問題:
建物の表題部の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 建物の増築によって床面積に変更が生じたときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1か月以内に、建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。
イ. 建物の表題部の変更の登記の申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、過料に処せられることがある。
ウ. 主である建物に附属建物を新築した場合には、これを原因とする建物の表題部の変更の登記を申請する。
エ. 建物の種類、構造又は床面積について変更があったときに申請する建物の表題部の変更の登記には、建物図面及び各階平面図の提供を要しないことがある。
オ. 建物の表題部の変更の登記は、表示に関する登記であるから、登記官が職権ですることができる場合はない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・エの4つである。
解説:
建物の表題部の登記事項(不動産登記法第44条第1項各号の所在・家屋番号・種類・構造・床面積等)に変更が生じた場合の是正手続が、建物の表題部の変更の登記である。
アは正しい。建物の表題部の登記事項に変更があったときは、不動産登記法第51条第1項により、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1か月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。増築は床面積(同法第44条第1項第3号)の変更であるから、本条の対象となる。
イは正しい。第51条第1項の申請義務を怠った場合は、同法第164条第1項により10万円以下の過料に処せられることがある。表示に関する登記の申請義務に過料の制裁が結び付いている点は、建物滅失登記(第57条)や土地・建物の表題登記(第36条・第47条)と同じ建付けである。
ウは正しい。附属建物の新築は、既登記の主である建物の登記記録の表題部に附属建物として表示を加えるものであり、新たに独立の一個の建物として表題登記を申請するのではなく、主である建物についての表題部の変更の登記として申請する。床面積等の変更と同様、第51条第1項の対象である。
エは正しい。変更の内容によっては建物図面及び各階平面図の提供を要しない場合がある。例えば建物の種類のみの変更(居宅から店舗への用途変更など)は、物理的形状に変動がなく、図面を要しない。これに対し、増築による床面積の変更や附属建物の新築のように建物の形状・配置が変わる場合は、不動産登記令別表14の項により建物図面及び各階平面図の提供が必要となる。変更の態様によって添付図面の要否が分かれる点が本記述の趣旨である。
オは誤り。表示に関する登記には登記官の職権発動が認められる場面がある。例えば不動産登記法第28条は、表示に関する登記は登記官が職権ですることができる旨の一般規定を置いており、調査の結果、登記記録と現況とが相違していることが判明した場合には、職権による表題部の変更の登記がされ得る。「職権ですることができる場合はない」と言い切る点で誤りである。
問題:
土地家屋調査士法人に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 土地家屋調査士法人を設立するには、その社員になろうとする土地家屋調査士が、定款を定めなければならない。
イ. 土地家屋調査士法人の社員は、土地家屋調査士でなければならない。
ウ. 土地家屋調査士法人は、社員が1人であっても設立することができる。
エ. 土地家屋調査士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。
オ. 土地家屋調査士法人は、民間紛争解決手続代理関係業務(いわゆる筆界ADRの代理業務)を行うことができるが、その業務を行う法人の社員は、すべて、その業務について法務大臣の認定を受けた土地家屋調査士でなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・エの4つである。
解説:
土地家屋調査士法人は、土地家屋調査士法第26条以下に定められた、調査士業務を組織的に行うための法人である。司法書士法人等と同様の社員制(持分会社に近い建付け)が採られている。
アは正しい。土地家屋調査士法人を設立するには、その社員になろうとする土地家屋調査士が、定款を定めなければならない(同法第31条第1項)。定款には目的・名称・主たる事務所の所在地・社員の氏名及び住所・社員の出資に関する事項等を記載する(同条第3項)。
イは正しい。土地家屋調査士法人の社員は、土地家屋調査士でなければならない(同法第28条第1項)。これは、法人の業務が調査士の独占業務であることに対応した社員資格の制限である。
ウは正しい。かつては社員が2人以上必要とされていたが、令和元年法律第29号による改正(令和2年8月1日施行)により社員1人の法人(いわゆる一人法人)の設立が認められた。現行法上、社員が1人であっても土地家屋調査士法人を設立することができる。
エは正しい。土地家屋調査士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う(同法第35条第1項)。これは持分会社の社員の業務執行に関する規律に対応する。なお、各社員は法人を代表するのが原則であるが、定款または総社員の同意によって、社員のうち特に法人を代表すべき者を定めることができる(同法第35条の2第1項)。
オは誤り。土地家屋調査士法人も民間紛争解決手続代理関係業務(同法第3条第1項第7号・第8号の業務)を行うことができるが、その要件は「社員のうちに認定土地家屋調査士がいること」であって、社員の全員が認定を受けていることまでは要しない。実際にその業務を行うのは認定を受けた社員に限られるが、社員全員が認定調査士でなければならないとする点で本記述は誤りである。
問題:
相隣関係に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、令和3年法律第24号による改正後の民法(令和5年4月1日施行)によるものとする。
ア. 土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕のために必要な範囲内で、隣地を使用することができる。
イ. アの隣地使用をする場合には、その日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
ウ. アの隣地使用をする者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地を現に使用している者に通知しなければならず、この通知は、いかなる場合であっても、隣地の使用に先立ってしなければならない。
エ. 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
オ. エの設備の設置又は使用の方法は、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
答え:
正しいものは、ア・イ・エ・オの4つである。
解説:
令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)は、相隣関係の規定のうち隣地使用権(民法第209条)を整備し、新たにライフラインの設置・使用権(同法第213条の2・第213条の3)を創設した。境界確定や測量との関わりが深く、調査士試験での出題可能性が高い改正点である。
アは正しい。改正後の民法第209条第1項は、土地の所有者が、(1)境界又はその付近における障壁・建物その他の工作物の築造・収去・修繕、(2)境界標の調査又は境界に関する測量、(3)第233条第3項の規定による枝の切取り、のために必要な範囲内で隣地を使用することができる旨を定める。本記述は(1)に当たる。なお改正前は「隣地の使用を請求することができる」という請求権構成であったが、改正により一定の要件の下で適法に使用できる使用権構成に改められた。
イは正しい。第209条第2項は、隣地使用の日時・場所・方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない旨を定める。
ウは誤り。第209条第3項本文は、隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的・日時・場所・方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない旨を定めるが、同項ただし書は、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知すれば足りる旨を定めている。したがって「いかなる場合であっても使用に先立って通知しなければならない」とする点が誤りである。
エは正しい。第213条の2第1項は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気・ガス・水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内でこれらをすることができる旨を定める。これがライフラインの設置・使用権である。
オは正しい。第213条の2第2項は、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければならない旨を定める(隣地使用権の第209条第2項と同趣旨の最小損害の原則)。
問題:
平面直角座標系において、多角測量(トラバース測量)を行った。既知の測線ABの方位角 $T_{AB}$ と、各測点における右回りの交角(後視方向から前視方向へ時計回りに測った水平角)が次のとおり与えられている。このとき、測線BCの方位角 $T_{BC}$ 及び新点Cの座標値として正しいものはどれか。なお、座標値はX軸を北方向、Y軸を東方向にとり、関数電卓を使用してよい。
- 測線ABの方位角 $T_{AB}$ = 45°00′00″
- 点Bにおける右回りの交角 $\angle\text{ABC}$ = 120°00′00″
- 点Bの座標値 $X_B$ = +1000.000 m、$Y_B$ = +2000.000 m
- 測線BCの平面距離 $S_{BC}$ = 100.000 m
ア. $T_{BC}$ = 165°00′00″、Cの座標値 $X_C$ = +903.407 m、$Y_C$ = +2025.882 m
イ. $T_{BC}$ = 285°00′00″、Cの座標値 $X_C$ = +1025.882 m、$Y_C$ = +1903.407 m
ウ. $T_{BC}$ = 345°00′00″、Cの座標値 $X_C$ = +1096.593 m、$Y_C$ = +1974.118 m
エ. $T_{BC}$ = 345°00′00″、Cの座標値 $X_C$ = +1025.882 m、$Y_C$ = +2096.593 m
オ. $T_{BC}$ = 165°00′00″、Cの座標値 $X_C$ = +1096.593 m、$Y_C$ = +1974.118 m
答え:
正しいものは、ウである。
解説:
多角測量では、既知測線の方位角に各測点の交角を順次加えて次の測線の方位角を求め、その方位角と平面距離から座標増分を計算して新点の座標値を決定する。
まず、測線BCの方位角を求める。後視方向から前視方向へ時計回りに測った交角(右回りの交角)を用いる場合、次の測線の方位角は次式で求められる。
$$T_{BC} = T_{AB} + 180° + \angle\text{ABC} \pmod{360°}$$
これは、測線ABの逆方位角(点Bから点Aを見る方向の方位角)$T_{BA} = T_{AB} + 180°$ を起点として、そこから右回りの交角 $\angle\text{ABC}$ を加えると、点Bから点Cを見る方向の方位角になる、という関係に基づく。
$$T_{BC} = 45°00′00″ + 180°00′00″ + 120°00′00″ = 345°00′00″$$
計算結果が360°以上になる場合は360°を減じるが、本問は345°であるため減算は不要である。
次に、新点Cの座標値を求める。座標増分は、X軸を北・Y軸を東にとるとき次式で表される。
$$\Delta X = S \cos T, \qquad \Delta Y = S \sin T$$
$$\Delta X_{BC} = S_{BC}\cos T_{BC} = 100.000 \times \cos 345° = 100.000 \times 0.965926 = 96.593$$
$$\Delta Y_{BC} = S_{BC}\sin T_{BC} = 100.000 \times \sin 345° = 100.000 \times (-0.258819) = -25.882$$
したがって、点Cの座標値は次のとおりである。
$$X_C = X_B + \Delta X_{BC} = 1000.000 + 96.593 = 1096.593$$
$$Y_C = Y_B + \Delta Y_{BC} = 2000.000 + (-25.882) = 1974.118$$
よって、$T_{BC}=345°00′00″$、$X_C=+1096.593$ m、$Y_C=+1974.118$ m となり、正しいものはウである。
方位角345°は第4象限(北西よりやや北寄り、ΔXが正でΔYが負)に当たる。$X_C$ が $X_B$ より大きく(北へ進む)、$Y_C$ が $Y_B$ より小さい(西へ戻る)という符号の関係は、この象限と整合する。検算として、$\sqrt{\Delta X_{BC}^{,2}+\Delta Y_{BC}^{,2}}=\sqrt{96.593^2+(-25.882)^2}=\sqrt{9330.2+669.9}=\sqrt{10000.1}\approx100.000$ m となり、与えられた平面距離 $S_{BC}=100.000$ m と一致する。計算に誤りがないことが確認できる。
問題:
地積測量図に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア. 地積測量図とは、一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面であって、法務省令で定めるところにより作成されるものをいう。
イ. 地積測量図には、地積及びその求積方法を記録しなければならない。
ウ. 地積測量図には、筆界点間の距離を記録しなければならない。
エ. 地積測量図は、500分の1の縮尺により作成することとされており、土地の状況その他の事情によりこれによることが適当でない場合であっても、他の縮尺によることは認められない。
オ. 地積測量図には、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録しなければならない。ただし、近傍に基本三角点等がない場合その他の事情により基本三角点等に基づく測量をすることができない場合は、この限りでない。
答え:
正しいものは、ア・イ・ウ・オの4つである。
解説:
地積測量図は、不動産登記法第14条の地図や建物図面と並ぶ重要な図面であり、その内容・縮尺・作成方法は不動産登記規則第77条が定める。土地家屋調査士が作成する代表的な図面であり、記載事項は本試験の頻出論点である。
アは正しい。地積測量図の定義は不動産登記令第2条第3号に置かれており、一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面であって、法務省令の定めにより作成されるものとされている。
イは正しい。不動産登記規則第77条第1項は、地積測量図の記録事項を各号で列挙しており、地積及びその求積方法はその一つである。求積方法としては座標法や三斜法が用いられる。
ウは正しい。筆界点間の距離も、同条第1項各号に掲げられた記録事項の一つである。各筆界点を結ぶ辺の長さを明示することで、図面から土地の形状と大きさを再現できるようにする趣旨である。
エは誤り。不動産登記規則第77条第4項は、地積測量図の縮尺を原則として250分の1とし(500分の1ではない)、土地の状況その他の事情により当該縮尺によることが適当でないときは、この限りでない旨を定めている。原則の縮尺を「500分の1」とする点(500分の1は建物図面の縮尺)、及び「他の縮尺によることは認められない」とする点の二重の誤りがある。
オは正しい。同条第1項第8号は、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録事項として掲げる一方、近傍に基本三角点等が存しない場合その他の基本三角点等に基づく測量をすることができない特別の事情がある場合には、これに代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録するものとされている(同条第2項)。座標値の記録は原則として要求されるが、基本三角点等が利用できない場合には代替の取扱いが認められている点が本記述の趣旨である。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 根拠条文等 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示) | 建物の表題部の変更の登記(増築・附属建物新築・種類構造床面積)・申請義務・過料・添付図面・職権 | 不登法44条・51条・164条・28条、不登令別表14の項 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 土地家屋調査士法人(定款・社員資格・一人法人・業務執行・ADR業務) | 調査士法28条・31条・35条、3条1項7号8号(令和元年改正) |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 隣地使用権・継続的給付設備(ライフライン)設置使用権 | 民法209条・213条の2(令和3年改正・令和5年4月1日施行) |
| 第4問 | 測量計算 | トラバース測量の方位角の逐次計算と新点座標(関数電卓持込み可) | 多角測量・方位角・座標計算 |
| 第5問 | 作図・書式 | 地積測量図の定義・記録事項・縮尺・座標値 | 不登令2条3号、不登規則77条 |