零とする資本金の額の減少をすることはできない。

答え:

正しいものは、ア・イ・ウ・エの4個である。

解説:

資本金の額の減少は、決議要件の例外、債権者異議手続、効力発生日、登記の添付書面が体系的に問われる。

ア(正しい)。資本金の額の減少は、原則として株主総会の特別決議による(会社法447条1項、309条2項9号)。もっとも、会社法309条2項9号イ・ロは例外を定め、定時株主総会において減少する資本金の額が当該定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲内である場合(いわゆる欠損てん補のための減資)には、普通決議で足りる。本記述は正しい。

イ(正しい)。会社法449条1項は資本金の額の減少における債権者異議手続を定め、官報による公告と、知れている債権者への各別の催告を要するのが原則である(同条2項)。もっとも、同条3項は、官報のほか、定款の定めに従って日刊新聞紙への掲載または電子公告による公告(いわゆる二重公告)をするときは、各別の催告を省略することができると定める。本記述は正しい。

ウ(正しい)。資本金の額の減少は、原則として株主総会等で定めた効力発生日にその効力を生ずる(会社法449条6項本文)。ただし、同項ただし書は、債権者の異議の手続(同条2項・5項)が効力発生日までに終了していないときは、その効力を生じないと定める。本記述は正しい。なお、株式会社は、効力発生日前であれば効力発生日を変更することができる(同条7項)。

エ(正しい)。商業登記法70条は、資本金の額の減少による変更の登記の申請書には、会社法449条2項の規定による公告および催告(同条3項の規定により公告を二重にしたときは、その公告)をしたこと、ならびに、異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済しもしくは相当の担保を提供しもしくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと、または資本金の額の減少をしてもその債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付しなければならないと定める。本記述は正しい。

オ(誤り)。会社法447条2項は、減少する資本金の額は効力発生日における資本金の額を超えてはならないと定めるにとどまり、資本金の額を零とする減資を禁止していない。実務上も、いわゆる100パーセント減資(資本金の額を零とし、これと併せて募集株式の発行等により資本を再構築する手法)が行われている。資本金の額を零とすることはできないとする本記述は誤り。


問題:

少額訴訟に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 少額訴訟は、簡易裁判所において、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて求めることができる。

イ. 同一の簡易裁判所において同一の年に少額訴訟による審理および裁判を求めることができる回数は、最高裁判所規則で定める回数を超えることができず、その回数は10回とされている。

ウ. 少額訴訟において、被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができるが、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、またはその期日が終了した後は、この申述をすることができない。

エ. 少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることはできないが、判決書またはこれに代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。

オ. 少額訴訟において請求を認容する判決をする場合、裁判所は、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときであっても、当事者の申立てがなければ、支払の猶予または分割払の定めをすることはできない。

答え:

正しいものは、ア・イ・ウ・エの4個である。

解説:

少額訴訟は、訴額の上限・回数制限・通常手続への移行・異議・支払猶予や分割払の判決といった特則が網羅的に問われる。

ア(正しい)。民事訴訟法368条1項本文は、簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理および裁判を求めることができると定める。本記述は正しい。

イ(正しい)。民事訴訟法368条1項ただし書は、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができないと定め、民事訴訟規則223条がその回数を10回と定める。本記述は正しい。

ウ(正しい)。民事訴訟法373条1項本文は、被告は訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができると定めるが、同項ただし書は「被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない」とする。本記述は条文どおりであり正しい。

エ(正しい)。民事訴訟法377条は、少額訴訟の終局判決に対しては控訴をすることができないと定める。もっとも、同法378条1項は、当事者は、判決書またはこれに代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができると定める。本記述は正しい。なお、民事訴訟手続のIT化に係る令和4年法律第48号の全面施行(令和8年5月21日)により、現行の378条1項の文言は「電子判決書又は…電子調書…の送達を受けた日から二週間の不変期間内に」と改められている(送達を受けた日から2週間の不変期間という結論に変わりはない)。

オ(誤り)。民事訴訟法375条1項は、裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から3年を超えない範囲内において、支払時期の定めもしくは分割払の定めをし、またはこれと併せて、訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができると定める。これは裁判所が職権で行うことができるものであり、当事者の申立てを要しない。当事者の申立てがなければできないとする本記述は誤り。


問題:

司法書士の業務に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。

イ. 司法書士は、連合会の定める様式により事件簿を調製しなければならず、当該事件簿は、その閉鎖後一定の期間これを保存しなければならない。

ウ. 司法書士は、その業務の補助をさせるため補助者を置くことができ、補助者を置いたときは、遅滞なく、その旨を所属する司法書士会に届け出なければならない。

エ. 司法書士は、依頼者から報酬を受けたときであっても、領収証を作成して依頼者に交付する義務までは負わない。

オ. 司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他所定の事項の登録を受けなければならない。

答え:

正しいものは、ア・イ・ウ・オの4個である。

解説:

司法書士の事務処理上の義務(依頼に応ずる義務・事件簿・補助者・領収証・登録)は、それぞれ義務の有無と根拠条文が問われる。

ア(正しい)。司法書士法21条は「司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない」と定める。登記等の業務には依頼に応ずる義務があるが、簡裁訴訟代理等関係業務はこの義務から除外されている。本記述は正しい。

イ(正しい)。司法書士法施行規則30条は、司法書士は、連合会の定める様式により事件簿を調製しなければならず(1項)、事件簿はその閉鎖後7年間保存しなければならない(2項)と定める。なお、この保存期間は、改正前は閉鎖後5年間とされていたが、令和元年改正に伴う規則改正により、懲戒の除斥期間(7年)に合わせて7年間に延長された。事件簿の調製および保存が義務とされている点で、本記述は正しい。

ウ(正しい)。司法書士法施行規則25条は、司法書士は、その業務の補助をさせるため補助者を置くことができ(1項)、補助者を置いたときは、遅滞なく、その旨を所属する司法書士会に届け出なければならない(2項)と定める。本記述は正しい。

エ(誤り)。司法書士法施行規則29条は、司法書士は、依頼者から報酬を受けたときは、領収証を作成し、これに報酬額の内訳を記載して依頼者に交付しなければならない旨を定める。領収証の作成および交付は義務であり、これを負わないとする本記述は誤り。

オ(正しい)。司法書士法8条1項は、司法書士となる資格を有する者が司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地その他所定の事項の登録を受けなければならないと定める。なお、登録を受けようとする者は、事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、登録の申請をしなければならない(同法9条1項)。本記述は正しい。


出題分野の振り分け

  • 第1問:民法(配偶者居住権――取得原因〔遺産分割・遺贈〕・配偶者以外との共有の場合の取得不可・存続期間・改築増築や第三者使用収益への所有者の承諾・譲渡禁止/平成30年改正・令和2年4月1日施行)
  • 第2問:不動産登記法(登記の更正――変更登記との区別・登記の同一性・登記官の職権更正・単有から共有への更正の申請構造・付記登記と利害関係人の承諾)
  • 第3問:商業登記法・会社法(資本金の額の減少――決議要件の例外〔欠損てん補の普通決議〕・債権者異議手続と各別催告の省略・効力発生日・登記の添付書面・資本金零の減資)
  • 第4問:民事訴訟法(少額訴訟――訴額60万円以下の上限・年10回の回数制限・通常手続への移行の申述・控訴禁止と異議・支払猶予/分割払判決の職権)
  • 第5問:司法書士法(事務処理上の義務――依頼に応ずる義務・事件簿の調製と保存・補助者の届出・領収証の作成交付・司法書士名簿への登録)