この記事の要点

  • 追認(ついにん)とは、取消しができる行為や無権代理行為のように、いったん効力が不確定な状態にある法律行為を、後から「有効なものとする」と確定させる意思表示のこと
  • 効果は場面によって違い、無権代理行為の追認は原則として契約の時にさかのぼって効力が生じる(民法116条)のに対し、取り消すことができる行為の追認は「以後、取り消すことができない」という効果になる(民法122条)
  • 追認ができるのは誰でもよいわけではなく、取消しができる行為なら取消権を持つ人、無権代理行為なら本人というように、法律が定める立場の人に限られる

契約書や登記の話をしていると、「あとで追認すれば大丈夫です」という言い方を聞くことがあります。追認とは、いったん効力が不確定になっている法律行為を、後から「有効なものとして確定させる」意思表示のことです。似た言葉に「承認」や「同意」がありますが、追認は「すでに行われた行為の効力を、事後に確定させる」という点に特徴があります。

どんな場面で出てくるのか

追認が問題になる代表例は2つあります。

ひとつは、取消しができる行為の追認です。未成年者が親の同意なく結んだ契約や、だまされて結んだ契約のように、取消権を持つ人が取り消すこともできる状態の行為を、その人があえて「このままでよい」と認めるのが追認です。民法は、取消権者が追認をすると、以後その行為を取り消すことができなくなる旨を定めています。

もうひとつは、無権代理行為の追認です。代理権のない人が「代理人です」と名乗って契約をしてしまった場合、その契約は、本人が追認しない限り、原則として本人には効力が及びません(代理権があるかのような外観があった場合などに別の扱いがされることもありますが、ここでは立ち入りません)。逆に本人が追認をすると、原則として契約をした時点にさかのぼって、最初から有効な契約であったのと同じ扱いになります。

ただし、この「さかのぼる」という効果には、条文自体が二つの限定を置いています。ひとつは「別段の意思表示がないときは」という限定で、当事者がさかのぼらせない旨を定めればそれに従います。もうひとつは「第三者の権利を害することはできない」というただし書です(民法116条)。もっとも、ここでいう「害される第三者」がどこまでの範囲を指すのか、他の制度(対抗要件など)で処理される場面とどう切り分けるのかについては、専門家の間でも整理の仕方に議論があります。「さかのぼるのが原則」とだけ覚えて、個別の場面にそのまま当てはめてよいわけではない、という点には注意が必要です。

追認には条件がある

追認は、誰がいつしてもよいわけではありません。取消しができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況(だまされていた、制限を受けていた、など)が消滅し、かつ、自分に取消権があることを知った後にしなければ、効力を生じないとされています(民法124条1項)。このうち「取消権を有することを知った後」という部分は、平成29年の民法改正(平成29年法律第44号)で条文に書き加えられた要件で、令和2年4月1日より前にされた「取り消すことができる行為」の追認については、改正前の規定によることとされています(同法附則8条2項)。

つまり、状況が解消しないうちにした追認や、自分が取り消せる立場だと気づかないままの追認では、本人が実質的に判断できる状態になっていないため、効力が認められません。ただし、法定代理人や保佐人・補助人が追認するときなど、状況の消滅を待たずに追認できる場合も定められています(同条2項)。なお、ここで説明した条件は、条文上は「取り消すことができる行為」の追認について定められたものです。無権代理行為の追認も、権限のない代理行為をされた本人が、その効力を自分の意思で引き受けるかどうかを判断する場面である点は共通しますが、条文の置かれた場所が異なるため、同じ条件がそのまま当てはまると考えてよいかは、別に検討が必要です。

なお、追認するかどうかをはっきり示さないまま、取消しができる行為について代金を受け取ったり履行の請求をしたりするなど、追認したとみてよい一定の行動をとった場合には、法律上「追認したもの」とみなされる仕組みもあります(民法125条。「法定追認」と呼ばれます)。この仕組みにも条文上の枠があり、対象となるのは「追認をすることができる時以後」の行動に限られ、また、その行動をするときに異議をとどめていた場合は除かれます。なお、この「追認をすることができる時」を、さきほどの民法124条1項の条件(取消しの原因となっていた状況の消滅と、取消権があることの認識)と同じ意味に読むかどうか──言いかえれば、自分に取消権があると気づいていたことまで必要かどうか──については、専門家の間でも見方が分かれており、一般向けに一言で言い切れる論点ではありません。いずれにしても、追認は明確な意思表示だけでなく、行動から認定される場合もある、という点は覚えておくとよいでしょう。

まとめ

追認は、いったん不確定になっている法律行為の効力を、後から有効なものとして確定させる制度です。取消しができる行為と無権代理行為のいずれでも、「誰が」「どんな状況で」追認するかによって効力の有無が変わります。契約や登記の場面で追認の要否が問題になったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月)。

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