問題:

建物の分割、区分及び合併の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 建物の分割の登記、建物の区分の登記及び建物の合併の登記は、いずれも表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

イ. 建物の分割の登記とは、表題登記がある建物の附属建物を、当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記をいう。

ウ. 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の合併の登記は、所有者以外の者は、申請することができない。

エ. 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の分割の登記は、所有者以外の者は、申請することができない。

オ. 所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときは、第40条の規定を準用する。

答え:

誤っているものは、ウの1つである。

解説:

建物の分割、区分及び合併の登記の申請適格並びにその制限は、不動産登記法54条に規定されている。

アは正しい。建物の分割の登記、建物の区分の登記及び建物の合併の登記は、いずれも表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない(不動産登記法54条1項柱書)。

イは正しい。建物の分割の登記とは、表題登記がある建物の附属建物を、当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記をいう(不動産登記法54条1項1号)。

ウは誤りである。共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記は、所有者以外の者は、申請することができない(不動産登記法54条2項)。しかし、この2項が対象とするのは分割の登記及び区分の登記に限られ、建物の合併の登記は対象とされていない。「建物の合併の登記は、所有者以外の者は、申請することができない」とする点が誤りである。なお、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物については、建物の合併の登記はそもそもすることができないとされている(不動産登記法56条1号)。

エは正しい。共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の分割の登記は、所有者以外の者は、申請することができない(不動産登記法54条2項)。

オは正しい。所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときは、第40条の規定を準用する(不動産登記法54条3項)。第40条は、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の分筆の登記において、当該権利の登記名義人が分筆後のいずれかの土地について当該権利を消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたときは、登記官はその承諾に係る土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならないとする規定であり(不動産登記法40条)、この仕組みが建物の分割・区分の登記の場面にも準用されている。

以上より、誤っているものはウの1つである。54条2項・3項がいずれも「分割の登記又は区分の登記」のみを対象とし、「合併の登記」を対象としていない点は、条文の読み落としが生じやすい急所である。第89回で確認した分筆・合筆の登記(39条・41条)と同様、建物の分割・区分・合併の登記についても、通常の申請適格(1項)と、共用部分等・他の権利登記がある場合の特則(2項・3項)とを区別して整理しておきたい。


問題:

土地家屋調査士の義務に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 調査士は、法務省令の定める基準に従い、事務所を設けなければならない。

イ. 調査士は、法務省令の定めるところにより、業務に関する帳簿を備え、かつ、関係書類を保存しなければならない。

ウ. 調査士は、依頼を受けたときは、いかなる場合であってもこれを拒むことができない。

エ. 調査士は、その所属する調査士会及び調査士会連合会の会則を守らなければならない。

オ. 調査士であった者は、調査士登録が抹消された後は、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしても、秘密保持義務違反とはならない。

答え:

誤っているものは、ウ・オの2つである。

解説:

調査士の業務に関する基本的な義務規定は、土地家屋調査士法20条から24条の2までに規定されている。

アは正しい。調査士は、法務省令の定める基準に従い、事務所を設けなければならない(土地家屋調査士法20条)。

イは正しい。調査士は、法務省令の定めるところにより、業務に関する帳簿を備え、かつ、関係書類を保存しなければならない(土地家屋調査士法21条)。

ウは誤りである。調査士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒んではならない(土地家屋調査士法22条)が、この依頼応諾義務には除外がある。すなわち、筆界特定の手続についての代理業務(同法3条1項4号)、前各号に掲げる事務についての相談業務のうち筆界特定手続に関する部分(同項6号のうち4号に関する部分)、及び民間紛争解決手続代理関係業務(同項7号・8号、いわゆるADR代理業務)に関するものについては、依頼応諾義務の対象から除外されている(22条かっこ書)。「いかなる場合であっても拒むことができない」とする点が誤りであり、正当な事由がある場合には拒むことができるほか、上記の一定の業務についてはそもそも依頼応諾義務が課されていない。

エは正しい。調査士は、その所属する調査士会及び調査士会連合会の会則を守らなければならない(土地家屋調査士法24条)。

オは誤りである。調査士又は調査士であった者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない(土地家屋調査士法24条の2)。この秘密保持義務の名宛人は「調査士又は調査士であった者」であり、登録の抹消により調査士でなくなった後も、この義務は存続する。「登録が抹消された後は、秘密保持義務違反とはならない」とする点が誤りである。

以上より、誤っているものはウ・オの2つである。22条の依頼応諾義務は、正当な事由がある場合の拒絶に加え、筆界特定手続代理・その相談業務・ADR代理関係業務という特殊な業務類型がそもそも義務の対象外とされている点、24条の2の秘密保持義務は「調査士であった者」も名宛人となり登録抹消後も存続する点は、いずれも条文の文言を正確に押さえていないと見落としやすい。なお、業務に関して虚偽の調査又は測量をしてはならない旨(23条)もあわせて、20条から24条の2までの各義務規定は一連のものとして整理しておきたい。


問題:

隣地使用権に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。

イ. 土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。

ウ. 隣地を使用するに当たり、住家については、その居住者の承諾がなくても、立ち入ることができる。

エ. 隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならないが、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

オ. 隣地の使用により隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときであっても、当該使用が適法なものである以上、償金を請求することはできない。

答え:

誤っているものは、ウ・オの2つである。

解説:

隣地使用権については、令和3年民法改正(令和5年4月1日施行)により、民法209条が全面的に改められている。

アは正しい。土地の所有者は、境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる(民法209条1項1号)。

イは正しい。土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる(民法209条1項2号)。なお、同項3号には、第233条第3項の規定による枝の切取りのための隣地使用も掲げられており、第89回で確認した竹木の枝の切除・根の切取り(233条)の場面とも関連する規定である。

ウは誤りである。隣地を使用するに当たり、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない(民法209条1項ただし書)。「居住者の承諾がなくても、立ち入ることができる」とする点が誤りであり、居住者の承諾は住家への立入りの要件とされている。

エは正しい。隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる(民法209条3項)。

オは誤りである。隣地の使用により隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる(民法209条4項)。「償金を請求することはできない」とする点が誤りであり、隣地使用が適法なものであっても、損害が生じた場合には償金請求権が発生する。

以上より、誤っているものはウ・オの2つである。令和3年改正前の民法209条は「隣地の使用を請求することができる」との文言であり、その法的性質については、隣地の使用を承諾すべきことを隣人に請求することができる権利(承諾が得られない場合には承諾に代わる判決を要する)と解する説が有力で、実務もこの考え方に基づいて運用されることが多かったものの、条文の意味には解釈上の争いがあり、隣地所有者の承諾が得られない場合に隣地を使用できるのかが必ずしも明らかでなかった。改正後は、使用の目的を1項各号に限定した上で、隣地所有者の承諾を要することなく直接使用することができる権利として整理され、この解釈上の争いが立法的に解決された点が、改正の要点である。あわせて、使用の日時・場所・方法について隣地所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない旨(209条2項)も押さえておきたい。


問題:

ある三角形の土地ABCについて、辺AB、辺BC、辺CAの長さを直接測定したところ、次のとおりであった。地形の状況により、頂点から対辺への垂線の長さを測定することができなかったため、三辺の長さのみからヘロンの公式(三辺法)により、この土地の面積を求めることとした。

  • AB=39.000m
  • BC=42.000m
  • CA=45.000m

この三角形ABCの面積として、最も近いものはどれか。

ア. 819.00 ㎡

イ. 577.40 ㎡

ウ. 756.00 ㎡

エ. 945.00 ㎡

オ. 877.50 ㎡

答え:

ウ(756.00 ㎡)

解説:

ヘロンの公式は、三角形の三辺の長さa、b、cのみから、垂線の長さ(高さ)を測定することなく面積を求めることができる公式である。三辺の和の半分をs(半周長)とすると、面積Sは次の式で求められる。

$$ s=\frac{a+b+c}{2},\qquad S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} $$

本問では、三辺の長さをそのままa=39.000、b=42.000、c=45.000として計算すればよい(ヘロンの公式はどの辺をa、b、cとしても結果は変わらない)。

まず、半周長sを求める。

$$ s=\frac{39.000+42.000+45.000}{2}=\frac{126.000}{2}=63.000\ \text{m} $$

次に、s-a、s-b、s-cを求める。

$$ s-a=63.000-39.000=24.000,\quad s-b=63.000-42.000=21.000,\quad s-c=63.000-45.000=18.000 $$

これらを用いて面積を求めると、

$$ S=\sqrt{63.000\times24.000\times21.000\times18.000}=\sqrt{571536}=756.000\ \text{㎡} $$

よって正解はウである。なお、三辺の長さが39.000m、42.000m、45.000mであることは、いずれの二辺の和も残りの一辺より大きい(例えば39.000+42.000=81.000>45.000)ことから、三角形として成立する組み合わせであることも確認できる。

アの819.00㎡は、辺AB(39.000m)と辺BC(42.000m)とが直角に交わるものと誤って仮定し、直角三角形の面積の公式(底辺×高さ÷2)により$\frac{1}{2}\times39.000\times42.000$を計算してしまった誤りである。ヘロンの公式が必要となるのは、まさにこのような直角の情報がなく、三辺の長さしか分からない場合であり、いずれか二辺を底辺・高さとみなす計算は誤りである。

イの577.40㎡は、s-aを計算する際に63.000-39.000=24.000とすべきところを、63.000-49.000=14.000のように取り違えて計算してしまった誤りである($\sqrt{63.000\times14.000\times21.000\times18.000}\approx577.40$)。sから各辺の長さを差し引く計算は、三辺分をそれぞれ正確に行う必要がある。

エの945.00㎡は、辺BC(42.000m)と辺CA(45.000m)とが直角に交わるものと誤って仮定し、$\frac{1}{2}\times42.000\times45.000$を計算してしまった誤りである。

オの877.50㎡は、辺AB(39.000m)と辺CA(45.000m)とが直角に交わるものと誤って仮定し、$\frac{1}{2}\times39.000\times45.000$を計算してしまった誤りである。


問題:

地役権図面に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 地役権図面には、地役権設定の範囲を明確にし、方位、縮尺、地番及び隣地の地番並びに申請人の氏名又は名称を記録しなければならない。

イ. 地役権図面は、地積測量図と同様に二百五十分の一の縮尺により作成するのが原則であり、土地の状況その他の事情によりこれによることが適当でないときに限り、これと異なる縮尺によることができる。

ウ. 地役権図面には、作成の年月日を記録しなければならない。

エ. 書面である地役権図面には、地役権者が署名し、又は記名押印しなければならない。

オ. 書面申請において提出する地役権図面(電磁的記録に記録して提出するものを除く。)は、日本産業規格A列四番の丈夫な用紙を用いて作成しなければならない。

答え:

誤っているものは、イ・オの2つである。

解説:

地役権図面の記録事項及び作成方式は、不動産登記規則79条・80条に規定されている。

アは正しい。地役権図面には、地役権設定の範囲を明確にし、方位、縮尺、地番及び隣地の地番並びに申請人の氏名又は名称を記録しなければならない(不動産登記規則79条1項)。

イは誤りである。地役権図面は、適宜の縮尺により作成することができる(不動産登記規則79条2項)。第89回で確認した地積測量図の二百五十分の一の縮尺の原則(不動産登記規則77条4項)、第87回・第88回で確認した建物図面の五百分の一・各階平面図の二百五十分の一の縮尺の原則(同規則82条3項・83条2項)とは異なり、地役権図面には縮尺についての原則的な定めがなく、地役権の範囲を明確に表示できる限り、任意の縮尺で作成することができる。「二百五十分の一の縮尺により作成するのが原則」とする点が誤りである。

ウは正しい。地役権図面には、作成の年月日を記録しなければならない(不動産登記規則79条3項)。

エは正しい。地役権図面(書面である場合に限る。)には、地役権者が署名し、又は記名押印しなければならない(不動産登記規則79条4項)。地積測量図や建物図面が調査士の作成に係る図面であるのに対し、地役権図面には権利者である地役権者自身の署名又は記名押印が求められる点が特徴的である。

オは誤りである。書面申請において提出する地役権図面(電磁的記録に記録して提出するものを除く。)は、別記第三号様式により、日本産業規格B列四番の丈夫な用紙を用いて作成しなければならない(不動産登記規則80条2項)。「A列四番」とする点が誤りであり、正しくはB列四番(B4)である。なお、同条1項により、第73条第1項及び第74条第1項の規定が地役権図面について準用されている。

以上より、誤っているものはイ・オの2つである。表示に関する登記の図面のうち、地積測量図(二百五十分の一)、建物図面(五百分の一)、各階平面図(二百五十分の一)がいずれも原則的な縮尺の定めを持つのに対し、地役権図面のみ「適宜の縮尺」とされ縮尺の定めがない点、及び地役権図面には(調査士ではなく)地役権者本人の署名又は記名押印が要求される点は、他の図面との比較で問われやすい急所である。


出題分野の振り分け

分野 主な論点 根拠条文
第1問 不動産登記法(表示) 建物の分割・区分・合併の登記の申請適格・共用部分等の特則 不動産登記法54条1項〜3項、40条、56条1号
第2問 土地家屋調査士法 調査士の義務規定(事務所・帳簿書類・依頼応諾義務・会則遵守義務・秘密保持義務) 土地家屋調査士法20条〜24条の2、3条1項
第3問 民法(相隣関係) 隣地使用権(令和3年改正・令和5年4月1日施行) 民法209条1項〜4項
第4問 測量計算 三辺法(ヘロンの公式)による三角形の面積計算
第5問 作図・書式 地役権図面の記録事項・作成方式(縮尺・署名等) 不動産登記規則79条・80条