この記事の要点
- 株主総会の議事録は、会社が自分で作る社内の文書です。作成に資格は要りません。
- 何を書くかは法律で決まっています。会社法318条1項が作成義務を定め、具体的な記載事項は会社法施行規則72条3項が6つ挙げています。
- 登記の場面では、登記すべき事項について株主総会の決議が必要なとき、申請書に議事録を添付します(商業登記法46条2項)。
- 議事録だけでは足りず、株主リストなど別の書面も必要になる場合があります。
- 議事録は株主総会の日から10年間、本店に備え置く義務があります(会社法318条2項)。
- 次の一歩:①決議の内容と定款を確認 → ②6つの記載事項を漏れなく書く → ③その登記に必要な添付書面をあわせて確認する。
この記事が扱う範囲
株主総会の議事録には、いろいろな役割があります。社内の記録として残す、株主や取引先に説明する、後から決議の内容を確認する——どれも大切ですが、この記事は「登記の添付書面として使えるか」という一点に絞って、書き方を整理します。
登記の添付書面という切り口に限定するのは、ここが「書き方を間違えると手続きが先に進まない」場面だからです。株主どうしの意見が対立している場合の対処や、決議の効力そのものを争う方法は、この記事では扱いません(そうした争いにかかわる交渉や手続きは弁護士の業務です)。
議事録は会社が作る文書──作成に資格は要りません
まず押さえておきたいのは、株主総会の議事録は会社自身が作る文書だということです。議事録を作成する人を資格者に限る定めは、作成を義務づける会社法318条にも、その中身を定める会社法施行規則72条にも置かれていません。むしろ会社法施行規則72条3項6号は、「議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」を記載事項に挙げており、作成の職務を担うのは取締役という前提になっています。実際の起案を社内の方が行うことは差し支えありませんが、議事録にはその職務を行った取締役の氏名を書きますので、誰がその職務を担うのかははっきりさせておく必要があります。
会社法318条1項は、こう定めています。
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
「法務省令で定めるところにより」という部分の中身が、会社法施行規則72条です。つまり、議事録は中身を自由に決めてよいわけではなく、書くべき事項が決まっているということになります。
登記で議事録が必要になるのはどんなときか
商業登記法46条2項は、次のように定めています。
登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。
つまり、その登記の内容を決めるのに株主総会の決議が要るなら、原則としてその議事録を添付するという仕組みです(総会を開かずに決めた場合の扱いは、後で触れます)。中小企業でよくあるのは、次のような場面です。
- 役員が交代したとき(取締役の選任・辞任や解任にともなう役員変更の登記)
- 会社名を変えるとき(会社の基本ルールを定めた定款を変更するので、株主総会の決議が必要)
- 取締役会や監査役を置く・やめるとき(機関設計の見直し)
これらの記事では、それぞれの手続きの流れと必要書類の全体像を扱っています。この記事は、そこで「必要書類の1つ」として登場する議事録そのものの中身を掘り下げるものです。
議事録に書く6つのこと(会社法施行規則72条3項)
会社法施行規則72条3項が挙げる記載事項は、次の6つです。
1. 開催された日時および場所
条文は「株主総会が開催された日時及び場所」としたうえで、その場所にいない取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人または株主が出席した場合には、その出席の方法も書くことを求めています。オンラインや電話会議で参加した人がいるなら、その旨を記載するということです。
登記の場面では、日付が特に重要になります。役員の就任日や商号の変更日は決議の日と結びつくため、日付の書き間違いは登記の内容そのものに影響します。
なお、「場所を定めない株主総会」(バーチャルオンリー株主総会)を非上場会社にも認める案が、いま法制審議会で検討されています。ただし2026年8月の時点では中間試案の段階で、法律は成立も公布も施行もしていません(施行日も未定です)。現在の議事録には、これまでどおり開催場所を書く必要があります。検討の状況は「場所がない株主総会」がついに実現へ──次期会社法改正の焦点を読むで扱っています。
2. 議事の経過の要領およびその結果
「要領」とありますから、発言を一言一句書き起こす必要はありません。ただし、何を議題として、どう議論して、どういう結論になったかが読み取れる程度には書く必要があります。登記の添付書面として見たときは、「登記したい事項が、この総会で確かに決まった」と読み取れることが要点になります。
3. 一定の規定にもとづいて述べられた意見・発言の概要
条文は、会社法342条の2第1項などの条文を列挙し、それらの規定にもとづいて総会で述べられた意見や発言があるときは、その概要を書くとしています。監査役や会計監査人が法律上の立場から意見を述べた場合などがこれにあたります。該当する発言がなければ、書く必要はありません。
4. 出席した取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名または名称
この4号が求めているのは、役員等のうち出席した人の氏名です。株主全員の氏名を書くことを、この号が求めているわけではありません。
5. 議長がいるときは、議長の氏名
「議長が存するときは」という書き方ですので、議長を置かなかった場合の記載は求められていません。実際には議長を立てるのが通常です。
6. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
議事録を作った取締役の氏名を書きます。この欄が空いていると、記載事項が1つ欠けた議事録ということになります。
「決議の結果」をどう書くか
上の2つめ、「議事の経過の要領及びその結果」の書き方でつまずきやすいのが、決議が成立した根拠が読み取れるように書くという点です。
会社法309条1項は、株主総会の決議について、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行う、と定めています(いわゆる普通決議)。
一方で、同条2項は、定款変更をはじめとする一定の事項について、議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上にあたる多数を要する、としています(いわゆる特別決議)。さらに3項・4項では、より重い要件が定められている場合もあります。
ここで大事なのは、要件は定款で変えられるということです。「うちの会社は普通決議だから過半数」と思い込まず、まず自社の定款を確認するのが出発点になります。
議事録に「可決した」とだけ書いてあると、どの要件を満たして可決したのかが読み取れません。決議の要件が議決権の数で定められている以上、それを満たしたことを議事録から読み取れるようにするには、議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席した株主の数と議決権の数を冒頭に書き、そのうえで各議案について賛成の状況を書いておくことになります。
押印は必要か
会社法318条1項と会社法施行規則72条3項は、株主総会の議事録に署名や押印をすることを、記載事項として挙げてはいません。 もっともこれは、いま挙げた2つの条文がそう定めているという意味であって、押印しなくてよいと決まっているわけではありません。定款や社内規程で押印の取扱いを定めている会社もあります。
そして、登記の場面では話が別です。商業登記規則61条6項は、代表取締役または代表執行役の就任による変更の登記について、印鑑証明書(市町村長が作成した印鑑の証明書)の添付を求めており、その1号でこう定めています。
株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
つまり、株主総会で代表取締役を定めたときは、議長と出席取締役が議事録に押した印鑑について、市町村長の印鑑証明書を付けることになります。押印がなければ、そもそもこの要件を満たせません。
なお同項にはただし書があり、その印鑑が、変更前の代表取締役(取締役を兼ねる者に限る)が登記所に提出している印鑑と同一であるときは添付が不要とされています。どちらにあたるかは会社の状況によって変わりますので、実際の申請前に確認が必要です。
総会を開かずに決めたとき(書面決議)
会社法319条1項は、取締役または株主が提案をした場合に、その事項について議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録(電子データ)で同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の決議があったものとみなす、と定めています。いわゆる書面決議(決議の省略)です。株主が少ない会社では、実際に集まらずにこの方法をとることがあります。
このときの議事録は、会社法施行規則72条4項1号により、次の4つを内容とするものになります。
- 決議があったものとみなされた事項の内容
- その事項の提案をした者の氏名または名称
- 決議があったものとみなされた日
- 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名
登記の添付書面としては、商業登記法46条3項が、この議事録に代えて「当該場合に該当することを証する書面」を添付すると定めています。株主全員の同意書などがこれにあたります。
注意していただきたいのは、この制度は「実際に全員の同意を得た」ことが前提だという点です。 319条1項は、全員の同意があったときに決議があったものと「みなす」と定めています。同意がなければ、みなされる決議はそもそも生じません。同意を得ていないのに議事録だけを作ったり、開いていない総会の議事録を作ったり、日付を実際と違う日に書いたりすることは、事実と異なる書面を作ることになります。手続きが面倒だからと安易に形だけ整えるのは、絶対に避けてください。
議事録のほかに必要になる書面
登記の添付書面は、議事録だけで完結するとは限りません。代表的なものが株主リストです。商業登記規則61条3項は、登記すべき事項について株主総会または種類株主総会の決議を要する場合に、次のいずれか少ない人数の株主について、氏名または名称・住所・株式数・議決権の数・議決権割合を証する書面を添付しなければならない、としています。
- 議決権の割合が高い順に上位10名
- 議決権割合を多い順に加算して3分の2に達するまでの人数
このほか、役員の就任による変更の登記なら就任承諾書、場面によっては印鑑証明書や本人確認証明書、定款の写しなどが必要になります。何が必要かは登記の種類ごとに違いますので、申請前に管轄の法務局や司法書士に確認することをおすすめします。
なお、役員報酬の額を株主総会で決めた場合の税務上の取扱いについては、税理士にご確認ください。この記事では扱いません。
保管と閲覧のルール
作った議事録は、それで終わりではありません。会社法318条は、次のように定めています。
- 2項:株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置く
- 3項:株主総会の日から5年間、議事録の写しを支店に備え置く(ただし、電磁的記録で作成されていて、支店での閲覧・謄写の請求に応じられるようにする法務省令所定の措置をとっているときは不要)
- 4項:株主および債権者は、営業時間内はいつでも、議事録の閲覧または謄写(写しを取ること)を請求できる
- 5項:親会社の社員は、権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て同様の請求ができる
書面決議の場合の同意書等についても、会社法319条2項が、決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置くことを定めています。
登記が済んだら不要になる書類、ではありません。会社に残しておくべき文書だと考えてください。
記載例(取締役を選任した場合)
以下は、記載事項の対応関係をつかんでいただくための骨組みの例です。
臨時株主総会議事録
1. 開催日時 令和○年○月○日 午前10時00分から午前10時30分まで
2. 開催場所 当会社本店(○県○市○町○丁目○番○号)
3. 株主の状況
議決権を行使することができる株主の数 ○名
議決権を行使することができる株主の議決権の数 ○個
出席株主の数(委任状によるものを含む) ○名
出席株主の議決権の数 ○個
4. 出席役員 取締役 ○○○○(議長)
取締役 ○○○○
監査役 ○○○○
5. 議事の経過の要領及びその結果
議長は、上記のとおり定足数にあたる株主の出席があったので本総会は
適法に成立した旨を述べ、開会を宣した。
第1号議案 取締役選任の件
議長は、取締役全員が本総会の終結の時をもって任期満了により退任する
ため、あらためて取締役○名を選任したい旨を述べ、下記の者を候補者と
して指名し、その可否を諮ったところ、出席した株主の議決権の過半数の
賛成をもって承認可決された。
取締役 ○○○○
取締役 ○○○○
なお、被選任者はいずれも即時その就任を承諾した。
議長は、以上をもって本総会の全議案の審議を終了した旨を述べ、
午前10時30分閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作成する。
令和○年○月○日
○○株式会社 臨時株主総会
議事録の作成に係る職務を行った取締役 ○○○○ 印
この例をそのまま使えば登記が通る、というものではありません。 決議の要件は定款によって変わりますし、必要な記載も議案の内容によって変わります。あくまで、6つの記載事項がどこに対応しているかを確認するための見取り図として使ってください。
まとめ
株主総会の議事録は、会社が自分で作る文書です。作成に資格は要りませんが、書くべきことは会社法318条1項と会社法施行規則72条3項で決まっています。日時・場所、議事の経過の要領と結果、法定の意見・発言の概要、出席役員の氏名、議長の氏名、作成の職務を行った取締役の氏名——この6つが土台になります。
登記の添付書面として使う場合は、これに加えて、決議の要件を満たしたことが読み取れる書き方になっているか、株主リストなど別に必要な書面がそろっているか、代表取締役を株主総会で定めた場合の押印と印鑑証明書はどうなるかを確認することになります。作った議事録は10年間、本店で保管します。
会社の定款の内容や機関設計によって、必要な要件も添付書面も変わります。判断に迷ったら、書類を作り込む前の段階で、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 株主総会議事録を作るのに費用はかかりますか?
議事録そのものは会社が自分で作る文書ですので、作成に手数料などはかかりません。費用がかかるのは登記を申請する段階で、法務局に納める登録免許税が必要になります。金額は登記の種類や資本金の額によって異なりますので、申請前にご確認ください。書類の作成や申請を司法書士に依頼する場合は、別途報酬がかかります。
Q. 議事録を作らなかったり、登記を放置したりするとどうなりますか?
会社法318条1項は議事録の作成を義務づけており、2項は10年間の本店備置きを義務づけています。作っていなければ、株主や債権者から閲覧を求められたときに応じられません。また、登記事項に変更が生じたときは、会社法915条1項により2週間以内に本店の所在地で変更の登記をする必要があります。放置すると、登記簿の記載が実態と食い違ったままになり、取引や融資、許認可の場面で支障が出ることがあります。
会社法はこれらを、取締役など役員個人について100万円以下の過料の対象として定めています(会社法976条)。同条1号が「この法律の規定による登記をすることを怠ったとき」、8号が318条2項・3項や319条2項に違反して議事録などを備え置かなかったとき、4号が正当な理由なく閲覧・謄写を拒んだときを挙げています。さらに7号は、議事録に記載すべき事項を記載しなかったときや虚偽の記載をしたときも挙げていますので、作って置いておけば足りるというものでもありません。決議のつど議事録を作り、書くべき事項を漏らさず書き、2週間以内に登記を済ませ、本店に置いておく——この当たり前の流れを守ることが、いま挙げた各号にあたる事態を避ける前提になります。
Q. 自分で作れますか。どこに相談すればよいですか?
議事録の作成に資格は必要ありませんので、社内の方が作って差し支えありません。決議の内容が単純で、定款の定めもはっきりしている場合は、ご自身で作成されている会社も多くあります。一方、機関設計が複雑な場合、定款に特別な定めがある場合、複数の議案が絡む場合などは、記載の漏れが登記の場面で表面化しがちです。作った書類でその登記が通るか不安なときは、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】株主リストの数え方と、添付書面としての議事録の位置づけ
ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
本文では議事録そのものの記載事項を扱いました。ここでは、その議事録が「登記の添付書面」として置かれている枠組み——株主リストの人数と議決権の数え方、商業登記規則61条が定める添付書面の構造、そして議事録の記載がどのような前提で見られるのか——を、条文にさかのぼって整理します。
株主リストの人数は「上位10名」と「3分の2に達するまで」の少ないほう
商業登記規則61条3項は、株主リストに記載する株主の人数について「次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数」としたうえで、次の2つを挙げています。
- 1号:十名
- 2号:その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数
条文が「いずれか少ない人数」と書いている以上、どちらを採るかを会社が選ぶのではなく、計算すれば自動的に決まります。
- 株主3名で議決権割合が60%・30%・10%の場合:多い順に加算すると2人目で90%となり3分の2(約66.7%)に達します。2号は2名、1号は10名ですから、少ないほうの2名を記載します。
- 株主20名で議決権割合が各5%の場合:多い順に加算して3分の2に達するのは14人目(70%)です。2号は14名、1号は10名ですから、少ないほうの10名を記載します。
- 株主が1名(100%)の場合:1人目で3分の2に達しますので1名です。
記載する内容も同項が定めており、氏名または名称、住所、その株主が有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合はその種類の株式の数)、議決権の数、そして議決権の割合の5つです。
議決権の数え方──「その決議で行使できるもの」に限られる
株主リストの基準となる議決権について、商業登記規則61条3項は「当該決議において行使することができるものに限る」という括弧書を置いています。発行済株式の総数から機械的に割り出すのではなく、その決議で実際に行使できる議決権を基準にするという趣旨です。
会社法の側では、次のような場面で株式数と議決権数がずれます。
- 自己株式……会社法308条2項は、株式会社は自己株式については議決権を有しない、と定めています。会社が持つ自社株式は分母にも分子にも入りません。
- 単元株式数の定めがあるとき……会社法308条1項ただし書により、一単元の株式につき一個の議決権となります。株式数と議決権数は一致しません。
- 単元未満株式……会社法189条1項は、単元未満株主はその単元未満株式について株主総会および種類株主総会において議決権を行使することができない、と定めています。
- 相互保有株式……会社法308条1項本文の括弧書は、「株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主」を、議決権を有する株主から除いています。
株式数の欄と議決権数の欄を同じ数字で埋めてしまうと、これらにあてはまる会社では株主リストの記載が実態と食い違います。2つの欄は別々に確認して埋めるものと考えておくのが安全です。
商業登記規則61条の構造──議事録は添付書面の一部にすぎない
商業登記規則61条は「添付書面」という見出しの下に11の項を置いています。議事録と関係の深いものを並べると、次のような構造です。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 定款の定めまたは裁判所の許可がなければ無効・取消しの原因が生じる申請には、定款または裁判所の許可書 |
| 2項 | 株主全員(1号)・種類株主全員(2号)の同意を要する場合に、その全員の氏名等・株式数・議決権数を証する書面 |
| 3項 | 株主総会・種類株主総会の決議を要する場合の株主リスト |
| 4項 | 設立時取締役の就任承諾書に押印した印鑑についての市町村長作成の証明書(取締役の就任〔再任を除く〕による変更登記も同様) |
| 5項 | 取締役会設置会社では、4項を「設立時代表取締役・設立時代表執行役」「代表取締役・代表執行役」と読み替える |
| 6項 | 代表取締役・代表執行役の就任による変更登記の印鑑証明書(本文で扱った条文) |
| 7項 | 就任承諾書に記載した氏名・住所と同一の記載がある本人確認証明書 |
| 8項 | 代表取締役等の辞任による変更登記で、辞任を証する書面に押印した印鑑の証明書 |
ここで押さえておきたいのが、4項・5項と7項の関係です。7項にはただし書があり、4項(5項で読み替えて適用される場合を含む)または6項により市町村長作成の印鑑証明書を添付する場合は、本人確認証明書の添付は不要とされています。つまり、就任する取締役について印鑑証明書が要る場面か、本人確認証明書が要る場面かが、取締役会を置いているかどうかと就任する役職によって変わる仕組みになっています(4項も7項も、再任の場合は対象から除かれています)。
議事録の記載事項が完璧でも、この列の書面が欠ければ手続きは先へ進みません。逆に言えば、議事録の要件(会社法318条・会社法施行規則72条)と添付書面の要件(商業登記法46条・商業登記規則61条)は、別々の条文が別々に定めているものだということです。
形式的審査という枠組み──書かれていないことは補えない
商業登記法24条は、登記官は同条各号に掲げる事由があるときは理由を付した決定で申請を却下しなければならない、と定めています。議事録に関係するのは、たとえば次の号です。
- 7号:申請書に必要な書面を添付しないとき
- 8号:申請書またはその添付書面の記載・記録が、申請書の添付書面または登記簿の記載・記録と合致しないとき
- 9号:登記すべき事項につき無効または取消しの原因があるとき
同条にはただし書があり、申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは却下しないとされています。いわゆる補正です。
この構造から、登記の審査は原則として提出された申請書と添付書面の記載に基づいて行われると説明されます。少なくとも、会社の内部でどのような議論があったか、実際には定足数を満たしていたか、といった書面の外の事情は、書面に現れていなければ登記官には分かりません。
なお、「形式的審査主義」は講学上の呼び方であって、商業登記法24条にその言葉が出てくるわけではありません。同条は、7号・8号のように書面のそろい方や記載の食い違いを却下事由とする一方で、9号では「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき」も却下事由に挙げています。この9号がある以上、「形式的審査主義」という言葉だけで登記官の審査の範囲がすべて決まるわけではありません。ただし、いずれにしても、書面に書かれていないことを会社の側の言い分で補えるようになるわけではないという点は変わりません。議事録の書き方を考えるうえでは、この点を押さえておけば足ります。
本文で「可決した」とだけ書くのでは足りないと述べたのは、この点によります。議決権を行使できる株主の議決権の数と、出席株主の議決権の数が書かれていなければ、その決議が会社法309条(種類株主総会なら会社法324条)の要件を満たしたことを書面から読み取れません。議事録は、決議があったことを記録する文書であると同時に、決議の要件を満たしたことを書面上で示す文書でもある、という位置づけになります。
ここで述べているのは、あくまで登記の手続の場面で議事録がどう読まれるかという話です。議事録を作ったかどうか、どう書いたかが決議そのものの効力にどう影響するかは、この記事では扱いません(決議の効力を争う手続は弁護士の業務です)。
なお、定款で決議要件を加重・軽減している会社では、その定款の定めを前提に要件を満たすかどうかが判断されることになります。定款そのものを添付するかどうかは登記の種類や事案によって変わりますので、申請前に確認が必要です。
種類株式発行会社では、種類株主総会の議事録が別に要ることがある
種類株式を発行している会社では、株主総会の決議に加えて種類株主総会の決議が必要になる場合があります。
会社法322条1項は、種類株式発行会社が同項各号の行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ効力を生じない、と定めています(その種類株主総会で議決権を行使できる種類株主が存在しない場合は除かれます)。同項1号が挙げるのは、**株式の種類の追加(イ)・株式の内容の変更(ロ)・発行可能株式総数または発行可能種類株式総数の増加(ハ)**にあたる定款変更などです。この種類株主総会の決議は、会社法324条2項4号により、議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上という要件になります。
一方、会社法322条2項は、ある種類の株式の内容としてこの種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることを認めており、同条3項により、その定めがある種類の株式については1項が適用されません。ただし3項ただし書により、**1項1号の定款変更(単元株式数についてのものを除く)**を行う場合は、なお種類株主総会が必要です。
登記の場面では、商業登記法46条2項が「株主総会若しくは種類株主総会」と並べて議事録の添付を求めており、商業登記規則61条3項も種類株主総会の決議を要する場合の株主リストを規定しています(この場合の分母は「その種類の株式の総株主」の議決権です)。種類株主総会を開いたなら、その議事録と、その種類の株式についての株主リストが別に必要になるということです。議事録の作成義務そのものも、会社法325条が株主総会に関する規定(会社法295条1項2項・296条1項2項・309条を除く)を種類株主総会に準用しているため、会社法318条は種類株主総会にも及びます。
書面決議で登記するときの「該当することを証する書面」とは何か
商業登記法46条3項は、会社法319条1項(同法325条において準用する場合を含む)により決議があったものとみなされる場合には、46条2項の議事録に代えて「当該場合に該当することを証する書面」を添付すると定めています。「議事録に代えて」と書かれていますから、登記の添付書面としては議事録が置き換わる形です。
では「当該場合に該当することを証する書面」とは何か。会社法319条1項の要件を分解すると、書面で示すべきことは次の2つになります。
- 取締役または株主が、株主総会の目的である事項について提案をしたこと
- その提案につき、その事項について議決権を行使することができる株主の全員が、書面または電磁的記録によって同意の意思表示をしたこと
実務では、①にあたる提案書(提案の内容・提案者・日付を記載したもの)と、②にあたる株主全員の同意書を組み合わせる形が用いられます。同意が必要なのは「議決権を行使することができる株主の全員」であり、1名でも欠ければ319条1項の要件を満たしません。
見落としやすいのが、書面決議でも株主リストは必要だという点です。商業登記規則61条3項の括弧書は、議決権について「当該決議(会社法第三百十九条第一項(同法第三百二十五条において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る」としており、みなし決議の場合を明示的に含めています。総会を開かなかったからといって株主リストが不要になるわけではありません。
なお、会社法318条1項による議事録の作成義務は書面決議でも残り、その内容は会社法施行規則72条4項1号が定める4つの事項(本文で挙げたもの)になります。登記の添付書面としての扱いと、会社が作成・保管すべき文書としての扱いは別という整理です。
電子データで作った議事録の扱い
会社法施行規則72条2項は、株主総会の議事録は書面または電磁的記録をもって作成しなければならないと定めており、電子データで作成すること自体は条文上認められています。本文で触れた会社法318条3項のただし書(支店備置きが不要になる場合)も、議事録が電磁的記録で作成されていることを前提にした規定です。
では、その電子データの議事録を登記の添付書面として使うとき、条文はどう組み立てられているか。枠組みは次の3段です。
第1段:電磁的記録を添付する根拠 商業登記法19条の2は、申請書に添付すべき定款・議事録・最終の貸借対照表が電磁的記録で作られているときは、その情報の内容を記録した電磁的記録(法務省令で定めるものに限る)を申請書に添付すると定めています。書面申請の場合にこの電磁的記録の要件を定めているのが商業登記規則36条で、1項が媒体の構造、2項が記録の方式、そして3項が、その情報に作成者が**電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律2条1項の電子署名)**を講じたものでなければならない、としています。
第2段:オンライン申請での送信 オンラインで申請する場合は、商業登記規則102条2項が、申請書に添付すべき書面(商業登記法19条の2の電磁的記録を含む)があるときは、その書面に代わるべき情報に作成者が同条1項の措置(=36条3項の電子署名)を講じたもの=「添付書面情報」を送信しなければならない、と定めています。議事録はここでいう添付書面情報にあたります。なお同項にはただし書があり、添付書面情報の送信に代えて、その書面を登記所に提出し、または送付することも妨げられません。
第3段:どの電子証明書を併せて送るか 商業登記規則102条5項2号は、代理人の権限を証する情報以外の添付書面情報について、同条4項各号に掲げる電子証明書、または公証人法施行規則13条1項の指定公証人電子証明書を併せて送信するとしています。4項1号は3項各号の電子証明書を引いており、そこに挙がっているのは、①商業登記規則33条の8第2項の電子証明書(いわゆる商業登記電子証明書)、②電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律3条1項の署名用電子証明書(マイナンバーカードのもの)、③電子署名及び認証業務に関する法律8条の認定認証事業者が作成した電子証明書その他法務大臣の定めるもの、④官庁が嘱託する場合の官庁作成の電子証明書、の4つです。
つまり、「電子データの議事録に電子署名を付し、その署名者の電子証明書を併せて送信する」という骨格は条文で決まっています。③④の「法務大臣の定めるもの」を含めて実際にどの電子証明書が使えるかは、法務省が「商業・法人登記のオンライン申請について」のページで一覧を公開しています(確認日:2026年8月7日)。それによると、添付書面情報(議事録はここに含まれます)に使える電子証明書として、商業登記電子証明書、マイナンバーカードの署名用電子証明書(公的個人認証サービス)、セコムパスポート for G-ID などの特定認証業務電子証明書、官職証明書、指定公証人電子証明書のほか、令和2年6月15日からはクラウド型の電子署名サービスに対応した「その他」の類型が追加されています。送信の形式も同ページに案内があり、電子署名を付与したPDFファイル等を、申請用総合ソフトなどで申請書情報に添付して送信する扱いです。ここに掲載される電子証明書は随時追加・変更される運用の部分ですので、実際に電子データの議事録を使う場合は、法務省・登記・供託オンライン申請システムの最新の案内を確認するか、お近くの司法書士にご相談ください。
会社法改正の検討状況──この記事の内容はいつまで有効か
議事録の記載事項は、会社法318条・会社法施行規則72条という条文で決まっています。その条文自体を見直す議論が、いま法制審議会で進んでいます。2026年8月時点での到達点を、日付で押さえておきます。
| 時点 | できごと |
|---|---|
| 令和7年2月 | 法務大臣が法制審議会に「会社法制の見直し」を諮問 |
| 令和7年4月23日 | 会社法制(株式・株主総会等関係)部会 第1回会議 |
| 令和8年3月18日 | 第12回会議で「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」を取りまとめ |
| 令和8年4月2日〜5月22日 | 中間試案についてのパブリックコメント(意見募集) |
| 令和8年7月22日 | 第16回会議「要綱案の取りまとめに向けた検討(2)」 |
要綱案はまだ取りまとめられておらず、改正法案の国会提出も、成立も、公布も、施行もされていません。施行日も決まっていません。
議事録との関係で見ておきたいのは、中間試案の第2部第1の1「バーチャルオンリー株主総会の実施要件」です。ここでは、「場所の定めのない株主総会」を「バーチャルオンリー株主総会」と呼んだうえで、「株式会社は、株主総会の場所を定めないことができる旨を定款で定めることができる」という案が示されています。仮にこの方向で改正されれば、会社法施行規則72条3項1号が求める「株主総会が開催された日時及び場所」の書き方にも見直しが必要になると考えられますが、施行規則をどう改めるかも含めて、まだ何も決まっていません。また同じ中間試案の第2部第4の2には「株主総会の書面決議制度の見直し」も項目として挙がっており、会社法319条の書面決議も検討の対象です。
ただし、**中間試案は「案」であって条文ではありません。**しかも複数案が併記されている項目もあり、要綱案・法案の段階で変わり得ます。したがって、いま議事録を作るときに従うべきなのは、この記事で挙げてきた現行の条文です。あわせて、直近の商業登記規則の改正(令和8年法務省令第2号。令和8年1月16日公布・同年2月2日施行、法務省民商第9号通達)も確認しましたが、これは設立の登記の申請の特例(商業登記規則35条の4)に関するもので、株主リスト(商業登記規則61条3項)や議事録の添付には影響しません。
この節で参照した法制審議会・通達・電子証明書の各資料は、条文とあわせて次の「参考資料」にまとめています(確認日:2026年8月7日)。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 会社法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法施行規則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000010012
- 商業登記法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/338AC0000000125
- 商業登記規則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 法務省「『会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案』(令和8年3月18日)の取りまとめ」: https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00333.html
- 会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案(本文PDF): https://www.moj.go.jp/content/001460088.pdf
- 法務省「法制審議会-会社法制(株式・株主総会等関係)部会」(会議一覧): https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00014.html
- 法務省「法制審議会第201回会議(令和7年2月10日開催)」: https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500044_00005.html
- 法務省「法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会第16回会議(令和8年7月22日開催)」: https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00340.html
- e-Govパブリック・コメント「『会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案』に関する意見募集」: https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080352
- 法務省民商第9号通達(令和8年1月21日)「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」: https://www.moj.go.jp/content/001455057.pdf
- 法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」(第3 電子証明書の取得): https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html
- 登記・供託オンライン申請システム「利用可能な電子証明書」: https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/cautions/security/riyokano_syoumei.html