この記事の要点

  • 捨印(すていん)とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく訂正用の印のことで、法令が押印を義務づけている制度ではなく、実務上の慣行として広まったもの
  • 登記の委任状などで求められる場面があるのは、軽微な字句の誤りをその都度作成者に押印し直してもらわずに直せるようにするため
  • 捨印を求めるかどうか・どこまで訂正の範囲を認めるかは、事務所や場面によって扱いに差があり、近年はオンライン申請の広がりで紙の書類そのものが減ってきた面もある

登記の委任状や契約書に署名押印するとき、「念のため、こちらにも捨印をお願いします」と言われた経験がある方は少なくないと思います。捨印とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく、訂正のための印のことです。誤字や記載漏れが見つかったとき、その捨印を使って二字削除・三字加入のように訂正すれば、作成者に改めて押印をもらいに行かなくても直せる、という便宜のための仕組みです。

なぜ登記の書類で求められるのか

不動産登記の申請では、登記原因証明情報や委任状など、複数の書類を細かく突き合わせる必要があります。地番や氏名の一字違いのような軽微な誤りが見つかることも珍しくありません。こうした誤りのたびに依頼者へ書類を送り直し、再び押印してもらうのは双方にとって負担が大きいため、あらかじめ捨印をもらっておく取扱いが実務上の慣行として定着してきました。

大切なのは、捨印は法律が要求している押印ではないという点です。委任状の様式や登記申請の添付書類として、捨印そのものが必須とされているわけではありません。あくまで、書類作成後の軽微な訂正を円滑にするための、任意の取り決めにとどまります。

実務での扱いの傾向

捨印をどう扱うかは、書類の性質や場面によって濃淡があります。訂正できる範囲は、あくまで誤字脱字など軽微なものに限られ、当事者の意思そのものに関わるような内容の変更にまで使ってよいものではない、という考え方が一般的とされています。また、捨印を押した書類が本人の手を離れたあとに使われる以上、どこまでの訂正なら許容されるかという線引きには司法書士ごと・事務所ごとに慎重さの差があり、近年はオンライン申請の広がりとともに、紙の書類への依存自体が減ってきた分野でもあります。

いずれにしても、捨印は「あれば便利だが、本人の意思確認を軽くしてよい理由にはならない」道具です。求められた際は、何のための印で、どこまでの訂正に使われる可能性があるのかを、遠慮なく確認して構いません。

まとめ

捨印は登記の委任状などでよく目にする慣行ですが、法律上の義務ではなく、軽微な訂正を円滑にするための任意の工夫です。どこまでの範囲で使われるかは書類や事務所によって差があるため、押印を求められたときは用途を確認しておくと安心です。手続きの進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月)。

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