この記事の要点

  • 登記の委任状そのものについて、有効期限を定めた規定は置かれていません。「3か月以内」という期限があるのは、委任状に添える印鑑証明書のほうです(不動産登記令18条3項)
  • 登記の申請を委任した本人が亡くなっても、委任による代理人の権限は消滅しません(不動産登記法17条1号)。「本人の死亡で代理権は消滅する」という民法の原則に対する例外です
  • ただし、代理権が残ることと、その登記をそのまま進められるかどうかは別の話です。相続がからむ場面の可否はお近くの司法書士にご確認ください

不動産の登記を司法書士に依頼すると、委任状に署名・押印を求められます。「いつまで有効なのか」「日付が古いと使えないのか」と気になるところですが、結論から言うと、委任状の有効期限を定めた規定は置かれていません。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

委任状は「代理人の権限を証する情報」

不動産登記令7条1項2号は、代理人によって登記を申請するときは(法務省令で定める場合を除き)「当該代理人の権限を証する情報」を申請情報と併せて提供しなければならない、と定めています。委任状は、この情報を紙の書面のかたちにしたものです。

この条文には「法務省令で定める場合を除く」という除外の受け皿が置かれているため、条文の文言のうえでは、例外が定められる余地が残されています。もっとも、司法書士に依頼して登記を申請する通常の場面では、委任状が必要になると考えておけば足ります。

書面で提出する場合、申請人またはその代表者は、法務省令で定める場合を除き、この書面に記名押印しなければなりません(不動産登記令18条1項)。復代理人(代理人がさらに別の人に頼んだ場合のその人)によって申請するときの代理人についても同様とされています。

3か月以内の期限は「印鑑証明書」のきまり

委任状の日付が古いと使えない、と誤解されやすいのは、印鑑証明書と混ざってしまうためです。

不動産登記令18条2項は、法務省令で定める場合を除き、記名押印した人(委任による代理人を除きます)の印鑑証明書を添付しなければならないとし、同条3項が「前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない」と定めています。3か月という期限は、あくまでこの印鑑証明書についてのきまりです。委任状そのものについて、作成からいつまで、という期限は、不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則のいずれにも見当たりません。

なお、印鑑証明書の3か月以内が要る場面・要らない場面は、登記に使う印鑑証明書に有効期限はある?で整理しています。また、官庁または公署が登記を嘱託する場合には、この印鑑証明書の規定は適用されません(同条4項)。

期限がないといっても、代理できる範囲は委任状に書かれた事項に限られます。対象の不動産や登記の目的が当初の予定と変われば、その部分については新たに委任を受け直すことになります。また、期限を定めた規定がないことは、一度書いた委任状がいつまでも当然に効力を持ち続ける、という意味ではありません。委任が解除されれば、その先の代理はできなくなります。

本人が亡くなっても代理権は消滅しない

民法111条1項1号は、代理権は「本人の死亡」によって消滅する、と定めています。ところが不動産登記法17条は、これとは違うきまりを置いています。

同条は、登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次の事由によっては消滅しない、として、1号に「本人の死亡」、2号に「本人である法人の合併による消滅」、3号に「本人である受託者の信託に関する任務の終了」、4号に「法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更」を挙げています。つまり、登記を委任した方が委任状を書いたあとに亡くなっても、それだけで代理人の権限が失われるわけではありません。

ここで注意したいのは、代理権が消滅しないということは、あくまで「代理人の権限が残る」という条文上の効果にとどまる、という点です。その登記を実際にそのまま進められるかどうかは、亡くなった方が登記名義人だったのか、どの登記をどの段階まで進めていたのか、相続人が誰でどのような話し合いになっているのか、といった個別の事情によって変わります。「本人が亡くなっても必ず登記できる」と一般化できるきまりではありません。

まとめ

登記の委任状には、有効期限を定めた規定が置かれていません。「3か月以内」は委任状に添える印鑑証明書についてのきまりです(不動産登記令18条3項)。また、委任した本人が亡くなっても代理人の権限は消滅しない、という民法とは異なる扱いが不動産登記法17条に置かれています。ただし、代理権が残ることと、その登記を予定どおり進められることは同じではありません。相続がからむ場面の取扱いは事案ごとの判断になりますので、判断に迷うときは、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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