この記事の要点
- 登記の名義変更などで不備が見つかり、補正でも直せないときは、手続きが「取下げ」か「却下」に分かれる
- 取下げは申請した人が自分から引っ込めること、却下は法務局が「この申請は受け付けられない」と判断すること
- どちらになるかで、納めた登録免許税の扱いなどが変わることがある
不動産や会社の登記を申請したあと、書類の不備が見つかることがあります。多くはその場での訂正(補正)で直せますが、なかには補正では直しきれない不備もあります。そのときに登場するのが「取下げ(とりさげ)」と「却下(きゃっか)」です。結論から言うと、取下げは申請した側から引っ込めること、却下は法務局が受け付けを認めないと判断することで、同じ「登記できなかった」でも中身が違います。
取下げ──申請人の側から引っ込める
取下げは、申請した人(実務では代理人の司法書士)が「今回はいったん取り下げます」と自分から申し出るものです。書類の一部が根本的に足りない、当事者の意思確認が整わない、想定していなかった事情が判明した、といった場合に、無理に進めず、いったん白紙に戻して態勢を整え直します。整ったうえで、あらためて申請し直すことができます。
却下──法務局が受け付けないと判断する
一方の却下は、法務局が「この申請は受け付けられない」と判断して手続きを終えるものです。却下されると、その理由が申請人に通知されます。取下げが「自分から引っ込める」ものであるのに対し、却下は「受理されない」という受け身の結果である点が、大きな違いです。
実務ではどう動くか
実務では、このまま進めても却下になりそうだと見込まれる場面で、司法書士が状況を見て取下げを提案する傾向があります。取下げのほうが、いったん整理してから再申請しやすく、納めた登録免許税を次の申請で使えるようにする手続き(再使用証明)につなげやすい、といった事情があるためです。もっとも、どちらが適切かは事案によって変わり、取扱いが法務局や時期によって異なる場合もあります。判断に迷うところは、専門家に確認しながら進めるのが安全です。
なお、これは執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。登録免許税の還付や再使用の細かな取扱いは、個別の事情によって結論が分かれることがあります。
まとめ
取下げは申請人の側から引っ込めること、却下は法務局が受け付けを認めないと判断すること──同じ「登記できなかった」でも、その後の進め方や登録免許税の扱いが変わってきます。不備を指摘された、どう立て直せばよいか分からない、というときは、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月)。
- 不動産登記法 第25条(申請の却下)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則 第38条・第39条(申請の却下・申請の取下げ)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 登録免許税法 第31条(過誤納金の還付等・領収証書等の再使用証明)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000035