相続登記の遺産分割協議書や遺言書は法務局で見られる?──相続人による「登記簿の附属書類」の閲覧

この記事の要点 相続登記のときに法務局へ出された遺産分割協議書や遺言書は「登記簿の附属書類」として保存されており、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、争いが起きていなくても閲覧を請求できる扱いです(令和5年3月28日民二第537号通達)。 閲覧の請求では、その相続の当事者であることを示す戸籍関係の書類と、本人確認書類を見せます。手数料は1事件に関する書類につき500円です(登記手数料令5条1項)。 申請書と添付書類の保存期間は、受付の日から30年間です(不動産登記規則28条)。ウェブ会議での閲覧が認められる場合もあります。 「祖父が亡くなったとき、どんな遺産分割協議書で父の名義になったのか確かめたい」。こうしたときに使えるのが、法務局に保存されている登記の申請書や添付書類(登記簿の附属書類)の閲覧です。結論から言うと、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、その相続に関する附属書類の閲覧を請求できる扱いになっています。ただし、見られる範囲には限りがあり、手続きにも決まりがあります。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

登記の書類に押すのは実印?認印?──印鑑証明書が要る人と、押印が要らない場面

この記事の要点 書面で登記を申請するときは、申請書や委任状に記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)をするのが原則です(不動産登記令16条1項・18条1項)。実印と印鑑証明書が要るのは、主に売買や贈与で名義を渡す側(登記義務者)になる所有権の登記名義人などです。 相続登記で名義を受け取る相続人は、申請書への押印は要りますが印鑑証明書は要らないため、法務省の案内では「認印で可」とされています。一方、遺産分割協議書には、実務上、相続人全員の実印の押印が求められ、印鑑証明書の添付も必要です。 名義を渡す側など印鑑証明書が要る立場でも、登記によって新しく登記識別情報を受け取る側でもない申請人などは、押印せずに署名だけで足りる場合があります(不動産登記規則47条・49条)。 「登記の書類には実印を押すもの」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。結論から言うと、実印が要るのは、その書類に印鑑証明書を付ける必要がある場合で、申請書や委任状では押す人の立場によって分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

公図・地積測量図・建物図面の違いは?──法務局でもらえる3つの図面と取り方

この記事の要点 公図は「土地の並び方」、地積測量図は「1筆の土地を測った結果」、建物図面は「建物が敷地のどこに建っているか」を示す図面で、法律上の根拠もそれぞれ別です 3つとも、所有者でなくても請求でき、電子化された図面なら窓口(管轄外の最寄りの法務局を含む)・郵送・オンラインで取れます。手数料は窓口・郵送で500円、オンラインで440円または470円です 図面は登記の資料で、図面だけで現地の境界が決まるわけではありません。境界の確認や測量は土地家屋調査士の分野です 土地や建物の登記簿(登記事項証明書)は文字の記録なので、「隣はどの土地か」「建物は敷地のどこにあるか」といった位置関係は分かりません。それを補うのが法務局の図面です。結論から言うと、よく使われるのは公図・地積測量図・建物図面の3つで、取り方はほぼ共通ですが、何のための図面かはまったく違います。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

なぜ司法書士は免許証を見るのか──本人確認・意思確認と「地面師」対策

この記事の要点 司法書士が運転免許証などを確認し、本人と会って話を聞くのは、「書類の上の名義人」と「目の前の依頼者」が同じ人か、そしてその人が本当にその登記を望んでいるかを、登記の申請より前の段階で確かめるためです 司法書士は、犯罪収益移転防止法で本人確認(取引時確認)を求められる「特定事業者」の一つです。宅地や建物の売買に関する手続の代理を引き受ける契約などが、確認の対象として定められています 不動産登記法にも、権利証(登記識別情報)を出せないときの事前通知や、司法書士などが作る「本人確認情報」、登記官による本人確認の調査といった、なりすましに備える仕組みがあります 本人確認は、他人になりすまして土地を売るいわゆる「地面師」の被害を防ぐための大切な関門ですが、それだけで被害を完全に防げるわけではありません。確認に協力しつつ、心配な点は早めにお近くの司法書士にご相談ください 不動産の売買や贈与の登記を司法書士に頼むと、運転免許証やマイナンバーカードを見せてほしい、本人と直接会って話を聞きたい、と言われるのが一般的です。「家族が代わりに行けばいいのでは」「印鑑証明書もそろえたのに、なぜ」と感じる方もいるかもしれません。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

自分で申請していない登記が載っているのはなぜ?──裁判所や役所が法務局に頼む『嘱託登記』のしくみ

この記事の要点 登記は、当事者の「申請」のほか、裁判所や役所などの官庁・公署の「嘱託(しょくたく)」によってもされます(不動産登記法16条1項)。 差押えの登記は、差押えをした側(裁判所書記官や税務署長など)が嘱託します。差押えが取り下げられたり解除されたりしたときの抹消も、同じ側が嘱託するしくみです。 国や地方公共団体に土地を売るときの登記も、役所の側が売主の承諾を得て嘱託します(同法116条1項)。 登記簿を取ってみたら、自分が頼んだ覚えのない登記が載っていた──そうした登記には、「嘱託登記」によるものがあります。結論からいうと、登記は本人が法務局に申請するものばかりではなく、裁判所や役所が法務局に頼んでするものがあります。 ...

2026年10月14日 · ひぐらしさとし

書面で登記を申請したら『受領証』はもらえる?──申請書を出した証拠を手元に残すしくみ

この記事の要点 書面で登記を申請した人は、登記が完了するまでの間、申請書と添付書面の「受領証」の交付を請求できる 受領証は、法務局が申請書類を受け付けたことを示すもので、登記が終わったことや、申請どおりに権利を取得したことを証明するものではない オンライン申請では受領証は交付されず、受付を含む処理状況は申請用総合ソフト上に掲示されると案内されている 登記の申請書を法務局に出すと、書類一式は法務局の手元に残ります。「出した証拠が何も残らないのでは」と心配になる方もいるかもしれません。結論から言えば、書面で申請した場合は、申請書と添付書面を受け付けたことの証明として「受領証」を請求できます。ただし、受領証が示すのは「受け付けた」ことまでで、「登記が終わった」ことではありません。 ...

2026年10月10日 · ひぐらしさとし

権利証(登記識別情報)はまだ使える?──法務局に「有効証明」を請求して確かめる方法

この記事の要点 登記識別情報(いまの「権利証」にあたる12桁の符号)がまだ使える状態かどうかは、登記名義人やその相続人などが法務局に「有効証明」を請求して確かめることができる(不動産登記令22条) 手数料は1件300円。請求書を書面で出す方法のほか、法務省の「申請用総合ソフト」を使ったオンラインでも請求できる 証明されるのは「その符号がその登記のもので、失効していない」ことだけ。請求した人が本当の所有者であることや、取引の安全まで保証するものではない 「何年も前に届いた登記識別情報通知、今も使えるのだろうか」「家族が保管していた通知書が、この登記のものか自信がない」──不動産を売る、担保に入れるといった次の登記を控えて、手元の符号が本当に使えるのか気になることがあります。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

付記登記と主登記の違いとは?──登記簿の『付記1号』の意味と順位への影響

この記事の要点 付記登記は、すでにある権利の登記に「ぶら下げて」記録する登記で、登記簿には「1番付記1号」のように、もとの登記(主登記)の順位番号に「付記何号」を付けた形で記録される 付記登記の順位は主登記の順位に従い、同じ主登記に付いた付記登記どうしはその前後で決まる(不動産登記法4条2項)。付記登記がされても、もとの権利の優先順位は動かない どの登記が付記登記になるかは、申請する人が選ぶものではなく、不動産登記規則3条の列挙と、不動産登記法66条(利害関係人の承諾の有無)などの条文で決まる 登記事項証明書(登記簿)を取り寄せると、「順位番号」の欄に「1」「2」という独立した番号のほか、「付記1号」のように「付記」の文字を含む記載が混じっていることがあります(不動産登記規則148条が定める記録の方法では、「1番付記1号」のように、もとの登記の順位番号に「付記何号」を付け加えた形になります)。結論から言うと、これは**もとの1番の登記に後から付け加えられた登記(付記登記)**であり、その順位は1番の登記の順位のまま扱われる、という意味です。登記簿全体の構造は「登記簿(登記事項証明書)の見方」で、抵当権の欄(乙区)の読み方は「登記簿の『乙区』を読み解く」で扱いました。ここでは、付記登記と主登記がそもそも何で、どの登記がどちらになるのかが条文上どう決まっているのかに絞って整理します。これは執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月2日 · ひぐらしさとし

通路や水道管のための「地役権」は登記簿のどこに載る?──承役地・要役地の登記の見方

この記事の要点 地役権の登記は、負担を負う土地(承役地)の登記記録の乙区にされます。便益を受ける土地(要役地)の側にも、登記官が職権で記録します(不動産登記法80条4項)。 承役地の乙区には、要役地や地役権設定の目的・範囲などが載りますが、地役権者の氏名・住所は登記しなくてよいとされています(同条1項・2項)。 範囲が土地の一部のときは、登記の末尾に地役権図面番号が記録されます。地役権図面は、誰でも写しの交付を請求できる図面の一つです(不動産登記規則160条、不動産登記法121条1項)。 隣の土地を通路として通らせてもらう、水道管を通させてもらう。こうした関係を、当事者が「地役権」として設定し、登記していることがあります。地役権は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自分の土地の便益に使う権利です(民法280条)。結論から言うと、登記簿で探す場所は使われる側の土地の乙区で、使う側の土地にも対になる記録があります。 ...

2026年9月28日 · ひぐらしさとし

登記の「住所証明情報」とは?──新しく名義人になる人の住民票・印鑑証明書と、住民票コードで省略できる場合

この記事の要点 住所証明情報とは、売買や相続などで新しく不動産の名義人になる人の住所を証明する書類です。個人なら住民票の写しや戸籍の附票の写しで、印鑑証明書に記載された住所を使うこともできると法務局は案内しています。 申請書に住民票コード(11桁の番号)を書くと、住民票の写しの提出を省略できます(不動産登記令9条・不動産登記規則36条4項)。住民票の写しを出す場合は、マイナンバー(個人番号)の記載がないものを使います。なお、不動産登記令・不動産登記規則は、住所証明情報に印鑑証明書のような「作成後3か月以内」の定めを置いていません(ただし、取った後に引っ越した場合、その書類では今の住所を証明できません)。 2026年10月5日以降に申請する所有権の保存・移転などの登記では、新しく名義人になる個人(その登記の申請人になる人)について、申請書に国籍等を書き、原則としてそれを証する書類も添付することになります(改正後の不動産登記規則158条の39)。日本国籍の方は、本籍地が記載された住民票の写しで住所証明情報と兼ねられると法務省は案内しています。 売買や相続で不動産の名義を変える手続きを調べると、必要書類の欄に「住所証明情報」という言葉が出てきます。結論から言えば、これは新しく名義人になる人の住所を証明する書類のことで、個人の場合は住民票の写しが代表例です。そして、申請書に住民票コードを書けば、その住民票の写しを出さずに済みます。 ...

2026年9月24日 · ひぐらしさとし