問題:
相隣関係(令和3年法律第24号による改正後の規定)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 土地の所有者は、境界またはその付近における障壁の修繕のために必要な範囲内であれば、隣地を使用することができるが、住家に立ち入るには、その居住者の承諾を得なければならない。
イ. 土地の所有者は、隣地を使用する場合には、あらかじめ、その目的、日時、場所および方法を隣地の所有者および隣地を現に使用している者に通知しなければならず、この通知をすることが困難なときであっても、隣地の使用を開始することはできない。
ウ. 隣地の竹木の枝が境界線を越える場合において、その竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときは、土地の所有者は、自らその枝を切り取ることができる。
エ. 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、土地の所有者は、その竹木の所有者にその根を切除させることができるにとどまり、自らその根を切り取ることはできない。
オ. 他の土地に設備を設置しなければ電気、ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地の所有者は、その継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置することができる。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3個である。
解説:
令和3年法律第24号(令和5年4月1日施行)は、所有者不明土地問題への対応として相隣関係の規定を大きく改めた。改正前後で条文の項立てが入れ替わっているため、項番号の正確な把握が問われる。
ア(正しい)。改正後の民法209条1項は、土地の所有者は同項各号の目的のため「必要な範囲内」で隣地を「使用することができる」と定める(柱書)。改正前は隣人の承諾を求めることができるにとどまったが、改正により承諾を要しない使用権として構成された。もっとも、同項ただし書は「住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない」とし、住家への立入りについてのみ承諾を残している。本記述は条文どおりであり正しい。
イ(誤り)。民法209条3項本文は、隣地使用にあたりあらかじめ目的・日時・場所・方法を通知すべき旨を定めるが、同項ただし書は「あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる」とする。通知が困難でも使用を一切開始できないわけではない。本記述は誤り。
ウ(正しい)。民法233条1項は、枝が境界線を越えるときは原則として竹木の所有者に「切除させることができる」とするにとどまる(切除請求権)。もっとも、改正により新設された同条3項は、一定の場合に土地の所有者が自ら枝を切り取ることを認め、その1号として「竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき」を掲げる。本記述は233条3項1号そのものであり正しい。
エ(誤り)。枝については原則として切除請求にとどまるが(233条1項)、根については扱いが異なる。民法233条4項は「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」と定め、土地の所有者が自ら切り取ることを認めている。なお、この規定は改正前は2項に置かれていたが、枝の規定の新設に伴い4項へ移動した。本記述は誤り。
オ(正しい)。民法213条の2第1項は、令和5年4月1日施行で新設された継続的給付を受けるための設備設置権・設備使用権の規定であり、他の土地に設備を設置しなければ電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地の所有者は、その給付を受けるため必要な範囲内で他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用することができるとする。本記述は正しい。
問題:
根抵当権に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。
イ. 元本の確定すべき期日の定めがない場合において、根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができ、この場合には、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する。
ウ. 元本の確定前にその債務者について相続が開始した場合において、相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされる。
エ. 元本の確定前において、根抵当権の担保すべき債権の範囲を変更するには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得なければならない。
オ. 根抵当権者が抵当不動産について自ら競売の申立てをしたときは、競売手続の開始の有無にかかわらず、その申立ての時に担保すべき元本が確定する。
答え:
誤っているものは、エ・オの2個である。
解説:
根抵当権は、随伴性の有無・確定事由の番号・各種変更における承諾の要否が混同されやすい。条文の項号を正確に押さえることが要求される。
ア(正しい)。民法398条の7第1項は「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない」と定める。これは確定前の根抵当権に随伴性がないことを示す規定であり、被担保債権が譲渡されても根抵当権は移転しない。本記述は正しい。
イ(正しい)。民法398条の19第1項は、根抵当権設定者は設定の時から3年を経過したときに元本の確定を請求でき、その請求の時から2週間を経過することによって元本が確定すると定める。なお、同条3項により、元本の確定すべき期日の定めがあるときは同条の請求はできない。本記述は確定期日の定めがない場合を前提としており正しい。
ウ(正しい)。民法398条の8第2項は債務者についての相続の場合の指定債務者の合意を定め、同条4項は「第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす」と定める。本記述は正しい。
エ(誤り)。元本の確定前における被担保債権の範囲の変更は、民法398条の4第1項により認められるが、同条2項は「前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」と明記する。第三者の承諾を要するとする本記述は誤りである。なお、同条3項により、この変更について元本の確定前に登記をしないときは、変更をしなかったものとみなされる。
オ(誤り)。民法398条の20第1項1号は、根抵当権者が抵当不動産について競売等を申し立てたときを確定事由とするが、「ただし、競売手続若しくは担保不動産収益執行手続の開始又は差押えがあったときに限る」とする。すなわち、申立ての時ではなく、競売手続の開始等があったときに元本が確定する。「競売手続の開始の有無にかかわらず申立ての時に確定する」とする本記述は誤り。なお、同項各号は、1号=根抵当権者自身の競売等の申立て、2号=滞納処分による差押え、3号=第三者による競売手続の開始等を知った時から2週間の経過、4号=債務者・設定者の破産手続開始決定であり、番号の取違えに注意を要する。
問題:
株式会社の本店移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 同一の登記所の管轄区域内において本店を移転した場合には、本店の所在地において、2週間以内に本店移転の登記を申請しなければならない。
イ. 本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合における新所在地においてする登記の申請は、新所在地を管轄する登記所に対し、直接しなければならない。
ウ. 本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合における新所在地においてする登記の申請と旧所在地においてする登記の申請とは、同時にしなければならない。
エ. 定款に本店の所在地として最小行政区画である市町村までを定めている株式会社が、同一の市町村内において具体的な本店の所在場所を変更する場合には、株主総会の特別決議による定款の変更を要する。
オ. 本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合において、新所在地においてした登記の申請が却下されたときは、旧所在地における登記の申請も却下されたものとみなされる。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3個である。
解説:
本店移転の登記は、管轄内移転と管轄外移転の手続の差、定款変更の要否、経由申請の仕組みが体系的に問われる。
ア(正しい)。本店の所在場所は登記事項であり(会社法911条3項3号)、会社法915条1項は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内にその本店の所在地において変更の登記をしなければならないと定める。同一管轄区域内の本店移転は、本店所在地の登記所において1件の本店移転の登記を申請すれば足りる。本記述は正しい。
イ(誤り)。商業登記法51条1項は「本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない」と定める。新所在地の登記所に直接申請するのではなく、旧所在地の登記所を経由する経由申請による。本記述は誤り。
ウ(正しい)。商業登記法51条2項は「前項の登記の申請と旧所在地における登記の申請とは、同時にしなければならない」と定める。本記述は条文どおりであり正しい。
エ(誤り)。本店の所在地は定款の絶対的記載事項であるが(会社法27条3号)、実務上は最小行政区画である市町村までを定めれば足りる。定款に市町村までしか定めていない場合、同一市町村内での具体的所在場所の変更は定款の記載に変更を生じさせないため、定款変更(株主総会の特別決議。会社法466条、309条2項柱書)を要しない。具体的所在場所の決定は、取締役会設置会社では取締役会の決議、それ以外では取締役の決定で足りる。本記述は定款変更が必要とする点で誤り。なお、市町村をまたぐ移転の場合や、定款に番地まで定めている会社が所在場所を変更する場合には、定款変更を要する。
オ(正しい)。商業登記法52条5項は「新所在地においてした登記の申請が却下されたときは、旧所在地における登記の申請は、却下されたものとみなす」と定める。経由申請が同時申請とされる趣旨を担保する規定である。本記述は正しい。
問題:
民事訴訟における処分権主義に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
イ. 原告が1,000万円の支払を求める訴えにおいて、裁判所が審理の結果600万円の限度で請求に理由があると認めるときは、600万円の支払を命ずる一部認容の判決をすることができる。
ウ. 物の引渡しを無条件で求める訴えにおいて、被告の同時履行の抗弁に理由があると認められるときは、裁判所は、反対給付と引換えに引渡しを命ずる判決をすることができる。
エ. 原告が元本の支払のみを求め、遅延損害金の支払を申し立てていない場合であっても、裁判所は、職権で遅延損害金の支払を命ずる判決をすることができる。
オ. 訴訟費用の負担の裁判については、当事者の申立てがなくても、裁判所は、事件を完結する裁判において職権でこれをしなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・オの4個である。
解説:
処分権主義は、訴訟の開始・審判対象の特定・終了について当事者の意思を尊重する建前であり、その中核を条文化したのが民事訴訟法246条である。
ア(正しい)。民事訴訟法246条は「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない」と定める。審判の対象(訴訟物)とその範囲の画定を当事者に委ねる処分権主義の現れであり、本記述は条文どおりである。
イ(正しい)。一部認容判決は、原告が求める額の範囲内で、これより少ない額の給付を命ずるものであって、原告が申し立てた事項の枠内にとどまる。原告の通常の意思は「全部の認容が得られないとしても、その範囲内で可能な限りの認容を求める」ものと解されるため、一部認容判決は246条に違反しない。本記述は正しい。
ウ(正しい)。被告の同時履行の抗弁(民法533条)に理由がある場合の引換給付判決は、原告の無条件の給付を求める申立てに対し、その一部を認容する判決と位置づけられる。原告の申立ての範囲内にとどまるものであり、246条に違反しないと解されている。本記述は正しい。
エ(誤り)。遅延損害金(附帯請求)も独立した審判の対象であり、原告がこれを申し立てていない以上、裁判所が職権でその支払を命ずることは、当事者が申し立てていない事項について判決をするものとして246条に違反する。本記述は職権で命じ得るとする点で誤りである。
オ(正しい)。訴訟費用の負担は、処分権主義の例外として職権で判断される事項である。民事訴訟法67条1項は「裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における訴訟費用の全部について、その負担の裁判をしなければならない」と定める。当事者の申立てを要しない点で、申立事項に拘束される本案の判決とは異なる。本記述は正しい。
問題:
弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 弁済者は、弁済の提供をした場合において債権者がその受領を拒んだとき、または債権者が弁済を受領することができないときは、債権者のために弁済の目的物を供託することができ、この場合には、弁済者が供託をした時に、その債権は消滅する。
イ. 弁済者が債権者を確知することができないときは、その確知することができないことについて弁済者に過失があるか否かを問わず、弁済者は、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。
ウ. 債権者があらかじめ弁済の受領を拒んでいる場合であっても、弁済者は、現実の提供をしなければ、受領拒否を理由とする弁済供託をすることができない。
エ. 弁済供託がされた場合において、債権者が供託を受諾せず、かつ、供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。
オ. 供託物の還付を請求することができるのは供託者であり、供託物の取戻しを請求することができるのは被供託者である。
答え:
正しいものは、ア・エの2個である。
解説:
弁済供託は、平成29年法律第44号による改正(令和2年4月1日施行)で民法494条の項立てが整理されており、改正後の条文構造を前提に検討する必要がある。
ア(正しい)。民法494条1項は、その1号に「弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき」(受領拒否)、2号に「債権者が弁済を受領することができないとき」(受領不能)を掲げ、これらの場合に弁済者が供託をすることができ、「この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する」と定める。本記述は条文どおりであり正しい。
イ(誤り)。民法494条2項は「弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする」としつつ、ただし書で「ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない」と定める。債権者不確知を理由とする供託は、弁済者に過失がないことが要件であり、過失があれば供託をすることができない。本記述は過失の有無を問わないとする点で誤り。
ウ(誤り)。受領拒否を理由とする弁済供託は、原則として弁済の提供をしたことが前提となる(民法494条1項1号)。もっとも、弁済の提供の方法については、民法493条ただし書が、債権者があらかじめその受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる(口頭の提供)と定める。したがって、債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合には口頭の提供で足り、現実の提供までは要しない。さらに判例は、債権者が契約の存在を否定する等あらかじめ受領しない意思が明確と認められる場合には、口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れるとしており、こうした場合には口頭の提供すらせずに供託をすることができると解されている。本記述は現実の提供を一律に要するとする点で誤り。
エ(正しい)。民法496条1項は「債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる」と定める。本記述は条文どおりであり正しい。なお、同条2項により、供託によって質権または抵当権が消滅した場合には、この取戻しは認められない。
オ(誤り)。供託物の還付を請求することができるのは被供託者(債権者)であり、供託物の取戻しを請求することができるのは供託者(弁済者)である。本記述は還付請求権者と取戻請求権者を入れ替えており誤り。
出題分野の振り分け
- 第1問:民法(相隣関係――隣地使用権・竹木の枝の切除・継続的給付設備設置権/令和3年改正・令和5年4月1日施行)
- 第2問:民法・不動産登記法(根抵当権――随伴性・元本確定請求・相続による確定・被担保債権の範囲の変更・元本確定事由)
- 第3問:商業登記法・会社法(本店移転の登記――管轄内外の移転手続・経由申請・定款変更の要否)
- 第4問:民事訴訟法(処分権主義――申立事項と判決事項・一部認容判決・引換給付判決・訴訟費用の職権裁判)
- 第5問:供託法・民法(弁済供託――受領拒否/受領不能/債権者不確知・提供との関係・取戻請求権)