実印や権利証を盗まれたら──法務局の「不正登記防止申出」でできること・できないこと

この記事の要点 実印・印鑑証明書・登記識別情報(権利証)を盗まれたなど、自分の不動産に身に覚えのない登記をされそうなときは、法務局(登記所)に「不正登記防止申出(ふせいとうきぼうししんで)」をすることができる 申出をしても登記が自動的に止まるわけではない。申出の日から3か月以内にその不動産の登記の申請があったときに、法務局から申出人へ知らせが届き、登記官が申出を相当と認めていた場合には本人確認の調査の対象になる、という仕組み 申出は、原則として本人が法務局の窓口に出頭して行う。印鑑証明書などの添付に加えて、盗難届を出すなど「原因そのものへの手当て」をしているかも確認される 「実印と印鑑証明書が入ったケースごと盗まれた」「権利証の置き場所を他人に知られてしまった」——こうしたとき、真っ先に心配になるのが、知らない間に不動産の名義を書き換えられてしまわないか、ということです。 ...

2026年9月20日 · ひぐらしさとし

登記の委任状が2枚以上になったら?──「契印」をめぐる実務の傾向

この記事の要点 契印(けいいん)とは、2枚以上に分かれた書類を一体のものとして扱うため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことで、委任状や登記原因証明情報が複数枚にわたる場面などで求められることがある 「契印」という語は不動産登記規則46条(契印等)にあり、申請書が2枚以上のときの契印は同条が明文で義務づけている。もっとも同条が対象としているのは申請書(と信託目録に記録すべき情報を記載した書面)で、委任状の契印を直接義務づける規定は見当たらない 誰の印を使うか、代理人がまとめて押してよいかといった扱いには幅があり、求められた際は用途を確認しておくと安心 登記の委任状が2枚、3枚になったとき、「ここに契印をお願いします」と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。契印とは、2枚以上にわたる書類が一続きのものであることを示すため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことです。1枚に収まらない委任状や、契約書の形式で作られた登記原因証明情報などで登場します。 ...

2026年9月16日 · ひぐらしさとし

登記の『更正』と『変更』はどう違う?──窓口で見分けるときの実務の目安

この記事の要点 「更正登記」と「変更登記」はどちらも登記の内容を直す手続きだが、直す理由がまったく違う。登記した時点ですでに誤りや抜けがあった場合が更正登記、登記した後に事実が変わった場合が変更登記 登記名義人の氏名・住所についての更正登記・変更登記は、どちらも登記名義人本人が単独で申請できる 権利の内容にかかわる更正登記・変更登記は、利害関係を持つ第三者の承諾が取れるかどうかで、登記のされ方(付記登記か主登記か)が変わる 登記の内容を直す手続きというと、「更正登記」と「変更登記」のどちらの言葉を使えばよいのか迷う方は少なくありません。結論から言うと、この二つは法律上、直す理由によってはっきり区別されています。不動産登記法2条は、変更の登記を「登記事項に変更があった場合に当該登記事項を変更する登記」(15号)、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」(16号)と定義しています。 ...

2026年9月12日 · ひぐらしさとし

登記が終わった後の書類は郵送してもらえる?──窓口受け取りと郵送での受け取り方

この記事の要点 登記が終わった後に返ってくる書類は、法務局の窓口で受け取るほかに、郵送で送ってもらうこともできる 郵送を希望するときは、申請の時点で申し出ておくのが条文の建て付け。登記識別情報の書面と登記完了証は「送付を求める旨」と「送付先」を申請情報の内容にしておく必要がある 登記識別情報を記載した書面は本人限定受取郵便など慎重な方法で送られ、郵送にかかる費用(郵便切手)は申請した人が負担する 不動産の登記が終わると、法務局から書類が返ってきます。遠方の法務局に申請したときなどに「受け取りのためにもう一度出向かないといけないのか」と気になる方は多いのですが、結論から言えば、郵送で送ってもらうことができます。ただし、そのためには申請のときにあらかじめ申し出ておく必要があります。 ...

2026年9月8日 · ひぐらしさとし

登記の委任状に有効期限はある?──本人が亡くなっても代理権が消えないという特別なきまり

この記事の要点 登記の委任状そのものについて、有効期限を定めた規定は置かれていません。「3か月以内」という期限があるのは、委任状に添える印鑑証明書のほうです(不動産登記令18条3項) 登記の申請を委任した本人が亡くなっても、委任による代理人の権限は消滅しません(不動産登記法17条1号)。「本人の死亡で代理権は消滅する」という民法の原則に対する例外です ただし、代理権が残ることと、その登記をそのまま進められるかどうかは別の話です。相続がからむ場面の可否はお近くの司法書士にご確認ください 不動産の登記を司法書士に依頼すると、委任状に署名・押印を求められます。「いつまで有効なのか」「日付が古いと使えないのか」と気になるところですが、結論から言うと、委任状の有効期限を定めた規定は置かれていません。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月4日 · ひぐらしさとし

登録免許税は収入印紙で納める?──法律上は現金納付が原則というきまりと、印紙に消印をしない理由

この記事の要点 登録免許税の納め方には、現金納付・収入印紙・電子納付があり、法律にはこのほかに「納付受託者」に納付を委託する方法(クレジットカード納付など)も置かれている 法律上の原則は現金納付で、収入印紙による納付は税額が3万円以下の場合など一定の場合に認められた方法として定められている 申請書につづる収入印紙には、割印や消印をしないよう法務局の記載例が案内している 登記の名義変更をするときには、登録免許税という国の税金がかかります。窓口では収入印紙を貼って納める場面をよく見かけるため、「登録免許税は印紙で納めるもの」と思われがちですが、条文のつくりは逆です。結論から言うと、法律上の原則は現金で納めることで、収入印紙による納付は一定の場合に認められた方法として定められています。 ...

2026年8月31日 · ひぐらしさとし

登記申請は窓口・郵送・オンラインのどれで出す?──3つの出し方と受付のタイミング

この記事の要点 法律が定める申請の方法は「オンライン」と「書面の提出」の2つ。書面の提出には窓口への持参と郵送があるため、実際の出し方は3通りになる 受付は、申請の情報が法務局(登記所)に届いたときにされる。オンラインで送信できる時間帯と、登記所で受付がされる時間帯は別物 郵送は書留郵便など記録が残る方法で送り、封筒の表面に不動産登記の申請書が入っている旨を明記する決まりがある 不動産の登記申請書は、どこにどうやって出せばよいのでしょうか。結論から言えば、法律が定める申請の方法は「オンライン」と「書面を提出する方法」の2つで、書面を提出する方法の中に窓口への持参と郵送があります。つまり実際の出し方は3通りです。 ...

2026年8月27日 · ひぐらしさとし

登記書類の「捨印」って何?押す・押さないの実務の傾向

この記事の要点 捨印(すていん)とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく訂正用の印のことで、法令が押印を義務づけている制度ではなく、実務上の慣行として広まったもの 登記の委任状などで求められる場面があるのは、軽微な字句の誤りをその都度作成者に押印し直してもらわずに直せるようにするため 捨印を求めるかどうか・どこまで訂正の範囲を認めるかは、事務所や場面によって扱いに差があり、近年はオンライン申請の広がりで紙の書類そのものが減ってきた面もある 登記の委任状や契約書に署名押印するとき、「念のため、こちらにも捨印をお願いします」と言われた経験がある方は少なくないと思います。捨印とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく、訂正のための印のことです。誤字や記載漏れが見つかったとき、その捨印を使って二字削除・三字加入のように訂正すれば、作成者に改めて押印をもらいに行かなくても直せる、という便宜のための仕組みです。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

登記事項証明書の『全部事項』『現在事項』の違いは?──窓口・オンライン請求で選ぶときの目安

この記事の要点 登記事項証明書には「全部事項証明書」「現在事項証明書」「一部事項証明書」「閉鎖事項証明書」など複数の種類があり、記載される範囲が異なる 銀行融資や登記申請の添付書類では、抹消済みの権利まで載る「全部事項証明書」を求められることが多い 種類の選び方より間違いが多いのは不動産の特定で、住所(住居表示)ではなく地番・家屋番号で請求しないと、目的の不動産の証明書にならない 本文 不動産の登記事項証明書を法務局の窓口やオンラインで請求すると、申請書に証明書の「種類」を選ぶ欄がある。ここで何を選べばよいか迷う人は多いが、結論から言うと、用途がはっきりしない場合や提出先の指定がない場合は「全部事項証明書」を選んでおくのが無難である。 ...

2026年8月19日 · ひぐらしさとし

実家の相続登記に権利証は必要?──「上申書」が登場するのは住所がつながらないとき

この記事の要点 相続による所有権移転の登記は相続人が単独で申請できる登記なので、亡くなった方の権利証(登記済証)は原則として添付書類にならない 実務で上申書が使われるのは「権利証が見つからないから」ではなく、登記簿上の住所と戸籍の本籍がつながらず、戸籍上の被相続人と登記上の所有者が同じ人だと示せないとき 上申書は法令に定められた添付書類ではなく登記官の判断を補う書面で、何をどこまで求めるかは登記所によって差がある 古い実家の名義を相続人に変えようとして、「権利証が見つからないのですが、登記できますか」とご心配になる方は少なくありません。結論から申し上げると、相続登記の場面では、亡くなった方の権利証は原則として必要ありません。それでも実務で「上申書(じょうしんしょ)」という書面が登場することがあるのですが、それは権利証の紛失そのものが理由ではありません。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし