共同担保目録(きょうどうたんぽもくろく)とは、一つの借入れの担保として複数の不動産に同じ担保権がついているときに、その不動産の一覧を法務局が作る目録のことです。登記簿の乙区(おつく=抵当権など、担保の登記が記載される欄)に「共同担保目録(け)第〇号」といった記号番号が載っていたら、「この抵当権は、この不動産だけでなく、ほかの不動産にもついています」という印だと考えてください。
先日の記事「登記簿の『乙区』を読み解く──抵当権の記載事項は何を意味するか」では、乙区の末尾にこうした記号番号が付くことがある、という点まででいったん止めていました。今回はその続きとして、この目録が何のためにあり、中に何が書かれていて、どうすれば中身を見られるのかを整理します。登記事項証明書そのものの構造(表題部・甲区・乙区)から確認したい方は「登記簿(登記事項証明書)の見方──表題部・甲区・乙区は何が書いてある?」もあわせてご覧ください。
この記事の要点
- 共同担保目録は、同じ担保権が及んでいる不動産の一覧。「家と土地がセットで担保になっている」ことが読み取れる
- 乙区に載るのは記号と目録番号だけで、どの不動産が対象かは目録本体を見ないと分からない
- 登記事項証明書を請求するとき、共同担保目録は自動では付いてこない。共同担保目録付きを指定して請求する必要がある
- あとから別の不動産が追加で担保に入ったことも、目録から読み取れる
- 一部の不動産だけを担保から外したいといった場面は個別判断になるため、お近くの司法書士にご相談ください
共同担保目録は何のためにあるのか
住宅ローンで家を買うと、土地と建物の両方に抵当権がつくのが一般的です。日本では土地と建物はそれぞれ別の登記簿で管理されるため、「一つの借入れ」であっても、担保の登記は土地の登記簿と建物の登記簿に分かれて記録されます。
このとき、土地の乙区だけを見ても「この抵当権は建物にもついているのか」は分かりません。そこで、担保権が2つ以上の不動産にまたがっている場合には、その2つ以上の不動産と権利が登記事項とされています(不動産登記法83条1項4号)。そして、この事項を明らかにするために、登記官が共同担保目録を作成することができるとされています(同条2項)。
これを受けた不動産登記規則では、2つ以上の不動産に関する権利を目的とする担保権の保存・設定の登記の申請があり、その登記をするときは、登記官は共同担保目録を作成し、その担保権の登記の末尾に共同担保目録の記号と目録番号を記録しなければならないと定められています(不動産登記規則166条1項)。法律で「作成することができる」とされている仕組みを、規則の側で具体的な作成手続として定めている、という関係です。
つまり、乙区の末尾に付いている「共同担保目録(け)第〇号」という記号番号は、「同じ内容の一覧が、この番号で法務局に保管されています」という参照先の案内にあたります。
記号番号だけでは、どの不動産が対象かは分からない
ここが読み取りのつまずきやすいところです。乙区に記載されるのは記号と目録番号だけで、「土地と建物の2つが対象」「実家の土地も入っている」といった中身までは書かれていません。中身を知るには、目録そのものを見る必要があります。
共同担保目録には、次の事項が記録されます(不動産登記規則167条1項)。
- 共同担保目録を作成した年月日
- 共同担保目録の記号と目録番号
- 担保権の目的となっている2つ以上の不動産に関する権利について
- 目録への記録の順序に従って付けられる番号
- それぞれの不動産の所在事項(どこの土地・建物か)
- その権利が所有権以外の権利であるときは、その権利
- その担保権の登記の順位番号(ただし、ほかの登記所の管轄区域内にある不動産に関するものは除かれます)
最後の点は覚えておくと役に立ちます。担保に入っている不動産が離れた場所にあり、管轄する法務局が違う場合、目録にはその不動産の所在は載っても、順位番号までは載りません。順位番号(乙区の中での登記の前後を示す番号)を確認したいときは、その不動産の登記事項証明書を別に取る必要がある、ということです。
なお、抵当権の設定登記そのものの流れや費用については「住宅ローンを組むと、登記簿に「抵当権」が加わります──設定登記のしくみ・費用・段取り」で扱っています。
あとから担保が追加されたことも読み取れる
共同担保目録は、最初の設定のときだけ作られるものではありません。
たとえば、すでに1つの不動産に抵当権を設定したあとで、同じ債権の担保として別の不動産にも担保権を設定することがあります。この場合、登記官はその登記の末尾に共同担保目録の記号と目録番号を記録しなければならないとされています(不動産登記規則168条2項)。
そのうえで、
- 前の登記についてすでに共同担保目録があるときは、その目録に、記録事項のほか「今回の申請にかかる権利が担保の目的となった旨」と申請の受付年月日・受付番号が記録されます(同条3項)
- 前の登記に共同担保目録がなかったときは、新たに共同担保目録が作られ、前の担保権の登記についてする付記登記によって、担保を追加した旨・目録の記号と目録番号・登記の年月日が記録されます(同条4項)
このため、共同担保目録を見ると「もともとは土地と建物の2つだけだったが、あとから別の不動産が同じ借入れの担保に加わった」といった経過まで読み取れることがあります。相続などで不動産を洗い出す場面では、手元で把握していなかった不動産が目録に載っていて気づく、ということも起こり得ます。
なお、亡くなった方の名義の不動産を洗い出す方法としては、2026年(令和8年)2月2日から始まった所有不動産記録証明制度もあります。その人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧にした証明書を、本人、または相続人その他の一般承継人(相続などでその人の地位を引き継いだ方)が請求できる制度です(不動産登記法119条の2)。法務省の案内では、全国の法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)で、書面でもオンラインでも請求できるとされています。ただし、登記記録がコンピュータ化されていない不動産は抽出されないなど、網羅性には限界があることも同じ案内で説明されています。
この証明書と共同担保目録は、目的が違います。所有不動産記録証明書で分かるのは「その人の名義になっている不動産」であって、「どの不動産に同じ担保権が及んでいるか」までは分かりません。逆に、共同担保目録で分かるのは担保権が及んでいる範囲だけで、その人の名義の不動産を網羅したものではありません。どちらか一方で足りるものではないと考えておくのが安全です。
共同担保目録は「指定して」請求する
見落としが多いのがこの点です。登記事項証明書を取り寄せても、共同担保目録は自動では付いてきません。窓口やオンラインでの交付請求のときに、共同担保目録を含める旨を指定して請求する必要があります。
「乙区に記号番号は載っていたのに、肝心の一覧が付いていなかった」というのは、この指定をしないまま請求したことが原因であることが少なくありません。証明書を取る目的が「どの不動産が同じ担保に入っているかを確認すること」であれば、請求の段階で共同担保目録付きを指定してください。
この「指定しないと付いてこない」扱いは、窓口ごとの運用ではなく規則上の定めです。交付請求の際、共同担保目録に記録された事項の証明を求めるときはその旨を請求情報に含めることとされ(不動産登記規則193条1項5号)、この指定がないときは共同担保目録の記載を省略すると定められています(同規則197条3項)。条文の建て付けの詳細は、後半の深掘りセクションで扱います。
一部だけ売る・一部だけ担保を外すという話は、別の判断になります
共同担保目録に複数の不動産が載っている状態は、それらに同じ担保権が及んでいることを意味します。「土地は担保、建物は担保でない」といった状態ではありません(担保権の登記が抹消された不動産については、目録の記載に下線が引かれます。この点は後半の深掘りで扱います)。
そのため、「載っている不動産のうち一つだけを手放したい」「一部だけ担保から外せないか」といった場面は、借入れの契約内容や担保権者(金融機関等)との関係を含む個別の判断になり、登記簿の記載だけで結論が出るものではありません。必ずお近くの司法書士にご相談ください。
また、広い土地の一部だけを切り分けて扱おうとする場合には、土地を分ける登記(分筆〈ぶんぴつ〉登記)が関係してくることがあります。土地の分筆にかかる調査・測量や図面の作成、申請の代理は土地家屋調査士の業務ですので、その部分はお近くの土地家屋調査士にご相談ください。
まとめ
共同担保目録は、一つの借入れの担保として複数の不動産に同じ担保権が及んでいることを示す一覧です。乙区の末尾に載っているのは記号と目録番号だけなので、どの不動産が対象かを知るには、共同担保目録付きを指定して登記事項証明書を請求し、目録本体を確認する必要があります。目録には作成年月日・記号と目録番号・各不動産の所在事項・順位番号などが記録され、あとから担保が追加された経過も読み取れます。
登記簿の記載から読み取れるのは「どの不動産に同じ担保権が及んでいるか」という事実までです。そこから先、一部の不動産の扱いをどうするかといった判断は個別の事情によりますので、お近くの司法書士にご相談ください。
よくある質問
Q. 共同担保目録を見るのに費用はかかりますか?
共同担保目録は単独で取り寄せるものではなく、登記事項証明書の交付請求の際に「含める」指定をして一緒に交付を受けます。したがって、費用は登記事項証明書の交付手数料の枠組みで考えることになります。手数料の額は請求方法(窓口・オンライン等)によって異なり、改定されることもあるため、最新の額は法務局または法務省の案内でご確認ください。
Q. 確認しないまま放置すると、どんな困りごとが起きますか?
すぐに期限が来る手続きではありませんが、担保が及んでいる不動産の範囲を把握しないままだと、後の手続きで取りこぼしが生じることがあります。たとえば借入れを完済して抵当権の登記を消す場面では、同じ担保権が及んでいる不動産すべてが対象になるため、目録を見ずに一部の不動産だけで手続きを進めると、ほかの不動産に登記が残ったままになりかねません。相続で不動産を洗い出すときも同様です。
Q. 自分で確認できますか。どこに相談すればよいですか?
登記事項証明書は、その不動産の所有者でなくても交付を請求できるため、共同担保目録付きの証明書を取り寄せて内容を見ること自体はご自身でできます。ただし、記載の読み取りや、そこから先の手続きの要否の判断は簡単ではありません。読み方に迷ったとき、あるいは担保の扱いを検討する必要があるときは、お近くの司法書士にご相談ください。土地を分ける登記が関係する場合は、お近くの土地家屋調査士にご相談ください。
【さらに深掘り】共同担保目録の作成・更新・抹消をめぐる登記実務上の規律
ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
「作成することができる」と「作成しなければならない」の関係
本文で触れたとおり、共同担保目録について不動産登記法は「登記官は……共同担保目録を作成することができる」(同法83条2項)と定め、不動産登記規則は「共同担保目録を作成し……記録しなければならない」(同規則166条1項)と定めています。文言が食い違って見えるため、条文だけを並べると混乱しやすいところです。
条文の建て付けから整理すると、次のようになります。
まず、担保権が2つ以上の不動産に関する権利を目的とするときは、**その2つ以上の不動産と当該権利それ自体が「登記事項」**とされています(不動産登記法83条1項4号)。ここは「できる」ではなく、登記事項として定められている部分です。
そのうえで同条2項は、この1項4号の事項を明らかにするための手段として、法務省令で定めるところにより共同担保目録を作成することができる、という構造になっています。つまり2項の「できる」は、共同担保目録という記録方法を用いることを登記官に授権し、その具体的な定めを法務省令(不動産登記規則)に委ねた規定と読むのが素直です。
その委任を受けた不動産登記規則166条1項が、2つ以上の不動産に関する権利を目的とする担保権の保存または設定の登記の申請があってその登記をするときは、共同担保目録を作成し、担保権の登記の末尾に記号と目録番号を記録しなければならない、と義務として定めています。法が方法を授権し、省令が「その場合には必ずこうする」と義務化している、という関係として読めます。
なお、規則166条1項には「(第百六十八条第二項に規定する場合を除く。)」という括弧書きが付いています。後述する追加設定の場面は規則168条2項が別に規律しており、その場合は166条1項の適用範囲から外れる、という切り分けです。
記号と目録番号 ── 目録番号は「記号ごとに」更新される
共同担保目録の記録事項は不動産登記規則167条1項に列挙されており、そこには記号と目録番号が含まれます(同項2号)。そして同条2項は、目録番号は記号ごとに更新するものとすると定めています。
ここから読み取れる実務上の意味は明快です。目録番号だけを控えても、その目録を一意に特定できないということです。目録番号は記号ごとに更新するものとされているので、「第○号」という数字だけをメモしても、記号が違えば別の目録を指してしまいます。登記事項証明書から共同担保目録を控えるときは、記号と番号を必ずセットで記録する必要があります。
一方で、記号そのものの割り振り方は、不動産登記規則には定めが見当たりません(規則167条2項が「目録番号は記号ごとに更新する」と定めるにとどまります)。この点を定めているのは、登記所内部の事務処理を定める不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号民事局長通達)です。同準則114条は、記号と目録番号は重複や欠番が生じないように記録するものとし(同条1項)、記号は、例えば「あ」「い」「う」のように付すものとする(同条2項)と定めたうえで、記号は目録番号が例えば1000号・5000号・10000号に達するごとに適宜改めるものとし、必ずしも暦年ごとに改めることを要しない(同条3項)としています。
管轄が異なる不動産が含まれるとき
共同担保目録の記録事項のうち、実務で最も注意を要するのが不動産登記規則167条1項3号ニです。同号ニは記録事項として「当該担保権の登記**(他の登記所の管轄区域内にある不動産に関するものを除く。)**の順位番号」と定めており、括弧書きで管轄外の不動産を除外しています。
この括弧書きがあるため、目録に載っている不動産のうち他の登記所の管轄にあるものについては、所在事項は載るが順位番号は載らないという状態が生じます。担保権の前後関係(順位)を確認する目的で目録を読むときは、この点を見落とすと「順位番号が抜けている=記録漏れ」と誤読しかねません。管轄外の不動産の順位番号を確認するには、その不動産について別途、管轄登記所で登記事項証明書を取得する必要があります。
では、管轄が分かれている場合に目録の内容はどう揃えられるのか。ここは通知の仕組みが用意されています。規則168条5項は、追加設定の登記をした場合に前の登記に他の登記所の管轄区域内の不動産に関するものがあるときは、遅滞なくその他の登記所に登記をした旨を通知しなければならないと定め、同条6項は、通知を受けた登記所の登記官が遅滞なく2項から4項までの手続をしなければならないと定めています。つまり、管轄をまたぐ共同担保目録は、各登記所が通知を受けて自庁の目録を更新することで足並みを揃える建て付けになっています。
同じ通知の仕組みは、後述する一部消滅・変更の場面にも準用されています(規則170条3項・4項)。
追加設定があったときに、記録はどう分岐するか
本文でも触れたとおり、すでに担保権の登記がある状態で同一債権の担保として別の不動産に担保権を設定した場合、登記官はその登記の末尾に共同担保目録の記号と目録番号を記録しなければならないとされています(不動産登記規則168条2項)。この場面は、前の登記に目録があるかどうかで処理が分岐します。
前の登記に共同担保目録があるとき(同条3項)は、既存の目録に、規則167条1項各号の事項に加えて「当該申請に係る権利が担保の目的となった旨」と「申請の受付の年月日・受付番号」が記録されます。受付年月日・受付番号が記録されるという点が実務上は重要で、目録を時系列で読むと「いつ何が担保に加わったか」がたどれることになります。
前の登記に共同担保目録がないとき(同条4項)は、新たに目録が作成されたうえで、前の担保権の登記についてする付記登記によって、担保を追加した旨・目録の記号と目録番号・登記の年月日が記録されます。ここで押さえておきたいのは、この場合の痕跡が目録側だけでなく、前の不動産の乙区側にも付記登記として残るという点です。したがって、古い抵当権の登記に共同担保目録の記号番号が本体ではなく付記登記の形で付いている場合、それは「あとから担保が追加された結果、その時点で目録が新設された」ことを示している可能性があります。
関連する場面として、共同担保の根質権・根抵当権の分割譲渡があります。規則169条2項は、共同担保目録のある分割前の根質権・根抵当権について分割譲渡の登記をするときは、分割後の権利について、当該共同担保目録と同一の不動産に関する権利を記録した共同担保目録を作成しなければならないと定めています(同条3項で、分割後の登記の末尾に記号と目録番号を記録)。目録は増えることもある、ということです。
抹消・変更があったときの目録の変化 ── 「下線」の読み取り
共同担保目録は、いったん作られたら固定されるものではありません。不動産登記規則170条が、一部消滅等の場面の記録方法を定めています。
同条1項は、2つ以上の不動産に関する権利が担保権の目的である場合において、その一つの不動産に関する権利を目的とする担保権の登記の抹消をしたときは、共同担保目録に、①申請の受付の年月日・受付番号、②当該不動産について担保権の登記が抹消された旨、③当該抹消された登記に係る規則167条1項3号の事項を抹消する記号を記録しなければならない、と定めています。
同条2項は、目録に記録されている事項の変更の登記・更正の登記をしたときについて、変更後(更正後)の事項、受付の年月日・受付番号、変更(更正)をした旨、変更前(更正前)の事項を抹消する記号を記録する、と定めています。
そして、この「抹消する記号」については、規則197条5項が、登記事項証明書に抹消する記号を表示するときは、抹消に係る事項の下に線を付して記載すると定めています。
ここから導かれる読み取りの要点は次のとおりです。共同担保目録に不動産が載っていることと、その不動産に現に担保権が及んでいることは、同じではありません。 目録の当該行に下線が引かれていれば、その不動産については担保権の登記が抹消された(または記載が変更された)ことを示しています。下線の有無を見ずに「目録に載っている=まだ担保が付いている」と判断すると、逆の結論になり得ます。
なお、こうした一部消滅・変更の場面でも、管轄をまたぐ場合の通知の仕組み(規則168条5項)が準用されており、通知を受けた登記所の登記官が遅滞なく同様の手続をすることとされています(規則170条3項・4項)。
「共同担保目録付き」で請求する、その条文上の根拠
本文では、共同担保目録が自動では付いてこないため指定して請求する必要がある、と述べました。この扱いの根拠は、不動産登記規則の交付請求の規定に置かれています。
不動産登記規則193条1項は、登記事項証明書等の交付を請求するときに提供すべき請求情報を列挙しており、その5号に「登記事項証明書の交付の請求をする場合において、共同担保目録又は信託目録に記録された事項について証明を求めるときは、その旨」と定めています。
そして規則197条3項は、登記事項証明書を作成する場合において、193条1項5号の事項が請求情報の内容とされていないときは、共同担保目録または信託目録に記録された事項の記載を省略すると定めています。
つまり「指定しないと付いてこない」のは運用上の慣行ではなく、規則197条3項が省略を定めているためです。逆に、規則193条1項5号の「その旨」を請求情報に含めていれば、この省略の対象にはなりません。信託目録も同じ条文で共同担保目録と並べて規定されている点は、あわせて押さえておくと整理しやすいところです。
なお、規則197条2項4号は、共同担保目録の登記事項証明書の様式を別記第十号様式と定めています。共同担保目録が土地・建物の証明書とは別の様式で綴られて出てくるのは、この定めによるものです。
直近の改正との関係 ── 目録の規律ではなく、探す手段のほうが増えた
本稿で引用した規定(不動産登記法83条、不動産登記規則166条から170条まで、193条1項5号、197条2項4号・3項・5項)は、いずれも執筆時点(2026年8月)で施行されている現行の規定です。共同担保目録そのものの記録方法や交付請求の建て付けは、上記の条文のとおりに動いています。
そのうえで、同じ改正法(民法等の一部を改正する法律。令和3年法律第24号)に由来する制度として、2026年(令和8年)2月2日から所有不動産記録証明制度が施行されました(不動産登記法119条の2)。実務上の取扱いは「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有不動産記録証明書の交付等関係)」(令和8年2月2日付け法務省民二第81号民事局長通達)が示しており、交付請求の請求情報・添付情報は、不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和8年法務省令第5号)による改正後の不動産登記規則195条に置かれています。
請求できるのは、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について請求する本人(法119条の2第1項)と、被承継人に係る証明書を請求する相続人その他の一般承継人(同条2項)です。請求先は法務大臣の指定する登記所とされ(同条3項)、法務省の案内では全国の法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)で書面・オンラインいずれによっても請求できるとされています。
読み取りの上で重要なのは、この制度が共同担保目録の代わりにはならないという点です。所有不動産記録証明書は「所有権の登記名義人」を軸に不動産を集める仕組みであり、担保権が及んでいる範囲を示すものではありません。共同担保目録は逆に「担保権」を軸にした一覧で、名義の網羅を目的としていません。軸が違う以上、一方が他方を代替することはできません。あわせて法務省の案内では、検索時点で登記に反映されていない情報は含まれないこと、同名異人の不動産が抽出される場合があること、登記記録がコンピュータ化されていない不動産は抽出されないことが注意点として挙げられており、網羅性には限界があるとされています。
また、同じ改正法による制度として、2026年(令和8年)4月1日からは所有権の登記名義人の氏名・名称・住所の変更登記の申請が義務化されています(不動産登記法76条の5。変更があった日から2年以内。正当な理由なく怠ったときは同法164条2項により5万円以下の過料の適用対象)。施行日より前に生じた変更も対象とされ、令和10年3月31日までに登記をする必要があります(令和3年法律第24号附則5条7項)。共同担保目録から自分名義の不動産を把握したときは、登記されている氏名・住所が現在のものかどうかもあわせて確認しておくと安全です。
古い担保権の登記について
登記簿は、かつての紙の帳簿からコンピュータ(磁気ディスク)の登記記録への改製(かいせい=作り替え)を経ています。この切り替えの際の共同担保目録の取扱いについては通達があり、共同担保目録の改製は、(旧)不動産登記法151条ノ2第1項の規定による登記簿への移記の要領によるものとされています(平成元年5月1日付け法務省民三第1698号民事局長通達)。つまり、目録だけ別の扱いをするのではなく、登記簿本体の移記と同じ枠組みで取り扱う建て付けです。なお、この通達はインターネット上では原文が公開されていないため、本稿では『先例から読み解く!土地の表示に関する登記の実務』(後藤浩平・宇山聡著、日本加除出版、2017年)117頁の収録により確認しています。
そのうえで、昭和期などに設定された古い担保権の登記について、共同担保目録が編成されていない例がどの程度あるかまでは、※要確認です(本稿では確認できていません)。古い担保権の登記を前提に共同担保の範囲を調べる必要がある場面では、目録の有無・形式について管轄の法務局に確認するか、お近くの司法書士にご相談ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年8月・いずれも一次情報です)。
- 不動産登記法(e-Gov法令検索。民法等の一部を改正する法律〔令和3年法律第24号〕の附則を含む): https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123
- 不動産登記規則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00740.html
- 法務省民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有不動産記録証明書の交付等関係)」(令和8年2月2日付け法務省民二第81号): https://www.moj.go.jp/content/001455600.pdf
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- 不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達、最終改正 令和6年12月2日): https://www.moj.go.jp/content/001394394.pdf
- 平成元年5月1日付け法務省民三第1698号民事局長通達(共同担保目録の改製関係。原文は『先例から読み解く!土地の表示に関する登記の実務』〔後藤浩平・宇山聡著、日本加除出版、2017年〕117頁所収のものにより確認)