この記事の要点

  • 後見制度支援信託・支援預貯金は、本人の財産のうち普段使わない金銭を信託銀行等や金融機関に預け、後見人の手元管理を最小限にする仕組み
  • 対象は「成年後見」と「未成年後見」に限られ、保佐・補助・任意後見では利用できない
  • 信託・預貯金からお金を動かすときは、家庭裁判所が発行する指示書が必要になる

「後見人になると、本人の財産をすべて自分の口座や手元で管理するのだろうか」——そう思われがちですが、実際には財産の額によって、家庭裁判所がもう一つの仕組みを提案することがあります。それが後見制度支援信託・後見制度支援預貯金です。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度・運用に基づく一般的な解説です。

どういう仕組みか

本人の財産のうち、日常的な支払いに使わない金銭を信託銀行等に信託するのが後見制度支援信託です。後見人は、生活費や医療費など日常的な支払いに必要十分な金銭だけを預貯金として手元で管理し、それ以外は信託財産として金融機関側が管理します。信用金庫・信用組合・農業協同組合(JA)や一部の銀行を窓口とする「後見制度支援預貯金」も、仕組みはほぼ同じです。

対象になるのは成年後見と未成年後見だけ

制度として利用できるのは成年後見と未成年後見の場合に限られ、保佐・補助・任意後見では利用できません(東京家庭裁判所後見センターレポート)。ただし、この2つに当てはまれば必ず使えるというわけではありません。実際に取り扱うかどうかは金融機関ごとに異なり、未成年後見については取扱いの対象としていない金融機関もあります(同レポート)。判断能力の程度によって選ぶ制度が異なる点は、法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?もあわせてご覧ください。

動かすときは家庭裁判所の指示書が必要

信託財産や支援預貯金から出金する際には、あらかじめ家庭裁判所が発行する指示書が必要です。後見制度支援信託・支援預貯金そのものを直接定めた条文はなく、家庭裁判所がいつでも後見人に対し事務の報告を求め、財産の状況を調査し、必要な処分を命じることができるという後見監督の仕組み(民法863条)を背景に、家庭裁判所の運用として実施されています。

利用するかどうかは家庭裁判所の判断

支援信託等を利用するか、専門職後見人(弁護士や司法書士等)を選任するかは、本人の財産状況を踏まえて家庭裁判所が判断します。目安となる預貯金額は家庭裁判所ごとの運用例として案内されていますが、金額の基準や取扱いの詳細は担当の家庭裁判所によって異なる場合があるため、実際の目安は個々の事案で確認が必要です。利用が始まれば、親族後見人が手元で管理する財産が少なくなり、家庭裁判所への報告の負担が軽くなるという利点もあります。就任後の報告の流れ自体は、成年後見人になったら何をする?財産管理と家庭裁判所への報告の流れで解説しています。

制度改正の動きにご注意ください

成年後見制度をめぐっては、令和8年(2026年)6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、同月24日に公布されました。この改正では、後見・保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化することが予定されています。成年後見制度の見直しに関する部分の施行日は「公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日」とされており(同法には遺言制度の見直しなど、これとは別の施行日が定められた部分もあります)、本記事執筆時点では未確定です。施行後は、「対象は成年後見・未成年後見に限られる」という本記事の説明も含め、後見制度支援信託・支援預貯金の対象範囲や運用が見直される可能性がありますが、一元化後の具体的な取扱いは本記事執筆時点では未確定です。なお、本記事で運用の背景として挙げた民法863条も改正の対象とされており、改正法が施行されると、同条は未成年後見の事務の監督について定める規定になります。

まとめ

後見制度支援信託・支援預貯金は、本人の財産のうち普段使わない金銭を金融機関側で管理し、出金には家庭裁判所の指示書を要することで、本人の財産をより確実に守るための仕組みです。対象は成年後見・未成年後見に限られ、利用するかどうかや金額の目安は家庭裁判所の判断によります。制度の利用を具体的に検討される場合は、お近くの司法書士会や、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートにご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年07月・いずれも一次情報です)。

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