この記事の要点
- 監査役の任期は原則4年(取締役は原則2年)。任期の数え方は「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法336条1項)
- 非公開会社(株式譲渡制限会社)は、定款の定めによって監査役の任期を最長10年まで伸長できる(会社法336条2項)
- 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、そもそも監査役を置くことができない(会社法327条4項)
- 同じ人がそのまま監査役を続ける場合も、任期満了のたびに「重任」の変更登記が必要
- 変更登記は変更が生じてから2週間以内(会社法915条1項)。放置すると過料の対象になり得る(会社法976条1号)
「監査役は特にすることがないから、任期も取締役と同じでいいだろう」——中小企業の経営の現場では、こうした思い込みをよく見かけます。しかし会社法上、監査役の任期は取締役の任期とは別のルールで決まっており、任期の長さも計算方法も異なります。取締役の任期管理はできていても、監査役の任期だけがうっかり見落とされ、登記懈怠(けたい=申請を怠ること)につながるケースは少なくありません。
監査役の任期は原則4年、取締役は原則2年
会社法は、取締役と監査役の任期を別々の条文で定めています。
- 取締役:原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法332条1項)。定款や株主総会の決議で短縮することもできます。
- 監査役:原則として、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法336条1項)。取締役と異なり、定款や決議によって任期を短縮することは原則としてできません。例外として、任期満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役については、退任した監査役の任期が満了する時までを任期とする定款の定めが認められています(会社法336条3項)。
「4年」という期間だけを覚えるのではなく、「選任後4年以内に終わる事業年度のうち、一番最後の事業年度についての定時株主総会が終わったとき」まで、という数え方そのものを押さえておくと、決算期の変更があった場合などにも対応しやすくなります。
なぜ監査役の任期のほうが長く設定されているのかについては、経営陣を監視する立場の独立性・安定性を確保するためだと一般に説明されています。取締役会の顔ぶれが変わっても、監査役の任期がすぐには連動しない仕組みになっているわけです。
非公開会社は定款で最長10年まで伸長できる
取締役・監査役のいずれについても、株式譲渡制限会社(公開会社でない株式会社、いわゆる非公開会社)であれば、定款の定めによって任期を伸長できます。
- 取締役:定款によって、最長10年まで伸長可能(会社法332条2項)。ただし監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は対象外です。
- 監査役:定款によって、最長10年まで伸長可能(会社法336条2項)。
監査役の場合、条文上は取締役のような「委員会型の会社を除く」という除外の書き方にはなっていません。これは除外するまでもなく、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、そもそも監査役を置くことができないためです(会社法327条4項)。監査役を置く会社は、性質上すでに非委員会型の機関設計に限られています。
任期を10年まで伸ばすには、定款にその旨の定めが必要です。株主総会で「今回は10年で選任する」と決議するだけでは足りず、あらかじめ定款変更(会社法466条)を株主総会の特別決議(会社法309条2項11号)で行っておく必要があります。役員の入れ替わりの手間を減らす目的で任期伸長を検討する場合は、まず定款の規定を確認することが出発点になります。
同じ人が続ける場合も「重任」の登記が必要
任期が満了しても、株主総会で同じ人が再び監査役に選任されることはよくあります。この場合、監査役としての実態は何も変わっていないように見えますが、任期満了と再選任という法律上のできごとが生じているため、変更登記(重任の登記)が必要です。「顔ぶれが変わらないから登記も不要」という誤解は、取締役の場面でもよく見られるもので、役員変更の登記は「同じ人が続けるとき」も必要──任期満了と『重任』のはなしで詳しく解説しています。監査役についても、この考え方はそのまま当てはまります。
登記を怠るとどうなるか
監査役の変更登記も、取締役の場合と同じく、変更が生じてから2週間以内に法務局へ申請する必要があります(会社法915条1項)。この期限を過ぎると、100万円以下の過料の対象になることがあります(会社法976条1号)。登記懈怠の過料の考え方や、任期管理の実務については、取締役の任期、いつ満了か言えますか──役員変更登記の懈怠と過料の話でも取り上げています。
監査役は取締役に比べて任期が長いぶん、「次はいつ満了するか」を忘れがちです。任期の長さが違う複数の役職(取締役2年・監査役4年など)を抱える会社では、役職ごとに満了年を管理する仕組みを持っておくことが、登記懈怠を防ぐ実務上のポイントになります。
登録免許税の目安
監査役の変更登記(重任・就任・退任いずれも)にかかる登録免許税は、取締役の変更登記と同じ区分(登録免許税法別表第一第24号(一)カ・いわゆる役員変更分)で課税されます。資本金の額が1億円以下の会社は1万円、1億円を超える会社は3万円が目安です。司法書士に依頼する場合は、別途報酬がかかります。
まとめ
- 監査役の任期は原則4年で、取締役の原則2年とは別のルールです(会社法336条1項)。
- 非公開会社は、定款の定めによって監査役の任期を最長10年まで伸長できます(会社法336条2項)。
- 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、そもそも監査役を置けません(会社法327条4項)。
- 同じ人が続けて監査役を務める場合も、任期満了のたびに重任の変更登記が必要です。
- 登記は変更から2週間以内(会社法915条1項)。放置すると過料(会社法976条1号)の対象になり得ます。任期管理や登記手続きに不安があれば、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 監査役の変更登記にかかる費用は? 登録免許税は、資本金の額が1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円が目安です(登録免許税法別表第一第24号(一)カ)。司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかります。
Q. 監査役の任期満了の登記を放置するとどうなりますか? 変更から2週間以内(会社法915条1項)に登記しないと、100万円以下の過料(会社法976条1号)の対象になることがあります。監査役は取締役より任期が長い分、満了時期を見落としやすい点にも注意が必要です。
Q. 自分で任期を確認して登記の準備はできますか? 定款や過去の登記事項証明書から任期の起算点を確認することは可能ですが、決算期変更や定款による任期伸長の有無によって満了時期の計算が変わることがあります。判断に迷う場合は、お近くの司法書士にご相談ください。
【さらに深掘り】監査役の任期管理と変更登記の実務
ご注意 以下は執筆時点(2026年07月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
任期満了と退任登記(重任・就任)の同時処理
定時株主総会で監査役の任期が満了し、同じ株主総会で後任(または再任)が選任された場合、実務上は「退任」と「就任」を別々の登記として申請するのではなく、同一人がそのまま続投するときは「重任」、別の人に交代するときは「退任」と「就任」を同一の申請でまとめて処理するのが通常です。申請書の記載にあたっては、登記の事由・登記すべき事項の欄で、重任なのか、退任+就任なのかを取り違えないよう、株主総会議事録の記載(選任決議の対象者・就任承諾の有無)を照らし合わせて確認する必要があります。任期満了の日と就任承諾の日が異なる場合(株主総会当日ではなく別途承諾書を徴する場合など)は、登記すべき年月日の記載にもずれが生じ得るため、添付書類上の日付の整合性を個別に確認する作業が欠かせません。
登記懈怠の過料リスクは代表者に限らない
会社法976条柱書は、過料の対象者として取締役・監査役・会計参与・会計監査人・清算人等を列挙しており、監査役自身も対象に含まれます。実務上は代表取締役が登記申請の手続きを主導することが多いため、過料に関する通知や督促も代表者に向けられる印象を持たれがちですが、条文上の対象者は代表者に限定されていません。監査役が「自分は取締役ではないから過料とは無関係」と考えるのは誤解であり、監査役自身の任期管理も他人事ではないという点は、登記懈怠リスクの説明の際に補足しておくべき論点です。
非公開会社の定款による任期伸長は「定款自体の定め」が前提
会社法336条2項による任期伸長(最長10年)は、定款にその旨の定めがあることが前提です。株主総会の選任決議で「今回は10年とする」と定めても、定款に伸長の根拠規定がなければ、その決議は336条2項の伸長として扱われません。定款変更(会社法466条)には株主総会の特別決議(会社法309条2項11号。原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要であるため、任期伸長を検討する場合は、決議要件を満たしているかどうかも含めて確認する必要があります。また、株式譲渡制限を廃止して公開会社に移行する定款変更を行った場合、伸長していた監査役の任期の扱いが問題になり得ます。取締役については、公開会社化などの一定の定款変更によって任期がその時点で満了する旨の規定が置かれており(会社法332条7項)、監査役についても同様に、一定の定款変更があった場合に任期が満了する旨の規定があります(会社法336条4項)。機関設計を変更する予定がある会社は、役員の任期がいつ切れるのかを、通常の任期満了時期とは別に確認しておく必要があります。
監査役会設置会社・社外監査役の要否は任期ルールとは別問題
監査役の人数や、社外監査役を置く必要があるかどうかは、任期のルール(336条)とは別の条文(監査役会設置会社に関する規定など)で定まる論点です。任期の伸長や重任の登記を検討する際に、あわせて機関設計そのものの見直し(監査役会を置くかどうか、社外監査役の要否など)が必要になる場合もありますが、これは任期管理とは別の検討事項として切り分けて考える必要があります。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。
- 会社法 第309条・第327条・第332条・第336条・第466条・第915条・第976条(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 登録免許税法 別表第一 第24号(一)カ(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035